ニュース

パナソニック、車載事業ブランド「Panasonic AUTOMOTIVE」を4月から開始

車載事業は2018年度売り上げ計画の70%を受注済み

2015年4月13日発表

4月以降、パナソニックは「AUTOMOTIVE」「Homes&Living」「BUSINESS」という3つの事業ブランドで“事業領域を見える化”する

 パナソニックは4月13日、車載関連事業の事業ブランド「Panasonic AUTOMOTIVE」を、2015年4月から使用すると発表。その第1弾として、4月20日~29日まで中国・上海で開催される「2015年上海モーターショー」のパナソニックブースで、Panasonic AUTOMOTIVEを活用した展示を行うと明らかにした。

 これに加え、住宅および住空間では「Panasonic Homes&Living」、BtoBソリューションでは「Panasonic BUSINESS」の事業ブランドもそれぞれ開始する。家電事業やデバイス事業は、従来どおり「Panasonic」ブランドで事業を展開することになる。Panasonic Homes&Livingは、4月から国内市場を対象にTV-CMを放映する予定。同社が「事業ブランド」を打ち出すのは今回が初めてとなる。

パナソニック 役員 ブランドコミュニケーション本部の竹安聡本部長

 パナソニック 役員 ブランドコミュニケーション本部の竹安聡本部長は、「パナソニックが展開するそれぞれの事業領域でのイメージづくりを行う必要があると考え、新たに事業ブランドを導入することに決めた。家電は『Panasonic』のブランドとの結びつきができており、デバイスはブランドを前面に打ち出すビジネスではない。だが、我々が今後、強化したいと考える領域においては、パナソニックと結びつきが弱い部分もある。そこで、新たな事業ブランドを作り“事業領域を見える化”することにした」とその狙いを語る。

 事業ブランドは、主に宣伝、販促コミュニケーションに活用していくことになり、具体的には、雑誌や新聞、Webなどの広告、展示会のブース、カタログや、各事業部門主導で展開するWebサイトなどが対象になる。

 パナソニックの独自調査によると、薄型テレビや白物家電製品のブランドイメージは高いものの、車載関連ではそれほどパナソニックのブランドイメージが強くはない。50項目ほどのパナソニック製品の名前を羅列し、そのなかからパナソニックブランドとイメージが関連しやすいものを選択してもらう調査では、日本でのイメージは車載関連において、カーナビが69%、電子部品が54%と比較的高い認知度を誇るが、欧米ではカーナビが33%、電子部品が28%、アジアや中国、インドなどの海外戦略地域では、カーナビが38%、電子部品が39%と低迷する。

「パナソニックの実態を見ると、家電事業はわずか4分の1であり、4分の3は家電事業以外である。4分の3の領域でブランド価値向上を狙う必要がある。車載事業では、国内ではまずまずの評価だが、海外ではこれから力を入れなくてはならない」(竹安本部長)としており、海外の車載市場におけるパナソニックブランドの価値向上は、今後の大きな課題だといえる。

パナソニックブランドの現状分析
3つの事業領域を“見える化”
各ブランドの使用イメージ

事業ブランドカラー/エレメントも採用

 さらに、今回の事業ブランドの新設では、事業ブランドカラーと、事業ブランドエレメントも採用したのも特徴だ。

 Panasonic AUTOMOTIVEでは淡いグリーンを採用。さらに、頭文字となる「A」を事業ブランドエレメントとして、事業を象徴する文字として表示することになる。上海モーターショーの展示ブースでも、Panasonic AUTOMOTIVEの文字とともに、淡いグリーンによる「A」の文字が施されることになる予定だ。

 ちなみに、住宅および住空間はオレンジを使用して「H」の頭文字、BtoBソリューションはブルーと「B」の頭文字を使用する。また、家電は赤、デバイスは濃いグリーンを使用するが、この2つの事業では、事業ブランドエレメントは使わない。商標登録の動きが文字以外にも広がるなかで、パナソニックでもカラーやエレメントといった領域にブランド戦略を広げることになる。ここにも取り組みの姿勢が垣間見られる。

事業ブランドごとに異なるカラーと頭文字を象徴的に使用
上海モーターショーのパナソニックブースのイメージ

 一方、事業ブランドの開始にあわせて、車載製品や住宅事業への広告宣伝投資の拡大を視野に入れていることも明らかにした。同社では2013年度に宣伝広告費として約1100億円を投資。2014年度、2015年度も同等水準を見込んでおり、そのうち、家電関連が700億円を占めていたという。

「単純に家電への投資比率を減らすということではなく、全体のウエイトを考えながら、住宅や車載などへの投資強化を考えたい」(竹安本部長)と述べた。同社は、今後1兆円規模の戦略投資を計画。そのなかにはM&Aなどのほかに、広告宣伝費も含まれることになる。こうした枠を活用しながら、対外的な訴求を強める考えだ。

 また、新たな事業ブランドの制定にあわせて、同社のブランド戦略の考え方にも言及した。パナソニックには、コーポレートブランドの「Panasonic」と、ブランドスローガンの「A Beeter Life」を用意。その下に、事業ブランドとなる3つの新たな事業ブランドを配置する。その一方で、保証事業ブランドと個別事業ブランドの2つのブランド戦略を持っていることも今回明確化した。

 保証事業ブランドは、それぞれの地域や事業領域で高い認知度を持っているブランドをそのまま生かすもので、配線器具事業をインドで展開する「ANCHOR」や、同じくトルコで展開する「ViKO」が挙げられる。いずれもそれぞれの地域で助成想起率90%前後という高い認知度を誇っており、このブランドを生かしながら、「ANCHOR by Panasonic」、「ViKO by Panasonic」として、パナソニックグループの1社であることを示している。

 また、個別事業ブランドはPanasonicと切り離した形でブランドイメージを展開していくものであり、高級オーディオブランドの「Technics」が代表的だ。「市場調査の結果、音のイメージではPanasonicよりTechnicsの方が評価が高い。パナソニックのブランドはつけずに展開していくものになる」(竹安本部長)という。

 パナソニックでは2018年度に売上高10兆円を目指しているが、そのなかには戦略的なM&Aも視野に入れている。「家電事業のM&Aの場合には、Panasonicのブランドに統合してきたが、BtoBのなかでは、買収したブランドの価値をうまく使っていく必要がある」(竹安本部長)とし、車載事業や住宅事業、BtoBソリューション事業のM&Aにおいては、保証事業ブランドや個別事業ブランドを活用していく姿勢を示した。

「2018年度以降は車載事業が全社を牽引する」と津賀社長

 パナソニックでは2015年度の車載事業への取り組みとして、快適、安全、環境の3つの領域から事業強化を図る姿勢を見せている。「快適領域では新規商材開発および販路拡大、安全領域ではADAS(先進運転支援システム)への先行投資、環境領域では競争力のある車載電池の継続投入」を掲げ、1兆3000億円規模の売上高を目指す。また、創業100周年を迎える2018年度に、全社売上高10兆円を目指しているが、そのうち、車載事業で2兆1000億円の売り上げ規模を見込んでいる。

 パナソニックの津賀一宏社長は、「2018年度の2兆1000億円のうち、70%が受注済みの案件である。残りの30%は、新たに獲得できる案件への取り組み、M&Aなどの非連続な取り組みを含めて達成を目指す」とする。

2015年度に快適、安全、環境の3つの領域で事業強化を図り、2018年度には車載事業で2兆1000億円の売り上げを目指す

 中期的な見通しでは強気の姿勢を見せるパナソニックの車載事業だが、実は2016年度が大きな節目になると津賀社長は予測する。「車載事業は足が長い事業であり、その結果、2018年度はすでに70%は受注済みとなる。だが、2016年度は、東日本大震災時に営業活動が行えなかったこと、M&Aの成果が貢献しないことなどに加えて、2018年度に向けて事業の中心となるインフォテインメントシステムの受注が先行して、開発に関わる費用がかさむこと、開発しても2年は売りに結びつかないという状況にある。そのなかで、車載事業は事業規模を倍増させている。どうしても利益率が落ちる結果にならざるを得ない。この2年は厳しいとみている」(津賀社長)とする。

 だが、津賀社長は「短期的には研究開発費が膨らむものの、2018年度、あるいはその先は、間違いなく売上高、利益ともに全社を牽引する事業になると考えている」とも語る。パナソニックの車載事業にとってはこの2年が正念場。新たな事業ブランドによって、2016年度の追加受注獲得への貢献度はどの程度になるのか。そして、2018年度以降のさらなる飛躍にどれほど貢献することになるのか。Panasonic AUTOMOTIVEによる新たなイメージづくりが早急の課題となる。

(大河原克行)