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シャープ、「MEMS-IGZOディスプレイ」の技術説明会を実施
低消費電力、耐環境性能、高色純度で車載分野など新たなディスプレイ市場を開拓
(2014/9/16 15:40)
シャープは9月12日、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)-IGZOディスプレイの技術説明化を実施。7インチ(WXGA:1280×800ピクセル)のパネルを展示した。
この新型ディスプレイは2012年に米Qualcommと資本提携したことを受け、Qualcommの子会社であるPixtronixと共同開発を行っている技術。昨年開催された「CEATEC JAPAN 2013」において「IGZO MEMS ディスプレイ」として参考出品され、今回展示されたものは具体的な改善点などは示されなかったものの、色再現性や明るさなどが当時より進化したモデルだという。
シャープ 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当 方志教和氏は、ディスプレイの競争軸は今後「デザイン性能」「耐環境性能」「インタラクティブ性能」が重要になるとしたうえで2種類のディスプレイを紹介。1つは6月に発表済みの「FFD(フリーフォームディスプレイ)」で、2つ目が今回の主題となるMEMS-IGZOディスプレイだ。MEMS-IGZOディスプレイは「超低消費電力であり外光に非常に強い、あるいは耐温度、色の再現性に優れるといった多くの特徴を持っている」と語り、シャープからIGZO-TFT技術とディスプレイ製造技術を、クアルコムの子会社であるピクストロニクスからMEMSシャッターの基礎技術をそれぞれ提供。早期の量産化に向けて共同で取り組むとした。
方志氏のあとを受け、シャープ ディスプレイ開発本部 副本部長 兼 デバイス技術開発センター 所長 伴厚志氏がMEMS-IGZOディスプレイを解説。「構造はシンプルで、MEMSシャッターとスイッチ、RGBのバックライトという構成になっている。液晶と比べて液晶層やカラーフィルター、偏光板といったものがないために光の利用効率が非常に高いという特徴がある。その結果、低消費電力、高色再現を実現できる」という。
文字で説明するのは難しいが、従来の液晶ディスプレイは光源に白色LEDやCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)を使い、液晶を介してRGBのカラーフィルター、偏光板を通過した光を見る構造。それに対してMEMS-IGZOは、光源にRGBのLEDバックライトを使用し、MEMSシャッターの開閉により透過光をコントロールする構造だ。
そのため、液晶より2~3倍高い光学効率を得ることが可能で、バックライトの消費電力を軽減できる。また、表示コンテンツに応じてMEMSシャッターの駆動速度を変化させることで、消費電力の最適化を図ることもできる。そのほか、カラーフィルターを介さないため、高い色純度とNTSC比120%の高色再現性を実現し、温度変化に弱い液晶層がないため高温&極低温下でも鮮明な表示が可能になるなど、数多くの特長を持っている。
この発表会にゲストとして招かれたクアルコム 上級副社長 兼 ピクストロニクス 社長のグレッグ・ハイジンガー氏は「現在においてディスプレイは、ユーザー体験の上で非常に重要な構成要素であることはみなさんもご承知のとおり。画期的な技術を持ったディスプレイの開発が非常に重要であることは間違いない。モバイル端末においては、ディスプレイはユーザーとの主要なインターフェースであると同時に、電池を消耗する部品でもある。ディスプレイの性能はコンテンツを視聴する方法だけでなく、端末の使用時間にも非常に大きな影響をもたらします」と語り、MEMS-IGZOディスプレイの持つ重要性と優位点をアピールした。
このMEMS-IGZOディスプレイはスマートフォンやタブレットへの採用が予定されているほか、温度変化に強いことから自動車メーカーに対しても強くアピールしているようだ。すでに発表されているフリーフォームディスプレイとの組み合わせでは、メーターパネルはもちろん、ルームミラーやドアミラーなど広い範囲での活用が望めそうだ。今回の発表会では明言されなかったが、2017年とされる量産化時期にはこのディスプレイを採用したクルマが登場してきそうだ。