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国内自動車メーカー8社および1団体で「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」設立発表会
日本型の垂直統合開発から、欧州型の水平分業開発による協調と競争へ
(2014/5/19 17:35)
自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は5月19日、組合設立に関する発表会を開催した。AICEはThe Research Association of Automotive Internal Combustion Enginesの略で“アイス”と読む。本記事では、以降AICEと表記する。
AICEに参加するのは、トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、スズキ、ダイハツ工業、富士重工業、マツダ、三菱自動車工業、一般財団法人日本自動車研究所の、国内自動車メーカー8社+1団体。発表を行った運営委員会 委員長 松浦浩海氏(本田技術研究所 主任研究員)によると、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)も参加の方向であるという。
AICEが目指すのは、ディーゼルエンジンの後処理や、内燃機関の燃焼の研究。設立の背景にあるのは、各国の厳しい燃費・排ガス規制への対応などにより開発リソースが逼迫していること。それに加え欧州では、各社による協調開発の取り組みがあり、複数社の開発ニーズが一致する部分でコンソーシアムを組み、その技術をベースにした部分の上で競争が行われている。その上で出てきた技術にダウンサイジングやクリーンディーゼルがあるとする。
松浦氏は欧州の取り組みを水平分業、日本の単社開発を垂直統合と紹介し、日本の開発効率が欧州に比べて不利になっているとし、この開発効率を上げていくことを目標としている。
そのAICEの取り組みの3つとして紹介されたのは、「ディーゼル後処理技術の高度化」「自動車用内燃機関の燃焼技術の高度化研究」「エンジン性能評価」。すでにディーゼル後処理技術の高度化研究については、従来から行っている取り組みが引き継がれ、早稲田大学、東京大学、北海道大学、京都大学、同志社大学などと行っている研究が紹介された。
内燃機関の開発目標としては熱効率50%を目指し、短期的な目標としてはガソリンエンジンのCO2排出量の30%削減(2020年度)などがある。
AICEの事業費は約10億円(平成26年度経済産業省補助事業費含む)、理事長は大津啓司氏(本田技術研究所 常務執行役員)。AICEの研究過程で得られた特許などについては発案者に帰属し、企業がそれを利用していく形になるという。
松浦氏による概略の説明後、大津理事長らによる発表が行われた。ここでは事業費10億円の内訳が、経産省から5億円の補助と各社からの持ち出し5億円からなっていること。年度ごとに事業費などは見直していくことなどが説明されたほか、欧州の開発体制に対する危惧を表明。「決して技術力では負けていないが、標準化などの開発効率で遅れを取っている。(AICEによる)産学官のスキームができれば負けることがない」と語った。
このAICEでは、現在各自動車メーカーが持っている技術の開示を行うのではなく、テーマに沿って産学官で開発を進めていく。ディーゼル後処理、ガソリンエンジンの燃焼以外のテーマとしては、各大学が所有しているスーパーコンピュータなどの計算機資源を活用した燃料理論の検討、高精度シミュレーションの研究開発などについて触れられた。
AICEの理念の1つは研究にあるが、もう1つの要素として挙げられているのが人材育成。内燃機関研究に各社の予算および補助金が回るスキームを作り上げた部分もあり、大学における自動車関連の研究が増えていくのは間違いない。AICEは日本の自動車産業のものづくりの高度化のほかに、産業を支える人づくりを目指していく。