トピック

藤島知子のSUVで人気スポットの伊勢神宮へ 長距離ドライブで感じたフォルクスワーゲン「T-Roc」の魅力

2021年上半期の輸入車SUVカテゴリーで「T-Cross」に次いで人気となった「T-Roc」

 カラリと空気が澄みわたる冬場は、車窓から望む景色を美しく見せてくれる季節。寒さはそれほど得意な方ではないけれど、日常から離れた地で歴史や文化に触れてみたいとか、そこでしか味わえない食を堪能したいといった欲求が時おり湧き起こってくる。そんな気持ちに背中を押されて、伊勢志摩にドライブに出掛けることにした。

 今回の旅の相棒はフォルクスワーゲン「T-Roc」に専用装備を施した特別仕様車“Black Style”。フォルクスワーゲンといえば、ドイツの厳しい交通環境で鍛えあげた質実剛健な走りや、最新技術を身近なクルマに搭載するクルマづくりで通をうならせてきた自動車メーカーで、最近では比較的コンパクトなクラスに新種のSUVを登場させて話題を呼んでいる。中でも、2020年に上陸したT-Rocはスポーティで洗練されたルックスや日本の道路事情にマッチする向き合いやすさが人気を呼んで、2021年上半期には輸入車SUVの販売で第2位を獲得した(ちなみに、最も売れたのは同社のひとまわり小さな「T-Cross」だった)。

 T-Rocは2トーンカラーを含むカラーバリエーションが用意されているところも魅力の1つだけれど、“Black Style”はそれとは対照的にグッと引き締まったイメージ。ドアミラーやルーフレール、10スポークの18インチアルミホイールにブラック塗装が施されているほか、Cピラーの幾何学模様は全体をハイセンスに引き立てる立役者だ。T-Rocは都会的な風景の中では凜とした存在感を放つスタイリッシュなSUVといえるが、レジャーに活躍する実用性を備えているあたりは今回のような長距離ドライブにピッタリといえる。リアシートは大人が座っても身体まわりにゆとりが得られるほどの広さがあるし、積載性については床下収納や後席のシートアレンジを活用すれば、かなりの容量を確保できる。

今回の旅で相棒に選んだのはフォルクスワーゲン「T-Roc」の特別仕様車“Black Style”(ディーゼル仕様のT-Roc TDI Black Style:416万9000円)。11月に発売されたばかりで、ガソリンモデルの「T-Roc TSI Black Style」(396万7000円)をチョイスすることもできる
T-Roc TDI Black Styleのボディサイズは4240×1825×1590mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2590mm。デザイン性が際立つグレード「Style Design Package」をベースとし、ブラックを基調にデザイン性をより際立たせる専用アイテムが内外装に装備される
エクステリアではフロントグリル下部、ウインドーフレーム、サイドストリップ、リアストリップ、ルーフレールをブラックとした専用エクステリアを採用。ブラックの18インチアルミホイール(10スポーク)も専用装備
Cピラーの特徴的なデザインがT-Rocをハイセンスに引き立ててくれる
T-Roc TDI Black Styleのインテリア。インパネやシートの加飾がボディカラーと同系色でコーディネートされ、内外装で統一感を図っている
“Black Style”では通信モジュール(eSIM)を内蔵し、常時オンライン化を実現する純正インフォテイメントシステム“Discover Media”を特別装備。ここで「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」の4通りの走行モードを選択できる。また、インフォテイメントシステムとスマートフォン間の通信を可能とする”App-Connect”を有し、Apple CarPlay、Android Auto、MirrorLinkに対応

新東名の120km/h区間でも揺るぎないパフォーマンスを発揮

 前置きはさておき、いざロングドライブに出発! 目的地はNAVITIMEが発表している人気スポット総合ランキングで3年連続1位になっている伊勢神宮。

 運転席に乗り込むと、インパネの艶やかなブラックパネルがさり気なく洗練された雰囲気を醸し出している。ダークグレーのファブリックシートは中央にブラック色の帯を走らせてホワイトで縁取ったパターンを採用。色使いは控え目でもコダワリを感じさせる素敵なたたずまいだ。シートの造形は乗り降りしやすいプレーンなカタチをしているのに、しっかりとした座り心地を与えて、疲れにくい姿勢を維持できるあたりがフォルクスワーゲンのシートだと感じさせる部分。

 横浜から出発して、東名高速を名古屋方面へ。今回のモデルに搭載されている2.0リッターのディーゼルエンジンは低回転から豊かなトルクを発揮するもの。アクセルペダルはそれほど深く踏み込まずして、余裕をもって走り出すことができる。最近ではガソリン価格が高騰して燃料代が気になるところだけど、ディーゼル車の燃料は軽油だから、ハイオクと比べると1Lあたり30円近く安い。横浜から伊勢を往復する900km以上の距離をカタログ値のWLTCモード燃費=18.6km/Lで割り出すと、48Lほどの燃料を要することになる。そのぶんの燃料代を比較しただけでもディーゼルモデルは1500円近く安価ですむのでお財布に優しい。もちろん、1年で何度も遠出することを考えたら、数万円の差が生まれるはずだ。

 トルクフルなエンジンは合流や追い越しなど、周囲のクルマの隙間を縫って、そこを走りたいと頭で思い描いた地点にスッと車体を持ち込むことができる。早朝に出発して、朝がたは大雨に見舞われたが、T-Rocは前輪駆動のモデルながら、車体の姿勢が乱れにくい安定した走りを披露してくれて助けられた。リラックスしてハンドルを握っていられるから、同乗者と会話を楽しむ余裕が生まれる。御殿場JCT(ジャンクション)から新東名ルートに差し掛かるころには徐々に天候が回復。新東名は制限速度が120km/hに引き上げられた区間が広がっている。そういう区間を走るとき、T-Rocなら余裕をもって高い車速を維持して走る揺るぎないパフォーマンスを発揮してくれる。

 ドイツでは速度無制限のアウトバーンで鍛えられたクルマだけあって、抜群の直進安定性をみせてくれるし、車線変更やJCTのカーブで車体が不用意に揺すられるようなそぶりを見せない。深い山並みやトンネルが続く区間は景色に変化が少なくて漫然運転になりがちだけれど、こうした場所を巡航する時に活躍してくれる機能がアダプティブ・クルーズ・コントロール。前走車と車間を維持しながらアクセルとブレーキをコントロールしてくれるほか、車線の中央付近を維持して走る操舵支援機能も付いているから、長距離移動によるドライバーの負荷が少ない。伊勢湾岸道に入ると、名古屋港の活気を見渡す名港トリトンを通過。やがて、伊勢西IC(インターチェンジ)で一般道へ降りていく。

直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルターボエンジンの最高出力は110kW(150PS)/3500-4000rpm、最大トルクは340Nm(34.7kgfm)/1750-3000rpmを発生。WLTCモード燃費は18.6km/L

見どころ満載な伊勢神宮

 伊勢に到着したらもうお昼時だったので、伊勢神宮のお膝元にある老舗割烹「大喜」に立ち寄って、伊勢志摩の旬にあやかることに。せっかく足を伸ばしたから、ちょっとぜいたくをして伊勢えび定食をいただくことに。伊勢エビの身はプリプリの食感で甘さを感じるほどに新鮮。炊き上げたお野菜のうまみにうなり、赤だしをすすりながら、ここまで足を伸ばしてきた地の恵みを味わい尽くす。

お昼は伊勢志摩の旬の素材が楽しめる老舗割烹「大喜」へ。せっかくなので志摩の名産、伊勢海老が楽しめる「伊勢えび定食」(5500円)をいただきました。この定食では伊勢海老の調理方法として活造り、鬼がら、具足煮から選べます

 伊勢神宮は毎年多くの参拝客が訪れる名所だが、内宮に向かう入り口で鳥居をくぐり、五十鈴川に掛かる木造の宇治橋を渡って参道を歩いていく。敷地内には樹齢数百年の樹木が幾重にも空高くそびえていたりして、地のエネルギーに優しく包みこまれていく感じがする。

取材日は伊勢神宮で月次祭が行なわれていたため撮影はできませんでしたが、樹齢数百年の樹木などが織りなす凛とした空気を感じながら御正宮で参拝してきました

 お参りの後は神宮門前町のおはらい町とおかげ横丁を散策。休憩がてら伊勢名物の赤福餅を頬張り、つくりたてで柔らかい餅とこし餡に舌鼓を打ち、2個の赤福餅と番茶をあっという間に平らげてしまった。コダワリの逸品を扱う土産物屋が軒を連ねていて、そぞろ歩きするのがなんとも楽しい。年末が近かったこともあり、お正月を迎えるためのお飾りも売られていた。

伊勢神宮、おかげ横丁を歩いたあとは赤福本店で休憩。赤福餅と番茶が疲れた体を癒やしてくれました。もちろんお土産としても購入可能で、8個入りや12個入りがある

 近くには伊勢の海や街並みを見下ろす山があるので立ち寄ってみることに。T-Rocはアップダウンが連続するワインディングロードをストレスなく駆け上がっていってくれる。車高が高いSUVなのに、ブレーキを掛けた時に鼻先の沈み込みが少なく、フラツキが少ないどころか、タイヤを路面に沿わせながら、カーブをスイスイとなぞるようにして走っていける。街乗りでは小まわりが効いてクルマが小さく感じるのに、高速道路では頼もしい安定感をみせ、こうした山間では活き活きとリズムを刻み、運動神経が優れた一面をみせてくれる。

伊勢のワインディングロードなどでT-Rocの性能を存分に体感。クルマ移動ならではの風景も楽しむことができました

 気まぐれな私の気分についてきてくれたT-Roc。クルマは好みのデザインやライフスタイルに応じて自分に合うモデルを選ぶものだけれど、こうして自分の気分に寄り添う走りを披露してくれるモデルは旅の道のりをいっそう彩り豊かなものに変えていってくれる。

 T-Rocは「ドライブ旅って、やっぱりいいものだな」と再確認させてくれた1台だった。

Photo:安田 剛、Illustration:ゆきぴゅー