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ヤマハの電動アシスト車椅子「JWスウィング」を体験してみた

「片流れ制御」「アシスト距離制御」の採用で操作感が進化!

2017年9月29日 発売

JWX-2:35万3160円~

JWスウィング:36万3000円~(非課税)

電動アシスト車椅子「JWスウィング」

 どうもアカザーっす!2000年にスポーツ中の事故で脊髄をやっちまって以来、今年で車椅子歴17年なオレです。オレの相棒というか足のかわりに使っている、OXエンジニアリング製の手動式車椅子「RC」に不満はないのですが、やはり今後歳を重ねた時のコトを考えると、電動アシスト付きの車椅子が気になる今日このごろ。

アカザーっす(イラスト:水口幸広)
筆者愛用の手動式車椅子

 というワケで今回やってきたのは、9月29日にヤマハ発動機から発売される車椅子用電動アシストユニット「JWX-2」と、電動アシスト車椅子「JWスウィング」の発表会。

ヤマハ発動機 SPV事業部JWビジネス部の米光正典部長によれば「JWはJoy Wheelの略で、かかわるすべての人達が幸せになるものを目指して開発してきた」とのこと

電動アシスト自転車「PAS」の技術を車椅子向けに応用!

 JWX-2とJWスウィングは、1993年に世界ではじめてコンシューマ向けに販売された電動アシスト自転車「PAS」の電動アシスト技術を車椅子向けに応用したもの。

 PAS同様にホイールセンターに仕込んだモーターで、車椅子をパワーアシストする仕組み。バッテリーは背面のケースの中に収納され、コネクター経由で左右のホイールに電源を供給する。電動車椅子などに比べると軽量・コンパクトで、重量は30kgほど。また、手動式車椅子のように、折り畳んでクルマに載せることも簡単にできる。

カーボン調のスタイリッシュなホイールカバーも、別途オプションで用意
ホイールセンターに電動モーターを内蔵
バッテリーは背面に取り付けた専用のケースに収納。バッテリーは2種類あり、標準のニッケル水素バッテリーは1回の充電で20kmのアシストが可能で、大容量リチウムイオンバッテリーは1回の充電で40kmもアシストしてくれる
手動式車椅子と同様にワンアクションで折り畳みが可能。バッテリーケースは後ろにスライドする仕組みなので、取り外す必要はナシ
ホイールもバッテリーとの接続コネクターを外し、中央のピンを押すだけ。取り外しにかかる時間はわずか数秒

 PASなどの電動アシスト付き自転車が、バイクではなくあくまで自転車の延長であるように、電動式車椅子ではなく自走式車椅子の延長としてJWX-2とJWスウィングの電動アシスト付き車椅子がある感じ。なので、「自走式車椅子で近所の坂道がキツイ」「電動式車椅子だと小まわりが効かないので人混みでは使いづらい」なんてユーザーのニーズにバッチリとハマる製品です。

JWスウィングのユーザーであるeriさん。「スタイリッシュな外見をネットで見つけて一目惚れしました。普段はショッピングや旅行などにJWスウィングを使っているのですが、取り扱いの手軽さとパワーアシストの両立により、行動範囲が格段に広がりました」とのこと

 それはラインアップからも見てとれて、車椅子用電動アシストユニットJWX-2は、好きな自走式車椅子のフレームに取り付けるホイールの一種といったライトな感覚で取り付けが可能(※取り付け用プレート設置などの加工は必要)。なので、カッコイイ自分好みにカスタムした車椅子に乗りたいユーザーにもうってつけ。

 もう一方の電動アシスト車椅子であるJWスウィングは、高齢者のリハビリトレーニング用としてリハビリ施設などでの使用も意識した、フレーム付きのコンプリートモデル。

世界初搭載の「片流れ制御」により、先代モデルから操作感が劇的に進化!

 このJWX-2シリーズは“2”というナンバリングからも分かるように、第2世代の車椅子用電動アシストユニット。1995年に発売された「JW-1」が初代モデル。そしてこのJWX-2が販売されたのは、実は2013年の8月!?「ええっ?そんな4年も前の製品の発表会をなぜ今になって? 意味なくね?」というご意見はごもっとも。

 そんなコトならオレも華麗にスルーな感じなのですが、今回の新モデルから搭載された「片流れ制御」「アシスト距離制御」という新機能が、かなりイケてるらしいんですヨ。

 なかでも、いちばんイケてるのがアシスト付き車椅子では世界初搭載となる片流れ制御機能!

【JWX-2機能紹介動画】片流れ制御

 車椅子を屋外で使ったコトがある方であれば、この機能のイケてる度というか、重要性にピンと来たのでは?

 アスファルトなどの一般的な舗装路は、降雨時の水はけなどを考慮し中央線を頂点にカマボコ型の断面をしています。なので、車椅子で道路の左を走る際には谷側となる左側のホイールを多めに漕がないと、車椅子は直進できすに左に曲がってしまうのです。

 これは電動アシスト付きのモデルでも同様で、直進するためには谷側のホイールを多めに漕ぐ必要があります。

傾斜面で車椅子を直進させるには、傾斜方向側のホイールを多めに漕ぐ必要がある
片流れ制御OFFでは、斜面方向に車椅子が曲がっていく
片流れ制御ONにすると、斜面でも車椅子はまっすぐに走る!

 オレが過去に、2013年モデルのJWX-2や、さらに初代の「JWX」を試乗させてもらった際に、いちばん気になったのがこの点。フラットな路面を走るぶんにはさほど問題には感じなかったのですが、斜面を走った際に左右の電動アシストのコントロールが難しく、どうしても蛇行してしまい、かなり操作に手こずった記憶が!

最初は片流れ制御をOFFにして試乗。先代モデルと同様、初めての使用では斜面をまっすぐ進むのが難しく、蛇行してしまう

 たぶん、使い込んで慣れれば使いこなせるんでしょうが、初見ではけっこうキビしいというか、アシストパワーの制御もままならない初心者で、腕の力が弱かったり、上体の保持が難しいユーザーなんかだとかなり怖いかも? でも、ホントにパワーアシストがほしいのはそういったユーザーさん達なんですよね。

 ですが、今回試乗用に用意された新型モデルはひと味違いました! 片流れ制御をONにして、体験会用の斜面を漕いで数mでその進化を実感! フツーに斜面を真っ直ぐ走る! ていうか、自走式で斜面を走るよりも楽かも!

 ひと言で言うならこれまでのモデルがイチ/ゼロ入力なデジタル制御的な電動アシストだとすると、この新型はアナログ制御的な電動アシスト! なんか言葉にすると変かも(笑)。でも、操作した感じがかなり自然で、まるで後ろから誰かに押してもらっているような電動アシストなんですヨ!

片流れ制御ONだと、ひと漕ぎするだけでスーッとまっすぐに走る!

ユーザーにあわせた細かな電動アシスト調整が可能に!

 この人間的感覚の電動アシストを実現したのは、新型モデルに搭載されている「JW Smart Core(ジェイダブリュ スマート コア)」システム。これにより、左右のタイヤの入力や回転差を検知し、車椅子の動きを補正。まっすぐ進むような電動アシストを自動で行なっちゃうんですヨ!

 また、ホイールセンターに内蔵した、新型コントロール基盤にBluetoothユニットを接続し、専用ソフトの「JW Smart Tune」をインストールしたPCに繋ぐことで、ユーザーの筋力や使用環境にあわせた細かなセッティングまでもが可能になるとのこと! なんかmotoGPのヤマハ製レースバイクもこんな感じでセッティングしてたよな~、めっちゃイカス!

 さらに、JW Smart CoreシステムとJW Smart Tuneを組み合わすことで実現したアシスト制御機能では、従来モデル比の0.1倍から2倍までの9段階のアシストパワーの細かな制御が可能とのことで……。

 JW Smart Tuneで、9種類のなかから2種類のアシストプログラムを本体に読み込ませるコトができるように。なので、家や人混みなどではアシスト0.1倍で使い、開けた屋外などで素早く目的まで行きたい場合にはアシスト2倍を使う、なんていう使い方も!

モード切り替えは、シート左側に取り付けられたボタンで行なう

 ちなみにオレが体験した感じでは、アシスト0.1倍だとひとこぎで30~50cmほどの移動距離。アシスト2倍の場合はひとこぎでスーッと10mほども走ってしまい、思わず笑っちゃいました。電動車椅子かよ!

 でもこのアシスト制御機能は、車椅子ユーザー目線でみればかなりナイスな機能なんですよ! 初心者がアシスト1倍で屋内を走った場合、アシストパワーを制御するのが難しく、ブレーキを使いこなせないと壁や家具なんかにブツかってしまうなんてこともありますからね~。

 また、体験会場には簡単なスロープコーナーが用意されており、そこでは上り坂体験を。こちらはご想像どおり、軽く押しただけで楽々坂を登っていく文句ナシの性能!この辺はPASなんかの電動アシスト自転車で皆さんが坂道で感じるアノ感覚と同じです。

 その後、近くにイイ感じの長い坂道(斜度4度ほどで距離20mほど)を発見し、自己責任でこちらでも試乗を行なわせてもらいました。

 そこでオレを驚かせたのが下りでの性能! 手動式車椅子で急坂を下りると、ハンドリムでブレーキをかける→手が熱くなりやけどしそうに→ブレーキが疎かに→スピードが出て危険→ビビる! なんてコトになったりしがちで、実は車椅子にとって急坂は鬼門なんです。

 その点、このJWX-2はバッチリでした! 一定のブレーキの効きを保ち安定して坂道を下って行きます。あまりの安定感に意地悪したくなって、あえて下り坂で漕いでみたのですが、速度セーフィティが効いて6km/h以上は出ません。しかも、余剰速度ぶんを回生ブレーキで電力に変換しバッテリーに戻すという賢さ! いや~参りました!

【JWX-2機能紹介動画】下り坂制御

 また、JWX-2のアシストコントロールは、ハンドリムを前後に数mmほど動かすことでスイッチが入る仕組みなんですが、新型モデルでは先代モデルよりもこの入力感度を30%ほどアップさせたとのこと。アナログ的な操作感の秘密は、こういった細かな改良にもあるんでしょうなぁ。

 体験試乗会の最後に人が減ったのを見計らって、JW Smart Tuneで各種パラメーターを担当者さんにイジってもらい、オススメの初心者向けセッティングと、上級者向けピーキーセッティングを特別に試させてもらったんですが……。

 ていうか上級者向けピーキーセッティングはヤバイっす! いきなり超軽量の陸上競技用車椅子のような鋭いダッシュ! かと思えば、競技用バスケ車のような鋭い小回りで旋回! コレはニュータイプ専用機ですわ! オールドタイプでビビリな初心者のオレは、パワーアシスト従来比0.5倍のまったりセッティングがいちばんイイ感じでした。

 こういったJW Smart Tuneでのセッティング変更は、慣れてくれば自分でもできるようですが、初心者時はリハビリ病院などでPT/OTの先生と相談してセッティングしていったほうがよいとのこと。

 このセッティング変更中に、JW Smart Tuneの画面を見ていて気になったのが、脳梗塞での片麻痺ユーザー用と思われるプログラムタブ(※現在は最終調整段階)まで用意されていたコト。そうそう、そうなんですよ! そういった左右の筋力が違うユーザーにも、この新型JWX-2の片流れ制御やアシスト制御機能は大きな助けになる気がします!

 最後に気になる価格ですが、JWX-2が35万3160円から、JWスウィングが36万3000円(非課税)からとのこと。もちろん補装具給付や介護保険の対象となっています。

車いす用電動アシストユニット「JWX-2」
電動アシスト車いすJWスウィング

 ていうか、約1万円上乗せするだけでフレーム付きとか「JWスウィングのほうが、めっちゃお得じゃないすか!」と担当者さんに聞いたところ、「リハビリシーンなどでも積極的に使ってほしいので企業努力しました」とのことでした。

 おおう、さすが俺たちのヤマハ! 今後もその企業努力の継続をお願いします! でもって、オレが電動アシスト付き車椅子を必要とすることになりそうな10年後とかには、さらに軽量コンパクトでカッチョよいモデルへの進化もよろしくお願い致します!(笑)

 今回体験させてもらった新型JWX-2は、9月27日~29日に東京ビッグサイトで開催される「第44回 国際福祉機器展 H.C.R2017」のヤマハブースでも体験が可能とのこと。なので、気になる方はぜひぜひご自身で乗ってみてください!

 日本が誇るビークルメーカーのヤマハがユーザーの声に耳を傾け、4年もの歳月をかけて改良・熟成させた電動アシスト車椅子には、乗った瞬間にピキーンと感じるものがありますよ~! コレたぶん、現状では世界ナンバーワンの電動アシストシステムを搭載した車椅子っす!