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東京工科大学、八王子キャンパス~JR・八王子みなみ野駅間で自動運転スクールバスを実証実験
2026年3月9日 11:11
- 2026年3月7日 開催
東京工科大学は3月7日、東京都八王子市にある八王子キャンパスで3月11日まで行なう自動運転スクールバスの実証実験 出発式を開催した。
東京工科大学によるスクールバスの自動運転化は、未来モビリティ研究センターのセンター長である須田義大教授が中心になって取り組んでいるプロジェクト。2025年10月に「AI・DXに関する連携協定」を結んだ八王子市とも共同して、JR・八王子みなみ野駅と八王子キャンパス間を定期運行するスクールバスでレベル2(ドライバーが監視する特定条件下)自動運転の実証実験を行なう。
また、今後も2026年度中にJR・八王子駅と八王子キャンパスを接続するスクールバスでも同様の実証実験を予定しており、将来的にはレベル4(特定条件下でシステムがすべての運転操作を行なう)自動運転を実現。バスの運転手不足を解消し、地域交通を活性化させるプロジェクトとしている。
今回の実証実験では「車速維持・速度維持制御(最高速35km/h)」「AI活用による障害物検知」「3次元マップマッチング」「信号情報やインフラセンサとの連携」「バス停への正確な停車を制御する正着制御」などの技術検証、走行精度の検証を実施する。
自動運転スクールバスには日野自動車の小型バス「ポンチョ」をベース車両として先進モビリティが開発した車両が採用され、GPSを補足する「GNSS(衛星測位システム)」やLiDAR、慣性センサーなどを使って自車位置や周辺状況などを検知。これに3次元マップマッチングを組み合わせて車線維持制御を行ない、フロントウィンドウ内に設置した障害物カメラで撮影した映像をAI解析して障害物を検知する。
AI特化型スーパーコンピュータ「青嵐」を開発に活用
当日は実証実験の開始に先立ち、自動運転スクールバスの実証実験プロジェクトを推進している東京工科大学 未来モビリティ研究センター長 須田義大教授から概要説明が行なわれた。
須田教授は日本社会の課題解決を目標に、道路交通における安全性を向上させるためクルマの自動化技術に取り組んできたが、昨今では運転手不足や地方都市の人口減少などから地域交通網の維持が難しくなっており、この点でも自動運転の実現が期待されていると説明。
実証実験を行なうにあたり、東京工科大学ではちょっとしたバス会社並みとなる27台ものスクールバスを運用しており、このうち3台はFCV(燃料電池車)バスで先進的な技術にも積極的に取り組んでいるほか、八王子市とのAI・DXに関する連携協定を結ぶなど地域社会との連携を進め、学内に日本国内の私立大学で最大規模となるAI特化型スーパーコンピュータ「青嵐」を保有している部分などが自分たちの独自性、優位性になるとした。
また、スクールバスを自動運転化するプロジェクトを開始した理由としては、スクールバスは平日の朝夕は近隣の駅とキャンパスを往復するため高い頻度で走行しているが、日曜日や夏休み、冬休みといった長期休暇期間は運休となっており、このダウンタイムで地域交通に貢献できるのではないかと考え、将来的に自動運転スクールバスを「地域貢献型自動運転バス」として社会貢献できるのではないかと語った。
八王子キャンパスでは近隣の主要駅としてJR・八王子駅とJR・八王子みなみ野駅の2か所とキャンパスを往復するスクールバスを運行させており、今回の実証実験ではキャンパスから通常のスクールバスで約5分と近く、経路としてもキャンパスの敷地から隣接する国道16号に右折で出たあとは左折だけで周回できることから八王子みなみ野ルートを使って行なわれることになった。
今回の実証実験で得られたデータなどを活用して自動運転の精度などを高め、2026年度中に八王子みなみ野ルートよりも遠距離を走り、交通状況も複雑化する八王子駅南口ルートで2度目の実証実験を行なう計画となっている。なお、プロジェクトに共同で取り組む八王子市としては、JR・八王子駅の南側に八王子市の新たなシンボルとして公園、ライブラリー、交流スペース、ミュージアムなどが一体になった大型複合施設「桑都の杜」が2026年10月にオープンする予定となっていることから、この桑都の杜を自動運転のルートに組み込んで10月に実証実験を行なってほしいと要望しているという。
レベル2の部分自動運転で八王子キャンパスとJR・八王子みなみ野駅を往復するでは、日野・ポンチョのボディにカメラ10台、LiDAR8台を設置して外界認識を実施。事前の想定では安定した自動運転を行なうため、道路の路面に磁気マーカーやLiDAR反射塗料などを設置したり、信号情報を活用するといったインフラ側との連携も計画しており、実際にキャンパスの敷地内でLiDAR反射塗料を使用する検討も進めていたが、今回の八王子みなみ野ルートはそれほど難しい道路環境ではないこともあって搭載しているカメラやLiDARといったハードだけで自動運転が可能だと判断され、インフラ連携は実施されていないという。
大学の社会貢献活動として自動運転スクールバス開発に取り組む
東京工科大学を運営する片柳学園で理事長を務める千葉茂氏は、東京工科大学と八王子市が協力して自動運転スクールバスの開発に取り組むことになったきっかけとして、大学は多額の助成金を受け取って運営されていることから社会に役立つ研究や活動を行なっていくことが重要だとの基本理念を説明。
また、自動運転については、東京工科大学でスーパーコンピュータを導入するにあたって渡米した際、サンフランシスコの市街地でたくさんの自動運転タクシーが走っていることを目にしてこの部分で日本は遅れていると実感。10年ほど前に須田教授と会話したときに自動運転トラックの運用でどのようなことが必要になるか説明された記憶が蘇ってきたという。
これと合わせて八王子市では公共交通におけるバスの重要度が高く、将来的に運転手不足などが地域課題になっていくだろうとも考え、地域社会に対する貢献として自動運転の分野における第一人者である須田教授に東京工科大学でスーパーコンピュータを活用してもらい、自動運転の研究を進めてもらおうと2025年4月から未来モビリティ研究センターのセンター長に就任してもらったと述べた。
東京工科大学の学長である香川豊氏は、東京工科大学ではAIが社会を変えていくとの考えから「AI大学構想」を掲げ、2025年10月に日本国内の私立大学で最大規模となるAI特化型スーパーコンピュータを導入。このスーパーコンピュータを活用して学生たちにAIの基礎から社会実装まで大学生活内で一貫して完結できるカリキュラムを提供し、AIについて研究するだけでなく、AIが社会でどのように使われるのか体験してもらうことで、実社会でAIを活用できる人材を輩出していく取り組みを進めていると紹介。
今回の実証実験もその一環となっており、自動運転スクールバスの開発でもAIが重要な要素となることから、プロジェクトの活動をつうじてAIの社会実装に触れてもらい、八王子市の役に立つことが学生たちにとって有益な課題になると説明。自動運転スクールバス以外にもAI大学構想からさまざまな社会実装を進めていきたいと意気込みを語った。
実証実験に共同で取り組む八王子市の初宿和夫市長は、2025年10月に結んだAI・DXに関する連携協定のいち早い成果として自動運転スクールバスの出発式を迎えることができたことに感謝の言葉を述べたあと、八王子市には25の大学などがあり、10万人の学生が学んでいることを紹介。
八王子市でも運転手不足によって路線バスの減便などが発生して、市民が生活で不便さを感じる実状となっており、すでに2025年にバスの運行事業者と共同で自動運転バスの実証実験を高尾地区で実施。取り組みの第2弾となる自動運転スクールバスは学園都市である八王子市らしいプロジェクトであり、教育機関での研究成果が八王子市民に還元されていくことに期待を示した。
沿道の皆さんが自動運転スクールバスを注目してくれてとてもうれしかったと初宿市長
出発式でテープカットが行なわれたあとには自動運転スクールバスの試乗会も実施。最高速が35km/hに設定されていることもあって通常運行時よりも少し時間がかかり、往復で20分ほどの走行となったが、歩行者が多い駅前の左折シーンで安全性を重視してブレーキが鋭くガツンと作動する点以外はとくに気になる部分もなく、同乗した須田教授による解説を聞きながら粛々と試乗は終了した。
初宿市長は自動運転スクールバスの試乗後、「沿道の皆さんがこのバスに注目してくれていたことがとてもうれしかったです。また、大学という研究教育機関でこのような取り組みができる、しかもスクールバスを活用した実証実験を行なうということで、八王子にある大学で学ぶ学生たちにとって新しい付加価値になるというか、自分たちが学ぶ大学が地域に貢献していることが具体的に見える、体験できるという新しい形になると思います」。
「これまでも学生たちが個々で地域のボランティアなどに参加するような活動はありましたが、今回はスクールバスというこれまでとは規模が違う大きな取り組みになり、将来的に社会実装されて、地域交通で起きている運転手不足によるバスの減便といった社会課題に、自分たちも利用しているスクールバスが貢献できるかもしれないという体験は、八王子で学ぶ学生たちにとって大きなメリットがあると思います。学びによって社会課題を解決し、ボランティアではなく大学という組織としての取り組みが具体的に見えて、これは大学としてもメリットになり、八王子市としても、住民としてもメリットです。八王子市にある研究教育機関が市民に対してこれだけ具体的に貢献してくれるという大きな気付きになるのではないかと考えています。実際の試乗中にバスが注目されていることを見て、そのように強く感じました」とコメント。
また、2025年に実施された実証実験と比較して「乗り心地はまだ開発途上でまだ完成形ではないなと感じましたが、だからこそ伸びしろがあると思っています。高尾地区の実証実験で乗ったときと比較するとブレーキなどの具合はかなりよくなっていると思います。前回は半年前なので、この期間で自動運転によるブレーキやアクセルの扱い方がずいぶん改善されていると感じました」と感想を述べている。






































