試乗レポート
STIのパフォーマンスパーツで「BRZ」と「フォレスター」の走りはどう進化する?
2021年11月25日 05:00
スバルの目指している操舵の連続性がより完成の域に達した
モデルチェンジしたばかりの新型「BRZ」に、早速STIからパフォーマンスパーツが発売された。エアロやスプリング、ブレーキパーツなど多々あるが、注目したいのは「フレキシブルVバー」と「フレキシブルドロースティフナーリヤ(以下、ドロースティフナー)」である。
エンジンルームに装着されているのは、一見するとタワーバーにも思えるがストラットタワーとスカットルを結びV字型に配されたフレキシブルVバー、それにリアバンパー内に隠れているが、リアメンバー間を結ぶのがドロースティフナーである。
考え方としてヤマハが開発しているパフォーマンスダンパーに似ているが、STIパーツはバーの中間にショックアブソーバーを内蔵しておらず、ソリッドなスチール製のバーになる。ポイントは両端にピロボールを使っているために捻じれ方向には自由に動く点。また、装着後わずかにテンションをかけることでボディの曲げ方向への動きには強くなる。
先日行なわれたワークスチューニンググループの合同試乗会にて、このSTIパーツを取り付けたBRZとノーマルのBRZを比較試乗してきた。場所はツインリンクもてぎの南コース。フラットな路面に5か所のタイトなコーナーが描かれているコースだ。
スタート直後には間隔の狭いスラロームが用意され、35km/hほどでスラロームを通過する。ハンドルをジワリと切った時のクルマの反応を見るには丁度いいパイロン設定だ。本コースは左ターンが多く、基本的に2速のタイトターンが続く。クルマに大きなGが加わり捻じれや曲げ剛性などに影響がある。
最初はノーマルのBRZでコースに出る。どのコーナーでも4輪で得られるグリップ力が高く、素直に曲がるが、2速で回り込んで加速していくコーナーではリアが少し滑り出す。ただ突然滑り出すようなことはなくコントロールは先代のBRZよりはるかにしやすい。それとコースイン前に設定されていたスラローム、ここではハンドル初期のステアリング応答性が確認できる。
コースを確認したうえでSTIパーツ装着車に乗り換える。ボンネット内のフレキシブルVバーやリアバンパー内のドロースティフナーは外からは見えないので、試乗後に形状、装着位置などを確認させてもらった。
コースインの前に低速スラロームを通過する。速度は35km/hほどだ。ノーマルのBRZもクイックに反応し、舵角は少なかったが、切り始めにわずかなレスポンスの遅れを感じた。それがSTIパーツ装着車は、ハンドル切り始めに隙がない。特にリアに設定されたドロースティフナーは、このような大きなGがかかる直前のボディの動きを規制することで操舵に対するダイレクトな動きを実現している。急激なハンドル操作では差は小さくなるが、最初の反応の素直さは、その後の安定した挙動に影響を与えている。速度を5km/hほど上げるとハンドル操作が忙しくなるが、操舵量の違いを感じられた。
この後コースではできるだけ滑らかなハンドル操作を心掛けてラインをトレースすると、STIパーツ装着車は余分な操舵が少なかった。操舵初期のクルマの動きが影響しているようだ。また、タイトターン後にアクセルを早めに開けるとノーマルでは駆動力がかかる一瞬前に、横にスライドしようとするためにハンドル修正が必要になる場面もあったが、STIパーツ装着車ではトラクションがかかりやすかった。大きなリアウイングも効果が大きいが、ドロースティフナーリアも影響しているようだ。
両車を比較すると操舵量が少なく、STIパーツ装着車は意識しなくても滑らかなドライビングが自然とできるのが印象深い。BRZの目指している操舵の連続性がこの小さなパーツで完成の域に近づいている感じだ。
SUVのフォレスターでも余分な揺れが少なく乗り心地がよくなった
続いて試乗したのはスバルグローバルプラットフォーム(SGP)のフォレスター。BRZと同様にノーマルとSTIパーツ装着車が用意されていた。
ドロースティフナーはバンパー内の同じ位置にブラケットで装着されているが、フロントのV字バーは構造上、フロア側に装着されているところがBRZと違う点だ。合わせて空力パーツとしてリアゲートの小さなガーニーフラップとフロントの小型カナードも装備されていた。
SUVのフォレスターは車体も大きくロール量も大きい。BRZとは異なって動きがゆっくりしているがハンドルの初期応答が早いのはBRZ同様。連続性のある滑らかな動き、操作に対してすっきりした反応だ。動きのシャープなBRZの方が効果を感じやすいが、大きなSUVがコーナーを滑らかに走る感触はドライビングして気持ちがいい。例の低速スラロームでも違いが感じられた。
フォレスターではライントレースの正確性もさることながら、コーナーでの余分な揺れが少なくなっているために乗り心地でメリットが大きいだろう。多人数で移動する場面を考えると乗員の快適性向上というのは大きなアピールポイントだ。サスペンションパーツと違ってダイレクトに乗り心地は変わらないのも安心感がある。
これらのパーツはタイムアタックでラップタイムを競うためのパーツというよりも、普段気付かない疲労を軽減し、またドライビングの質的向上を図るパーツだ。
STIでは「最初はスバル車のオリジナルを楽しみ、ステップを踏んでSTIのパーツを装着することでクルマの進化を楽しんでほしい」とコメントしていた。今回試乗したパーツは見た目では分かりにくい装備だが、それだけにSTIの走りへのこだわりを感じることができた。徐々に進化している自分のクルマを体感していくのも楽しいに違いない。