日産、航続距離を1割以上向上させた新型「リーフ」発表会 補助金利用で約257万円のエントリーグレードも追加 |
日産自動車は、11月20日に電気自動車(EV)「リーフ」をマイナーチェンジして発売し、同日に変更内容の解説や、発売2年目にして早くもマイナーチェンジが行われることになった経緯などを紹介する記者発表会を実施した。
なお、マイナーチェンジした新型リーフの詳しいスペックや車両価格などは関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121120_574041.html)でご確認いただきたい。
リーフG | リーフX |
日産自動車 西沢常務執行役員 |
発表会の冒頭、日産自動車の西沢正昭常務執行役員は、リーフが2010年12月の発売以来、これまでに累計で4万3000台以上を販売し、このうち半数近くの1万9000台を日本市場で販売。世界市場、国内市場ともにもっとも売れているEVになっていると紹介。
ユーザーからは「持続可能なモビリティ社会実現に向けた取り組みとして、排気ガスを出さないゼロエミッションカーに乗る社会貢献価値がある」「自宅で充電できて、ガソリンスタンドまで行かずに済むことが便利」「発進から高速巡航まで圧倒的に静かで運転中に快適」「ガソリン車と比較して燃料費やメンテナンスコストで大幅に経済的」「胸のすくような加速感、軽快なハンドリングなどでわくわくするような運転が楽しめる」など、大きく5点について評価されていると語った。
また、EV普及に向けた充電インフラの整備では、日産ディーラーの全店舗に普通充電器を整備していることに加え、2010年の発売時点で急速充電器を200店舗の日産ディーラーに配備。これによって半径40kmごとに急速充電器が利用できる状態となっていたが、2011年度には400店舗、2012年度には700店舗まで拡大する予定となっている。さらに自社開発の急速充電器を自治体や各種事業主に販売することで、2012年11月の時点で全国に1200カ所以上の急速充電スポットが誕生。各急速充電スポットがカバーするエリアは半径40kmから半径10km以内まで狭まったことで、EVを使った長距離移動の環境整備が進んでいると解説した。
最後に、EVによる持続可能なモビリティ社会の実現に向けた地球環境への貢献に加え、2011年の東日本大震災以降に注目されるようになった電力マネージメント、節電マネージメントでも社会貢献し、「新たなモビリティ社会実現に向けて、日産自動車は”ゼロエミッションリーダー”として大義を持ってチャレンジを続けていきたい」と意気込みを語った。
購入者は5つの面でリーフにメリットがあると評価 | これまでに急速充電スポットは全国で1200カ所にまで増え、半径10kmごとに充電できる状況となっている |
阿部徹チーフ・プロダクト・スペシャリスト |
続いて車両概要の解説を行ったのは、ゼロエミッション事業部の阿部徹チーフ・プロダクト・スペシャリスト。今回のマイナーチェンジにあたり、ユーザーからは西沢常務執行役員が紹介した評価がある半面、主に航続距離、充電環境、車両価格などの面で改善して欲しいという要望が出ていたと明かし、これに基づいて仕様変更を進めていったと説明。
技術面で大きな変更となる新型モーター「EM57」は、軽量化による航続距離の向上に加え、レアアースの1つであるジスプロシウム(Dy)の使用量を従来から40%削減したことでも注目される。また、パワートレーンも車両後方に分離されていた走行用バッテリーの充電器を移動して一体化した「e-パワートレーン」に進化して30kgの軽量化、バッテリーでもモジュールとケース構造の見直しで20kg軽量化。車両全体でも細かく軽量化を推し進め、同じXグレードでは初期型モデルから合計で80kgの軽量化を達成した。これに回生発電の作動領域の拡大などとの合わせ技で、航続距離はJC08モード走行で初期型の200kmから228kmまで向上している。
充電環境も西沢常務執行役員による説明通り、日々急速充電が利用できるスポットが増えているが、今回のマイナーチェンジではバッテリーに優しい80%までの充電モード「ロングライフモード」が、初期型モデルではタイマー充電だけで利用できたところを、通常の普通充電やパソコン・スマートフォンによるリモート充電、さらに急速充電でも選択できるようになった。
また、付属する普通充電用の充電ケーブルはコネクター、コントロールボックスともにコンパクト化して扱いやすくなったほか、いたずら防止用に車両とロックできるよう変更された。さらに車両側のポート部にも、初期モデルではオプション設定だったLEDライトを全車標準装備に変更。車両前方の充電ポートリッドは電磁式に変更され、インパネやインテリジェントキーのボタンで開けられるようになった。
インテリジェントキーのボタンでオープンするよう変更された充電ポートリッド | 1つのLEDライトで急速、普通充電の両方の充電ポートをカバーする |
車両価格では、新たに17インチアルミホイールやLEDヘッドライトを標準装備したGグレードでは価格が上がったものの、Xグレードは装備を向上させつつ6300円安くなった。
また、新たに登場したSグレードは、カーウイングス対応ナビ、エアコンのヒートポンプシステムなどを省略することで334万9500円という価格を実現。最大78万円という補助金を利用すると、車両価格は256万9500円まで引き下げられる設定だ。
新たにLEDヘッドライトを標準装備したGグレード | Gグレードに装着される17インチアルミホイールは、軽量化と空気抵抗の低減を両立させたEV専用ホイール |
■ユーザーの率直な要望を開発課題に反映
発表会ではリーフの開発責任者を務めた門田英稔チーフビークルエンジニア(CVE)も登場。リーフは発売してからの2年間に数多くのオーナーを生み出しているが、開発陣はリリース後も積極的にオーナーズミーティングや各種試乗会に足を運び、ユーザーの率直な意見や要望を直接聞いて今回のマイナーチェンジに生かしているとコメント。
中でも象徴的な変更は、リチウムイオンバッテリーの残量を1%刻みでメーターパネル内に表示するようにした点。これはアメリカのリーフオーナーらが毎月開催しているオーナーズミーティングに参加した際、「現在の表示は道路のアップダウンで大きく変化してしまう。真実のバッテリー残量を表示するように変えてほしい」と要望され、技術的には非常に難しい課題ながら実現にこぎ着けたとのエピソードが語られた。
マイナーチェンジでの細かな技術的ハイライトについて解説する門田CVE | アメリカでは熱心なリーフオーナーが毎月ミーティングを開催しており、この参加者からの強い要望を受けてバッテリー残量の%表示が実現したと言う |
このほか、今回のマイナーチェンジで大きく変更されたのは、「EV-IT」と表現される純正ナビを利用したドライビングサポート機能。リーフのオーナーにはロングドライブを好む人も多く、急速充電スポットでのバッテリーチャージが欠かせない恒例行事。マイナーチェンジ後のリーフでは、目的地までのルート設定の段階で現在のバッテリー残量では到達が難しいとカーナビが判断した場合、充電スポットを経由地に追加するよう表示してアドバイスすると言う。
さらに検索で表示される充電スポットの情報に、定休日や営業時間などのデータが反映されてアイコン表示するようになったほか、東名高速道路周辺や大阪近郊など100カ所の充電スポットではリアルタイムの利用状況を情報配信する試みが行われており、将来的な拡大も計画しているとのこと。
また、ルート検索には「省エネ」という項目を新設。このルート検索ではアップダウンの多い峠道やアベレージスピードが高い高速道路などを回避し、渋滞していない一般道にコース設定して少ない電力で目的地まで走れるようアシストする。
走行関連の変更点では、ガソリン車のLレンジのように強く減速したり、遠くに見える赤信号で止まるまでに積極的に回生ブレーキを利用したいという要望から、G&XグレードにこれまでのDレンジに加えてBレンジを追加。
これに伴い、ユーザーの利用実態でほぼエコモードを選択して運転しているという人が多いことを受け、シフトレバーのエコモード位置をBレンジに変更し、エコモードはステアリングのスイッチでON/OFFを切り替えるスタイルに変更。これにより、4種類の走行モードで加速力、回生発電、空調設定が切り替わるようになった。
下り坂での車速管理、使ったエネルギーの積極的な回収に利用できるBレンジ | 4種類の走行モードをを使い分けて、ユーザーの細かなニーズに対応できるようになった |
これまでエコモードの切り替えに利用されていた位置にBレンジを新設。エコモードの切り替えはステアリングのスイッチで操作するようになり、クルマを止めても解除操作をしなければエコモードが保持される設定に変更された |
内装色は従来からあるエアリーグレーに加えてブラックを新設定。本革シートはG&Xグレードにオプション。本革シートはブルーのステッチが使われている |
運転席のラチェット式シートリフター、後席中央のヘッドレストは全車に標準装備 | エアコンで冷暖房したエネルギーも無駄にしないよう、ルーフの外板とトリムの間にアルミフィルムを追加 |
初期型モデルでは後席シートバックの後ろ側に配置していた充電器をフロントに移動させたことで、ラゲッジ容量は330Lから370Lに拡大 |
(佐久間 秀)
2012年 11月 21日