アフターセールスの静かで熱い戦い
アウディ ジャパン、サービス競技会「ツインカップ」を開催

富士スピードウェイに集合した出場選手

2011年10月17日開催
富士スピードウェイ



 アウディ ジャパンはアフターサービスの競技会「アウディ ツインカップ」を静岡県の富士スピードウェイで開催した。

顧客満足度を超えて
 ツインカップはアフターセールス技能の向上を目指した競技会で、世界規模で開催されている。メカニックの技能を競う「テクノロジー競技」と、アドバイザーの技能を競う「サービス競技」の2部門があり、ツインカップの名称もここから来ている。

 「オーナーシップエクスペリエンスと顧客満足度の向上」は、アウディ ジャパンの戦略の柱。そのためにアフターセールスに「アウディ トップサービス」というコンセプトを掲げ、アウディオーナーならではのアフターセールス体験を創り上げることに余念がない。その成果は、同社の調査による顧客満足度が右肩上がりであること、またJ.D.パワーが10月6日に発表した「日本自動車サービス満足度調査」では、レクサスに次ぐ2位で、メルセデス・ベンツとBMWを抜いて輸入車ブランドでの1位を獲得したことに現れている。

アウディによる顧客満足度調査は右肩上がり(左)で、J.D.パワーの調査でも輸入車では1位(右)

 今年、アウディ ジャパンはこの戦略に若干の変更を加えた。これまでの「顧客満足度」を超える、つまり顧客の期待以上、予想以上の体験を提供しようというのだ。

 これまでツインカップの日本大会は愛知県豊橋市のトレーニングセンターで開催されてきたが、今年は会場を富士スピードウェイに移した。競技に必要な機材を運ぶ手間をかけてまでも、より華やかな会場で開催することで、ツインカップのステータスを上げようというアウディ ジャパンの意気込みが感じられる。

2011年のツインカップの出場チームテクノロジー部門の評価ポイントサービス部門の評価ポイント

 

アウディ高松チーム。左から小野、川東、川田の各選手

世界チャンピオンも参戦
 ツインカップの出場はディーラー単位。全国104の店舗のうち、平均以上の顧客満足度を獲得している約50店舗のみが参加資格を持つ。6月から学科試験で選考が行われ、テクノロジー部門は12チーム34名、サービス部門は12チーム12名が、この富士スピードウェイで行われる最終戦に勝ち進んだ。

 今年の出場チームでとくに注目を集めたのが、テクノロジー部門で出場したアウディ高松チームだ。

 前述のとおりツインカップは全世界で行われており、日本のツインカップの優勝者は世界大会に出場できる。アウディ高松は2010年の日本のツインカップで優勝し、10月初旬にスペインで開催された世界大会に出場、見事、優勝を遂げた。つまり、ワールド・チャンピオンなのだ。

 アウディ高松チームの小野選手は世界大会について「日本の決勝戦のほうがよっぽど難しいと感じた。学科、故障診断、実技も日本のほうがレベルが高い問題が出ていた」と言う。チームのキャプテンである川東選手は「(出題が)普段やっている作業の延長線だったことが、日本チームに有利だった。Sトロニック(デュアルクラッチAT)の交換作業という問題が出たが、ヨーロッパはいまだにMTが多く、Sトロニックの作業経験数は僕らのほうが上だった」と語った。

 また世界大会で優勝したことで「お客様の目が変わった。より一層クオリティを上げた整備をしないと満足していただけなくなった」と言う。

テクノロジー部門の競技会場。6チームが同時に競技する

プロセスを評価
 テクノロジー部門の競技会場となったピットには、1チームに1台ずつ、エンジン始動不能のA4 アバントが用意されていた。その故障個所を探り、修理してエンジンを始動するのが目的だ。制限時間は45分。

 ただし、時間以内にエンジンを始動できなければ失格というわけではない。出題は2つの故障が複合した、非常に難しいもので、エンジン始動に成功したチームはなかった。

 しかし、評価されるのは、作業のプロセスと、立ち振る舞いだ。たとえば診断にとりかかる前に、A4アバントのハンドルやイスにカバーをかけて汚れを防止し、ボディーには保護シートをかけてキズがつかないようにする。こうした手順をきっちりこなしているかどうかが大切なのだ。身だしなみもチェックポイントになる。

 テクノロジー部門の1位は被災地から参加したアウディ宮城野が輝いた。2位にアウディ芝浦、世界チャンピオンのアウディ高松は3位となった。

各ピットには診断機とオンラインマニュアルの端末、工具などが置かれ、整備工場の環境が再現されている制限時間は45分各チームの応援団も来場した
競技開始。まずはシートやボディーに汚れとキズ防止のカバーをかける
3人で手分けして、基本的なチェックと故障診断を進める。中にはアウディ ベイ横浜のように1人で参加しているチームも(右)
終了10分前、多くのチームがエンジンルームのヒューズボックスをチェックしはじめたが、解決に至るチームはなかった

アウディならではのダイレクトレセプション
 サービス部門は2つの種目がある。1つは「ダイレクトレセプション」でのロールプレイング。

 ダイレクトレセプションとは、定期点検や修理などで入庫する車両を受け入れる専用の部屋だ。車両の基本的なチェックをしながらオーナーとコミュニケーションを図り、車両の状態をより深く知ったり、オーナーがまだ知らないアウディのサービスや製品を紹介したりすることで、顧客のアウディオーナーとしての経験をよりよいものとする。90%のディーラーがダイレクトレセプションを備えており、アウディ ジャパンは「アウディのディーラーならでは」と誇るシステムだ。

 競技では、富士スピードウェイのピットをダイレクトレセプションに模し、顧客が持ち込んだ想定のA4アバントを置き、審査員の1人が定期点検で車両を持ち込んだ顧客に扮し、20分の制限時間で選手がどのように対応するのかを見る。

サービス部門の会場に再現されたダイレクトレセプション。顧客と座って対話できるカウンターと、アクセサリー類を展示した棚が置かれる。競技時間は20分
カウンターに座っているのが、“定期点検でクルマを持ち込んだ顧客”に扮する審査員サービスでもまずシートを養生
クルマのチェックしながら顧客と対話し、必要ならばその顧客に有効なアクセサリなどを紹介する

 ここでも大切なのはプロセスで、顧客に椅子や飲み物を勧める、クルマを見ながらどのように使っているかを聞き出す、といったプロセスをきちんと踏んでいるかどうかが評価される。また、例えば顧客がゴルフを趣味とするなら、高速走行が多く、虫がフロントに付着することも多いと考え、純正のインセクトリムーバーを紹介する、といったことも評価される。

 もう1つは「カーチェック」。やはりピットに1台のA4アバントが置かれているのだが、こちらには5個所の不具合がある。検査装置やリフトなどを使わず、20分以内にその5個所を見つけ出すという競技だ。用意された不具合は「リアワイパーのラバー切れ」「右リアパワーウインドウ右リアスイッチで動作しない」など、一見基本的だが見逃しがちなもの。

 さらに「ジョーカー問題」も用意されている。これはMMIの設定の仕方を問われる比較的簡単なもので、残り5分になると、10題用意されたジョーカー問題への挑戦権が得られる(挑戦しなくてもいい)。5個所の修理問題は1つ見つけると10点、ジョーカー問題は1つ1点。時間以内に5個所見つけられなくても、残りの5分でジョーカー問題に挑戦すれば、10点を稼ぐこともできるわけだ。

 サービス部門の1位はアウディ月寒の水沼竜也選手。水沼選手は2年連続の優勝である。2位はアウディ芝浦の前田晃選手、3位はアウディ所沢の本田雄一選手となった。

カーチェック。まずはリモコンキーの動作からチェックし、灯火類、室内のスイッチ類、オイルや冷却水などをチェックしていく
ジョーカー問題のカード(左)。MMIの操作方法を問われるため、審査員とクルマに乗り込んで解く(右)
競技終了後、都内で表彰式が開催されたテクノロジー部門はアウディ宮城野が優勝サービス部門はアウディ月寒の水沼選手が2連覇

(編集部:田中真一郎)
2011年 10月 19日