首都高、新交通管制システム「AISS'09」を公開 あわせて中央環状線山手トンネル内の防災システム・防災対策も紹介 |
首都高速道路は2月26日、東京都内の西東京管理局において、新交通管制システム「AISS'09」(Advanced&Integrated Smartway System)の披露式を開催するとともに、報道陣に向けて新交通管制システムや、3月28日16時に開通する中央環状線山手トンネル内の防災システムおよび防災対策についての説明が行われた。
新交通管制システム「AISS'09」(Advanced&Integrated Smartway System)の披露式では、首都高速道路 代表取締役社長の佐々木克己氏(左)、東京大学名誉教授 越正毅氏(中央)、日本道路交通情報センターで理事長を務める矢代隆義氏(右)らが参加し、挨拶や祝辞を述べた |
■交通管制システムとは
交通管制システムは、情報の収集・処理・提供の3つの機能から構成され、集積されるデータを迅速に処理して道路交通情報を提供するという、首都高の心臓部にあたるもの。
首都高は、西東京管理局(管理路線:延長116.2km)、東東京管理局(管理路線:延長107.6km)、神奈川管理局(管理路線:延長71.2km)の3局がそれぞれの交通管制システムをもって各地区の管理を行っている。1970年に第一次交通管制システムが西東京管理局に導入されて以降、各管理局でシステムの導入・更新を行ってきた。
しかし、西東京管理局が1997年に導入した第二次総合交通管理システム(システム97)は、システム構築から歳月が経ち、経年化による故障リスク、部品調達といった困難などが生じ始めていたと言う。その一方で東東京地区が管理する交通管制システムとの統合化も進められたそうだ。
そこで今回、東東京管理局が2006年から導入していた新東京東地区交通管制システム(システム05)と統合して登場したのが、AISS'09となる。
西東京管理局長 和泉公比古氏 |
■AISS'09の特色
AISS'09についての説明は、西東京管理局長 和泉公比古氏のほか、ETC・交通管制システムグループの職員らによって行われた。
AISS'09の特色は大きく5つ挙げられる。1つ目は、車線ごとの障害情報提供が可能になったこと。これは車線ごとに事故や故障車などの障害情報を表示するというもので、障害が発生した場所が文字情報板から1km以上離れている場合は、障害までの距離とどの車線で障害が起きているかを表示。1km未満の場合は障害が生じている車線を表示すると言う。
2つ目は所要時間情報の精度が向上したこと。これは車線数が多く錯綜するJCT(ジャンクション)において、特定方向への車線が渋滞し、他方向への車線がスムーズという状況では、これまで渋滞している方向の所要時間を実際よりも短時間で表示していたと言う。しかし、AISS'09は車線ごとに混雑状況を考慮し、算出した所要時間を表示するという、より精度を高めたものとした。
車線ごとの障害情報提供が可能になった | 所要時間情報の精度も向上 |
3つ目は、渋滞状況の増減傾向を、所要時間表示板でもシンボルマークで表示すること。これは従来から文字情報板でも表示していたもので、赤色の三角マークが渋滞の増加を、緑色の三角マークが減少傾向を表す。利用者が渋滞に遭遇した際に、このまま進むか、または経路を変更すべきかという判断の目安情報として期待される。
4つ目は、VICSの図形を見やすくしたこと。VICSは、首都高の全線115カ所で情報提供を行っており、従来の図形は、路線の形状を考慮したものとしていたが、かえって複雑だとの声があったと言う。そこで、都心環状線(C1)、中央環状線(C2)を中心に、シンプルで認識しやすい図形に変更するとともに、主要地点までの所要時間表示を追加した。
渋滞状況の増減傾向をシンボルマークで表現。今回新たに所要時間表示板での表示も可能とした | VICS画面の改善も図った |
表示画面レイアウト |
最後に、交通管制室に画像表示の柔軟性・操作性に富むプロジェクター方式の大型表示装置を導入したこと。これは120インチ14画面を一体化した17×3.7m(横×縦)サイズの表示装置で、高速道路の交通管制室において、このサイズは世界最大級のものだと言う。
首都高全体の混雑状況などを表示する交通状況表示部を中心に、各路線の細部を表示するCCTVモニター部を画面に向かって右側に配置。また、山手トンネル専用のCCTVモニター表示部は画面左、交通状況表示部は画面左から2番目に配置する。
交通状況表示部は、従来では渋滞情報を3段階で表示していたが、5段階で表示するとともに、規制・通行止めなどをアイコンで分かりやすく表示できるようになった。これにより管制業務の効率化を図り、安全性を確保できるとした。
中央環状線 山手トンネル 大橋JCT~西新宿JCT間は3月28日に開通 |
■中央環状線山手トンネル内の防災システムと防災対策
次に、3月に開通する中央環状線 山手トンネル 大橋JCT~西新宿JCT間の防災システムおよび防災対策の説明が、東京建設局 調査・環境グループの職員らによって行われた。警視庁や東京消防庁と協議を重ね、トンネル内の安全対策には万全を期したと言う。
池尻JCTは40km/h規制にあたる道路で、池尻JCTを下る車両には急勾配・急カーブが連続するため、予告掲示版や大型注意喚起板で事前に注意。実際に速度超過で進入した車両に対しては速度感応型LED表示板で注意するとともに、側壁に配置されるピッチの短いゼブラ板でカーブの警告を行う。
JCTを上る車両に対しては、速度の低下が懸念されるため、車線変更の回数を減らすことを目的に、路面には目的方向によって赤色と青色の鋪装を施す。上下ともに高機能鋪装を施して滑りにくい路面としたほか、分岐部衝撃緩和装置なども設ける。
また、通常、トンネル基礎部の照明は自然光に近い白色の蛍光灯を使用するが、分流・合流のポイントはプロビーム照明とし、光の色でアクセントをつけることで注意喚起を行っていると言う。
大橋JCTでのさまざまな安全対策 | トンネル照明設備。トンネル基礎部は蛍光灯、分流・合流ポイントはプロビーム照明を採用する |
以上のことは、事故を未然に防ぐ技術として採用されるものだが、そのほかにも実際に事故があった際の防災設備についての紹介もあった。
実際に事故があった場合に重要となるのは早期に発見すること。そのため、今回の開通区間ではテレビカメラを約100m間隔で設置(全200台)したほか、自動火災検知器を約25m間隔で、消化器・泡消火栓を約50m間隔で、交通管制室と連絡を取り合える非常電話を約100m間隔で設置する。
テレビカメラは約100m間隔で設置 | 自動火災検知器は約25m間隔 |
消化器・泡消火栓は約50m間隔 | 非常電話は約100m間隔 |
トンネル内で火災が発生した際には、まずトンネル内に車両を進入させないことを重視し、坑口フラッシングを採用した。これは、トンネル手前の信号だけでは停止できない車両が多いことから用いられたもので、トンネル入り口付近の天井に設置する複数のライトを点滅させることで注意を促すもの。
さらにトンネル内に進入してしまった車両に対しては、トンネル内の警報板で「ここで止まれ」と文字で警告するほか、拡声放送スピーカー(約200m間隔で設置)を使って非常口までの誘導を行う。非常口は約350m間隔で設置される。
実際に火災が起きた際には5m間隔で設置される水噴霧装置で対処。この水噴霧装置は、40分間連続で放水が可能で、台風時の約3倍の量に相当する1時間で360mmもの放水を可能とした。
そのほか、有事の際にAM/FMラジオに緊急で割り込めるラジオ再放送設備や、パトロールにバイク隊を採用しているなど、積極的に安全対策に取り組んでいることをアピールした。
(編集部:小林 隆)
2010年 2月 27日