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ホンダ、「スポーツ ハイブリッド SH-AWD」で感動の走りを提供する新型「レジェンド」

当初予定の発売時期をずらして内容の精査と検証を実施

新型レジェンドの発表会でフォトセッションに臨む本田技研工業 代表取締役社長執行役員 伊東孝紳氏
2014年11月10日発表

680万円

 本田技研工業は、5代目となる同社のフラグシップセダンの新型「レジェンド」を2015年1月22日に発売する。価格は680万円。ボディーサイズなどの詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141110_675172.html)を参照されたい。

※当初発表から発売日が2015年2月20日に変更されました。

全車ハイブリッド4WDとなった新型レジェンド
本田技研工業 代表取締役社長執行役員 伊東孝紳氏

 11月10日に都内で開催された新型レジェンドの発表会では、まず本田技研工業 代表取締役社長執行役員の伊東孝紳氏が挨拶。冒頭で伊東氏は、先週末に自動車評論家の徳大寺有恒氏が他界したことに触れ、長年に渡り自動車業界の発展に尽力してきた同氏に対して感謝の言葉を贈り、冥福を祈った。

 レジェンドについては、このクルマが創業当初から世界を見据え、世界に先がける技術の開発にチャレンジしてきたホンダという会社の象徴であり、企業の人格そのものであると語り、「レジェンドは常にホンダらしさを発揮したアイディアと、時代に先がけた先進性、最高の技術を惜しみなく投入してきた」と紹介している。

 5代目となる新型レジェンドは、ドライバーが目指す走りのイメージを読み取り、それを新開発した「スポーツ ハイブリッド SH-AWD」によって、まるで自分の手足のように意のままに操れるクルマになっているとして、「それが走りを単なる楽しさから、感動の次元にまで昇華させる。これがホンダらしい選択だと考えました」と解説。「ホンダはこれからも積極的に先駆けとなる提案を行い、新しい時代を切り開いていきたい。そしてよりホンダらしさを発揮して、わくわくさせるような商品でお客さまの期待に応えたいと思っています」と挨拶を結んだ。

新型レジェンドのLPLを務めた本田技術研究所 主任研究員 青木仁氏

 具体的な商品概要は、新型レジェンドのLPLを務めた本田技術研究所 主任研究員の青木仁氏から行われた。青木氏は新型レジェンドを、ホンダのフラグシップセダンとしてふさわしい、胸を高鳴らせる新たな経験と時間を提供することを目指して開発したと紹介。デザインから走り、環境性能に至るまで、すべてに最高を求めたと語り、購入したユーザーが胸を張って自慢できるような存在感と居住性、高い環境性能を持つことによる「誇り」、まったく新しい見え方のヘッドライトや高度な運転支援技術、使いやすいインターフェイスなどによる「先進」、意のままにクルマを操る楽しさとパワフルな走り、人々が振り返るような魅力的なデザインによる「昂ぶり」という3つの要素を、スマートに、ラグジュアリーに実現したと解説している。

 また、外観デザインでは風格と気品を兼ね備えさせることで“凜とした美しさ”を表現。ボディーの面構成で堂々とした風格と流れるような躍動感を両立。「安定感のある力強い下半身とボディーラインの特徴的なキャラクターラインにより、風格と躍動感を巧みに融合させている」と解説した。さらに宝石のような輝きを表現した先進的ヘッドライトの「ジュエルアイLEDヘッドライト」も外観の大きな特徴であるとし、レンズ内で光を2回反射させる独自の構造によってランプユニットの奥行きの短さと魅力的なデザインを両立させていることをアピールした。

“凜とした美しさ”を表現したという5代目レジェンド
宝石をイメージさせる「ジュエルアイLEDヘッドライト」も外観の大きな特徴。昼間の走行時にも存在感をアピールできるよう、アクセサリーランプとしてブルーに発光。アルミ蒸着リフレクターとレンズのカットによって配光性能を高めており、ロービーム点灯時は車両内側に配置されたLEDが直進方向を照射し、そこから車両外側のランプにいくに従い、周辺を広く照らす設定となっている
展示車には245/40 R19 94Yサイズのミシュラン パイロット スポーツ 3が装着されていた
給油口には国内販売のホンダ車として初めて「キャップレス式」を採用。給油ノズルを差し込むと内側のふたが内部に倒れ、ノズルを抜くと自動的に密閉される仕組み。構造的にキャップの閉め忘れや紛失などのトラブルと無縁で、リッドを開けるとすぐに給油できる
給油口の上側にキャップレスであることを示すシールが貼られていた

 インテリアでは革の柔らかな風合いによる上質感を重視。インパネやドアトリムなどにも革を使い、縫製にもこだわって仕上げているという。リアシートのレッグルームも競合他車を圧倒するスペースを確保して、感性に響く、豊かで心地よい上質空間を実現している。

新型レジェンドは全車本革シートを標準装備。写真の内装色は「シーコースト・アイボリー」
こちらの内装色はイタリア語で茶色の意味を持つ「ブルーノ(bruno)」。ほかに「プレミアムブラック」も用意され、3色展開となる
伸びやかに弧を描くようなラウンド形状でインパネからドアトリムまでを連続させ、乗員を包み込むようなイメージを演出しつつ、インパネ上部ではシンプルな面構成によって開放感を表現している
ステアリングも本革巻き。アクセルペダルはオルガン式となっている
自発光式のメーターパネル。2眼式メーターの間には4.3インチTFTカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイを配置
フロントウインドーに結像用の特殊な中間膜を使った「フロントウインドウ投影型ヘッドアップディスプレイ」を設置。トルクベクタリングの作動状況や車速などに加え、オーディオのソースと音量などの情報も表示可能
センターコンソールに配置されたホンダ車初採用の「エレクトリックギアセレクター」。車両前方側(写真右側)の「P」はPレンジ、車両後方側(写真左側)のPは電動パーキング
センターパネルには縦2段に液晶ディスプレイをレイアウト。運転中の視点移動が少ない上部にはカーナビ画面を配置し、中段にはオーディオなどを統括制御できる「オンデマンド・マルチユース・ディスプレイ」を用意。タッチパネルディスプレイに操作内容を反映して振動する「触感フィードバック」を採用している
フロントシート脇のセンターアームレスト&スリーアクセスコンソールにはqi(チー)企画対応のワイヤレス充電器、純正オーディオと連動する各種ジャックなどを用意。qiワイヤレス充電器はスライド時、オープン時どちらでもアクセス可能な工夫が施されている
リアシートのセンターにもアームレストを設定。収納ボックス内には2つ目のqiワイヤレス充電器とUSB端子、格納式のドリンクホルダーなどを用意する
リアアームレスト内蔵コントロールパネルでは、オーディオやエアコンを後席から操作可能。また、リアウインドーに設定されている電動サンシェードのON/OFFスイッチも設定している
リア電動サンシェードはRレンジ連動式
リアドアのウインドー内側に手動式のサンシェードを内蔵
9.5インチのゴルフバッグ3個、または9インチのゴルフバッグ4個が収納可能なトランク。フロア下には小物を収納しておけるスペースを用意

 青木氏が「私たちが最も提供したいと考えているもの」と紹介するのが、新型レジェンドの持つホンダ車らしい心昂ぶらせる走り。その要になるというのが、冒頭の伊東社長の挨拶でも触れられたスポーツ ハイブリッド SH-AWD。3つのモーターとV型6気筒エンジンの組み合わせによるシステム合計出力281kWと、直列4気筒エンジン並みという16.8km/LのJC08モード燃費を両立しており、さらにリアに搭載した「TMU(ツインモーターユニット)」によって革新的なオンザレール感覚を実現すると解説している。

 左右に配置した2つのモーターがリアタイヤを独立して制御することで、従来型のSH-AWDでは実現できなかったトルクベクタリングを手に入れており、走行状況に応じて駆動、制動をリアタイヤ左右で自在に使い分けることが可能となっている。このオンザレール感覚の走行性能をさらに高次元に引き上げるべく、ダブルウイッシュボーン式のフロントサスペンションには外乱に強いダブルジョイントロアアームを用い、高剛性スタビライザーをセットすることで旋回中にしっかりと路面をとらえる足まわりのセッティングになっていると紹介している。

スポーツ ハイブリッド SH-AWDのシステム構成
ツインモーターユニットは最高出力27kW(37PS)/4000rpm、最大トルク73Nm(7.4kgm)/0-2000rpmを発生する高密度・高性能モーターを2基組み合わせて構成
リアタイヤのイン側とアウト側で逆方向にトルクを発生させることでライントレース性を高められる
V型6気筒エンジンでは「3ステージVTEC」を搭載し、クルーズ走行時などにリアバンク側の3気筒を休止させる可変シリンダーシステム(VCM)を採用
ツインモーターユニットの2つのモーターは中央のワンウェイクラッチを介して接続され、モーターとクラッチの間にプラネタリー減速機構を備えて高速域でのトルクベクタリングを実現
多種多彩な改善を施して基本となるシャシー性能を充実させ、スポーツ ハイブリッド SH-AWDとの組み合わせによってオンザレール感覚の走行性能を生み出す

 この新型レジェンドから採用がスタートしたホンダの新しい安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」については、昂ぶる走りをより安心して楽しんでもらうための装備と位置づけ、カメラとミリ波レーダーを組み合わせて利用することで、通常走行時から緊急時のリスク回避まで幅広くドライバーを支援する。

新開発の「Honda SENSING」では、カメラで対象物体の属性や大きさなどを認識し、レーダーで対象物体の位置や移動速度などをチェック。それぞれの得意分野を組み合わせてドライビングをサポートする
「歩行者事故低減ステアリング」は世界初(2014年10月現在)の先進安全装備。ほかにも数多くの機能によって、危険の発生を未然に防いだり、トラブルからの回避などを支援する
フロントウインドー内側に設置されるカメラ。Honda SENSINGでは単眼式を採用している

 発表会の終盤には質疑応答を実施。記者からは当初は年内とされていた発売時期が2015年1月に遅れたことに関連して、開発期間の短縮やコスト削減などの見直しが行われるかについて質問され、これに対して伊東社長は2013年に発売したフィットなどで複数回のリコールが発生したことをユーザー、関係各所に対して改めて謝罪。ホンダが考えるこれからの技術の方向性としては、まだしばらくのあいだハイブリッドが中心になると語り、フィットのi-DCDについてはリコールを出したことについては猛省するとしつつ、高度なテーマに対してチャレンジした製品であると説明。エンジンとモーターをそれぞれ独立させて効率を追究しつつ、クルマとしての燃費効率と運転の楽しさを追い求めた技術であると語っている。

 レジェンドでは当初予定の発売時期をずらして内容の精査と検証を行い、ここから発売までに日本独自の部分を煮詰め、完全な車両をお客さまに渡すための活動であると理解を求めた。また、開発期間の短縮は製造業として永遠の命題であり、コストの削減も非常に重要なことだが、自分たちはそのために活動しているわけではなく、お客さまによいものをお届けすることを大前提として、もう1度見直す活動を行っているところですとコメントしている。

質疑応答で「来年の2015年にはS660やNSXなどを上市する予定で、日本専用車種でも複数市場投入する予定」と明かす伊東社長
発表会場の入り口に掲げられていた言葉。レジェンドが「Top of Honda」であると示している

(編集部:佐久間 秀)