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「オーテック 湘南里帰りミーティング2024」開催 “4ドア GT-Rパトカー”や発売前のセレナ AUTCH SPORTS SPECなど登場
2024年11月18日 10:51
- 2024年11月16日 開催
NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)は11月16日、神奈川県中郡の大磯ロングビーチ 第1駐車場で「オーテックオーナーズグループ 湘南里帰りミーティング 2024」を開催した。
2004年12月に初開催された湘南里帰りミーティングは、コロナ禍の影響によるオンライン開催を挟みつつ、今回で17回目の開催となり、20周年を迎えたメーカー主導によるオーナーズミーティング。日産車をベースとしてさまざまな架装、改造を行なった“オーテック車”と、現在は同じNMCの車両である“NISMOロードカー”が一堂に会するイベントで、セレナ77台(AUTECH 49台、NISMO 10台)、ノート77台(AUTECH 24台、NISMO 44台)、マーチ55台(NISMO 14台、12SR 24台、A30 8台)、スカイライン26台(4ドアGT-R 11台、NISMO 6台)、ノート オーラ26台(AUTECH 2台、NISMO 24台)、エクストレイル23台(AUTECH 17台)、シルビア22台(ヴァリエッタ6台、オーテックver.15台)といった車両354台とNMC車オーナー611人(総台数と人数は速報値)が参加して開催された。
「新しいロードカーをどんどん出していくので期待してほしい」と片桐社長
開会式ではNMCの代表取締役社長兼CEOを務める片桐隆夫氏があいさつを実施。片桐社長は里帰りミーティングが今年で20周年を迎えたことを紹介し、これだけの期間続けてこられたのはひとえにオーナー各位の温かい支援のたまものであると社員を代表して深い感謝を口にした。
オーテックはこの20年よりもさらに長い歴史を積み重ね、2022年4月からはNISMOと1つの会社となってコラボレーションを開始。モータースポーツとカスタマイズを一体化させて「よりよいクルマ」「楽しいクルマ」としての魅力をシナジーさせていくクルマ造りに注力して、近年では動的性能を高めるチューニングを施しつつ、オーテックとNISMOの両ブランドの持つ方向性に合わせたロードカーを生み出している。今年は7月にNISMOブランドから「ノート オーラ NISMO」を発売して、12月にはオーテックブランドから「セレナ AUTCH SPORTS SPEC」を発売すると紹介。これからも新しいロードカーをどんどん出していくので期待してもらいたいとアピールした。
また、モータースポーツ活動ではSUPER GT以外にも、フェアレディZをベースとしたGT4マシン「Nissan Z NISMO GT4」をスーパー耐久シリーズの参戦チームに車両供給。さらに米国で開催されているレースにも4台のNissan Z NISMO GT4が参戦しており、このNissan Z NISMO GT4は茅ヶ崎にあるオーテック事業所と横浜市鶴見区にあるNISMO事業所が力を合わせるコラボレーション活動として生産されていると紹介。このような活動をつうじてモータースポーツとカスタマイズの双方を充実させていきたいと述べ、会場内にもオーテック事業所が手がけるNissan Z NISMO GT4のホワイトボディを展示しているので、ぜひ体感していってほしいと来場者に語りかけた。
4ドア GT-Rパトカーに先導されてスペシャルゲスト登場
片桐社長のあいさつに続いて行なわれたゲストの入場では、日産自動車の従業員などで構成される公認文体サークル「日産自動車吹奏楽団」によって「西部警察メインテーマI」が演奏され、神奈川県警の白バイ隊と4ドア仕様のスカイライン GT-Rパトカーに先導されて、まだ発売前のセレナ AUTCH SPORTS SPECが華々しく入場。ゲスト出演するSUPER GT 2024 MOTUL AUTECH Z(#23)ドライバーの千代勝正選手・ロニー・クインタレッリ選手、AUTECHレースアンバサダー 高岡みほさんの3人が車内から姿を現わした。
鈴鹿でのSUPER GT最終戦で予選、決勝とも一番で終われるよう準備を進めていると千代選手
ゲスト3人によるスペシャルトークショーでは、12月に延期された鈴鹿 GT300kmレースでシーズン最終戦を迎えるSUPER GTのひと足早いシーズン振り返りが話題となり、今期からクインタレッリ選手の相棒が松田次生選手から千代選手に替わって、タイヤもミシュランがGT500クラスでのタイヤ供給から撤退したことを受けてブリヂストンに変更されるなど、NISMOはチーム体制が大きく変化していることについて千代選手に質問。
千代選手は「なにより自分としては23号車に乗るということ、そしてロニーさんとは2011年に初めて出会ってから歳月はかかりましたがチームを組むようになりました。ずっと隣り合うピットでお互いの仕事を見ていたので、組んだら上手くいくだろうと思っていました。カートトレーニングも4~5年前から一緒にやらせてもらっていて、今シーズンはプレッシャーもありましたが、ロニーさんと組めて本当にうれしいです。また、NISMOチームは1人ひとりが一流のプロフェッショナルで、毎戦支えてもらいながら自分の走りに集中させてもらえました」と語った。
また、クインタレッリ選手は「千代選手は(同じNISMOが車両メンテナンスを担当するNDDP RACINGの)3号車に乗るようになって、よい体制のマシンに乗れるようになってから、彼が持つ速さを皆さんに証明できるようになったことを隣のピットで見ていました。その当時はライバルという面もありましたが、今シーズンはチームメイトになってもの凄くうれしかったですね」とコメントしている。
SUPER GTでは今シーズンから予選方式に大きな変更が行なわれたが、これについて千代選手は、これまで慣れ親しんできたニュータイヤでの予選アタックから予選Q2はユーズドタイヤでタイムアタックするという経験のない方法が採られて、チームも含めて慣れるまで時間がかかるぞと思っていたところから、8月になって予選方式の変更がアナウンスされ、しかも変更後は安定したドライ路面で予選を走れていないことを説明。
一方で高岡さんは、「去年までは予選のQ1が終わって上位に入れていないとガッカリしていましたが、今年はQ2の最後までハラハラドキドキが楽しめるので、一般のファン目線からするとよいのかなと思います」と述べ、見守る立場の意見を披露した。
今シーズンはとくに中盤から第5戦が台風直撃の予報を受けて開催を12月に延期したことを筆頭に、多くのレースで雨や霧などの影響を受けている。これについて千代選手は「今年の僕らの課題としてウェットのパフォーマンスが悪いという部分があります。そこには今までとタイヤが替わって、ドライタイヤはテストする機会も多かったのですがウェットタイヤはぶっつけ本番になってしまって、テストもしていないのでウェットタイヤのおいしいところを使い切れなかった」。
「そしてタイヤに対してクルマをマッチングさせていかなければならず、セッティング変更は1日、2日では不可能で、いろいろなレースなどを経験してデータを集めておいしいところを見つけていく作業が必要です。ライバルチームはブリヂストンのタイヤを長年使っていて、それに対して僕らはチャレンジャーという立場で、気持ちをリセットして一から学んでいかなきゃならないなと思っています」とチームの置かれた状況を明かした。
雨天での走行については高岡さんから「大雨だと普通にクルマを運転するだけでも怖いのに、よくあのスピードで走れるなぁ、すばらしいなといつも思っています」という感想が出たことを受け、千代選手は「僕らもあんなに雨が降っているところで、普段ならクルマは運転しないですけどね」と笑いつつ、「僕らは仕事なので、グリーンシグナルが点いたら出なきゃいけない。赤が点くまでは走らなきゃいけないので、そこは主催者判断ですが『これは危ないだろ~』って思う時もあって、コース上にいるだけでギリギリという時もあります。前のクルマのウォータースプレーで前はまず見えないです。前のクルマがブレーキを踏む瞬間までは視界ゼロ。側面に見える看板ぐらいですね」と説明。
クインタレッリ選手も「まぁみんなプロの選手だから、だいたいギリギリまでアクセル踏んでると信じて走ってる。でも、たまに大きな事故もありますね。だから(雨は)うれしくないね、やりたくないよ。でもしょうがない。たまに大雨で(前が)見えない状況で、アクアプレーニングでクルマがストレートでフラフラしはじめる」とウェットレースの恐ろしさについて口にした。
3週間後に控えるシーズン最終戦に向けた意気込みを聞かれ、千代選手は「真冬の鈴鹿サーキットで行なわれるGTレースは誰も知らないかと思いますが、僕はワクワクしています。冬場はエンジンもまわってダウンフォースも効いてタイヤもグリップするので、もの凄いタイムが出るんです。今年のZはドライの状況で非常に強いので、予選から、今度こそドライコンディションで整った鈴鹿サーキットでバチバチに全開で攻めて、最後に予選、決勝とも一番で終われるように準備を進めているところです」と返答。
また、クインタレッリ選手は「最終戦が鈴鹿で開催されるのは十何年ぶりになるかと思います。最後のレースを鈴鹿で見る機会はファンの皆さんにとってもなかなかない機会になると思いますので、ぜひ応援しに来てください。年間チャンピオンの権利は失いましたけど、(最終戦で)優勝すれば年間ランキングの2位、3位に入れるので、チームのみんなで力を合わせて、千代選手と初優勝したいです。応援よろしくお願いします」とベテランらしい言葉を口にした。
NMCエンジニアトークショー
NMCで車両開発に携わる現役エンジニアがゲスト出演する「NMCエンジニアトークショー」では、日産自動車で「プリメーラ」「マーチ」「マキシマ」「アルティマ」といったFF系車種のシャシー実験の携わり、2013年からはオーテックに移籍して「A30」「オーテックバーション」などの開発を担当してきたカスタマイズ開発実験部の髙澤仁氏、1997年にオーテックに入社してS14型シルビアをベースとした「オーテックバージョン K's MF-T」の実験担当を行ない、2002年からはNISMOに移籍してGT500マシンに搭載されたVQエンジン開発に携わり、近年では「NISMOロードカー」シリーズの開発全般の取りまとめなどを担当しているカスタマイズプロジェクト統括部の成富健一郎氏の2人がステージに上がった。
まずはNMC内にあるオーテックとNISMOの違いについて、髙澤氏がオーテック車の開発、成富氏がNISMO車の開発を担当していることからそれぞれに質問され、走りの質について髙澤氏は「オーテックでとくに一番大事にしているのは、高速走行中にどっしりと直進していくビシッとした安定性と、ステアリングを切ったときにリニアに応答するような部分。これが長距離ドライブのときにストレスなく快適に走れることにつながるので、そこを目標として造っています」と紹介。同じ質問について成富氏は「一方でNISMOですが、オーテックと比較して異なるのはコーナーリングになるかなと思います。グイグイと曲がって、旋回していて超気持ちいい!という部分を狙っています」と説明した。
具体例として髙澤氏は会場で展示しているニューモデルのセレナ AUTCH SPORTS SPECを挙げ、オーテックが目指す目標を達成するためにパフォーマンスダンパーを追加して、17インチの専用タイヤを装着した上で、細部に至るまで細かくチューニングを施していると解説。また、成富氏はクルマをスポーティにカスタマイズしていくという方向性は同じだが、NISMOでは目指していく目標がブレないよう「より速く、気持ちよく、安心して走れるクルマ」という標語を掲げて開発に取り組んでいると述べた。
カスタマイズカー造りの具体的な手法について、髙澤氏は「まずはベースとなるクルマの性能を確認して、そこから『どの性能をどれだけ変えるか』という目標を決めて部品単位で落とし込んでいきます。一番最初はだいたいタイヤで、目標性能にふさわしいのはどのタイヤなのか選んでいき、バネ&ショック、車体と進めて、最後はパワーステアリングの設定で味付けをしていく感じで、細かく話せば長くなってしまいますが、本当に細かい部分まで手を付けています」と解説。
はじめの一歩となるタイヤ選択については成富氏から語られ、「路面と接するタイヤはとても大事で、ここからすべてが始まります。レースマシンでもタイヤ選択でミスをするとレース結果は出せません。ただ、タイヤでハイパフォーマンスと聞くと『グリップがよければいいのでは?』と考えると思いますが、グリップ力だけでは決まりません」
「現代で使われるタイヤはラジアルタイヤなので、内部に構造体が入っていて、ベルトがあってそこにゴムが貼られているのですが、縦の剛性をどうするかで、タイヤの縦剛性をサスペンションのスプリングと一緒に動くようにしてあげるとタイヤが路面から離れないようになっていく。さらにトレッド面の剛性で面の硬さによっても、クルマの乗り味やザラつくような質感に影響します。ステアリングの応答性の部分でも、ステアリングを切ってすぐ反応するようレスポンスを高めてしまうと、今度は落ち着きのないクルマになってしまい、遅れてくると気持ちわるい。タイヤひとつとっても評価項目は多岐に渡ります」。
「この評価項目をすべて図面やデータとして出せればよいのですが、これが図面だけでは決めることができないので、ここにいる(髙澤氏の)ような経験を持った評価ドライバーの出番になって、タイヤによるちょっとした違いを見つけてくれるんです」とした。
さらに成富氏は、タイヤとセットになるホイールについて、NISMOロードカーではホイールのリム幅にこだわっており、ベース車から0.5インチ(12mm)アップさせているが、このわずか0.5インチが「めちゃめちゃ効く」と説明。これによって応答性を大きく高めることができる半面、単純にサイズアップすれば重くなってしまうので、デザイナーと協力して軽くかっこいいホイールデザインを追求していく作業が始まると開発の苦労を述べた。
足まわりのセッティングについては、バランスを調整する200近い数多くのパラメーターの組み合わせからシミュレーションを活用して仕様を10種類程度まで絞り込んでいき、最終的に評価ドライバーが運転して選んで選び出していくと髙澤氏は語り、セッティング変更の具体的な内容として成富氏は、バネレートを硬くしていくと旋回中の車体がロールしにくくなってイン側のタイヤもしっかりと接地して旋回性能を向上させることができるが、この変更によって車体前後の傾き方に影響してステア特性が変わり、スピンしやすくなってしまったり、アウト側にふくらみやすくなるなどバランスが崩れる結果にもつながっていくことを紹介した。
ハード部分で残るシャシーでは、ボディ剛性を高める策として接着剤に対するこだわりについて成富氏は解説。近年の新しいプラットフォームを採用する日産車はベース車両でもボディ剛性が引き締められているが、さらにもう一歩のボディ強化に向けてスカイライン NISMOでは前後のガラスウィンドウを車体に固定する接着剤の硬さを純正品から変更。接着剤の硬さを高めることによってボディのねじれ量を低減させることができるという。ただ、やみくもに硬くしてしまうと走行中の負荷によってガラスが割れてしまうため、ガラスが耐えられる限界を見極めてバランスのよい接着剤を選ぶことが求められ、このあたりはメーカー直系のNMCならではのノウハウになるだろうと明かした。