日下部保雄の悠悠閑閑
秋の試乗ラッシュ
2023年10月16日 00:00
ウソのような酷暑がようやく収まり、日中でも過ごしやすくなってきた。空を見上げればイワシ雲が浮かび、夕方日が落ちるのも早くなった。17時に鳴る街のチャイムを聞くと早く帰らなくちゃと小学生みたいな気分になる。
ま、そんな郷愁に浸るのも現実逃避。気候がよくなって浮かれているどころではない。自分が行けただけでも直近ではマセラティ・グレカーレ、BMW・X1、フォルクスワーゲン・ID.4と試乗チャンスも増えた。
マセラティはフェラーリに並ぶ存在感があったが、華麗なフェラーリに対して剛健のマセラティと昔から路線は全く違っていた。
グレカーレはステランティス傘下でアルファ ロメオ・ステルヴィオ系のプラットフォームをべーすとするなど、コストのかかる部分を抑えることで今でも昔と変わらないマセラティに乗れることは幸せだ。
グレカーレはスーパーカーメーカーが作るSUVだがソツなくまとめられており、ドライバーに大きな寛容性がある。全幅は2m近くもあるので日本では気安く駐車できるわけではないが、サイズ感が分かりやすく他車から乗り換えても違和感はない。ちょっと粗を捜すと国産車では普及しているオートパーキングがないこと、またマセラティらしい強い個性をもう少し体で感じたいというぐらいだろうか。スタートプライスでは800万円台に設定されており、高価格帯のSUVを求める層には視野に入ってくるモデルだ。
マセラティのアジア統括会社の社長は木村隆之さん。ボルボやプジョーの社長を歴任し、ずいぶんとお世話になった。ボルボ時代は販売店の経営者に定期的な木村塾を開いて大きな意識改革を行ない、ボルボをプレミアムブランドに成長させた。木村さんの下でマセラティはどんな成長をしていくのだろう。
BMW・X1はEVとガソリン車があり、直接キャラクターの違いを比較できた。いつの間にかBMWも多くのBEVをラインアップしており、メルセデスの急拡大するEQシリーズとともに欧州のBEV熱を肌で感じる。BEVの美点はとにかく振動がないこと。ガソリン車は始動直後と加速時に出る音と振動に乗り味の違いを如実に感じた。
今さらだがBEVの最初の加速はまるで大排気量並みのレベルだ。静かで速い。速度の伸びはガソリン車にかなわないが、市街地や郊外などでは十分に速く静かな高級車だ。
ハンドリングでは両車とも一本筋の通ったBMWならではのキレ味が貫かれている。硬いがシャッキと曲がり、ドライバーにハンドルを握る期待感を持たせる。
ただブレーキのタッチは難しく、ブレーキパッドのためか繊細に扱う必要がある。
フォルクスワーゲン・ID.4は発表直後の試乗会で乗せてもらった。そのときは郊外路だったが今回は市街地。ID.4は適度なサイズで狭い道でも扱いやすい。そしてEV専用プラットフォームを活用したフラットで広い室内をいかにもフォルクスワーゲンらしいシンプルさで表している。タッチパネルはどうも苦手だが、この清々しさは好きだ。
走りもタイヤが接地している感触がよく伝わって安定のフォルクスワーゲンだ。今年のフォルクスワーゲンは「遊ぶ」をテーマにマーケティングを展開している。そこにはID.4はピッタリだ。静かで振動がなく乗り心地も快適。そして何よりも広い。
BEVはどんどん登場する。立ち上がりトルクが強いこともあって多人数乗車のファミリーにうってつけだと感じたID.4だった。
さて、来年も女神湖の氷上走行会を1月中旬に開催する予定です。電動4WDでなにかできないか考え中。