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テスラ、電気自動車SUV「モデル X」発表会

“ファルコンウィングドア”や“細菌兵器対応空調システム”など独創的な機構多数

2016年9月12日 開催

895万円~

 テスラモーターズ ジャパンは9月12日、テスラにとって3車種目になるEV(電気自動車)のクロスオーバーSUV「モデル X」を日本国内で初公開し、同日から販売を開始した。テスラはモデル Xを「日本で販売される市販車として初めての100%電気自動車SUV(E-SUV)」としている。全車右ハンドル仕様で価格は895万円から。

 モデル Xの特徴は、リアドアが上に開く「ファルコンウィングドア」を採用していることに加え、前席のルーフの一部までをフロントウィンドウとつながるガラスエリアにした「オールガラス パノラミック ウィンドシールド」、クルマのシートとしては初めての形状になる「モノポスト方式」の2列目シートを採用している点などだ。

 モデル Xのボディサイズは5037×2070×1680mm(全長×全幅×全高)で最低地上高は186mm。ホイールベースは2965mmで車両重量は2468kgとなる。バッテリーとドライブユニットの保証は8年間距離無制限で、車両保証は4年、または8万kmとなっている。

モデル X P90D
モデル Xのグレード体系とスペック。最も安価な「60D」は900万円を切る895万円に設定している

 グレードは5つ用意され、航続距離(各NEDC値)355kmの「60D」、航続距離417kmの「75D」、航続距離489kmの「90D」、モーター出力をアップした「P90D(航続距離467km)」と「P100D(航続距離542km)」というラインアップ。価格は895万円からとなっている。モデル Xのショールームでの展示は、東京の「テスラ青山」が9月16日、大阪の「テスラ心斎橋」が9月17日から開始される予定。

ファルコンウィングドアの動きをフロントから
ファルコンウィングドアの動きの動きをリアから
テスラモーターズ ジャパン合同会社 代表取締役社長 ニコラ・ヴィレジェ氏

 モデル Xの販売開始に合わせて行なわれたプレス発表会では、プレゼンテーションをテスラモーターズ ジャパン 代表取締役社長のニコラ・ヴィレジェ氏が担当した。まずヴィレジェ氏は、テスラの紹介から話題をスタートさせた。

「テスラのことをご存じの方もいると思いますが、テスラはエミッションのことをとても大事に考えている会社です。始まりはシリコンバレーのエンジニアが、電気自動車がガソリン車を超えられるところを証明したいと考えて2003年に設立されました」。

「テスラの電気自動車は“瞬時に強大なトルクとパワーを得られる性能を持っているにも関わらずゼロエミッション”という部分を誇りとしています。また、安全性についても世界で最も安全なクルマを目指し、さらにスタイリッシュで運転が楽しいというクルマに仕上げています。こういったクルマを作ることで、ガソリン車から電気自動車への移行を促して“持続可能なエネルギーへ、世界の移行を加速する“というテスラのミッションを達成したいと思っています」と解説した。

 3車種目となったモデル Xは、車両のカテゴリーがSUVとなっている。このタイプのクルマは世界的にも人気が高いマーケットになっているので、そこに投入するモデル Xはテスラのビジネス戦略上とても重要なクルマとのこと。これについてヴィレジェ氏は「世界には多くのSUVがありますが、日本で市販される100%電気自動車というのはモデル Xだけです。また、SUVは一部のクルマ好きのユーザーだけでなく、家族のためにクルマに乗る人などにも好まれているので、そういった方々にテスラに乗っていただくことは、ゼロエミッションの世界へのシフトを加速させることにもなると思います」と語った。

“持続可能なエネルギーへ、世界の移行を加速する“というテスラのミッション達成のために選ばれたのが、世界的にも人気の高いSUVモデル

 続いてモデル Xの特徴について説明された。1つめはクルマへの乗り込みについて。施錠はキーレスエントリーで解除し、クルマに乗りこんだらブレーキペダルを踏むことでドアが閉まるが、このキーレスエントリー設定に関してはセンターコンソールに取り付けられた17インチタッチパネルで行なえるようになっている。次に鳥が翼を広げる動作のように開くファルコンウィングドア。このドアはただ上に開くというだけでなく、狭いスペースでも開閉できるようにダブルヒンジを採用しているのがポイントだという。この機構によってミニバンなどに採用されているスライドドアよりも、開閉時にスペースを必要としない構造になっていると説明された。これについては「狭いスペースでもドアの開け閉めが容易なので、小さいお子さんが乗り降りするときにも便利」とのこと。

 また、ファルコンウィングドアが持つガラスエリアも広いのだが、モデル Xはフロントウィンドウにオールガラス パノラミック ウィンドシールドを採用しているので、より視界が広くなっている。それだけに、どのシートからでもよい視界が楽しめると解説された。

ロックを解除するだけでなく、自動的にドアを開閉させることも可能なキーレスエントリー。複数の安全装置があるので、開閉中に子供が手足を出したり、急に降りたときなどはドアの開閉が自動停止する
ファルコンウィングドアが狭い場所で開くことをアピールするスライド資料
展示車両を正面から見ると、ダブルヒンジを採用したドアの動きが分かりやすい
横から見たスタイル。全長は5037mm、ホイールベースは2965mmある
クルマを起動すると自動的にポップアップするリアスポイラー。高速域では角度が変わる。また、スポイラーにはLEDのハイマウントランプが組み込まれている
パノラミックウィンドシールドを採用しているので視界が広くなっている
モデル Xは最大7名乗車が可能な3列シート車
ウッドパネルなどを使った運転席まわり。超ハイテクカーとは思えないシンプルなデザイン。なお、展示車両は左ハンドル仕様だが、日本で発売される車両はすべて右ハンドル仕様になる
メーターパネルはフルデジタルディスプレイとなる
17インチのタッチパネルでクルマへの指示や設定変更などさまざまな入力が可能
セカンドシートからサードシートへのアクセス。セカンドシートは独特の動きを見せる
セカンドシートはモノポストという一本足構造。ポストごと前後にスライド。もちろん電動だ
エンジンがないのでフロントのボンネットフードの下も収納スペースとなる。リアはサードシートを畳むことでより広いスペースが作れる
衝突安全性が高くアクティブセーフティ機能も標準装備しているので、SUVで初となる「安全性試験の全カテゴリーで5つ星」を獲得できるのではないかと言われている

 安全性についてでは、モデル Xはテスラ独自のプラットフォームをベースに作られており、バッテリーはフロア下に組み込まれている。そのため、SUVながら重心は極めて低く、車高が高くても横転などのリスクが軽減されるという。

 また、フロントノーズにエンジンがないので、正面衝突時のエネルギーを吸収するクランプルゾーンを非常に長く設けることができることも利点だと説明された。さらにスライドではサイドインパクトに対しても強いというテスト結果が公開されている。

ブレーキは前後ともブレンボ製キャリパーを装着。ピストンを押す圧力はポンプで発生させているという
業界初となる「HEPAエアフィルトレーション システム」を採用。生物兵器が使われた状況下にも対応できる空調システムだ。バイオハザードマークは本物

 このほか、こだわりの空調システムについても説明された。モデル Xでは業界初となる「HEPAエアフィルトレーション システム」を採用していて、作動させることで車外の環境に関わらず、車内を病院の手術室と同レベルのクリーンな空気で満たすことができるという。それだけに、例えば花粉症の人などにとってモデル Xの車内は居心地のよい場所になるとのこと。

 これに加え、HEPAエアフィルトレーション システムは外気導入と内気循環のほかにもう1つ「バイオウェポン ディフェンスモード」も搭載。これにより、細菌兵器などが使用された場合に車内に陽圧を発生させ、外部から空気が進入しないようにすることも可能となる。そんな装備が必要になるときは来てほしくないが、ここまで完璧に空気をコントロールできることは、アレルギー体質の人にとってはかなり魅力的と言えるだろう。

HEPAエアフィルトレーション システムを作動させたところ。PM2.5などの空気中にある汚れの数値がすぐに低下した

 こうしたハイテク装備や自動運転を採用するモデル Xだけに、ECU関連データの定期的なアップデートは必須となる。これは4G LTEを利用したソフトウェアアップデートが可能にしている。ちなみに、最新バージョンとなる「バージョン8.0」のソフトウェアがまもなくリリースされる予定とのこと。内容は主に自動運転についてで、これまでカメラとレーダー、超音波センサーを使っているが、このアップデートではレーダーの性能を向上させる内容が含まれているとのことだった。

テスラのシステムソフトが「バージョン8.0」にアップデートされる予定。こういったソフトのアップデートを行なうことで、ハードを交換せずに性能が向上していくのがテスラの特徴。通信は4G LTEに対応
トップグレードの「P100D」はスポーツカーを凌ぐ動力性能を備える。同時に航続距離は500km以上となっており、専用の充電ステーションも順次増やしているという