インタビュー

スバルの新型「レヴォーグ」で“心の導火線に火をつける” 開発責任者 五島賢氏インタビュー

スバルの新型「レヴォーグ」開発責任者である商品企画部 プロジェクトゼネラルマネージャー 五島賢氏に想いを聞いた

 スバルの新型ツーリングワゴン「レヴォーグ」が10月15日に発表される。「レオーネ」から脈々と続くスバルの“お家芸”とも言えるツーリングワゴンの進化はどれほどのものなのか。

「1つひとつ丁寧にお伝えして、先進安全とか、スポーティとか、ワゴン価値とか、細かく分けてなるべく分かりやすくお客さまにお伝えしていかなければならないと思っています」と、アピールしたいポイントがたくさんあると話していた開発責任者の五島賢氏。大工だった祖父が中島飛行機に関わっていたり、父親が富士重工業時代に「サンバー」のラインで働いていたりなど、スバルとは縁が深いという五島氏は、どのような思いで新型レヴォーグの開発にあたったのだろうか。

新型レヴォーグ
新型レヴォーグの内装

──新型レヴォーグを担当することが決まったとき、どう思われましたか?

五島賢氏:実は2014年に現行型が立ち上がった時に、プロジェクトチームの熊谷の下で内装をやっていたので、よく知っていました。ずっとその後も内装にいて、先行開発とかもやっているときにいきなり呼ばれて「商品開発に行ってレヴォーグをやれ」と言われました。そのときは「俺にはできないな」と正直思いました(笑)。よく業界では2代目は難しいと言われていて、モデルチェンジできて一人前、ロングセラーになっていくという入口の勝負がかかった2代目なので、本当に重責だと思いました。

 また実は、今は昔の弊社の土屋とか桂田とか重量級のすごい人たちがいた時代とは違って、エンジンも燃費のために開発するというのもありますし、アイサイトも私が決めた訳ではありません。私が参加する前から、みんなでレヴォーグをめがけて、新しい技術は全部レヴォーグに入れるという感じで用意されていました。いい材料は揃えたので、あとはお前が料理しろ、と(笑)。お前がうまく料理できなかったらえらいことだからな、という最初からプレッシャーの中で仕事を受けるという。ですので、すごく責任重大でした。

──クルマがまとまらないというようなことがあると思いますが、まとめる上ではどのようなことを考えていましたか?

五島氏:できてから方向性を考えたわけではなくて、レヴォーグとして「先進安全」「スポーティ」「ワゴン価値」を超革新のレベルまで高めていくというのが私の仕事なので、クルマもどうまとめていけるのかというのを最初からやりました。

 例えばいろいろと議論があって、フードのダクトのあるなしも、実は最初についてないものを作りました。フロントのフードの裏にダクトを通せば吸入量はあるのでできるのですが、フロントをかなり厚くしなければならなくて、そうするとこのスポーティという価値には合わないよね、と。そういう判断基準を持って、デザインも1つひとつしていきました。今どきは、フェンダーの張り出し具合をアピールするクルマってあまりなくて、他社さんでもつるっとした(面の)きれいなクルマが多いじゃないですか。そこで、キャラクター付けをしなければならないということで、止まっていながら今にも走り出しそうなデザインで、大地をつかんで4輪駆動で走って行くというようなクルマのキャラクターとして決めてやりましたね。

スバルおなじみのフロントのエアダクトがなくなるかもしれなかった

──「心の導火線に火をつける」という言葉を使っていらっしゃいますが、なぜ導火線なのでしょう?

五島氏:この言葉に込めた想いは、お客さまがなんの商品でも、1回買おうと思ったら買いたくて買いたくてしょうがなくなるじゃないですか。そういう状態のことを「脳内爆発」というらしく、脳の中のどこかで着火するんですね。そして、「買いたい、買おう!」と決めちゃう。私もよく火が付いてポチってしまったりするのですが(笑)。そのタイミングが、CMを見てすぐ導火線に火がつくわけじゃなくて、Webだったり雑誌だったり、本当に多様化しています。しかもお客さまの目線がバラバラな中で、どうやってお客さまの心が燃えるのか、着火をさせるのかという意味で、「導火線に火をつける」という言葉をプロジェクトメンバーで共有して、ネタを考えて仕込んで、もっと真面目に言うとお客さまをちゃんと見て、技術がすごいからそれを取り入れるのではなくて、「お客さまにアピールして、お客さまが買いたいと思うような技術をちゃんとやろうよ」というのを、われわれのプロジェクトチームのモットーとしていました。それをそのまま使っています。

名札にも五島氏お手製だというシールが貼られていた

──導火線の着火のポイントの一番はどのようなところですか?

五島氏:それはもう本当に「先進安全」「スポーティ」「ワゴン価値」のすべてです。例えば安全面でぶつからない性能をお求めの方や、ロングドライブを楽しみたいという方には新しいアイサイトXがありますし、スポーティな価値をお求めの方には、それを今回は本当に高めています。さらに言うと、ご家庭で旦那さまはレヴォーグが欲しくて欲しくてしょうがなくても、奥さまは乗り心地がわるくてスポーティすぎて、ちょっとイマイチだな、というところの奥さまの導火線に火を点けるために、コンフォートモードを用意しました。これも私が考えたわけではなくて、プロジェクトチームの方から提案があって採用しました。人それぞれの欲しいな、というところに着火をさせたいということです。

──最近だとSUVが人気かと思います。ワゴン価値とおっしゃっていますが、SUVと違う価値はどこにあると思いますか? レヴォーグではどこで出しましたか?

五島氏:SUVでは重心が上がってしまいますが、低重心ならではの地面に近いところに重心があるクルマだからこそできる走りがあると思うんです。今SUVが多いですが、改めてスポーツとワゴンというところをくっつけて、ワゴンをもう一度訴求したいと考えました。荷室ももともと頑張ってやってきたので、ワゴンで伸ばしてきたものをSUVが使っている。われわれであれば、レガシィのツーリングワゴンで培ってきた技術を、フォレスターやSUVに使っています。そこをワゴンとしてもう1回訴求したいというのがあります。フォレスターやXVではできない走りができるクルマだとアピールするには、SUVではなくてワゴンで出すのがベストだと考えました。

──レヴォーグを一番訴求したいのはどんな方ですか?

五島氏:イメージで言うと、ミニバンを卒業するような45歳~55歳くらいで、お子さんを育てたあとに、もう一度昔走ったあのときのクルマのイメージで、また走りたいなと思っているような方です。ロングドライブで、もうちょっと遠くに行きたいというような、新しい第一歩を踏み出したいと思っている方にぜひ乗っていただきたいクルマです。

 このクルマであれば、土曜日に今までは疲れてしまっていて、もう今日は行けないなと思っていたときでも、長距離を走ってその先に行けるのではないかと思っています。こういう時代になってくると、リアルの価値ってすごくあると思っていて、パーソナルな空間で移動して、リアルなものを体験するという。そういうパートナーにしたいなと思っています。アクティブに第一歩を踏み出そうとしているお客さまのパートナーとなるクルマだと思っています。