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スバル、JC08モード20.0km/Lを実現した4WDハイブリッド「XV ハイブリッド 技術発表会」

EyeSight(アイサイト)協調制御で、実用域の燃費をさらに10%アップ

スバル XV ハイブリッドと富士重工業 代表取締役社長 吉永泰之氏
2013年4月18日開催

 スバル(富士重工業)は4月18日、同社初のハイブリッド車「XV ハイブリッド」を発表。初夏に発売する同社オリジナルのハイブリッドシステムを搭載したXV ハイブリッドに関する技術説明会を開催した。

 今回展示されたXV ハイブリッドは、日本仕様のプロトタイプ車。XV ハイブリッドのJC08モード燃費は20.0km/Lと公表され、ガソリンエンジンのみを搭載したXVの15.8km/Lよりも、約30%の効率改善を行ったと言う。なお、このXV ハイブリッドは、先進安全技術EyeSight(アイサイト)との協調制御機構を持ち、アイサイト搭載車では実用域でさらに10%程度燃費が改善すると言う。今回展示されたプロトタイプは、アイサイト非搭載車だった。

展示されたスバル XV ハイブリッド 日本仕様プロトタイプ。アイサイト非搭載車のみが展示されていた

スバルらしい、ファントゥドライブが実感できるハイブリッドシステム

富士重工業 代表取締役社長 吉永泰之氏

 富士重工業 代表取締役社長 吉永泰之氏は、XV ハイブリッドを「2011年7月の中期経営計画で2013年に市場投入すると説明したモデル」「これを皮切りに元気なスバルを発信していく」と紹介。このXV ハイブリッドに搭載されたハイブリッドシステムは同社が独自に開発したものであり、「自動車メーカーの責務として地球環境の改善に取り組んでいる」「1つの解としてハイブリッドシステムを作った」ものであり、「電動化時代の第1歩としてのスバルハイブリッドシステム」だと言う。

 ハイブリッド車は日本の登録車市場で3割を占め、年間89万9000台が販売されている。すでにハイブリッド車は特別なものではなく、当たり前のものになったと言う。

日本登録車市場におけるハイブリッド車比率

 ハイブリッド車の開発にあたっては「スバルらしさは必須で社内でさまざまな議論をしてきた」語り、その結果たどりついた答えが「ファントゥドライブが実感できるハイブリッドシステム」だと言う。その特徴は「モーターのパワーアシストによって加速度を増す」ハイブリッド車であること。一般的にハイブリッド車の制御では、低速域でモーターアシストを行うことによって、ガソリンエンジンの負荷を減らして燃費改善を行っている。しかし、スバルのハイブリッドシステムでは、低速域から積極的にモーターのトルクをエンジンのトルクに加えることで、ガソリン車より優れた加速性能を持つとする。

 また、同社は「シンメトリカルAWD」という左右バランスに優れた4WDシステムを持つが、このXV ハイブリッドも水平対抗エンジン+シンメトリカルAWDという構成になっている。これらによりスバルが掲げるブランドステートメント“Confidence in Motion”のコンセプトである「安心と愉しさ」を届けられるものであるとした。

今までのハイブリッド車にもの足りなさを感じているお客さまが満足できるハイブリッド車

スバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 竹内明英氏

 開発背景については、新型インプレッサシリーズ全体の開発責任者でもあるスバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 竹内明英氏が解説。日本におけるハイブリッド車の車種が2011年には32車種であったのに対し、2012年は43車種に増えていることを示した上で、「ハイブリッド車の購入を見送っていたお客さまの分析をした」と言う。その結果、ハイブリッド車を購入しない主な理由として荷室容量などの実用性に満足できない部分があると語る。

 XV ハイブリッドでは、その点を改善。走りの愉しさ・安全を実現した上で、実用性を確保したとする。このXV ハイブリッドは、新型インプレッサシリーズのトップグレードに位置づけられ、XVのファンな部分とアーバンアドベンチャー的要素を持ちながら、都会的で洗練感のある製品として「Fun and Urbanity」を開発コンセプトとしている。

日本におけるハイブリッド市場の動向
ハイブリッドを購入しなかった理由
日本におけるスバル購入者の重視点
XV ハイブリッドの開発コンセプト

 そのために、トルク感のあるモーターアシストで軽快感を、低重心に徹底的にこだわってモーターやバッテリーを搭載することで安定性を実現している。そのほか、ハイブリッド車ならではの静粛性を実現するため、制振材、吸音材、防音材などを追加。ボディーカラーには専用色のプラズマグリーンパールを使い、ヘッドライトやテールランプはクリア素材を多用してクールさを演出している。

トルク感のあるモーターアシストを実現
低重心設計にして安定性を確保
重心は従来のガソリン車同等
ハイブリッド車らしく静粛性を追求
デザイン面でもハイブリッド車を演出
リアまわり

 内装では、専用開発のブルーメーターを装備し、MFD(マルチファンクションディスプレイ)にエネルギーモニター画面を追加。シートには、シルバーのアルカンターラ素材を用いている。

内装関連の変更点
ラゲッジルームは従来車同等の容量を確保

 先進安全技術アイサイトとの協調制御は、アイサイト搭載車にはステアリングに「ECO-C」スイッチを搭載。このスイッチを押すことで、アイサイト追従クルーズコントロール時のEV制御などを変更。先行車との間隔をアイサイトが把握することで、減速時のEV移行速度が40km/hから80km/hに上昇するほか、エアコン制御、アクセル開度制御を変更し、実用域で最大約10%の燃費改善を図れるものであるとした。

JC08モード燃費20.0km/Lを達成
アイサイト搭載車では、アイサイトとハイブリッドシステムの協調制御を実現。実用域で燃費を10%程度さらに改善する
まとめ

 XVハイブリッドの主要諸元は、ボディーサイズ4450×1780×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2600mm、最小回転半径5.3mと、XVと変わりがないものの、JC08モード燃費20.0km/Lを達成したことで、重量税・取得税が免税になった。また、ハイブリッド化により燃料タンク容量が60Lから52Lに減少しているものの燃費が向上したことで「ワンタンク(満タンで)1000kmを実現した」と竹内氏は語る。

 また、重量はハイブリッドシステム搭載により120kg増えているが、「トルクに関しては軽自動車1台分増えており、2.5リッター以上のトルクがある」とし、ステアリングレシオを14:1とクイック化、エンジンマウントの強化、専用セッティングのサスペンションなどにより、「走りと燃費性能を高次元で両立したスバルらしいハイブリッド」を実現。「今までのハイブリッド車にもの足りなさを感じているお客さまでも満足できる」とのことだ。

シンメトリカルAWDとハイブリッドシステムを融合

スバル技術本部 副本部長 前田聡氏

 ハイブリッドシステムについては、スバル技術本部 副本部長 前田聡氏が解説。前田副本部長は、「1995年の『エルキャパ』に始まり、これまでさまざまなハイブリッドシステムの開発をしてきた」と、ハイブリッドコンセプトカーの歴史を紹介。「プラグインステラ」などのEV(電気自動車)も開発してきたことで、「電池モーター、回生ブレーキなどの知見を得てきた」と同社の技術の蓄積を披露した。

ハイブリッド車開発の歴史
EVの開発もXV ハイブリッドに活かされている
ファントゥドライブを実現するトルク特性

 XV ハイブリッドの燃費目標は、XVガソリン車のJC08モード燃費15.8km/Lを約30%改善する20.0km/Lで、そのためにハイブリッド専用のガソリンエンジンと、リニアトロニックCVTを開発した。

XV ハイブリッドの開発目標
ハイブリッドシステムを低重心配置
ハイブリッドシステム

 エンジンは、XVに搭載されていた水平対向4気筒 2.0リッターのFB20型ガソリンエンジンの効率化を図り、最高出力110kW(150PS)/6000rpm、最大トルク196Nm(20.0kgm)/4200rpmとパワースペックは変わらないものの、ピストンを変更することで圧縮比を10.5から10.8へと向上することで熱効率を改善。ピストンリングも低フリクションのものへと変更されている。さらに、ハイブリッドシステムに対応し吸気レイアウトを変更。EGRクーラーも、水パイプ内蔵ものから、大容量の外付け空冷式となった。これにより吸気温度をより低下させ、充填効率改善を図った。

 また、発電機は一般的なオルタネータから、スタータ機能を持つISG(インテグレーテッド・スタータ・ジェネレータ)へ変更。このISGによりEV走行からのエンジン再始動を行っている。ISGから補機ベルト経由でエンジン再始動を行う関係で、補機ベルトのトルク伝達力を6山から7山にして向上。ISG始動、スタータ始動の両方向の駆動力に対応するため、ベルトテンションを調整するDAT(デカップリング・オルタネータ・テンショナー)が増設されている。

 搭載バッテリーはパナソニック製のニッケル水素電池0,6kWhで、5.5Ahの84セルで構成。ニッケル水素電池のため1.2V×84≒100Vとなり、この100Vで出力10kW、トルク65Nmのモーターを駆動している。

XVハイブリッドのエンジンルーム
エンジンの変更点
ISGやDATの配置動作図
ISG
ISGではトルク伝達力向上のため、補機ベルトの山が6山から7山になった
DAT
左がバッテリーモジュール。右がインバーターやDC-DCコンバーターなど
ユニット下部に冷却用のエアフローを設ける
インバーターユニット
モーターのステーター
モーターのローター
ラゲッジルーム内の配置図
バッテリーユニットなどの配置図
高電圧ケーブルの配置
樹脂製のカバーで、高電圧ケーブルを保護するととともに、空気抵抗を改善

 スバルのリニアトロニックCVTは、直噴ターボエンジンと組み合わされる高容量タイプのものと、自然吸気エンジンと組み合わされる軽量コンパクトタイプのものがある。新たに開発されたハイブリッド用のリニアトロニックCVTは、軽量コンパクトタイプのものをベースにプライマリープーリー後部を10cm延長。その延長部分上部にモーターを、下部に湿式多板の出力クラッチを納めている。

 この全長延長によりハイブリッド用リニアトロニックCVTは軽量コンパクトタイプのリニアトロニックCVTに比べて大型化しているが、高容量タイプのリニアトロニックCVT以下の大きさとなっており、インプレッサのプラットフォームに搭載可能なものとなった。つまりインプレッサのプラットフォームには、高容量タイプのリニアトロニックCVTが搭載可能な空間があらかじめ用意されていたことになる。

ハイブリッド用リニアトロニックCVT透視図
CVT駆動に必要な油圧は、2系統で供給可能となった。ただし、システム始動時は油圧供給のために必ずエンジンがかかる
ハイブリッド用リニアトロニックCVT
オレンジ色の高電圧ケーブルが見える個所が約10cmの延長部。ここにモーターと湿式多板クラッチが収まる
ハイブリッド用リニアトロニックCVTを前方から

 前田本部長は、各モード時のトルクフローを掲示。エンジン走行時は従来どおりのトルク伝達を行い、エンジン→トルクコンバーター→プライマリープーリー→セカンダリープーリー→湿式多板出力クラッチ→アクティブトルクスプリットAWD用トランスファクラッチとトルクが伝わる。アクティブトルクスプリットAWD用トランスファクラッチの部分で、前60:後40を基本として、状況により可変トルク制御が行われるのは、従来のスバル車と同様だ(ただし、VDCからのハンドル角、ヨーレート、横加速度信号などの車両情報を取得する新世代のものになっていると思われる)。

【追記 2013年4月19日 13時35分】XV ハイブリッドのアクティブトルクスプリットAWDは、新世代のアクティブトルクスプリットAWDであるとの確認ができました。

 EV走行時はモーターからプライマリープーリーにトルクを伝達。モーターアシスト時には、エンジンとモーターのトルクをプライマリープーリーに伝達している。ただ、実際はエンジン走行時もモーターがトルク負荷にならないように、軽くモーターを回しているとのことだ。

エンジン走行時のトルクフロー
EV走行時のトルクフロー
モーターアシスト時のトルクフロー
減速回生状態のトルクフロー
チャージ状態のトルクフロー
ガソリンエンジン用軽量コンパクトタイプのリニアトロニックCVT。ハイブリッド用では、セカンダリープーリーとアクティブトルクスプリットAWDトランスファー間が延長されているのが分かる

 また、このハイブリッド用リニアトロニックCVTでは湿式多板の出力クラッチをセカンダリープーリー後に持つことで、車両停止時の充電を実現。電池容量が低くなった場合など、アイドリングでモーターを回し、電池の充電を行うわけだ。減速回生時は、EV走行と逆にトルクが伝わり、モーターで発電が行われる。前田本部長は、この減速回生時について、「AWDのため効率よく減速回生が行える」と語った。

ハイブリッド走行パターン図
まとめ

 これらのトルク伝達を使い分け、低速域ではEV走行、加速時はモーターアシスト、減速時はエンジンを切り離して回生などのハイブリッド走行を実施。4WDのEV走行、モーター出力のアドオン、燃費の向上を同時に実現できた。前田本部長は「すべてはスバル XV ハイブリッドから始まる。電動化時代のスバルらしいハイブリッドシステムに仕上がった」と、技術説明を締めくくった。

(編集部:谷川 潔/Photo:高橋 学)