トピック

初公開の「ヴェゼル ツーリング Modulo X Concept 2019」の話題も出た東京オートサロン 2019「Modulo Xトークショー」

2019年1月11日 開催

Moduloトークショー/東京オートサロン 2019(28分8秒)
ホンダブースのステージで行なわれた「Modulo Xトークショー」

 1月11日~13日に幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催された東京オートサロン 2019は、3日間の合計で33万666人という過去最高の来場数を記録。大盛況で終了した。

 東京オートサロンは元はチューニング、カスタムカーのショーだったので、東京モーターショーに比べて「濃いめのクルマ好き」が多く来場する。そのため、自動車メーカーもエッジの効いたコンセプトカーをこの東京オートサロンでデビューさせるケースが多い。

 その具体的な例としてふさわしいのが、本田技研工業のブースに展示される「Modulo Xコンセプト」のシリーズだ。現在発売されている「Modulo X」は「フリード」「ステップワゴン」「S660」と3車種あるが、これらはすべて市販前に東京オートサロンに展示されていた。そしてクルマ好きの来場者に見て、乗り込んで、説明を聞いてもらい、しっかりとした手応えを掴んだ後に市販化されてきた。このように、東京オートサロンとModulo Xの関係は特別なものでもあるのだ。

 そんなところから、今回の東京オートサロンでもModulo Xが関わるコンテンツが用意されていたので、ここではそれらについて紹介していく。

東京オートサロンのホンダブース。中央に大きなステージが設けられ、開期中はさまざまなコンテンツが行なわれた

 ホンダブースに作られた大きなステージではいろいろな催しが行なわれていて、その中の1つが「Modulo Xトークショー」である。Modulo Xトークショーはオートサロンの会期中に毎日行なわれていたが、ここでは初日である1月11日の模様をお伝えする。初日の登壇者はホンダアクセスのModulo開発統括 福田正剛氏と、Modulo Xの開発アドバイザーである土屋圭市氏で、MCにはクルマ好きでおなじみのフリーアナウンサーの安東弘樹氏が起用された。

Modulo X開発アドバイザーの土屋圭市氏
Modulo開発統括の福田正剛氏

 ステージに登場した土屋氏と福田氏。この組み合わせは2018年のSUPER GT各会場でもおなじみで、Car Watch読者にも、レース期間中にイベント広場のホンダブースで行なわれていたModulo Xトークショーを見た方もいるのではないだろうか。走りのいいホンダ車をさらに高みに上げるという精も根も使う仕事を一緒にこなしてきた両氏だけに、話の内容は毎回面白かったのだが、今回は2019年の東京オートサロンである。それだけに、きっと新しいネタがあるはずと踏んでいたが……、ありました。

 トークはまず、土屋氏とModuloの関わりの紹介から始まった。土屋氏は「自分はクルマやパーツの評価をするとき、ストレートに言い過ぎちゃうんですね。だから避けられることもあったりします。でも、そんな物言いを歓迎してくれるが福田さんでした。ホンダのクルマはスポーティなものが多いですけど、もうワンランク上のクルマを作ろうと思っているのが福田さんで、そのために僕のような物言いすら生かしていこうと考える人なんですよね」と語った。

「自分は感想をストレート言うので煙たがられることもあるけど、この人はそこを評価してくれるんだよね」と土屋氏は福田氏のことを紹介

 そんなトークを続ける土屋氏の後方にある大型モニターでは、Modulo Xの開発時にテストコースで撮影した映像が流されていたが、そこにはスポーツモデルばりのハードなコーナーリングや、大きな凹凸が連続するカーブをハイスピードで走り抜けるModulo Xシリーズの姿が映されていた。

 この映像はかなりインパクトのあるものなので、ステージ前に集まったギャラリーの視線は自然とモニターに集まる。すると土屋氏は「こんなことしないですよ、普通は。クルマ的にこんな走りはまずしないので、普通はやっても無駄と言われて試さないことが多いと思うんですが、福田さんは『やってみよう。あり得ないシーンだとしても、どんな結果になるか見てみようと』と言うんです」と解説。MCの安東氏は「でも、これをやらないとダメなんですよね?」と福田氏のほうを見る。

 その問いかけに対して福田氏は「やらないと、というより、僕も土屋さんもクルマが好きでやっているんで(笑)。まあ、大変ですけど、こうしたところまで攻め込んでいくことで見えてくるものもあるのです。それを開発しているクルマに取り入れて、ドンドン高めていくのはとてもやりがいを感じることです。すごく楽しいですよ」と返した。

ステージの大型スクリーンには、北海道 旭川にあるホンダの聖地「鷹栖テストコース」でのテスト風景が映される。そこには“Modulo Xだからやる”というハードなテストの模様が映し出されていた
安東弘樹氏もかなりのクルマ好きで、仕事が終わってから数百kmドライブすることもよくあるそうで、年間5万kmも走るという。そんなことから「サスとシートがよくないクルマは本当に疲れますが、先日お借りしたS660 Modulo Xは全然それがなく、楽しく長距離を走れました」とコメント。クルマ好きを公言するタレントは多いが、この人は別格という気がする

 さて、S660やステップワゴンのModulo Xの話題が続いた後、モニターには白い「ヴェゼル」が映し出された。これは今回の東京オートサロンで初公開された「ヴェゼル ツーリング Modulo X Concept 2019」というモデルだ。

 このクルマについて福田氏は「ウチのクルマは、乗って動き出したときから安心感があると言ってもらえることが多いんです。こうした印象を持ってもらえるのは非常に大切なことで、ヴェゼルもそんなところを求めて作っています。また、世の中のいいクルマでは自分の意のままに走るというフレーズが付いてきたりしますが、われわれのヴェゼルもそう感じられるよう仕上げている最中です」と解説。

 土屋氏は「僕は評価する側なので色々と言わせてもらってます。だから、最初のころなんて大変ですよ。2人して黙りこくってしまうような状態になります。だけど無言で数分間過ごした後、福田さんは『分かった』”とひと言口にして立ち上がり、ダンパーやスプリングを換え始めるんです」と開発中の状況を話す。

 そして「Modulo Xのクルマ作りはいいものもわるいものもすべてテストするんです。だから、いろんなことを飛び越えた部分で何かを見つけられるんです」と語った。

福田氏は「たくさんのことをテストしてそれをクルマに取り入れていくと、スポーツ選手がトレーニングで鍛えていくのと同じように力強さが出るだけでなく、クルマではその強さが上質な走りにつながってくるのです」と語る

 ベースになっているヴェゼルは人気のあるクルマなので、それを「Modulo Xに仕立てる」ということに興味がある人も多いだろう。そこで福田氏が語ったこの解説を紹介しよう。「今のクルマは、走りを補助したり安全性を高めるためにいろいろな制御が付いていますが、それらが作動するということはバランスが崩れた時ですが、土屋さんと作っているヴェゼルは激しく攻めても制御が入らないんです」というものだ。

 この話をした後、福田氏は「つまりクルマの安定度が高いということですが、これって表現が難しいですよね……」と言葉に詰まるシーンも。そこで身を乗り出すように聞いていた安東氏が「オートサロンに来ている方には通じていると思います」と即座にひと言。確かに「制御が入らない」というところでは「ゾクっ」とする凄味を感じた。ただ、この点については会場にいた人と同様、Car Watchの読者の方も十分理解できることだと思う。

ヴェゼル ツーリング 車両開発イメージ映像
初公開された「ヴェゼル ツーリング Modulo X Concept 2019」
下面の空気の流れを整えるアンダーカバーの形状
リアの下まわりも同様の空力パーツが付く。Honda SENSINGとの関係があるので、車高はベース車と変わっていない
Modulo Xシリーズに付くエアロパーツはすべて意味があるもの。飾りではない
ヘッドレスト一体式でModulo Xのロゴも入る専用シート。バックスキンも使って滑りにくいものにしている
リアシートは標準仕様のRSグレードと同じだが、ステッチを廃止することでフロントシートとイメージを合わせている
ドアトリムも高級感が向上している
フロアマットはホンダアクセスが用意する最上級品をベースにした専用品になっていた
専用デザインのホイール。奥に白いModulo X用のダンパーが見える。“スポーツカー的にも走れるSUV”という非常に楽しみな1台だ

 そんな感じでテンポよく進んだModulo Xトークショーもいよいよ終了時刻が近づいてくるが、トークのペースは落ちない。土屋氏が「Modulo Xの開発には2~3年の期間を用意してくれます。普通ないですよ、追加モデルの開発にこんなに時間をくれる自動車メーカーは。そして福田氏も仕事の枠を超える勢いで、あれもこれもといろいろと試して作っていくんです。ホント、何度も言いますがこんな会社は他にないですよ」と言えば、安東氏も「クルマのよさもいろいろありますが、運転が楽しいクルマが増えればクルマに乗っていたいと思うでしょうから、そんな足を持ったクルマが多く登場すれば、クルマ好き……、いや、運転好きが増える気がしますね。Modulo Xの試乗車は全国のホンダディーラーにあるということなので、1度乗ってもらうことを切に!切に願います!」と力強くつなぐ。

 そんないつもとは違う盛り上がりを見せつつ、東京オートサロンでのModulo Xトークショーは終了した。

 なお、Moduloトークショーは2月9日~11日に開催される「大阪オートメッセ 2019」のホンダブースでも連日実施を予定。開催時間などの詳細は、ホンダの大阪オートメッセ紹介Webサイト(https://www.honda.co.jp/automesse/)を参照していただきたい。

30分間のトークショーだったが、あっという間に終わった印象。大勢の人が土屋氏、福田氏、そして安東氏の話に引き込まれていた
ホンダブースではヴェゼルの他に、2018年12月に発売されたばかりの「ステップワゴン HYBRID Modulo X」と、「S660 Modulo X Version 2019」が展示されていたので、この2台も紹介していこう。まずは要望が多かったハイブリッドモデルのModulo Xも登場したステップワゴン HYBRID Modulo X
センサーが入るグリルの上側とボンネットの間は、標準車では大きく窪みが作られているが、Modulo Xではここをフラットに近づける形状にして空気の流れをよくしている
バンパー横側も風を側方へきれいに流す造形
LEDフォグランプの上にインテークダクトがある。ここから入る風は車体下方へと流されるが、その時にタイヤハウス内に溜まる空気を引っ張って抜く効果をもたらす。こうしてタイヤハウス内の圧力を下げるとサスペンションの動きもよくなるという
バンパースポイラーの下面。整流用のフィンが設けてある
リアスポイラーも装備。ステップワゴン スパーダでもスポイラーは付くが、ステップワゴン HYBRID Modulo Xではフロントとの空力バランスから、マイナーチェンジ後用のリアスポイラーではなく、少し小振りなマイナーチェンジ前用のリアスポイラーを採用している
リアまわりも各部の色使いが変更されている
ステップワゴン Modulo Xにはハイブリッドモデルとガソリンモデルが用意されるが、ハイブリッドモデルのホイールは標準車と同じ16インチを採用。車重が重いハイブリッドモデルでは要求されるタイヤの荷重指数が高く、インチアップできないのだ
ホイールのカラーだけでなくナットの色も合わせてある
10インチ プレミアムインターナビにはマルチビューカメラシステムが付いた
S660 Modulo X Version 2019。マイナーチェンジを見据えた仕様変更だが、スペックやエアロパーツに変更はない
ホイールはブラックスパッタリングという高級なメッキに変更。ナットはブラック仕上げだ
マフラーのフィニッシャー内側を黒く塗装することで、ススが付いても見栄えが落ちないようにしている。そんなことまで気に掛けているのだ
エンブレム類はダークブラックメッキになっているが、これはショー用で、実際に販売される時はもっと黒くなるという
インテリアも形状などに変更はない
純正アクセサリーのシートセンターバッグもModulo X専用品が用意された
ドアライニングマットがModulo X用に開発されたボルドーレッドになった
展示ホールとは別に、幕張メッセに隣接するZOZOマリンスタジアムの敷地内では同乗試乗会が行なわれていた。ホンダアクセスはここに、なんとコンセプトカーの「T880」と「S660 Neo Classic」を出していた
2017年の東京オートサロンで展示されたT880
2016年の東京オートサロンに展示され、カスタムカーコンテストでグランプリを受賞したS660 Neo Classicの市販仕様
ドワンゴとホンダによるiPhone向けアプリ「osoba」仕様のS660も試乗車として用意。矢吹健太朗氏が描く初音ミクのスタンディも展示された
T880の試乗の模様。コンセプトカーに乗る機会はまずないので貴重な機会となっていた