インプレッション
ホンダ「フリード Modulo X」(車両型式:DAA-GB7&DBA-GB5)
“Modulo X 第4弾”の走りを一般道と高速道路で確かめた
2018年2月16日 15:27
自動車メーカーのコンプリートカー戦略が進んでいる。従来はディーラーオプションなどで装着していたサスペンションやエアロパーツなどを最初から組み込んでメーカーから出荷することでブランドとして確立し、ユーザーにも装備などを分かりやすく購入できるようにしたものだ。トヨタ自動車の「GAZOO」、日産自動車の「NISMO/AUTEC」がそれにあたるが、本田技研工業も早いタイミングで「ホンダアクセス」のパーツを組み込んだ「Modulo X」がラインアップされている。
ホンダアクセスのパーツは1980年代の最後から走りの質を上げるための開発を進め、「NSX」や「S2000」、「シビック タイプR」などのサスペンションで、知る人ぞ知る完成度だった。時代の要請からコンプリートカーに発展し、Modulo Xとして2013年1月に「N-BOX」からスタートした。その後、「N-ONE」「ステップワゴン」と販売ボリュームの大きなところに焦点を絞って投入され、2017年12月のフリードで第4弾となる。
Modulo Xのコンセプトは車種からも分かるように現実的だ。サーキットでも痛快に走れるサスペンションなどをコンセプトとしていた初期のモデューロから、N-BOX以降のModulo Xでは一般公道をドライブしたときに誰でも快適に走れるようなクルマ造りを目指している。
パーツ単体の販売とは異なり、コンプリートカーとしてユーザーの手に渡す場合、エアロパーツとの相乗効果を発揮できるなど総合的なパフォーマンスが上がる。また、ホンダ車の開発を担当していたエンジニアが専従でパーツ開発を行ない、デザイナーも意見交換をしながら細部まで造り込まれているという。チューニングの仕上げには作り手側の感性が重要になる。
4輪の接地感が高くロングドライブでも疲れが少ない
フリードには1.5リッターガソリンモデルと「フィット」と同タイプの1.5リッターハイブリッドがあるが、いずれにもModulo Xが用意されている。
まず、コンベンショナルな(Modulo Xではない)普通のフリード ハイブリッドに乗ってみる。さすがに激戦のこのクラスで高い人気を誇っているだけにバランスがいい。乗り心地に少しふわりとしたところもあるが大きな不満はなく、ハンドリングも誰でも乗りやすく快適に使える。改めて完成度の高さを確認する。
次はModulo Xのハンドルを握る。一見しただけでコンベンショナルモデルとは違って、サイドに張り出したフロントエアロバンパーとグリルが力強いイメージだ。アルミホイールもスポーティな専用品で、コンベモデルとはガラリと違った外観となっている。インテリアもピアノブラック調のパネルと専用ステアリングホイール、カラーを替えたシートなどでModulo Xならではの差別化が図られている。
パワートレーン系はコンベモデルと共通なので、走りの面ではサスペンションと空力が性格の違いとなる。タイヤも同じダンロップ「エナセーブ EC300」の185/65 R15で共通だ。
試乗した周辺道路は適度なワインディングロードと凹凸のある路面などが混在しており、標準車との違いをチェックするには向いている。第一印象はカチリとした足まわりで、軽快さが感じられた。コーナーでハンドルを少し切ったところでもロール量が急変しないので、しっかりした感触だ。
さらに大きく切った場合はその違いが顕著で、適度にロールが抑制されており、ライントレース性が向上している。左右にハンドルを切り返すようなS字コーナーでもロールが残らないので、スムーズで軽快だ。Modulo Xでは専用アルミホイールのハブ面の剛性を上げることで、よりダイレクトな操舵感覚を得られているとレクチャーを受けたが、実際にスチールホイール比較だと結構違いがあるだろう。
ハンドリングはハイブリッドでもガソリン車でも同じコンセプトでまとめられているが、とくにガソリン車ではハンドル中央からの切り始めが軽快だ。ハイブリッドでは重量配分の違いからハンドル保舵時、ニュートラルの幅がやや広くなっているものの、やはり軽快感は同様に大切にしている。
路面アンジュレーションによる姿勢変化が小さく、4輪の接地感が高いのでハンドルに伝わる安心感が高い。郊外の道路を流して走っている程度でも直進性も上がっているのが分かる。ロングドライブでも疲れが少ないと言われるゆえんがここにある。
また、高速道路での直進安定性の高さでは空力が貢献している。フロント下部のガイドフィンから入る空気の流れをディフューザー形状のリアスカートに流すことで、接地性を向上させて直進安定性がかなり上がっているとされており、確かに実感できた。さらに横風にも強い。最近の空力デザインはフリードのようなボクシーなボディ形状でも生かされており、Modulo Xの大胆なエクステリアはキチンとした理由があってデザインされたことが分かる。コンプリートカーならではのサスペンションとエアロパーツによる相乗効果だろう。
乗り心地の面では少し突き上げ感が残る。段差や荒れた路面では標準車よりもリアから入る突き上げは強めになっており、また短い周期のピッチングもあるので、コンベモデルのふわりとした乗り味とは違っている。
サスペンションはザクっと言うと、ダンパーの減衰力の伸び側が30%ほど高められている。ピストン速度は確認できなかったが、低中速域のような感触だった。逆にスプリングレートはバランスをとるためにフロント側で標準車より下げられ、リア側は上げられたとされている。メリハリの効いたチューニングだ。
開発者がModulo Xに与えたかったポイントが分かるチューニングで、その成果は報われているといえるだろう。
装備では基本的にコンベモデルのフリード G Honda SENSINGをそのまま受け継いでおり、先進安全支援システムのホンダセンシングももちろん継承している。さらにETC2.0の車載器も装備し、オプションで9インチのプレミアムインターナビも選択できる。価格はガソリン車で約283万円から、ハイブリッドで約313万円からになるが、装備からするとかなりお買い得感のある設定になっている。