日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2010」開幕 環境配慮の製品や産業、サービスを体験しながら学べる |
東京ビッグサイト東展示場で、産業環境管理協会と日本経済新聞社が主催する日本最大級の環境総合展「エコプロダクツ2010」が、12月9日に開幕した。会期は12月9日~11日の3日間、開催時間は10時~18時(11日のみ17時まで)で、入場は無料。
エコプロダクツは1999年より開催され、今年で12回目。「2020年までに温暖化効果ガスを25%削減する」ことを前提とし、持続可能な社会と実現するためにいま何ができるのか、次の10年で何をしなければならないのかを考えるとともに、実戦の場として位置づけられている。今年のテーマは「グリーン×クリーン革命!命をつなぐ力を世界へ」とし、「豊かな地球環境とそれを支える社会」(グリーン)と「環境問題を解決するテクノロジー」(クリーン)の2つの力が大きなイノベーションを生み、次世代へつなげていく社会の形成を加速すると言う。
今回は745社(団体)、1762ブースが出展し、家電やOA、クルマや日用品などあらゆる分野のエコ製品、産業、サービスなどを展示。実際に触れながら学べる体験型ブースも多く、平日開催にもかかわらず多くの来場者でにぎわっていた。特に目立ったのは学生の姿。環境学習として、期間中に約2万人の児童・生徒が訪れると言う。期間中の来場者は18万5000人の見込み。
東展示場1~6ホールで展開されるブースは、ホールごとに日用品、家電、情報機器などを主力とする企業・団体がまとめられており、ひと通りまわることで身近な製品・サービスから最先端技術までを確認できるようになっている。各ブースでの展示のほか、エコカー乗車体験や電動アシスト自転車体験コーナーもあり、まさに最新技術を体験できる貴重な機会があふれている。また、ナビゲーターとともに会場を巡るツアーがいくつも企画されているのもおもしろい。会議棟1階レセプションホールでは、日産自動車COO 志賀俊之氏による基調講演「モビリティの未来像~人と地球にやさしいモビリティ社会に向けて~」など、基調講演やパネルディスカッションも行われた。
自動車・交通関連ブースは6ホールにまとまり、話題の電気自動車や最新技術などが展示されていた。今回は、その6ホールの自動車メーカーを中心に紹介しよう。
■トヨタ自動車
トヨタブースは“エコカーフルラインアップ”をテーマに、「SAI」「プリウス プラグインハイブリッド」「EV」の3台を展示。ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車と、環境に配慮されたモデルを3タイプそろえた。2012年初頭に発売予定の「プリウス プラグインハイブリッド」はカットモデルで展示され、価格はより手に入れやすい300万円程度との話。また「iQ」をベースにした近距離モビリティの「EV」もカットモデルとして展示されていた。
“エコカーフルラインアップ”をテーマにするトヨタブース | プリウス プラグインハイブリッドのカットモデル |
ハイブリッド専用セダン「SAI」 | iQベースの電気自動車「EV」 |
■日産自動車
日産は、CO2排出を減らすための2つの柱として、「ゼロエミッション」と「ピュアドライブ」を中心に展示。12月3日に発表されたばかりの電気自動車「リーフ」の実車が展示され、注目を集めていた。
また、新型セレナに搭載される「エコドライブナビゲーター」は、運転操作や道路状況の違いで燃費が大きく変わることから、ドライバーの運転をうまくエコ運転に導いてくれるもの。このエコドライブナビゲーターを体験できるシミュレーターはドライブゲームさながらで、子供たちの列ができていた。
「リーフ」に人だかりができていた日産ブース | 「リーフ」がある暮らしを表現したスマートハウスは、太陽電池からの電気をリーフに蓄える |
エンジン進化型エコカー「PURE DRIVE(ピュア ドライブ)」に搭載されているエンジンのカットモデル | エコドライブナビゲーターは子供たちに大人気だった |
■スバル(富士重工業)
スバルブースで一番注目されていたのは、新型水平対向(ボクサー)エンジンとその新型エンジンを搭載する「フォレスター 2.0XS」。また、スバルは自動車以外の製品でも、風力発電や航空機など多岐にわたって環境に配慮していることをアピールしている。同社が開発した航空機「ボーイング787」に使われる強化プラスティックの軽さや強靱さに触れることができるディスプレイもあった。
さまざまな事業で環境問題に取り組むスバルブース | 環境性能と走行性能を両立した新型水平対向エンジン |
新型ボクサーを搭載する「フォレスター」 | 「ボーイング787」に使われている強化プラスティックを、スチールやアルミと比較できる展示 |
■マツダ
マツダは、ハイブリッドなしで低燃費を実現する新技術「スカイアクティブ」を中心に展開。“i-stop”など、現行のスカイアクティブ技術を搭載する車両「プレマシー」が展示されている。「エコプロダクツ」は社会科見学など来場する児童や学生が多く、分かりやすいように紙芝居でマツダの車作りにおけるCO2削減など、環境配慮を解説している。また、今回のエコプロダクツ2010では、子供ツアー「エコプロエコキッズ探検隊」と銘打たれたツアーが企画されているが、自動車メーカーとしては唯一マツダが参加している。
子供向けに分かりやすい解説が多いマツダブース | 現行のスカイアクティブ技術を搭載するプレマシー | 児童や学生たちだけでなく、大人にも人気の紙芝居 |
■いすゞ
いすゞのテーマは「これまでも、これからも、人と地球の未来のために。」。“人と地球の未来のために”というのは、いすゞが20年ほど前から掲げている環境の基本テーマ。新型エンジンなどの技術的なもの、製品と社会貢献の2つのブロックに分けて展示が行われ、「エルフ ハイブリッド」や新型ディーゼルエンジンなどの展示があると思えば、国内の植林活動(富士山の2合目)で出た間伐材を使った積み木のコーナーもあるなど、ユニークな構成になっている。
いすゞブースは残念ながら大型バスなどの車両はタペストリー展示される | ポスト新長期排出ガス規制適合のディーゼルエンジン「6UZ1-TCH」 |
ディーゼルハイブリッドの「エルフ」 | 間伐材を使った積み木のコーナー |
■三菱ふそう(ダイムラーグループ)
三菱ふそうブースで展示されているのは、フルモデルチェンジしたばかり新型「キャンター」。フィアットと共同開発したポスト新長期排出ガス規制に適合したディーゼルエンジン「4P10」、自社開発したデュアルクラッチ式新トランスミッション「デュオニック」などを展示。また、トラック・バスだけでなく、ダイムラーグループとして「スマート電気自動車」も展示される。
新型キャンターが目を引く三菱ふそう(ダイムラーグループ)のブース | フィアットと共同開発した新型ディーゼルエンジン「4P10」 |
トラック界では初となるデュアルクラッチを採用した「デュオニック」 | トラックと並んで、より小さく見えるスマート電気自動車はいつでも大人気 |
■三菱自動車工業
「未来につながるi-MiEV」をテーマにする三菱ブース。電気自動車「i-MiEV」を中心にした、未来のライフスタイルを展示している。ブース内をまわって問題を解くクイズラリーを開催し、電気自動車やCO2削減について、楽しみながら理解できるようになっている。
「i-MiEV」を中心に展示する三菱ブース | コンパクトなボディーで人気の「i-MiEV」 |
「i-MiEV」は家庭用コンセントからの充電も可能 | クイズラリーに挑戦中の子供たち |
■NGP(日本自動車リサイクル事業協同組合)
自動車部品のリユース(リサイクル)をPRするNGPブース。ブースには、廃車寸前の古い車両にバッテリーやモーターを搭載し、電気自動車として再生した車両が展示され注目を浴びていた。一般的な新車価格と比べると安く済むものの、まだコストは高く、積載スペースを確保するため乗車定員が少なくなったり、エアコンが使えなかったりと問題も多いと言う。しかし、新しいパワートレーンを積んで愛車がよみがえるとなると、非常に興味がわく技術だ。
再生電気自動車やリユース部品が展示されるNGPブース | 電気自動車としてよみがえった車両。傷んでいたドアなどはリユース部品で修理されていた |
後部座席を取り払い、バッテリーや充電器などを搭載する | リユース部品の展示。価格は新品の半額程度で表記されていた |
■エコカー乗車体験
電気自動車や水素で走る燃料電池車など、エコカーに同乗できる「エコカー乗車体験」も人気だった。用意されているのは10車種で、会場である東京ビッグサイトの周辺約3kmを走行。受け付けは当日行われ、参加は無料。先日発表された日産「リーフ」が人気とのことだった。
エコカー乗車体験は、名前と年齢を書くだけで簡単に体験できる企画 | 今回体験乗車したのは「i-MiEV」。15分前後の乗車だった |
(政木 桂)
2010年 12月 10日