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JAL、「第2回 JAL CARGO日本地区フォークリフト大会」開催
意地悪な課題をクリアする参加者の姿に「お客さまの荷物への愛」を確認
2016年10月19日 20:18
- 2016年10月17日 開催
JAL(日本航空)は10月17日、羽田空港 JALメンテナンスセンター2で「第2回 JAL CARGO日本地区フォークリフト大会」を開催した。
この大会はJALグループ便が就航する国内空港における荷役業務の安全品質向上を目指し、日ごろ接することのない各空港の担当スタッフが持つ技術をお互いに学び合うことや、空港間のコミュニケーションを図ってグループの結束を強化するために行なわれているもので、2015年に続き2回目の開催となる。日本全国の28空港から代表の55人が参加し、個人戦と団体戦が実施された。
競技に先立って行なわれた開会式でJAL貨物郵便本部長の山村毅氏は、預かった荷物が依頼者の手を1度完全に離れた状態でハンドリングする旅客とは違う貨物の特性に触れ、そのハンドリングの高い品質こそがJAL CARGOの存在理由であり、その品質は知識や経験、技術だけではなく、そこに「どれだけお客さまの荷物を愛せるか」というハートがなければ維持できないと述べた。また、そういった観点から、コンテストでは技術だけではなく、その気概も含めて評価すると参加者に伝えた。
続いてJAL整備本部長 赤坂祐二氏、JAL空港本部長 阿部孝博氏、JAL東京空港支店長 屋敷和子氏がそれぞれ挨拶を述べ、その後に女満別空港から参加した2人による選手宣誓で大会は幕を開けた。
個人戦
個人戦は29人が参加して行なわれた。競技内容は倉庫内に設置されたコースを使って貨物を移動させ、設定されたさまざまな採点項目をこなしつつ減点方式で進められた。主な採点項目はスタート時の360度目視や指差呼称、コース走行時の運転姿勢、フォークリフトの爪の水平感覚と高さ、貨物のすくい上げ、移送、蔵置のさまざまな項目、さらにゴールでの駐車位置まで多岐にわたり、それらを制限時間8分以内で完了させるという高いハードルが設定されていた。ちなみに、貨物の上部のボックス内には、6本のピンの上にゴルフボールが置かれた状態となっており、これを落とすと減点になるという通常の貨物では考えられないほどナーバスで意地悪なまでの競技内容となっている。
いかにも難しそうな狭いコースだが、全国から集まった参加者はコースに接触したりせず、クランク状の意地悪な場所でも切り返すことなくゴールに向かう強者も多くいて、それぞれのレベルの高さがうかがい知れた。
この高いレベルの個人戦を制したのは中部国際空港(NGO)の吉本敬宏氏。2位に成田国際空港(NRT)の鎌形明寿氏、3位に伊丹空港(ITM)の澤本智行氏が続き、入賞者3名には表彰式でJAL貨物郵便本部長の山村毅氏から賞状が手渡された。
団体戦
各空港の2人1組で取り組む団体戦には28チームが参加した。競技内容は8分以内に2つのコンテナに積まれたそれぞれの荷物を入れ替えるというシンプルなものだが、個人戦同様にスタート時からさまざまな確認事項がチェックされたほか、コンテナ内の残留点検、タグへの確認サインの記載など、実際の現場で行なっている多くの作業が採点項目に盛り込まれた。
また、荷物としてもパレットに乗せられた500kgの鉄製ウエイトの上にポールが立てられ、その上には固定されていないバスケットボールがちょこんと乗った意地悪なもの。こちらはバスケットボールがポールから落ちた時点で競技終了となる厳しい内容となった。
団体戦ではフォークリフトの乗車前の点検から残留点検に至るまで、個人戦以上にJALの規定に則りながらも各空港の日常のちょっとした作業方法の違いといったものが見えて興味深かった。そんな団体戦で28空港のトップに立ったのは、地元 羽田空港(HND)から参加した簑田真氏、武田拓也氏のJGSチーム。なお、羽田空港からJALグランドサービス(JGS)と羽田エアグランドハンドリング(HAG)の2チームが参加している。
続く2位には中山武年氏、平田明樹氏の那覇空港(OKA)チーム、3位には木村匡良氏、吉本敬宏氏の中部国際空港(NGO)チームとなり、3チーム6名の入賞者には表彰式でJAL 代表取締役副社長 執行役員の藤田直志氏から賞状が手渡された。
「世界一の残留物確認タスクフォースチーム」によるデモンストレーション
競技終了後、成田空港の「世界一の残留物確認タスクフォースチーム」から、染谷一也氏、平山彰人氏の2人が来場し、残留物確認のデモンストレーションが行なわれた。2人はJALグループで起こった過去のミスなども赤裸々に明かしながらその取り組みに至ったいきさつを語り、その理念を以下のように参加者に伝えた。
「インターネットで誰でも気軽にメールを送れる時代に、手紙や絵葉書を送っている郵便物を見ると送る人の思いを感じます。私たちは送る人、受け取る人の思いも運んでいるので、そんな思いを途切れさせてはいけません。今回紹介したいのは手順ではなく気持ちであり、それこそがこの取り組みの肝の部分です。私たちはこの取り組みを通じてこの仕事の意義を再認識し、自分たちの仕事はこうあるべきだという意思があったからこそ、今では全員が同じ目標に向かって取り組めていると思います。これからは、この手順をみなさんとJALのスタンダードとし、残留物ゼロを現実したいのです」。
空港では駐機場で多種多様な車両が働く姿を目にするが、そのなかにフォークリフトを見かけることは少ない。多くの場合、フォークリフトの活躍の場は旅客ターミナルとは別の貨物地区と呼ばれるエリアで、今回の団体戦でも使われた「LD2」「LD3」というタイプのコンテナに貨物は積み込まれ、その後、「TT車」と呼ばれる小型トラクターで旅客ターミナルエリアまで運ばれるのだ。多くの場合でここから空港を訪れた見学者や利用者の目に触れることとなる。
そんな貨物の世界だが、我々の日常生活にとって実は身近な存在だ。郵便物や宅配便はもとより、北海道や九州から東京 築地を目指して多くの鮮魚が羽田空港を目指してくるという。また、沖縄や離島部では生活物資の輸送にも大きな役割を果たしている。航空機へのコンテナの積み込みは空港での日常風景だが、1機あたりの積荷のうち実は搭乗者からの受託荷物の割合は少なく、その多くは貨物だそうだ。
飛行機を利用する機会が少ない人の日常生活にも根付いているのが航空貨物の世界だ。旅客同様に1つのミスが大きな影響を与えかねないからこそ、このコンテストの意義も大きい。閉幕式では旅客畑出身であるJALの藤田副社長が「みなさんが取り扱っている貨物は、お客さまの夢であり、愛情であり、そして思い出だと思います。それを指差呼称して残留物を確認し、間違いのない仕事をしていることに心から敬意を表します」と語って大会の幕は閉じた。