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ITS Japan、「協調型運転支援と自動運転」など総会シンポジウムを開催
「課題解決に市民自らが参画する時代が到来しようとしている」と渡邉会長
(2015/6/12 23:19)
ITS Japanは6月12日、東京都千代田区の経団連会館で2015年度の通常総会を行い、合わせて今後の活動や最新の取組状況などについて紹介する総会シンポジウムを開催した。
通常総会では、2014年度の事業活動の紹介と決算内容に関する報告と会場に集まった会員による承認、2015年度の活動予定の紹介と予算案の報告と同承認が議案として実施され、滞りなく各議案が承認されたほか、常任理事、理事の交代について報告された。
2014年度の決算内容では、収入が1億900万円、支出が1億1100万円で収支差額は1400万円のマイナス。2014年6月に発表した年間予算案ではマイナス2800万円を予定していたが、事業費、管理費などの経費削減によって支出超過を半分に抑えたとしている。これにともない、前期までの繰越金8200万円から1400万円を充当して次期への繰越金は6800万円となっている。
2015年度の事業計画における予算案は、収入が1億1300万円、支出が1億1600万円で収支差額は300万円のマイナスとしており、予備費として計上する300万円以外の部分では、収支をバランスさせた計画であると説明する。また、収入の項目に設定された「特定預金取り崩し」については、原資はITS世界会議 東京2013の組織委員会によるもので、報道機関に対する情報提供を通じて一般市民に対する理解促進を図る活動の予算として利用すると解説された。
総会の冒頭でITS Japan 会長の渡邉浩之氏は、2014年度の活動の概要を語り、今年度が2011年から行われている第2次中期計画の最終年にあたることを説明。2008年に取りまとめた「ITSビジョン2030」、2013年に作成した「ITSによる未来創造の提言」などを元に、2016年からの次期中期計画を1年かけて作成していくと紹介。現状について「要因と効果が複合化し、課題解決に対して複合的アプローチが必要な複数の危急的課題を乗り越えるには、トップダウン型の活動とボトムアップ型の活動の融合が必要である」との見方を示した。
代表的な事例として、東日本大震災の発生時に4つの企業の個人通行データを集約し、官民連携のもとでITS Japanがインターネットに配信した「通行実績情報」、モーダルシフトや経路選択などによるエコドライブなど、個々人が自らの交通行動を変えることによって大きな成果を得る「渋滞対策や地球温暖化対策」の2つを挙げ、「個の行動が社会に与える影響をビッグデータにより可視化し、街ごとの課題解決に市民自らが参画する新たな時代が到来しようとしているのです」と解説した。
また、来賓を代表して挨拶した国土交通省 道路局 局長の深澤淳志氏は、国土交通省におけるITSに対する取り組みについて紹介し、「道路行政における“一丁目一番地”は、既存の道路をもっと賢く使うというものです。道路を賢く使う、または運用を改善すること、小規模な改良を加えることなどによって、道路のパフォーマンスを全体的に向上させよう、時間的、空間的に最大限の効果を発揮させようということに取り組んでいます。そのなかで一番期待されるがITSの技術で、具体的には、現在ある渋滞回避のための支援や安全運転支援のための情報提供、さらにはプローブ情報を活用する効率的な経路の選択、混雑状況に応じた機動的な料金の導入、大型車の適正な経路誘導など、さまざまな面で効果が期待されています」とコメントした。
総会後に行われたシンポジウムでは、運転支援・自動運転についての取り組みをITS Japanで自動運転プロジェクトを担当する内村孝彦氏が解説。
ITSの大きな目的の1つである交通事故における死亡者数の低減では、近年は減少が止まっている状態で、さらなる低減には車両単独では対応しきれなくなっており、インフラ協調システムの登場が重要になるとの認識を披露。2013年のITS世界会議 東京2013では「ITS GREEN SAFETY」と名付けて官民一体で取り組み、実証試験の実施まで取り組みを推進しており、さらに実用化に向けて活動を続けていることを紹介した。
また、自動運転実現に向けたファクターをそれぞれ解説し、この面でも外部環境の認識でインフラ協調による広域情報を適切に活用する必要があると語り、さらに自動運転の実現に向けた技術的、環境的課題について説明した。
ITSの進化で大きな役割を担うようになってきたビッグデータの活用については、ITS Japan 常務理事の大月誠氏が解説。交通管制のデータでは、以前からVICSやETCが活用されてきたが、最近になりプローブ情報などのビッグデータを活用する「VICS WIDE」「ETC 2.0」に進化。扱う情報の質、量ともに増加しており、プローブ情報以外にもスマートフォンやドライブレコーダーなど、交通に関連する情報は拡大に一途にあると説明し、先々のITSもこういったビッグデータを使うサービスになっていくだろうとの将来予測を示した。
また、公共性の高い情報が集まるオープンデータについても、日本では自治体なども地域活性化などを期待して力を入れて取り組んでいることを受け、ITS Japanでもこれまで取り組めていなかった「地域の現場」にサービスを届けていきたいとコメント。2014年に行った具体的な活動について紹介し、東日本大震災の発生時に活用された「通行実績情報」をさらに発展させるため、当時の「マイカー系」と呼ばれる領域に加え、「タクシー系」「トラック系」などのプローブ情報についても協議を行い、システム化を推進しているという。すでにシステムの運用がスタートしており、これからは情報配信の精度を高めるための取り組みを進めている。
このほか、大規模な災害における教訓として、情報提供やフォローなどは、地域住民にはなんとか届いても、旅行者、移動者といった人に行き渡らず、二の次になってしまうケースがあることを紹介し、ITS Japanとして減災、防災などの課題に取り組んでいるという。