試乗レポート
STIの新型レヴォーグ用「フレキシブルドロースティフナーリヤ」を体験してきた
2021年6月25日 11:00
重要なのは必要な部位に「引っ張り」のプリロードをかけること
STI(スバルテクニカインターナショナル)が新型レヴォーグ用の「フレキシブルドロースティフナーリヤ」を新たに発売した。すでに車体下部の前側に装着するものは発売されていたが、今回のものはリアバンパー内に取り付けるものだ。これまたすでに発売中のフレキシブルタワーバー・フロントと3点セットでSTIが目指す走りがいよいよ完成となるわけだ。
そもそもSTIがリリースしているフレキシブルシリーズはかなり特徴的なアイテムだ。よくある補強パーツとは違い、実はどれもパーツ自体は強度部材というわけじゃない。タワーバーは中央部でくねくねと曲がるように造られているし、ドロースティフナーは横から衝撃が加われば曲がってしまいそうに細い棒が主体となっている。けれども、引っ張る方向にはテンションがかかるようになっていることがポイントだ。発案者であるSTIの辰己英治さんいわく「必要な部位に『引っ張り』のプリロードをかける」、これが重要となるそうだ。
車体はキャビンが最も剛性が高く、クラッシャブルゾーンである前後はそれに比べるとやや弱い部分がある。この剛性の不連続な部分があることによって力の伝達も不均一になり、運転を難しくしている。車体にプリロードをかけるとステアリングを切った瞬間から応答が始まるようになり、曲がりやすく安定性にも優れるものが仕上がるという。「勝負はステアリングを切った瞬間の動き。スリップアングルがついてコーナリングフォースが出てという段階ではもう遅い。操舵の瞬間に起きるスカッフ変化の力まで使えないかということを考えた時、ドロースティフナーが有効だとなったんです」と辰己さん。これによりフロントイン側のタイヤも仕事をするようになり、操りやすい“運転がうまくなるクルマ”となるそうだ。
筆者はマイカーとして新型レヴォーグを持っているが、STI仕様に生まれ変わったデモカーに乗り換えると、たしかに微小操舵角でもクルマが反応を始めていることが理解できる。決してゲインが高くキビキビとしている感覚じゃない。むしろ感覚的にはゲインが下がったかのようなマイルドさが得られるのだ。だが、操舵に対してリニアにクルマが反応を続けている印象があり、パイロンスラロームをスイスイとこなしていく。難しさがなくなりクルマがスムーズに動くことで、たしかに運転が上手くなったと感じるし、乗っていて楽しい! いつでも意識せずにクルマが付いてきてくれる感覚はとにかく心地いい。運動性能アップだけでなく、上質さも兼ね備えたところが嬉しい仕上がりだ。
そこから再びノーマルに乗ると、微小操舵角の応答が薄く、一定操舵角(とはいってもかなり少ない)から一気にクルマが反応していくような感覚だった。遊びといってしまえば遊びの領域なのだが、それがあるおかげでコーナリングが開始するポイントを自然とそーっと切るように緊張する部分があり、結果として神経を使うドライビングであることが再確認できた。意識して走らなければ狭いパイロンスラロームを滑らかに駆け抜けることは難しい。
妻・まるも亜希子に運転してもらい今度は後席を体験してみたが、ノーマル状態ではややギクシャクとした動きになり、頭と身体が急激に動かされる領域があることが気になった。「もっと丁寧にステアリングを動かして!」なんて余計なひと言を言いたくなるくらい。妻も同業者でありそれなりに運転は上手いとは思うが、大雑把なO型のせいか、はたまた豪快な性格のせいか、繊細さがないなと、そんなところで感じていた。
だが、STI仕様に乗り換えるとかなり繊細な動きができる大和撫子に生まれ変わった!? なんて感じるほどスムーズにパイロンスラロームを駆け抜けたのだ。身体の嫌な振られはなくなり、車内は一気に優雅な空間に。妻もレヴォーグも惚れ直したのだった(笑)。
このように、ドライバーの運転が上手くなるだけでなく、同乗者の快適性からドライバーに対する印象までをも変化させてくれるドロースティフナーは、彼女や奥さま対策にもバッチリ。クルマだけでなく自分もある意味磨けちゃうという、類稀なチューニングパーツだった。