【GW直前特別企画】エコなハイウェイ「新東名」をエコタイヤで走る(前編)
フィットとECOPIA PZ-XCで、燃費は25.97km/Lに


 4月14日に一部区間が開通した新東名高速道路。一部区間とはいえ、一度に開通する区間としては史上最長距離となる御殿場JCT(ジャンクション)~三ヶ日JCT間の約162kmだ。

 この新東名の役割として期待されているのが、すでに交通量が設計値を上回ってしまっている東名高速道路の渋滞改善効果。それに加え、今後東海地震が予想される地域を2本の高速道路で結ぶことにより信頼性の向上も期待されている。新東名は東名よりも山側に位置するため、東海地震が発生した場合も震度が低く、津波による被害も少ないと想定されている。

 また、最新の道路設計によって作られた新東名のウリはエコなハイウェイであること。新東名は従来の東名・名神高速道路に比べ、カーブも緩やかで、勾配も小さい。東名・名神の最小カーブ半径が300Rなのに対し、新東名の今回開通区間では3000R(新東名・新名神では1500R)。最大勾配は東名・名神が5%に対し、新東名の今回開通区間では2%となる。

緩やかなカーブと、緩やかな勾配で構成された新東名新東名の特徴

 この新東名は道路構造令に基づき設計速度が120km/h。全線片側3車線を前提に作られているものの、開通時の最高速度は100km/h、現在は片側2車線区間と、3車線区間が混在する形となっている。

 前編では、この新東名を最新エコタイヤ装備のコンパクトカーで実走することで、本当にエコな走行ができるのかを確認するとともに、後編では、新東名(下り)のIC(インターチェンジ)、JCT(ジャンクション)、SA(サービスエリア)、PA(パーキングエリア)、トンネルをすべて写真で紹介していく。

エコなハイウェイにはエコタイヤが似合う?
 新東名を実走する車両は、ホンダのコンパクトカー「フィット」(DBA-GD3)。1.5リッターエンジンとCVTを搭載し、カタログスペックの10・15モード燃費値は18.6km/L。オーナーの笠原一輝氏は、これまで燃費走行をしても、メーターパネル内に表示される燃費計で、18km/Lぐらいが限界だったというクルマだ。また、筆者は何度かエコタイヤでの走行を行っているが、笠原氏はエコタイヤ装着での本格的な走行は初めてとなる。

 今回新東名を走るにあたって、このフィットにブリヂストンの新低燃費タイヤ「ECOPIA PZ-XC(エコピア ピーゼットエックスシー)」を装着した。ECOPIA PZ-XCは、軽・コンパクトカー用に専用設計された低燃費タイヤで楽タイヤ「Playz PZ-XC」の後継モデル。Playz PZ-XCに比べ、定評のある運動性能はそのままに、転がり抵抗係数を35%低減している(155/65R14、転がり抵抗性能:AA)のが特徴と言える。

ECOPIA PZ-XCの装着は、タイヤ館パドック246で行った手際よく作業が進んでいく今回装着するECOPIA PZ-XC
転がり抵抗性能はAA、ウエットグリップ性能はcタイヤチェンジャーを使って、タイヤを組み替えタイヤバランサーで、タイヤとホイールのバランス取りを行う
無事ECOPIA PZ-XCを装着できた。作業時間は30分かからないくらい
タイヤ館パドック246は、新ECOPIAシリーズを積極的に販売リアルタイヤカフェも設置してあり、タイヤの相談に応じてくれる

 これまでフィットに装着していたタイヤは、そのPlayz PZ-XCなので、前述の燃費値はPlayz PZ-XCを3年間使ってきた数字だと考えてよいだろう。一般的に転がり抵抗係数を20%低減すると、タイヤへの燃費寄与率10%の場合で、燃費は約2%向上するとされている。一定速度走行の場合、20~25%の寄与率と試算されており、転がり抵抗を35%低減したECOPIA PZ-XCであれば、その期待値は7%以上。つまり、19.26km/L以上の数値を目標としたい。ECOPIA PZ-XCは、サイズによって転がり抵抗性能:A~AAAまでラインアップされているが、今回フィットに装着したサイズは転がり抵抗性能:AAの185/55 R15。ブリヂストンが例として算出している155/65R14と同様の転がり抵抗性能となっているため、19.26km/L以上はマークしたいところだ。

 ちなみにタイヤのラベリング制度でグレード分けに用いられているのは転がり抵抗係数という数値。実際にクルマにかかる抵抗は、この係数に荷重を掛けたものになる。セダン用などのタイヤと比べて、軽・コンパクトカー用のタイヤは、サイズが小さいため技術的に工夫するエリアが小さく、転がり抵抗係数を下げるのが難しいとされている。しかしながら、実際の転がり抵抗値においては、車重(タイヤ荷重)が小さくなるため、セダンなどよりは有利になるわけだ。



新東名のエコハイウェイ度を試す
 新東名の走行は、開通後1週目の平日に行った。東名高速を東京から西に走り、御殿場JCTから新東名の下りに入る。下りは、すべてのSA、PAに立ち寄りつつ撮影を行い、三ヶ日JCTから再び東名(下り)へ入り、豊川ICを下りて一般道へ。豊川IC近くにあるガソリンスタンドで給油し、2名乗車で豊川IC→三ヶ日JCT→新東名→御殿場JCT→足柄SAと走って、東名 足柄SAで給油して燃費を算出した。ただ、豊川ICから足柄SAまで一気に走るのは現実的ではないため、NEOPASA浜松(浜松SA)、NEOPASA静岡(静岡SA)、NEOPASA駿河湾沼津(駿河湾沼津SA)に立ち寄ることにした。

 往路は、御殿場JCTから新東名に入り、各SA、PAに立ち寄り、三ヶ日JCTで再び東名に合流。東名から新東名に入るときにはそれほど感じなかったが、新東名から東名に入ると、道路の作りの古さが気になる。新東名は、片側2車線もしくは3車線。もともと全線片側3車線で設計されていた関係で、広々とした道路が眼前に広がる。一方、三ヶ日JCTから東名に戻ると、狭く、圧迫感を感じる。交通量もあるのだろうが、同じ距離を走っても疲れが倍違う感じだ。

東名高速(上り)豊川IC から新東名(上り)へと向かう

 復路は、いよいよエコなハイウェイ&エコタイヤの実力確認となるのだが、走行ルールは流れを妨げないこと。新東名は、設計速度が最高120km/hとなっているが、開通時点では区間によって異なるものの最高速度は100km/h。この最高速度を守りつつ、約80km/h~90km/hで走行車線を走るようにした。

 走行時に工夫したのは、ほぼこれだけ。後はなるべく無駄にブレーキを踏まないように安全な車間を前走車との間に設けたくらいだ。新東名のよいところは、SAやPAが道路よりも高いところに設置してあることだ。これによりSAやPAへの進入時には自然に速度が下がり、脱出時(本線復帰時)には加速が容易に可能となる。これによる燃料節約効果も見込めるだろう。

 そのつもりで最初の浜松SA(上り)に立ち寄ったが、入り口の上り坂で軽く渋滞。坂道発進を繰り返し、10分ほどかかって駐車場に止めることができた。次の静岡SA(上り)は、すぐに入れたものの、新東名で一番人気の施設となっている駿河湾沼津SA(上り)は、2km手前から路肩渋滞。一度入口待ちの列の最後に加わったものの、5分ほど経ってもまったく動かず。このまま待っても燃費が悪化するだけなので、停止状態から全開加速をして、高速道路本線に戻った。

浜松SA(上り)では、駐車場待ち渋滞に軽くハマる手前が混んでいるため、奥が空いていても渋滞になっていた浜松SA内にある大規模商業施設NEOPASA浜松
展望台があり、新東名の都田川橋を遠望することができる
静岡SA(上り)は、比較的スムーズに入ることができた
左の路肩の渋滞は、駿河湾沼津SA(上り)の駐車待ちの列。2kmの渋滞となっており、絶望的に混んでいた駿河湾沼津SA(上り)には入らず、御殿場JCTを経由して足柄SAへと向かう


燃費は25.97km/Lを記録
 御殿場JCTで東名に合流。御殿場ICを過ぎ、いよいよ足柄SAへ。この時点で豊川IC近くのガソリンスタンドでリセットした燃費計は21.3km/Lと、期待値を遙かに超える燃費値を記録しており、いよいよ給油。給油量は7.00Lとなり、トリップメーターを確認すると181.8kmだった。あれ?なんか数字がおかしい。181.8を7.00で割ると、25.97km/L、1.5リッターのフィットとしてはとてもよい燃費値を記録したことになる。

 ここで疑うべきはトリップメーター。そのため、Web地図サービスで、豊川IC近くのガソリンスタンドから足柄SAまでの距離を、新東名経由で計ってみることにした。ここで早速Googleマップをとなるところだが、Googleマップは道路の開通対応は遅く、3月に開通した圏央道の高尾山ICすら地図に記されていない。さすがに新東名は、地図上に記されたもののルート計算ができない状態(4月25日時点)だ。これは、地図への道路開通反映が早いYahoo!ロコも同様で、新東名が表示されているもののルート計算ができない状態だ。

 大手Web地図サービスで新東名のルート計算に対応しているのが、インクリメントPの運営するMapFan Web(http://www.mapfan.com/)。ケータイ向けとスマートフォン向け「MapFan」も表示ルート計算ともに対応しており、iPhone/iPad向け地図アプリ「MapFan for iPhone」はルート計算のみとなっている。

 このMapFan Webで計算した結果は、距離がさらに延びて183.5km。インクリメントPに確認したところこの距離は高低差データを持たない数字とのことで、高低差を考慮に入れると(そもそもSAに立ち寄っている)さらに延びてしまうことになる。

豊川IC近辺のガソリンスタンドから東名 足柄SAまでを走行。フィットの燃費計は21.3km/Lだったトリップメーターの走行距離
足柄SAで給油。7.00Lの給油だったので、25.97km/Lの燃費となる念のためMapFanWebで走行距離を検証。183.5kmとなり、フィットのトリップメーターを信頼してもよいだろう

 そこで、走行距離は一番短い(燃費上は不利な)数字を採用。使用したレギュラーガソリンの量は7.00Lであることには変わりないので、25.97km/Lの燃費値で間違いはなく、フィットの燃費計の誤差が大きいのだろうということにした。

 ECOPIA PZ-XCと新東名(と、フィット)であれば、4Lで100km走ることができ、運転もとても楽だった。この楽は、ECOPIA PZ-XCによるところもあるが、それ以上に新東名の車線の広さや視界の広さによるところが大きい。このフィットには元々運動性能に定評のあるPlayz PZ-XCが装着されており、低燃費タイヤのECOPIA PZ-XCへ付け替えたことによるネガティブな感覚はないまま、新東名であれば燃費がとても伸びるという結果を得ることができた。以下に、フィットのオーナーである笠原一輝氏のコメントを記す。


 新東名を走った率直な感想は“広い、まっすぐ”という2点に尽きる。もちろんカーブはない訳ではないが、半径の大きなカーブばかりで、ゆるやかなものだ。もともと片側3車線の道路として設計されたこともあり、2車線区間の走行車線を走っていてもガードレールや路肩までの距離がかなりあるなど、とても余裕があるものとなっている。

 そのことを強く実感したのは、三ヶ日JCTの先で東名に合流してからだ。同じ片側2車線でも1車線の幅がかなり狭く感じ、ガードレールがすぐ側にあったり、隣の追い越し車線を走るトラックに恐怖を感じたりした。

 これまで東名を走ってもそのようなことを感じたことはなかったので、それぐらい新東名がドライバーに優しく、走りやすい高速道路だということの証明だと思う。

 また、今回フィットに装着したECOPIA PZ-XCは、以前装着していたPlayz PZ-XCのエコタイヤ版になる。従来のPlayz PZ-XCと比較して、走りに関しては遜色ないというか、その違いはよく分からなかった(笑)。 逆に言えばエコタイヤ化、つまり転がり抵抗係数を下げているのに同じような走りを得られることは、ほめてもよいのではないだろうか。

 何より驚いたのは、このECOPIA PZ-XCで新東名を走ってみて、20km/Lを軽々と超える燃費を実現したことだ。高速道路走行とはいえ、フィットの10・15モード燃費の18.6km/Lを超える25.97km/Lとなった。

 これまで燃費走行をしても18km/Lぐらいが限界だったメーターパネル内の燃費計でも、22km/Lを超える時間が長く続き、最終的には21.3km/Lを記録。もちろん新東名もかなり路面がスムーズなため、その効果はあるのだろうが、新東名効果+エコタイヤでこれだけの結果が出るのであれば、エコタイヤの存在価値は高いと思った。(笠原一輝)


 
後編では、エコな走りを実現できる新東名高速のIC、SA、PA、JCTに加え、全トンネルを写真で紹介していく。

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)
2012年 4月 27日