試乗インプレッション

トランスミッション刷新。マイチェン版MINI コンバーチブル&ジョン・クーパー・ワークスを試す

7速DCTの採用でキレのある走りを体感!

 日本国内でも絶大な人気を誇るMINIがマイナーチェンジした。変更を受けたのは基幹モデルであるハッチバックモデルのMINI 3ドア、MINI 5ドア、MINI コンバーチブルの3モデル。主な変更点はライティングまわりなどを含む内外装のデザインとパワートレーンだ。

 パワートレーンでは、ジョン・クーパー・ワークスを除くガソリンエンジンモデルに新たに7速DCT(ダブルクラッチトランスミッション)が採用されたことと、ジョン・クーパー・ワークスは8速スポーツATに進化。また、MINI ONE以外に「MINI Connected」を標準装備している。さらにMINI ONE以外にナビゲーションシステム、ドライビングアシストを標準装備とし、プレミアムスモール・セグメントにおけるさらなるリードを進めたい狙いがあるのだ。

 3モデルに共通した変更点であるエクステリアから説明しよう。MINIのデザインアイコンである丸形ヘッドライト、六角形グリルをクロームパーツで生かしながら、洗練したデザインに進化させている。特にヘッドライトをぐるりと囲むLEDのデイライトを標準装備し、昼間の視認性とヘッドライトの丸目をより印象付けている。

 リアコンビネーションランプにはユニオンジャックデザインを採用し、しかも左右非対称に取り入れているところが面白い。加えてMINIのロゴマークが最新のCI(コーポレート・アイデンディディ)に基づくデザインに変更されている。ここまでが内外装デザインの変更点。

5月にマイナーチェンジしたMINIシリーズ。そのうち、今回は写真の「MINI クーパー S コンバーチブル」と3ドアの「MINI ジョン・クーパー・ワークス」に試乗。MINI クーパー S コンバーチブル(425万円)のボディサイズは3860×1725×1415mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2495mm。車両重量は1370kg
今回のマイナーチェンジでは、新しいMINIのロゴを配置するとともに、丸型ヘッドライトにはLEDのデイライト・ランニングを標準装備。テールランプにはユニオン・ジャックのデザインを取り入れ、左右非対称なデザインを採用することで個性を強調させた。足下は18インチのアロイホイールにピレリの乗用車用タイヤ「CINTURATO P7」(205/40 R18)をセット
ルーフの開け閉めをしたところ。ソフトトップの幌にはユニオン・ジャックが描かれる
サテライト・グレーカラーのインテリア

キレのある走りを体感できるクーパー S コンバーチブル

 ここからは走りながら、パワートレーンの変更点とクルマ全体の印象を話そう。今回試乗したのはMINI クーパー S コンバーチブルと3ドアのジョン・クーパー・ワークスの2台。試乗会後にそのほかのモデルにも試乗したのだが、7速DCTの採用は直列3気筒1.5リッターターボエンジンを搭載するMINI クーパーでもキレのある走りを体感した。

 まず、直列4気筒2.0リッターターボエンジンのMINI クーパー S コンバーチブルから走りはじめよう。ルーフありのクーパー S 3ドアモデルに対して、車重は100kg増の1370kg。この100kgは、ルーフをなくしたことへの車体の補強とルーフそのものを開閉するためのハードウェアのプラスウェイトだ。

 ボディのしっかり感はオープンモデルというくくりの中ではかなり高い。Aピラーやステアリングへの多少のブルブル振感はあるものの、振幅はとても小さく、路面からの振動入力が繰り返されない限りすぐに収まる。MINIのボディは鉄でできている。鉄はどんなにデザインしてもねじれる。問題はどこをどの程度ねじれさせるかが設計者の腕の見せどころ。それをフレックスゾーンという。クーパー S コンバーチブルをドライブしていると、設計者のそのような意図をはっきり感じ取れるほどに快適。ガチガチに硬められた鳥籠のような最近のボディ造りとは違う、どこか安堵するような癒された気持ちになる。

 それを強く感じるのが雨降りの日。ソフトトップを叩く雨音は、日本独自の雨具である番傘を思い起こさせる。そう、コンバーチブルの楽しさは天候を選ばないのだ。ルーフの開閉はいたってスムーズで、フルオープンと閉じた状態でルーフの前端部のみをオープンにするサンルーフモードにも対応。使い勝手がよい。

 エンジンは直列4気筒DOHC 2.0リッターターボで、192PS/280Nmの出力。これに新しく7速DCTを装備。これがとても歯切れのよいシフトフィールで、DCTにありがちな低速走行時のギクシャクする瞬間はほとんど感じず、発進時のスムーズなクラッチワークは言われなければAT?と勘違いするほど。DCTになっても、ドライブモードをエコに設定すればクラッチを切り離したコースティングを積極的に行なってくれる。特にアクセルOFF時にはかなり頻繁にコースティングモードに切り替わっていた。1350rpmですでに最大トルクを発生していて、やはりスムーズさのレベルが3気筒モデルとは比較にならない。

MINI クーパー S コンバーチブルが搭載する直列4気筒DOHC 2.0リッターターボ「B48A20F」型エンジンは最高出力141kW(192PS)/5000rpm、最大トルク280Nm/1350-4600rpmを発生

 燃費も15.5km/Lと、屋根付きモデルの16.4km/Lより若干落ちるが、楽しさ分を差し引いても十分にお釣りがある。7速DCTの採用で走りだけでなく、ボディの完成度も上がったように感じた。

ゴーカートハンドリングが楽しめるジョン・クーパー・ワークス

3ドアの「MINI ジョン・クーパー・ワークス」(8速スポーツAT/450万円)にも試乗。ボディサイズは3875×1725×1430mm(全長×全幅×全高)で、ジョン・クーパー・ワークスのAT車はマイナーチェンジにより新開発の8速スポーツATを採用した。車両重量は1290kg

 一方、ジョン・クーパー・ワークスの魅力はそのスタイリッシュなエクステリア。見ているだけで早くコクピットに腰かけステアリングを握りたくなる。

 切り立ったAピラーによるMINI特有の小さめのフロントウィンドウ越しに、ワインディングのAペックスめがけてステアリングを切り込むと、短いホイールベースが俊敏な応答性と過敏な前後荷重移動を起こして、身体ごと瞬間移動するゴーカートハンドリングが楽しめる。

撮影車のボディカラーはジョン・クーパー・ワークス専用の「レベル・グリーン・ソリッド」で、2トーンカラーの18インチアロイホイール「カップ・スポーク」(タイヤはピレリ CINTURATO P7。サイズは205/40 R18)やボンネットストライプ、JCWスポーツシート、シートヒーターなどをセットにした「トラック・スタイル」を装備

 ジョン・クーパー・ワークスは、実はMINI特有のコンプレックスをすべてスポーツという名のメソッドに変換してしまう。ハンドリングはいまさら言うまでもなく超楽しいです。スポーティで楽しい。タイヤサイズは18インチ化し、205/40(ピレリ「CINTURATO P7」)の偏平率に進化。ホイールサイズの大型化を含め、よりクイックでグリップ感の高いコーナリング性能を発揮する。

 トランスミッションでは新開発の8速スポーツATを投入。8速になったことで各ギヤ間のギヤ比が接近し、多段化によるスムーズさを一層進化させている。シフトコントロールそのものもより洗練されている。多段化による重量増は10kg。これはそれほど問題にはなっていないと感じた。

 エンジンはこれまで同様の直列4気筒2.0リッターのインタークーラーを備えたツインスクロールターボ。231PS/320Nmの出力は、これまでの6速ATでも十分に速かったが、多段化8速ATになったことでその速さの上にマニュアルモードでの小気味よいシフトフィールが楽しめる。

ジョン・クーパー・ワークスが搭載する直列4気筒DOHC 2.0リッターターボ「B48A20B」型エンジンは最高出力170kW(231PS)/5200rpm、最大トルク320Nm/1450-4800rpmを発生

 また、ドライブモードの変更スイッチは、これまでのシフトセレクトレバーを囲むリング状からダッシュボードスイッチパネルにトグルスイッチとして配置された。これはとても使いやすい。不必要な時にはすぐにエコモードに設定して、クーパー S同様にコースティングによる省燃費走行も実行できる。8速ATの採用によって、ワインディングでの楽しみがまた1つ増えた。

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーテッドドライバー。現在63歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

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Photo:高橋 学