試乗レポート

STIのパフォーマンスパーツで「BRZ」と「フォレスター」の走りはどう進化する?

STIのパフォーマンスパーツを装着した新型BRZとフォレスターを試乗してきた

スバルの目指している操舵の連続性がより完成の域に達した

 モデルチェンジしたばかりの新型「BRZ」に、早速STIからパフォーマンスパーツが発売された。エアロやスプリング、ブレーキパーツなど多々あるが、注目したいのは「フレキシブルVバー」と「フレキシブルドロースティフナーリヤ(以下、ドロースティフナー)」である。

 エンジンルームに装着されているのは、一見するとタワーバーにも思えるがストラットタワーとスカットルを結びV字型に配されたフレキシブルVバー、それにリアバンパー内に隠れているが、リアメンバー間を結ぶのがドロースティフナーである。

 考え方としてヤマハが開発しているパフォーマンスダンパーに似ているが、STIパーツはバーの中間にショックアブソーバーを内蔵しておらず、ソリッドなスチール製のバーになる。ポイントは両端にピロボールを使っているために捻じれ方向には自由に動く点。また、装着後わずかにテンションをかけることでボディの曲げ方向への動きには強くなる。

新型「BRZ」に装着しているフロントアンダースポイラーは4万5100円、サイドアンダースポイラーは4万4000円、リアサイドアンダースポイラーは3万8500円。フロントアンダースポイラー、サイドアンダースポイラー、リアサイドアンダースポイラーをセットにしたSTIエアロパッケージは11万4400円で、単品で購入するより1万3200円安くなる
フレキシブルVバーは純正のバーと交換するだけ。価格は5万7200円
フレキシブルVバーのSTIロゴの入るゴムカバーの内部にはピロボールが内蔵されている
BRZの「フレキシブルドロースティフナーリヤ」装着イメージ画像。価格は3万5200円

 先日行なわれたワークスチューニンググループの合同試乗会にて、このSTIパーツを取り付けたBRZとノーマルのBRZを比較試乗してきた。場所はツインリンクもてぎの南コース。フラットな路面に5か所のタイトなコーナーが描かれているコースだ。

 スタート直後には間隔の狭いスラロームが用意され、35km/hほどでスラロームを通過する。ハンドルをジワリと切った時のクルマの反応を見るには丁度いいパイロン設定だ。本コースは左ターンが多く、基本的に2速のタイトターンが続く。クルマに大きなGが加わり捻じれや曲げ剛性などに影響がある。

低速での違いを感じるためのスラロームコースが設けられていた

 最初はノーマルのBRZでコースに出る。どのコーナーでも4輪で得られるグリップ力が高く、素直に曲がるが、2速で回り込んで加速していくコーナーではリアが少し滑り出す。ただ突然滑り出すようなことはなくコントロールは先代のBRZよりはるかにしやすい。それとコースイン前に設定されていたスラローム、ここではハンドル初期のステアリング応答性が確認できる。

 コースを確認したうえでSTIパーツ装着車に乗り換える。ボンネット内のフレキシブルVバーやリアバンパー内のドロースティフナーは外からは見えないので、試乗後に形状、装着位置などを確認させてもらった。

装着パーツの解説をしていただいたスバルテクニカインターナショナル株式会社の営業部 西村知己氏(左)、開発本部長 高津益夫氏(右)

 コースインの前に低速スラロームを通過する。速度は35km/hほどだ。ノーマルのBRZもクイックに反応し、舵角は少なかったが、切り始めにわずかなレスポンスの遅れを感じた。それがSTIパーツ装着車は、ハンドル切り始めに隙がない。特にリアに設定されたドロースティフナーは、このような大きなGがかかる直前のボディの動きを規制することで操舵に対するダイレクトな動きを実現している。急激なハンドル操作では差は小さくなるが、最初の反応の素直さは、その後の安定した挙動に影響を与えている。速度を5km/hほど上げるとハンドル操作が忙しくなるが、操舵量の違いを感じられた。

 この後コースではできるだけ滑らかなハンドル操作を心掛けてラインをトレースすると、STIパーツ装着車は余分な操舵が少なかった。操舵初期のクルマの動きが影響しているようだ。また、タイトターン後にアクセルを早めに開けるとノーマルでは駆動力がかかる一瞬前に、横にスライドしようとするためにハンドル修正が必要になる場面もあったが、STIパーツ装着車ではトラクションがかかりやすかった。大きなリアウイングも効果が大きいが、ドロースティフナーリアも影響しているようだ。

 両車を比較すると操舵量が少なく、STIパーツ装着車は意識しなくても滑らかなドライビングが自然とできるのが印象深い。BRZの目指している操舵の連続性がこの小さなパーツで完成の域に近づいている感じだ。

左右2分割タイプのスカートリップは硬質ゴム製で、価格はブラックが6600円、チェリーレッドが8800円
低回転域の音量は純正同等に抑えつつ、回転数上昇ともにスポーティなサウンドを感じられるパフォーマンスマフラー。価格は17万4900円
SUPER GT参戦マシンと同じスワンネック形状のステーを取り入れたドライカーボン製リアスポイラー。2段階の角度調節が可能。価格は39万6000円
素早いシフトワークを追求し前後方向それぞれのストローク量を4mm短縮したショートストロークのギヤシフトレバー。価格は4万1800円。シフトノブは画像のレザー(1万9800円)のほかにジュラコン製(8800円)も設定
やや厚みのあるPVC材でキズなどから守ってくれるドアインナープロテクター。価格1万6500円(左右セット)
BRZ専用チューニングのアルミ鍛造1ピースホイール。SUPER GT参戦マシンと同じデザインを踏襲し、マットブロンズとマットグレイの2色を設定。価格は9万1300円/本。安定したブレーキ性能とコントロール性、冷却性能向上(約7%)を実現したブレーキディスクローターは、フロントが2万5300円、リアが2万2000円

SUVのフォレスターでも余分な揺れが少なく乗り心地がよくなった

 続いて試乗したのはスバルグローバルプラットフォーム(SGP)のフォレスター。BRZと同様にノーマルとSTIパーツ装着車が用意されていた。

 ドロースティフナーはバンパー内の同じ位置にブラケットで装着されているが、フロントのV字バーは構造上、フロア側に装着されているところがBRZと違う点だ。合わせて空力パーツとしてリアゲートの小さなガーニーフラップとフロントの小型カナードも装備されていた。

 SUVのフォレスターは車体も大きくロール量も大きい。BRZとは異なって動きがゆっくりしているがハンドルの初期応答が早いのはBRZ同様。連続性のある滑らかな動き、操作に対してすっきりした反応だ。動きのシャープなBRZの方が効果を感じやすいが、大きなSUVがコーナーを滑らかに走る感触はドライビングして気持ちがいい。例の低速スラロームでも違いが感じられた。

 フォレスターではライントレースの正確性もさることながら、コーナーでの余分な揺れが少なくなっているために乗り心地でメリットが大きいだろう。多人数で移動する場面を考えると乗員の快適性向上というのは大きなアピールポイントだ。サスペンションパーツと違ってダイレクトに乗り心地は変わらないのも安心感がある。

 これらのパーツはタイムアタックでラップタイムを競うためのパーツというよりも、普段気付かない疲労を軽減し、またドライビングの質的向上を図るパーツだ。

スラロームでも効果を体感できた

 STIでは「最初はスバル車のオリジナルを楽しみ、ステップを踏んでSTIのパーツを装着することでクルマの進化を楽しんでほしい」とコメントしていた。今回試乗したパーツは見た目では分かりにくい装備だが、それだけにSTIの走りへのこだわりを感じることができた。徐々に進化している自分のクルマを体感していくのも楽しいに違いない。

車両が安定することでドライバーの疲れを軽減し、安心して運転を楽しむことができるエアロパーツを設計。フロントスポイラーセット、サイドアンダースポイラー、エアロガーニッシュ(リアドア)、リアサイドアンダースポイラーがセットになった「エアロパッケージ」はシルバーとブラックの2色を設定。価格は19万300円。単品で購入するより2万2000円安くなる
フロントのセンター部に取り付けるフロントリップスポイラーと、サイドに取り付けるフロントサイドアンダースポイラー、ルーフ後端に装着することで前後の空力バランスを合わせるためのガーニーフラップがセットになったフロントスポイラーセット。カラーはシルバーとブラックを設定。8万4700円
ルーフ後端部分に装着することで、空気抵抗の悪化を抑えつつスポイラー上面に流れる空気を整流し、発生するダウンフォースを増加させ、リアの応答性と安定性を向上させるガーニーフラップ
フロントからボディ側面を流れる走行風を整流し、ボディ下面に流れ込み車体を押し上げようとする空気を後方に整流し、より車体を安定させハンドリングの安定感を生み出すサイドアンダースポイラー。価格は5万2800円。ボディ側面を流れる走行風の整流と飛び石などでキズつきやすいリアドア後端の保護機能も持ち合わせたエアロガーニッシュの価格は3万1900円
リアバンパー付近の乱流を整えることで車体を安定させ、後席の乗り心地を向上させる効果もあるリアサイドアンダースポイラー。価格は4万2900円
標準仕様に対し通気抵抗を25%以上低減させ、質量を標準車比約3.3kg軽量化したパフォーマンス重視のパフォーマンスマフラー(SPORT用)は16万3900円
リム部の成形にスピニング工法を用いることで、軽量化と高い剛性を実現した鋳造アルミホイール。カラーはシルバー、ブラック、ガンメタの3色を設定。同じデザインで17インチは4万2900円/本、18インチは4万6200円/本
アルミ製タワーバーを分割しリンクボールを入れることで操舵初期の常用域から限界までのハンドリング向上させてくれるフレキシブルタワーバー。価格は3万3000円
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛
Photo:堤晋一