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【2013 Hondaミーティング】新4WD技術「SH-AWD」と、トーコントロール制御「P-AWS」を市販スペックの「RLX」で体感

CFRPボディーの「CR-Z」は軽快なハンドリングを実現

P-AWSを搭載するアキュラ「RLX」。すでに米国では市販されている

 次期シビックTYPE-Rに搭載するハイパワーなVTECターボと2種類のダウンサイジングターボエンジンを含めた新たなエンジンラインナップについては関連記事をご覧いただくとして、続いては、ドライバーが車両を意のままに操るために開発している技術について紹介したい。

 まずは、アキュラのフラグシップカーとなる「RLX」に採用されるトーコントロール制御「P-AWS(Precision All-Wheel Steer)」と、3モータースポーツハイブリッドの「SH-AWD」について実際にテストコースで試乗した印象と技術的な特性に関してお伝えする。

 RLXは、2012年のニューヨークオートショーでコンセプトモデルが初公開された同ブランドの最上級モデル。今年に入り、北米ではP-AWSを搭載したFFモデルが先行して市場導入されている。パワートレーンは、V型6気筒 3.5リッターに6速AT。操舵アシストのシステムとしてP-AWSがセットされる。

 P-AWSは、左右独立したリアトーコントロール制御を行う世界初の技術。リアの左右に装備された専用のアクチュエーターがトーコントロールアームを調整し、安定方向と旋回性の向上という異なる要素を高次元でバランスさせている。具体的な制御としては、ブレーキング時には、左右のタイヤをトーインにして減速時の安定性を高める。コーナリングの低速時にはリアタイヤをフロントと逆位相することにより、クイックでステアリング操作量を減らす。逆に、高速域のコーナリングではフロントとリアタイヤを同位相にすることで安定性を高める。

 リアタイヤをフロントの操舵に対して逆位相、同位相にするかは、速度域、ステアリングの蛇角、旋回モーメント、路面状況などさまざまな要素をセンシングしているので、ドライバーには違和感がなく、なおかつ安心感とドライビングプレジャーが体感できるという。

SH-AWD搭載車

 もう一方のスポーツハイブリッド「SH-AWD」は、RLXのFFモデルに続いて、今後導入されるグレードに採用している最新技術になる。エンジンは、V型6気筒 3.5リッターだがトランスミッションが1モーター内蔵の7速のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)になり、リアには左右輪を自在に制御する2つのモーターが内蔵される。

 次期NSXにも採用される予定のSH-AWDは、次世代のスポーツハイブリッドとなり、RLXでは3.5リッターエンジンとモーターがフロントに搭載され、リアには2つのモーターをセットする。NSXでは、このエンジンをベースとするハイパワーユニットがリアミッドに搭載され、1つのモーターを内蔵するDCT(7速になるかどうか不明)でリアを駆動、フロントを2つのモーターで左右独立制御することになるはずだ。

 P-AWSはトーコントロールアームをアクチュエーターで制御するのに対して、SH-AWDはモーターの駆動力を制御するトルクベクタリング機構で、旋回性の向上や高速走行時の安定化を図る。2つのリアモーターは、73Nmのトルクを発揮するもので、回生機能も付属する。

 2013 Hondaミーティング用意されたP-AWS搭載RLX、SH-AWD搭載RLXは、これまでのHondaミーティングで公開されたプロトタイプ車ではなく、市販スペックのものだという。

 実際に、P-AWSとSH-AWDを採用したの2台のRLXを同じテストコースで試乗してみたのだが、両モデルともに意のままに操れるハンドリング特性を生むのは同じだが、車両から伝わってくる感覚としては異なっていた。

 まずFFモデルのP-AWSだが、モーターを内蔵しないため出力こそSH-AWDに劣るが、V型6気筒のエンジンがフロントに乗っているとは思えないような軽快感がある。特にコーナリング時には、狙ったラインをきれいにトレースし、大柄なボディーを感じさせない動きをする。安定感があり、ブレーキング時には特にどっしりとした感覚を味わえる。

 一方のSH-AWDは、310PSのFFモデルに対して、モーターを3つ搭載することから377PSまでシステム出力がアップしている。そのためパワー感は別物といった印象。発進時からリアのモーターがアシストしている感覚が強く、コーナリング中もリアモーターの恩恵を感じる。特に、コーナーから脱出するときには、リアが押し出す感覚があり、加速感が強い。車重が150kgほど軽いこともあり、軽快感はP-AWSの方が高いが、力強さの面では一歩も二歩もSH-AWD搭載車が上手だ。

 どちらのモデルにしても、とても全長が4900mmを超える大柄なボディーの車両に乗っているとは思えないハンドリングで、意のままに操れる高級車という狙いが成功していることを感じられた。

クルマが軽くなると楽しい!!

CFRP製ボディーで試作されたCR-Z

 ハンドリングファンなモデルとしてもう1台、触れておきたいのがCFRP(炭素繊維強化樹脂)製のフロアモノコックを採用したCR-Z。

 CFRPを使うメリットとしては、現在使われているスチールや高張力鋼板(ハイテン材)から素材を置き換えることで、ボディーが軽量化でき、剛性や強度を高めることができるようになることが挙げられる。ボディーが軽くなったことで、より排気量の小さなエンジンを搭載することや、ブレーキなどの足まわりパーツも小型化でき、結果的に環境性能が向上するというメリットも持つ。また、車重が軽くなることにより、優れたハンドリング特性にもつながるのだ。

 試作車のCR-Zは、CFRP製のモノコックを採用。一部アルミ製の部分もある。エクステリアも樹脂パネルを使うことで、車両全体で軽量化を図っている。ボディー単体の重量はスチールを使ったモデルに対して約半分になり、完成車では30%軽量化。加速性能で30%、燃費で20%の向上が見込めるという。

一見すると普通のCR-Zに見えるが
カーボン化に伴いサイドシルの高さが高くなっている。そのため、ドアとともに屋根まで一部開くものにすることで、乗降性を確保していた

 CFRP製CR-Zは、軽量化に合わせてブレーキ容量も下げ、リアはドラム式に変更されていた。アクセルを踏んでまず感じるのが、当然だが強い加速力。コーナリング中の軽快感は従来モデルのCR-Zでも高いが、より俊敏に動く。そのリニアさ軽さは、初代シビックTYPE-Rを彷彿とさせる。軽快さを持ちつつもCFRPボディーの剛性感はあるので、ボディーのよれる感覚はまったくなく、ステアリングにもその硬さが伝わってくるほどだった。

運転席の位置
CFRP製モノコックのキーパーツ

 ボディーの軽量化は、さまざまなメーカーでもトライしていることで、すでにCFRPモノコックの量産技術開発も始まっている。エンジンや足まわりパーツを含めたパーツの小型化とともに、ファンなハンドリングにつながるのがCFRPの実用化だろう。

ボディーの軽量化は、運動性能、環境性能などクルマに関するすべての性能を引き上げていく。量産技術の確立により、現実的に購入可能な価格で登場する日を楽しみに待ちたい

(真鍋裕行/Photo:安田 剛)