インプレッション

フォルクスワーゲン「ポロ GTI」(海外試乗)

新型ポロ(第6世代)ベースのGTI、その性能はいかに?

新型「ポロ GTI」(左)と「up! GTI」(右)の国際試乗会が南仏ニースで開催された

2.0リッター直噴ターボユニットを搭載する新型ポロ GTI

 日本での発売が間近に迫り、すでにティザーキャンペーンも始まっているフォルクスワーゲンの新型「ポロ」は、いよいよ全幅1.7mを超えたサイズアップ、ゴルフなどと共通のモジュラーユニットであるMQBの採用、3気筒1.0リッターターボエンジンの搭載など、話題満載の1台である。そんなポロのラインアップに、ヨーロッパでは早くもホットバージョンのGTIが追加された。

 従来よりも明らかにワイドなスタンスが印象的な5ドアのボディには、ラジエターグリルからヘッドライトユニット内にまで貫かれた赤いストライプ、ハニカムパターンのグリルやエアインテーク、デュアルテールパイプといった定番のディテールが与えられて、ひと目で新しいGTIと分かる存在感を主張している。アルミホイールは標準が17インチ。オプションでは遂に18インチまで用意された。

 今回の試乗車は、この18インチ仕様。大きくなったとは言え、全長は4.1m弱。しかもエッジの効いたキャラクターラインが入れられ、リアフェンダーの張り出しが強調されたボディと、これほどまでの大径ホイールの組み合わせは、ポロのイメージを覆すほどの迫力を感じさせた。

2017年6月に発表された第6世代の新型「ポロ」。その新型ポロをベースにしたホットバージョン「ポロ GTI」と、「up! GTI」の国際試乗会が行なわれた。写真のポロ GTIは、エクステリアでは専用デザインのバンパーが与えられるとともに、ハニカムパターンのラジエターグリルの中央に配置された赤いストライプ、赤いウイングレットを収めたLEDヘッドライト、ルーフスポイラー後端のブラック仕上げ、クローム仕上げのデュアルテールパイプなどでベース車との差別化を図っている
フロントフェンダーにはレッドとクロームで構成されたGTIバッヂが備わるほか、新デザインの17インチアルミホイール(タイヤサイズ:215/45 R17)を装着。オプションとして、ポロ GTIで初めて専用の18インチアルミホイール(215/40 R18)が用意されるのもトピックの1つ

 インテリアも、やはりタータンチェック地とされたスポーツシートや各部に入れられた赤いステッチなどのお約束のアイテムによって、これぞGTIという雰囲気がストレートに表現されている。元々のダッシュボードのデザイン自体、横基調となった上に大面積のトリムパネルで覆われて、従来の質実剛健な雰囲気から若々しいものに変身していることもあり、「ゴルフ GTI」以上に気分が昂揚させられる感がある。最近のフォルクスワーゲンが積極的に展開しているデジタルメーターパネルの「アクティブインフォディスプレイ」も設定されており、オーソドックスな丸形メーターや、より機能的なデジタル表示など、3パターンの表示を切り替えて楽しむことが可能だ。

インテリアではインパネなどのクローム仕上げ(ブラック、レッド、グレーを設定)がビジュアル面で目立つほか、おなじみのチェック柄のファブリックシートを採用。さらにレッドのコントラストステッチがステアリング、シフトレバートリム、フロアマット、シートなどに用いられる
デジタルメーターパネルの「アクティブインフォディスプレイ」をポロシリーズとして初装備。レッド、ホワイト、ブラックの3色で構成されたGTI専用のグラフィックデザインを採用している

 より大胆になった内外装デザインに負けず、新型ポロ GTIはメカニズムも大幅な進化を遂げた。まず肝心なエンジンは、従来の1.8リッターに代わって2.0リッターの直噴ターボユニットが搭載される。新たにアトキンソンサイクルを採用したこのエンジンは、最高出力200PS、最大トルク320Nmを発生。トランスミッションは、まずは6速DSGのみで、6速MTは遅れて設定されるという。

新型ポロ GTIが搭載する直列4気筒2.0リッター直噴ターボエンジンは、最高出力147kW(200PS)/4400-6000rpm、最大トルク320Nm/1500-4400rpmを発生。先代モデルで搭載した直列4気筒1.8リッターターボエンジンが141kW/192PSなので、8PSの出力向上に成功している

 標準装着のスポーツサスペンションは、スプリング、ダンパー、アンチロールバーなどを専用として、車高はベース車から15mmダウンとなる。さらにオプションでスポーツセレクトサスペンションも用意される。こちらはダンパーの減衰力が2段階切り替え式になり、さらにフロントにはより大径のアンチロールバーを採用。ステアリングロッドやリアのコントロールロッドも強化される。今回試乗したのはこちらの仕様である。

即座に、軽快にダッシュ

 スポーティ云々という前に、まずとても上質感があるというのが新型ポロ GTIの走りの第一印象だ。ボディは剛性感たっぷりで、エンジン音やロードノイズも非常に低いレベルに押さえ込まれてる。サスペンションは硬めだが、入力を受け止めるボディがしっかりしているので、快適性も上々。スポーツモードに入れっぱなしでも、それを忘れて平然と走り続けられてしまうくらい懐が深い。

 エンジンはとにかく下から上までトルクフルで、どこから踏み込んでも即座に、軽快にダッシュできる。色気のある特性ではないが、この意のままになる感覚は、間違いなくスポーティと評することができる。DSGの変速ぶりもいつもながらに完璧。特にスポーツモードでの、低音が強調されたサウンドと歯切れよい変速ぶりには、気分がアガらずにはいられない。

 フットワークも、やはり刺激を追い求めたものではなく、何より先に安定感が際立っている。特にリアの執拗なまでの接地感には感心させられるところで、ワインディングロードではついペースが上がってしまうし、高速道路では無類の安心感に浸ることができる。

 スポーツモードに入れれば減衰力がハード側に切り替わり、ステアリングやスロットルの反応もよりソリッドになる。旋回中の内輪にブレーキをかけてLSD効果を得る「XDS」も備わるが、それほどガツガツとノーズをインに引き込むわけではなく、挙動はあくまでも操作に対してリニア。その意味では、曲がりくねった山の中より、大きなコーナーが連続するような道の方が合っていそうにも思える。もちろん、サーキットでも存分に楽しめるに違いない。

 率直に言ってしまえば、GTI云々の前にまずは新型ポロ自体が、走りの面でものすごい進化を遂げているということを、まずは記しておきたい。GTIはその正常発展型。高まったポテンシャルを余さずに活かして、上質なスポーツ性を身につけている。それは、今までにないほどゴルフ GTIとの距離が縮まったということも意味する。従来までの軽快感を寂しく思わないわけではないが、それは「up! GTI」に託したということだろう。

 日本での発売開始は、おそらく年央辺りになりそう。気になるのは、すでに300万円を大きく超えてしまっている価格まで、さらにゴルフ GTIに近づいてしまうのかどうかである。

島下泰久

1972年神奈川県生まれ。
■2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動する。2011年版より徳大寺有恒氏との共著として、そして2016年版からは単独でベストセラー「間違いだらけのクルマ選び」を執筆。また、自動運転技術、電動モビリティを専門的に扱うサイト「サステナ」を主宰する。