インプレッション

ホンダ「フリード Modulo X」(車両型式:DAA-GB7)

コンパクトクラスのフリードにコンプリートモデル新登場

 ここのところ、コンプリートミニバンがにわかに盛り上がりを見せている。トヨタ自動車が新たに立ち上げたスポーツカーブランド「GR」には、ヴォクシー/ノアのGR SPORTがラインアップしているし、日産自動車もセレナ NISMOを発売したばかり。近日中にはもう1台、プレミアムスポーティを謳うセレナ オーテックの発売も控えており、どれもメーカー自らが本格的なスポーツスタイルや走りのパフォーマンスを磨き上げたミニバンたちだ。

 そんなタイミングで満を持して登場したのが、ホンダアクセスが手がけるコンプリートカーブランド、Modulo Xの第4弾となる「フリード Modulo X」。SUPER GTに参戦するNSXをはじめとする、モータースポーツで培ったノウハウに加え、市販車のエアロパーツから快適・便利装備の数々を開発してきたホンダアクセスだけに、Modulo Xのキーワードは「匠の技」だ。ホンダ車を知り尽くしたエンジニアだからこそ分かる、そのモデルの長所を生かし、短所を磨く。それを走りだけでなく、デザインや乗る人すべての快適性にまで注力するというのが、これまでのModulo Xに共通してきた魅力だった。

 第1弾のN-BOX(先代)、第2弾のN-ONE、第3弾のステップワゴンにも過去に試乗したが、スポーティというよりはまるで運転が上手くなったような、上質さと高揚感が感じられたのが印象的だ。とくにステップワゴン Modulo Xでは、2列目・3列目シートでの乗り心地がまったくゴツゴツとせず安定感が増していて、とても感心したのを覚えている。

 そして今回は、まだトヨタや日産が手をつけていない、コンパクトクラスのミニバン。果たしてModulo Xの匠たちは、フリードをどう仕上げてきたのか。

 まず外観から見てみると、ちょっと拍子抜けするほどに自然な佇まい。あからさまに威張りを効かせたような印象はなく、どこか大人の品のよささえ感じさせる専用デザインとなっている。でもよく見れば、フロントはグリルもエアロバンパーもLEDフォグライトも専用となり、バンパー下を覗くとエアロガイドフィンが突き出ており、カッコだけでなく空力性能なども考えられていると予感させる。

 サイドロアスカートや15インチアルミホイールも専用で、やや単調だったノーマル車のサイドビューと比べより躍動感が強まった。そしてリアにまわるとその差は一目瞭然。大きく張り出したテールゲートスポイラーや、ワイド感のあるリアロアスカートで迫力が増し、キラリ輝く「Modulo X」のエンブレムが目を惹き、タダ者じゃないスポーティ感を放っている。コンパクトクラスのミニバンは、ノーマルだとどうしても生活感が出てしまいがちだが、フリード Modulo Xはそこにしっかりと特別な存在感を与えていると感じた。これなら、しぶしぶミニバンに乗ることを選択したパパでも、満足度が急上昇するはずだ。

今回試乗したのは12月15日に発売されたコンプリートカー「フリード Modulo X」。ホンダアクセスが開発した専用のカスタマイズパーツを量産過程で装着したモデルで、直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴エンジンにCVTを組み合わせるガソリンモデル(283万680円~285万2280円)と、直列4気筒DOHC 1.5リッターアトキンソンサイクルエンジンにモーター内蔵7速DCTを組み合わせたハイブリッドモデル(313万920円~315万2520円)を設定。ボディサイズは共通の4290×1695×1710mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2740mm
空力性能にこだわったというエクステリアでは、空気がスムーズに剥離するようにデザインされたフロントエアロバンパーや、ハニカム形状のフロントグリルを採用。空気を車体の下面にも導き、リフトバランスを最適化したという
LEDフォグライトは専用品
フロントエアロバンパー下部に1本のエアロガイドフィンを設けるとともに、センター付近をフラットにしたリアロアスカートの採用によって4輪の接地バランスを最適化した
専用ドアミラーはプレミアムスパークルブラック・パールに塗装される
サイドロアスカートも専用装備
15インチの専用アルミホイールは軽量化と同時に剛性を最適化。タイヤはダンロップ「ENASAVE EC300」(185/65 R15)を組み合わせる。サスペンションは専用セッティングのショーワ製で、車高はベース車から変動しない
リアまわりではリアロアスカート、テールゲートスポイラーが専用品になるとともに、「Modulo X」の専用バッヂも与えられる
撮影した「HYBRID ModuloX HondaSENSING」はパワートレーンに直列4気筒DOHC 1.5リッターアトキンソンサイクルエンジンにモーター内蔵7速DCTを組み合わせる。エンジンの最高出力は81kW(110PS)/6000rpm、最大トルクは134Nm(13.7kgm)/5000rpm。モーターの最高出力は22kW(29.5PS)/1313-2000rpm、最大トルクは160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm

 インテリアを見てみると、専用のブラック&モカとなるコンビシートが3列目までしっかりと統一されていて、フロントシートには「Modulo X」のロゴも入って豪華な印象。ピアノブラック調のインパネや、専用の本革巻ステアリングはもうちょっと上質感がほしいかなと感じたが、試乗車は存在感のある9インチのプレミアムインターナビを装着しており、専用フロアカーペットで足下にもアルミ製のエンブレムが入るので、インテリア全体としては特別な空間という雰囲気がしっかりある。

 今回は7人乗りモデルだったため、2列目シートがベンチタイプだが、6人乗りのセパレートタイプならさらに大人っぽい印象となりそうだ。それに、スポーツモデルにありがちな「室内全部が真っ黒」のインテリアは、ママや子供たちはちょっと引いてしまうかもしれないが、スポーティな中にもどこか温かみの残る雰囲気が、ファミリーをターゲットとしているフリードに合っている。

インテリアカラーは専用のブラック&モカカラー。ピアノブラック調のインテリアパネルやブラック/モカのシート表皮を採用する
オープニング画面に「Modulo X」の文字を表示する9インチのプレミアムインターナビや、フロアカーペットマットも専用品
9インチのプレミアムインターナビとともに、ドライブレコーダー(ナビ連動タイプ/駐車時録画機能付)、USBジャック(1カ所)をセットにしたナビゲーションシステム装着車は21万9240円高の設定

高速道路での安定感はさすが

 試乗コースは、ファミリーが日帰りで出かけるのにぴったりな、東京湾アクアラインを渡って千葉方面へと向かうルートにした。フリード Modulo Xは1.5リッター直噴エンジン+CVTの6人乗り/7人乗りも選べるが、今回は1.5リッターアトキンソンサイクルエンジン+モーター内蔵7速DCTのハイブリッドモデル。スタートボタンを押すと、目の前のデジタルメーターがブルーに光り、ナビには「Modulo X」の専用オープニング画面が流れる。EVモードでの発進は静かでなめらかだが、それも束の間。すぐに元気よく、心弾ませるようなエンジン音が聞こえてきて、小気味よく軽快な加速フィールを繰り出すのがホンダの1.5リッターハイブリッドだ。

 走り出した直後、駐車場を出る時の段差を越えた瞬間に、「これはよさそうだゾ」と直感した。振動をうまく逃してボディがヨレる感じがなく、こちらの身体にも不快な衝撃を伝えてこない。速度を上げていくと、ただガチガチに硬めたのとは違う、包容力を秘めた剛性感が感じられて、ボディ全体がひとクラス上のクルマになったよう。サスペンションセッティングの見直しや、アルミホイールの剛性を調整するなど、これぞ匠の技を見せつけられた気分だ。

 カーブでのピタッと落ち着いた挙動にも感心したが、とくによかったのはブレーキング時。ミニバンにありがちな、足下とボディの減速感がチグハグに感じることがなく、しっかりとした一体感を保ったまま自然に停止できる。これには上質感と合わせて安心感もあり、家族を乗せて走るミニバンとして何よりありがたい性能だ。

 ただ、2列目シートに座ってみると、運転席で感じた乗り心地のよさは何処へやら。40km/h~60km/hあたりでは路面のギャップを拾うとポンポンと跳ねる場面もあり、ステップワゴンのときとは大違いだ。もう少し高い速度域に入ると、不思議と落ち着いた乗り心地になってきたのだが、日常の買い物や送り迎えで使うことも多いコンパクトミニバンだけに、ここは改善してほしいところだ。

 とはいえ高速道路での安定感は、さすがModulo X。Honda SENSINGによる先進の安全運転支援技術の効果も含め、ステアリングに軽く手を添えているだけでリラックスしたクルージングができるし、レーンチェンジのときもまったくフラつくことなくピタッと決まる。この日の東京湾アクアラインは、吹き流しが真横に流れるほどの強風だったが、過去にさまざまなミニバンで強風のアクアラインを走った経験と照らし合わせると、フリード Modulo Xが横風に煽られる度合いは小さく、恐怖を感じるようなことはなかった。これはフロントに設定されたエアロガイドフィンや、リアロアスカートのディフューザー形状を工夫することなどで、4輪の接地バランスを最適化した恩恵だろう。

 こうして見てきたフリード Modulo Xは、後席の乗り心地はともかくとして、5ナンバーサイズのミニバンでここまで上質で気持ちのいい運転が味わえるモデルはほかにない。ウィークデーはママが乗るから街中での取りまわしも重要。でもパパとしては走りのよさを諦めたくない、というファミリーにはぜひチェックしてほしいコンプリートミニバンだ。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。

Photo:高橋 学