特別企画

復興応援「復興商店街を巡る旅スタンプラリー」に行ってみた

復旧した高速道路を使って東北へ行こう!!

高速道路が本復旧したのにあわせて、復興商店街を巡る旅スタンプラリーに行ってきた

2012年12月22日 高速道路が本復旧

 2012年12月20日、NEXCO東日本(東日本高速道路)が「東日本大震災に伴う本復旧工事完了のお知らせについて」というリリースを発表した。これは、2011年3月11日の東日本大震災で被災した高速道路の段差やうねり、路面下に生じた損傷などの工事が12月22日をもってすべて完了するというものだ。

常磐自動車道(水戸IC~那珂IC間)92.5KP。左が施工前、右が施工後
東北自動車道(福島飯坂IC~国見IC間)274.6KP。左が施工前、右が施工後
東北道(平泉前沢IC~水沢IC間)434.3KP。左が施工前、右が施工後
仙台東部道路(仙台東IC~仙台港北IC間)24.0KP。左が施工前、右が施工後

 Car Watchでは、震災から1年後の高速道路の復旧状況をお伝えするため2012年4月に「東日本大震災から1年 世界が驚愕した日本の高速道路」という記事を掲載。多くの人に読んでいただくとともに、改めて高速道路の被害の大きさ、復旧工事の大変さについて知っていただいた。この段階では、一部工事が残りながら走行可能という仮復旧だったが、スケジュールどおり昨年末に本復旧にこぎつけたわけだ。道路好きのCar Watchとしては、本復旧となった高速道路を走ってみるしかないということで、東北へ行く計画を考えた。

●【特別企画】東日本大震災から1年 世界が驚愕した日本の高速道路(前編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120329_521658.html

●【特別企画】東日本大震災から1年 世界が驚愕した日本の高速道路(後編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120409_523328.html

 そんなときNEXCO東日本のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)で目にしたのが復興応援「復興商店街を巡る旅スタンプラリー」(http://www.driveplaza.com/info/fukkou_stamp/)というパンフレット。これはタイトルどおり東日本大震災の各被災地にある復興商店街をいずれか3個所、NEXCO東日本のSA/PAをいずれか1個所巡るというもので、パンフレット内には復興商店街の位置を示す地図やおいしそうな海鮮丼の写真も掲載されており、2013年3月17日まで実施していると書かれていた。このスタンプラリーに挑戦してみることにした。

復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレット。復興商店街の地図や、スタンプエリアが記載されている

 実施日程として選んだのは、1月18日~20日の3日間。相棒として選んだのは長期レビューでもお届けしている日産「ノート」だ。この時期、東北へ向かうにはスタッドレスタイヤが実質必要となるが、このノートにはミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE XI2」を装着している。

 復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットには、北は岩手県大田名部地区仮設店舗から、南は福島県久之浜「浜風商店街」まで、14地区19個所の復興商店街が掲載されている。今回目的地として選んだのは、石巻、南三陸、気仙沼の復興商店街。また、津波で被災した航空自衛隊松島基地が一般見学を再開しているということで、そこに立ち寄ることも旅程に組み入れた。

 なお、本記事は復興した商店街を紹介する記事ではなく、復興しようとしている商店街を紹介する記事となる。そのため、震災当時の写真や震災当時と変わらない景色が広がる写真を掲載していることをあらかじめ記しておく。

旅の始まりはPasar羽生から

Pasar羽生で一休み中のノート。ここで東北へ向かう際の天候などをチェックした

 1月18日、天気予報をチェックして雪が降らないことを確認。雪が降ってしまうと、どうしても平均走行ペースが落ち、到着まで時間がかかってしまう。とくに初日のこの日は、11時に航空自衛隊松島基地に一般見学を申し込んでいたので、到着時刻に遅れるわけにはいかない。そのため、深夜に東京を出て、埼玉県の大宮近辺でカメラマンをピックアップ。東北自動車道 岩槻IC(インターチェンジ)から一路松島を目指した。

 途中、大規模商業施設「Pasar羽生」のある羽生PAに立ち寄り、気象情報を確認。福島県の二本松IC近辺でチェーン規制が行われているものの、そのほか大きな渋滞は見られず、旅程の問題はないようだ。

Pasar羽生にあるモニターで道路状況を確認。一部でチェーン規制が行われている
Pasar羽生にも復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットが置かれていた

 羽生PAから北上を続けると二本松IC近辺で雪がちらつきはじめ、二本松ICを越えた個所では道路に雪が大量に残る状態。スタッドレスタイヤであればそれほど問題ないが、このような状況ではいつ何が起きるか分からず、注意して運転を続けた。

 宮城県に入る頃には雪が止み、青空が広がってくる。仙台を目指す場合、定番の一休みポイントは国見SAとなるが、ドラマチックエリア菅生(下り線)が新設された菅生PAで一休み。菅生PAを出て、仙台南ICで仙台南部道路へ。仙台若林JCT(ジャンクション)で仙台東部道路に入り、仙台港北ICからは三陸自動車道となって利府JCTを松島・石巻方面へと進んだ。

二本松IC近辺で道路は雪が若干積もる状況に
さらに進んでいくと、チェーン規制区間らしい風景に
ドラマチックエリア菅生でも一休み
仙台南ICで仙台南部道路へ
利府JCTを松島・石巻方面へ
鳴瀬奥松島ICで下り、一般道へ

 この段階で時刻をチェックすると、待ち合わせ時刻である11時には余裕がある。そのため鳴瀬奥松島ICで下り、JR仙石線野蒜(のびる)駅方面へと向かった。野蒜駅は昨シーズンも訪れており、どのくらい復興したのか知りたかったからだ。

野蒜駅舎
野蒜駅横の建物
野蒜駅向かいの街灯。1年前と何も変わっていない。時が止まっているようだ

 大きな変化を期待して訪れたが、野蒜駅は昨シーズンとまったく変化がないように見える。野蒜駅の向かいにある街灯も昨シーズンのままで、これには激しい衝撃を受けた。JR仙石線は「JR仙石線・石巻線復興調整会議」により、東名駅~野蒜駅ルートを通らずに陸側移転し、2015年度(平成27年度)の全線運行再開を目指すとされている(但し、ルートについては協議中となっている)。野蒜駅では若干作業が行われていたが、周辺の地区での作業はあまり行われていないということなのだろうか。

一般見学大歓迎の航空自衛隊松島基地

大きな被害を受けた航空自衛隊松島基地(写真:松島基地提供)

 見学時刻が迫ってきたため、野蒜駅から県道60号、国道45号を使い、航空自衛隊松島基地へと向かう。松島基地正門に着いたら、見学者である旨を伝え、受け付けを行って基地内を見せていただいた。

津波に飲み込まれた松島基地や、その周辺地区
津波が引いた後の松島基地
基地周辺の行方不明者捜索活動など(写真:松島基地提供)

 今回、見学案内を行っていただいたのは、松島基地 第4航空団 広報の大泉3佐、一條曹長、今田3曹の3名。見学者の人数によって対応スタッフなどは変わってくるそうだ。

 松島基地はアクロバットチーム「ブルーインパルス」のホームベースとしても有名だが、主な任務はパイロットの教育課程。そのため学生と教官が同時に乗れる複座のF-2B戦闘機が配備されている。しかし、これらの航空機が津波で被災。地域の物資供給空港として震災から3日間で応急復旧させたが、仙台空港が復旧した現在は基地機能再開へ向けての工事を行っており、救難ヘリコプター 1機を運用している。

野蒜駅を東へ向かうとT-2ブルーインパルスが見えてきた。間もなく松島基地
松島基地正門前に到着。このまま入れるわけはないので、受け付けを行う
受け付けをすませ、内部の駐車場へと移動。後方にブルーインパルスの格納庫が見える。T-4ブルーインパルスは松島基地が被災したため、現在九州の芦屋基地に展開している

 震災以前の一般見学者は年間約3000人だったとのことだが、震災後、昨年から一般見学を再開。現状では震災以前の半分以下となっている。大泉3佐は「戦闘機などがあると迫力のあるシーンを見られるのですが」と語っていたが、一般見学者の申し込みが少ないのは、再開されているのを知らない人が多いためではないかと思う。

 一般見学の申し込み方法は松島基地のWebサイト(http://www.mod.go.jp/asdf/matsushima/contact.html)に記してあり、見学は無料となっている。

 実際に基地の各所を見たが、あちらこちらに「東日本大震災 23.3.11 津波到達ライン」の文字とともに、津波の最大高が記してある。大人の身長を超える高さの津波となっており、今田3曹も愛車を津波に流されてしまったそうだ。

 基地隊員の百数十名は家を流され、今でも20名ほどが仮設住宅に住み、そこから基地に通っている。基地では格納庫のかさ上げするなど、津波が来た際にも基地機能を失わないような工事が各所で行われており、3月末の完成を目処に工事を進めている。

今回基地を案内していただいた大泉3佐
一條曹長(右)、今田3曹(左)
一條曹長と今田3曹の後ろに飾られているF-86Fセイバー(旭光)のノーズには津波到達ラインの文字が。大人の身長ほどになっていたことが分かる
T-4ブルーインパルスの所属する第十一飛行隊の建物
この建物にも津波のラインが刻まれている
建物の内部にはブルーインパルスのスタッフプレートがあった
現在、復旧へ向けて工事中
基地内から海の方向を望む。防風林が見えるが、震災以前はもっと茂っていたとのこと。防風林をなぎ倒して、津波が襲ってきた
基地内の電源ユニットや、エアコンの室外機などを上方に設置する工事が進んでいる。津波で基地機能を失わないためだ
F-2戦闘機の格納庫。こちらは、津波が格納庫内に進入しないよう対策中
津波によりF-2戦闘機が突っ込んでしまった隊舎
壁にはそのときの傷跡が残る
津波の跡が生々しく残る建物もある。今後、工事が行われる予定
T-4ブルーインパルスの格納庫は、格納庫そのものをかさ上げ工事している。T-4ブルーインパルスの里帰りに備えて工事中だ
基地見学では、基地内の売店に立ち寄ることもできる
ここでしか買えないグッズが売られている
大泉3佐のお勧めはこのマグネットセット
ガチャポンも用意されている
基地近くのパン屋さん「大勇堂」の米粉パンもお勧めとのこと。確かに美味しかったです

 このような工事を行っていると、「一般見学はジャマでは?」と思ったのだが、大泉3佐によると見学日の調整を行うため、まったく問題ないとのこと。逆に、半分以下に減った一般見学者を震災以前並に増やすことを目標としており、「松島基地のWebサイトを見てどんどん申し込んでほしい」と語ってくれた。

 戦闘機などを見ることはできないが、工事の進む基地の状況を見る機会はなかなかなく、興味のある方は一般見学を申し込んでほしい。

 基地見学を終えると、ちょうどお昼の時刻。「お勧めの食事処とかありますか?」と聞いてみると、「基地の近くにある矢本運動公園の仮設住宅内にある『えんまん亭』がおいしいです」とのこと。早速行ってみることにした。

 えんまん亭は、もともと野蒜地区にあったお店で、野蒜地区が被災したため現在は矢本運動公園内の仮設店舗で営業している。野蒜は海水浴場などがあり、野蒜で営業しているときは仙台からの行楽客なども多かったという。このえんまん亭で「海鮮ラーメン」を注文。ほたてやえび、そしてかにがドーンと入ったラーメンで、とても美味だった。

 店主の奥さんは「野蒜地区は高台移転を準備中だが、工事の順番などもあり、生きているうちに(野蒜地区に)帰れるかどうか分からない」と、現状を語ってくれた。今はこの地区で営業していくしかないとのことで、「多くのお客さんに、おいしい食事を提供したい」と最後は明るく話してくれた。

矢本運動公園内の仮設店舗で営業している「えんまん亭」
海鮮ラーメン。激しく美味しかったです。これで1300円は安い!!

 えんまん亭で食事を取った後は、1日目の目的地である石巻市に向かった。

最初のスタンプポイント:石巻立町復興ふれあい商店街

石巻立町復興ふれあい商店街内にある水産加工品販売の「日高見市場」。最初のスタンプはここで押してもらった

 最初のスタンプポイントとして選んだのは、石巻市にある「石巻立町復興ふれあい商店街」。石巻にはこのほか「石巻まちなか復興マルシェ」もスタンプポイントとして設定されているが、石巻立町復興ふれあい商店街でスタンプを押すことにした。

 石巻立町復興ふれあい商店街には、スポーツ用品店や理容店などもあり、地元の人が普段立ち寄る商店街という店舗構成になっていた。その中で立ち寄ったのは、水産加工品販売の「日高見市場」。日高見市場では、わかめや牡蠣味噌、炙り牡蠣などさまざまな水産加工品が売られている。ここで、わかめなどおみやげを購入。購入後おかみさんにスタンプを押してもらった。

 おかみさんによると、この商店街は2011年12月に開業。昨年(2012年)はお客さんがそこそこ来たが、1月になってからは、とくに市外からのお客さんがすっかり減ってしまったそうだ。市外から多くの人が石巻に来てくれることは大歓迎で、その際はぜひ商店街に立ち寄ってほしいとのこと。

石巻市にある2つの復興商店街。復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットより
石巻立町復興ふれあい商店街の駐車場。プレハブ仕立ての各店舗が並ぶ
店舗マップ。さまざまなジャンルのお店がある
日高見市場のおかみさんにスタンプを押してもらった。1つ目のスタンプをゲット

●石巻立町復興ふれあい商店街
http://www.ishinomakimatinaka.com/fureai

 石巻まちなか復興マルシェにも立ち寄り、川を挟んだ対岸を見ると「石ノ森萬画館」があった。石ノ森萬画館は、石巻市出身の漫画家である石ノ森章太郎氏の記念館。大きな震災被害にあったところだが、2012年11月17日に再オープンした。再オープンしているので、ここにも立ち寄り。サイボーグ009や仮面ライダーで知られる石ノ森氏だけあって、さまざまな作品が展示されていた。個人的に興味深かったのは、「龍神沼」の詳細なシーン解説展示が行われていたこと。漫画のカット割りの大切さを、少しだけ理解できた気がする。この石ノ森萬画館には、漫画の読書コーナーもあり、ちょっとした時間つぶしにも使えるだろう。

石巻まちなか復興マルシェ
石巻まちなか復興マルシェの対岸を見ると、石ノ森萬画館がある
石ノ森萬画館は再オープンしている。読書コーナーには石ノ森章太郎氏以外の漫画も置いてあった

●石ノ森萬画館
http://www.man-bow.com/manga/

 1日目の旅はここまで。宿は2日目の移動に備えて松島に取ったため、三陸道を松島まで戻った。

2番目のスタンプポイント:南三陸さんさん商店街

2日目は松島から南三陸町を目指した。写真は南三陸町にて撮影したもの

 2日目は、松島から南三陸町を目指し、その後、気仙沼市を目指す。松島から三陸道を北上し、桃生津山ICで国道45号に。国道45号を東進すると南三陸町に到着する。

 南三陸町は津波で大きな被害を受けており、街中に入ると建物の基部が目立つという状況。最後まで津波からの避難の呼びかけが行われた3階建ての防災対策庁舎は鉄骨がむき出しとなって立っていた。JR気仙沼線の志津川駅もホームが若干残っている程度で、線路などが撤去された状態だった。

松島のホテルを出た後、まず給油。ここまでの走行距離は483.8km
松島や~
三陸道を北上
一般道に下り、国道45号を南三陸へ
交通量が意外と多い
南三陸町の手前にあるセブンイレブンの仮設店舗。いくつかのコンビニエンスストアが、仮設店舗での営業を行っていた
少し高い個所から南三陸町を撮影。道路は整備されているものの
JR志津川駅のホームから。すでに線路は撤去されており、駅であることは分からない状態
3階建ての防災対策庁舎。多くの花が捧げられていた

 南三陸さんさん商店街は、そのJR志津川駅から北に位置する商店街で、復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットにも「キラキラ丼」が紹介されている。キラキラ丼は南三陸さんさん商店街の各食事処がいくらをテーマに味を競ったもので、創作いくら丼と思えばよいだろう。

 そのキラキラ丼を楽しみに南三陸さんさん商店街に行ってみたが、この商店街の入口に「JR志津川駅」という建物が新築されていた。駅と言っても列車が到着する駅ではなく、待合室&トイレなどが用意された多機能なバス停。JR気仙沼線は、柳津~気仙沼駅間で不通となっているが、JR東日本はこの区間の鉄道復旧までの代替としてBRT(バス高速輸送システム)による本格運行を2012年12月22日に開始していた。

 このBRTでは運行が完全に管理されているため、駅やバス内のモニターにさまざまな運行情報を表示でき、iPhoneおよびAndroidスマートフォン用で運行情報などを閲覧可能な「BRTネット」アプリも用意している。バス車両も、通常タイプに加え低床のハイブリッド車両を走らせ、一部鉄道軌道を利用した専用軌道を走行するなど、JR東日本の新しい取り組みが見られる。実際、この新しいJR志津川駅バス停には多数のモニターが備えられており、バスの位置がひと目で把握できる。モニターを見ていると間もなくバスが来るようで、とりあえずバス待ちをしてみた。

 定刻どおり入ってきたバスの正面には「気仙沼線BRT運行開始」というヘッドマークが誇らしげに付いている。この辺りが鉄道事業者が運行するバスらしいなと思わせるところで、バスの車体には地域のキャラクターも描かれていた。

最新のバス停として生まれ変わっていたJR志津川駅
採光窓の部分には、太陽電池プレートが貼られていた
構内のモニター。定刻!!
こちらは全体の運行状況。すべて定刻!!
「BRTネット」アプリも用意され、スマートフォンで運行状況を知ることができる
定刻どおりバスがやってきた。が、通常タイプ
そこで1本待ってみたら、期待どおりのハイブリッドバスが定刻どおりやってきた
ハイブリッドバスは低床タイプ
BRT運行開始のヘッドマーク

 最新のバス運行システムに感銘を受けたところで、いよいよ南三陸さんさん商店街へ。南三陸さんさん商店街は、イベントステージなども備える商店街で、石巻立町復興ふれあい商店街と同様、理容店や電器店など地域を支える商店街としての側面を持つ。今回の目的はキラキラ丼を食すことなので、各食事処のキラキラ丼の看板をあれこれ見て悩んだ結果、松原食堂へ入ってみることにした。

 松原食堂のキラキラ丼は、いくらのほか、ほたて、たこ、別皿で生がきが付いており、海の幸が満載。味ももちろん二重丸で、大変おいしかった。紹介メニューによると、丼の直径は16cmとのこと。なお、このキラキラ丼の提供は2月28日までとなっていたので、旅行日程には注意してほしい。松原商店を出た後、商店街の中にある観光協会のブースで2つ目のスタンプを押した。

南三陸さんさん商店街の地図。復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットより
南三陸さんさん商店街。右に見えるビニールで覆われた建物がイベントステージ
お店と場内マップ
各店舗のキラキラ丼の紹介
観光協会のブースで2つ目のスタンプをゲット
松原食堂のキラキラ丼を食した。味は……絶句するほどの美味しさ

●南三陸さんさん商店街
http://www.sansan-minamisanriku.com/
●キラキラいくら丼
http://www.m-kankou.jp/bowl/

3番目のスタンプポイント:復興屋台村 気仙沼横町

気仙沼 鹿折唐桑駅前に今も残る第十八共徳丸。気仙沼地区で唯一残る、陸に打ち上げられた船

 南三陸町を後にし、国道45号を気仙沼へと北上する。この辺りの国道45号は、アップダウンとゆるやかなカーブが組み合わされた道路で、標高が低くなると町が現れ、町を抜けると標高が高くなって緑の山道になるといった具合だ。但し、標高の低い町のほとんどは被災しており、緑の山道と、被災した町が交互に現れる。

 40kmほど走ると気仙沼市へ到着。気仙沼市は標高差のある町で、標高の低い港に近い地域では大きな被害が今も残る。魚市場の建物が一部復旧しており、そこの壁に「津波浸水深ここまで」というプレートが貼ってあったので、階段を上り目線を合わせてみた。その位置から見る風景は、気仙沼港近辺がすっかり津波に飲み込まれたことが想像できるものだった。

改修工事の進む魚市場。側面の階段から屋上へ上ることができる
側壁に残る「津波浸水深ここまで」というプレート
津波浸水深にあわせて撮影した写真。どれほどのものが津波に襲われたのだろう
気仙沼港より南に広がる風景。ダイハツのマークは、そこにディーラーがあったことを示しているのだろうか

 港の改修工事の警備をしていた地元の人と話をしていたら「第十八共徳丸は見ておいたほうがよい」と言われ、第十八共徳丸の打ち上げられている鹿折唐桑駅前まで足を延ばしてみることにした。地元の人の話によると、震災時に多数の船が陸に打ち上げられたが、現在残っているのは第十八共徳丸だけ。行政側は震災を記録するものとして残したい意向があるが、地元住民側からは震災時を思い起こしてしまうので、撤去&解体の要望が出ていると言う。行政側と住民側で話し合いが続いており、結論が出ていないため第十八共徳丸は鹿折唐桑駅前に打ち上げられたままになっている。

 JR気仙沼駅からドラゴンレール大船渡線で1駅行った場所に位置する鹿折唐桑駅前にクルマで行ってみたが、第十八共徳丸以外には被災した建物の基部だけが広がっており、駅前であったことを想像するのが難しいほどだった。駅舎もなく、駅前の繁華街もなく、陸に大型船が存在していた。

鹿折唐桑駅前に打ち上げられた第十八共徳丸。場所は駅前だが駅も被災のためなくなっている
第十八共徳丸から駅と反対側を望む。おそらく駅前らしく多くの建物があったのだろうという区割りが見て取れる

 その後、気仙沼港地区へと戻り、3つ目のスタンプポイントにした復興屋台村 気仙沼横町へ。ここは屋台村と名打たれているように、ラーメン屋やまぐろ料理屋、焼き鳥屋やバーなどの屋台と、鮮魚店や海産物店などの物販を行う店で構成されている。ここでは気仙沼の名物であるふかひれをおみやげとして購入し、復興商店街としては最後となる3つ目のスタンプを押した。後はSA/PAのスタンプを押せば、スタンプラリーの規定を満たしたことになる。

気仙沼には2つのスタンプポイントが設定されている。復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットより
復興屋台村 気仙沼横町
飲み屋などもあるが、海産物屋でふかひれを購入した
3つ目のスタンプをゲット。残るは高速道路のSA/PAスタンプだけ

●復興屋台村 気仙沼横町
http://www.fukko-yatai.com/

 スタンプラリーの目処がついたところで本日の宿「気仙沼プラザホテル」へ。気仙沼プラザホテルは、姉妹館として「気仙沼ホテル観洋」がある。支配人によると、「気仙沼プラザホテルは、食事の充実した観光客向けのホテル。気仙沼ホテル観洋は、今現在は復興支援者向けで受け入れをしているホテル」とのこと。さらにグループホテルとして南三陸に「南三陸ホテル観洋」も持つ。

 いずれのホテルも通常どおり営業中とのことで、ぜひ気仙沼を訪ねた際は利用してほしいとのことだ。復興商店街を巡る上で気になるのは、インフラがどのくらい整っているのかということと、被災地の迷惑にならないかということ。松島から気仙沼まで走った限りにおいては、道路は問題なく通行でき、給油所も各地にあった。ただし、給油所に関しては営業時間なども不明だし、被災して位置が変わっているためカーナビで探すのは難しいと思う。航続距離が気になる場合は、迷わず給油しておいたほうがよいだろう。

 また、宿泊施設だが、通常どおり営業している個所も多く、気仙沼プラザホテルなどはその代表的な例だろう。

通常どおり営業している「気仙沼プラザホテル」
気仙沼プラザホテルの食事例。コースや季節によっても異なると思われるので、詳細はホテルに確認のこと(写真提供:気仙沼プラザホテル)
気仙沼プラザホテルは気仙沼温泉の露天風呂(写真左)と内風呂(写真中)を持つ(写真提供:気仙沼プラザホテル)
ホテルのエレベーターで容易にアクセス可能な「お魚いちば」。さまざまな海産物が売られている

●気仙沼プラザホテル
http://www.pkanyo.jp/

 明けて翌日、東京へ戻る最終日。気仙沼市まで来たら、2011年に世界文化遺産に登録された中尊寺はそれほど遠い目的地ではない。せっかくなので中尊寺を訪ね、平泉前沢ICから東北道経由で帰京することにした。

 中尊寺境内は、やや雪の残る状態で、厳かな雰囲気。冬のためそれほど観光客は多くないものの、世界遺産登録後は訪れる人がとても増えていると言う。中尊寺参拝後、平泉前沢ICから東北道に乗り、燃費チェックの関係で仙台宮城ICで一般道へ。IC近くの給油所で給油後、再び仙台宮城ICへ。東北道を南へ走り、那須高原SAに2012年12月に開業したドラマチックエリア那須高原へ向かった。この那須高原SAでハイウェイスタンプを押し、復興商店街を巡る旅スタンプラリーのミッションコンプリートとした。

中尊寺へと続く参道。坂であり、雪が積もっていたため、歩くのが大変だった
中尊寺
金色堂が収まる覆堂
燃費チェックのため、仙台宮城ICで下り、IC近くのスタンドで満タンに
ドラマチックエリア那須高原に着いたころには夜になっていた
ドラマチックエリア那須高原でスタンプ台を発見
最後のスタンプを気合いを込めて押す
ミッションコンプリート写真。スタンプの押し方がイマイチ下手かも

ノートとスタッドレスタイヤと燃費

 今回の記事作成の足となってくれたのが長期レビューでもお届けしている日産「ノート」だ。最初に東京都杉並区のセルフスタンドで満タンに。その後宮城県の松島で給油。松島以降は南三陸~気仙沼~平泉を巡り仙台宮城ICを下りて近くのスタンドで給油。最後に東北道 蓮田SAで給油を行った。

走行区間走行距離給油量計算燃費ノートの表示燃費
東京~松島483.8km24.75L19.5km/L20.5km/L
松島~気仙沼~仙台宮城333.4km19.00L17.5km/L18.1km/L
仙台宮城~蓮田328.3km18.35L17.9km/L21.9km/L
合計1145.4km62.10L18.4km/L

 3日間1000km以上走ってみて感じたのは、ノートの巡航性能の高さ。コンパクトカーなのだが、それほど疲れることはなく快適に長距離移動を行えた。スーパーチャージャーの加給域に入らないと元気がよいとは言えないエンジンだが、ボディー剛性の確かさ、ハンドリングの正確さなど、運転における不確実性が少ない。そのため、安心して運転することができ、それが疲労の小ささにつながっているのだろう。

 普段使いに便利なノートが、長距離巡航性能も持っているのはありがたい。ノートの燃料タンクは41Lだが、その優れた燃費性能のおかげで700km以上の航続距離を期待できる。そういった点でも、旅に出かけるのに向いているクルマと言える。

復興商店街を訪ねてみよう

 復興商店街をいくつか巡ってみて感じたのは、商店街の人が市外や県外からの来訪を待ち望んでいること。商店である以上当然とも言えるが、それ以上に被災地を見てほしいという気持ちが伝わってきた。復興商店街を巡る旅スタンプラリーがきっかけになり、少しでも多くの人が東北方面に出かけてくれればと思う。

 気になるインフラ面については、本復旧された高速道路、ほぼ整備の終わっている一般道、各所に用意された給油所、各地のホテルや旅館など旅に出かける上での障害はほとんどないと言ってもよい(航続距離の短い車種のユーザーは、給油をまめに行うことを忘れずに)。

 但し、この季節にクルマで東北に出かけるためにはスタッドレスタイヤの装着が、自分や同乗者の安全と、他人に迷惑をかけないためにも必須だろう。とくに東北の太平洋側は積雪が少なく、チェーンを装着しない状態で安心して走っていると突然の雪の積もったコーナーが現れ、対処不能という事態もありえるからだ。

 もし、スタッドレスタイヤが用意できないようであれば、キャンペーンは終わってしまうものの春以降に訪れるのがお勧めだ。その際も、NEXCO東日本のSA/PAで復興商店街を巡る旅スタンプラリーのパンフレットを見かけたら保存しておこう。復興商店街を反映している地図は少なく、これだけまとまっている地図は旅に出る際の役に立つだろう。料金検索サイト「ドラぷら」にもパンフレットと同様のものが公開されているので、こちらをあらかじめダウンロードしておくのもありだ。

●復興商店街を巡る旅スタンプラリー
http://www.driveplaza.com/info/fukkou_stamp/

 2泊3日の旅を終えて思うのは、決して楽しいだけの旅ではなかったものの、東日本大震災の被害規模の大きさを改めて感じる旅だったということ。今の日本の現状が深く心に突き刺さった旅だった。

震災復旧工事の終わった東北道を東京へと向かう。車線規制などもなく、快適に帰ることができた

編集部:谷川 潔

Photo:清宮信志