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ダイハツ「ハイゼット トラック」の衝突回避支援システム「スマートアシストIIIt」を体験してみた

軽トラ初の衝突回避支援ブレーキ

2018年5月17日 開催

一部改良を行ない5月29日に発売する新型「ハイゼット トラック」。グレードはスタンダード“農用スペシャル スマートアシストIIIt”で、LEDパックなどをオプション装備。ボディカラーはファインミントメタリック

 ダイハツ工業は、軽商用車「ハイゼット トラック」に衝突回避支援システム「スマートアシストIIIt(スリーティー)」を搭載する改良を行なった。5月29日の発売を前にした5月17日、実車でスマートアシストIIItを体感する説明&体験会が開催された。

高齢者の利用が増加し、安全性に対する要望が増えている

ダイハツ工業株式会社 製品企画部 チーフエンジニアの鈴鹿信之氏

 スマートアシストIIItの体験に先立ち行なわれた説明会では、ダイハツ工業 製品企画部 チーフエンジニアの鈴鹿信之氏が改良の概要を説明。ハイゼット トラックは2010年から8年連続で軽トラのトップシェアを記録し、2014年にはユーザーの声をヒアリングした上で改良した10代目にフルモデルチェンジした。

「仕事がしやすい」「頼れる」「安い」という3本柱に、自分仕様にカスタマイズできる「パック設定」を設けることで幅広いユーザーに使いやすい1台になるという。なかでもダイハツは農林水産省の「農業女子プロジェクト」に発足時から参加し、UVカットガラスやバニティミラーをパッケージ化した「農業女子パック」を登場させた。

 また、近年注目されているのはキャビンを後方に270mm延長した「ジャンボ」で、室内の収容スペースが不足しがちな軽トラの室内収納スペースを広げるとともに、リクライニングシートを採用するなど、快適性も向上させたモデルになる。以前から用意される仕様だが、近年注目されているのは軽トラを日常生活全般で使う人が増えているということでもある。

 その一方で、60歳代の高齢ユーザーが増加。次に購入するときは安全性を重視するニーズが高まり「乗用車同様に衝突回避支援ブレーキを付けてほしい」という声があり、今回スマートアシストIIItの搭載に至ったという。

2010年以降8年連続で軽トラシェアトップ
ユーザーの声をヒアリングして10代目が登場
幅広いニーズに応えるパックオプションを用意
農業女子プロジェクトに参加
全国の農業女子を訪問して集めた声を反映
豊富なラインアップを用意
後部を延長したジャンボ
乗用用途で使用するユーザーが増加傾向
自動ブレーキへの要望

スマートアシストIIItは専用開発。5万4000円のプラス

トラック特有の専用設計。スマートアシストIIItの「t」はトラックの意

 ハイゼット トラックのスマートアシストIIItが乗用車用の「スマートアシストIII」と異なる点は、短いホイールベース、リア車重の軽さ、積荷によるさまざまな積載条件という特性で、そのために専用開発になっているという。さらにMT車にも搭載が可能となっているのもポイントだ。

 メカニズムは、フロントウィンドウに搭載される小型の左右カメラ間隔80mmのステレオカメラをセンサーとし、横滑り防止の「VSC」のアクチェーターをスマートアシストIIItのものと共用とした。スマートアシストIIIt搭載グレードと非搭載グレードの価格差は5万4000円ほどで、鈴鹿氏は「世の中に普及させるためにお求めやすい価格とした」と説明する。

 同時に今回の改良では、LEDフォグランプも提供開始。すでに以前の改良でLEDヘッドライトを提供しているが、今回は標準装備のグレード以外ではLEDフォグランプとセットの「LEDパック」として提供し、夜間の視認性を向上させた。

 なお、ハイゼット トラックへのスマートアシストIIItの搭載により、「コペン」を除くダイハツ全車で衝突回避支援システムの搭載が可能になった。

3つの柱
安全性
スマートアシストIIIt
スマートアシストIIItの機能
グレード体系。スマートアシストIIIt搭載グレードは88万5600円から
スマートアシストIIItのまとめ

農業女子も応援に駆けつけ、スマートアシストの普及を要望

農業女子プロジェクトメンバー 長野県 竹ノ内農園 竹ノ内真理子さん

 また、今回の説明会では農業女子プロジェクトメンバーである長野県の竹ノ内農園から竹ノ内真理子さんが登壇。竹ノ内農園は3代続くりんご農家で、2台の軽トラックを保有し、夫、義母の3人でフル活用しているという。

 クルマがないと生活できないエリアに住まいや農園があり、保育園に通う子供の送り迎えやショッピングモールでの買い物にも軽トラを利用し、さまざまな場所に軽トラで行くという。

 竹ノ内さんは「スマートアシストがあると母も私も毎日安心して乗れる」と感想を話したほか、近隣の軽トラの利用状況を説明。「80歳代、90歳代で乗っている人もいる」とし、ダイハツには「スマートアシストを普及してもらいたい」と要望した。

ハイゼット トラックで衝突回避支援ブレーキを体験

 説明会では実車でスマートアシストIIItを体験。今回はダイハツの技術者の運転となるが、5速MT仕様のハイゼット トラックを障害物に向けて発進、加速したところでアクセルもブレーキも踏まずに自動的に急ブレーキがかかった。

ハイゼット トラックの自動ブレーキ(車外から。15秒)
ハイゼット トラックの自動ブレーキ(車内から。12秒)
クルマの後部の絵が書かれた障害物に向かって発進
自動で止まった
障害物にぶつかっていない
停車した状態の障害物との距離

 ブレーキがかかる際は、まず障害物を認識し、少し離れたところからアクチュエータが動作しはじめて小さい「ブーン」という音がする。いよいよぶつかりそうになったところでアクチュエータからの大きな「ブーン」という音とともに強いブレーキがかかり、障害物の手前で停車した。

 少し離れたところからアクチュエータが動作するのは、減速しない程度の弱いブレーキをかけておくことで、最後の本当に必要な場面で遅れなく強いブレーキをかけるため。もちろん、途中で障害物がなくなった場合は強いブレーキはキャンセルされる。

左右カメラ間隔80mmのステレオカメラ
荷台とフレームのすき間からアクチュエータが見える
スマートアシストIIItの動作の押しボタンスイッチがダッシュボードにある

 なお、MT車での体験となったが、MT車ではクラッチを踏まずにブレーキで停車してしまうため、エンジンストール状態となる。

誤発進抑制制御機能で踏み間違いを防止

 スマートアシストIIItではAT車に誤発進抑制制御機能も搭載される。前方に障害物がある場合、アクセルを踏んでもほとんど加速せず、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏んだ場合でも誤発進してしまうことを抑える。

誤発進抑制制御機能により、この状態からアクセルを踏んでも前方に突っ込むことはない。車止めを簡単に乗り越えてしまうほどアクセルを踏んでいる

 AT仕様のハイゼット トラックで、前方に障害物がある場合はアクセルを踏んでもほとんど前に進まない。

 駐車場の車止めのあるところで実験したが、ほとんど進まない状態となった。車止めのおかげでクルマが発進しないようにも見えるが、実際にスマートアシストIIItがなければ、車止めを超えて前に進んでしまうため、スマートアシストIIItによって誤発進が抑制されていることが分かる。

ハイゼット トラックの誤発進抑制制御機能(車内から。1分9秒)

改良されたハイゼット トラックを写真で紹介

 説明会では改良されたハイゼット トラックが展示された。今回展示されたのはスマートアシストIIItの体感に使用された2台のほか、農業女子パックを装着し、ディーラーオプションを多数まとった1台も用意された。

ボディカラーがファインミントメタリックのハイゼット トラック。グレードは「スタンダード“農用スペシャル スマートアシストIIIt”」(106万3800円)で、今回の改良で新設定された「LEDパック」といったオプションを装備する
ハイゼット トラックのエクステリア
インテリア。MT仕様でこのグレードのウィンドウは手回し仕様
MT車のシフトまわり。4WDへの切り替えはダッシュボードにある押しボタンスイッチで行なうほか、シフトレバーの手前に4WD時のHi-Lo切り替えがある
タイヤは145R12-6PRLTが装備される
農用スペシャルは連続して荷物を載せることを想定し、後輪のサスペンションのリーフスプリングが1枚多い4枚仕様となる
ボディカラーがトニコオレンジメタリックのハイゼット トラック。グレードは「ジャンボ“SA IIIt”」で、キャビンが広い仕様。LEDライトなどが標準装備の上級グレードとなる
フロントグリルの部分がメッキになった
LEDヘッドライトを装備
今回の改良でフォグランプもLED化された
ジャンボのキャビンの長さがよく分かる
運転席
シート
搭載するカーナビゲーション
イグニッションをONにすると点灯する警告灯。車線逸脱警告や衝突回避支援システムの警告もある。緊急自動ブレーキがかかる際は、ブザーのほか液晶部分に表示される
ハイゼット トラック「ジャンボ“SA IIIt”」
ジャンボはシートバックスペースが特徴。鞄や道具など、雨風を避けられる室内に物を置くスペースが広がる
撮影車はスーパーUV&IRカットガラス(フロントドア)/IR&UVカットガラス(フロントウィンドウ)、トップシェイドガラス、バニティミラー(運転席)などをパッケージにした「農業女子パック」を搭載。さらにメッキヘッドランプガーニッシュや12インチアルミホイール、ゲートプロテクター(ピンク)、荷台ゴムマットといったディーラーオプションを多数装備している
エンジンは座席の下にあり、助手席側からアクセスする
ジャンボはLEDヘッドライト、LEDフォグランプ、メッキフロントグリルを標準装備
ディーラーオプションのアルミホイール。メーカーオプションでは用意されない
オプションのチェック柄のシートカバーを装着したインテリア
ATのシフトレバーはフロアにある
エアコン操作パネルと、その下には4WDの切り替えとスマートアシストIIItの操作ボタンがある
ジャンボはハイルーフ仕様なので天井に収納スペースが用意される。ミラーの前にはステレオカメラが
荷台にはフレームプロテクターのほか、オプションのゴムマットが敷かれる。ジャンボの独特の形状にぴったり収まっている
荷台を錆に強くするオプションの荷台フルメッキ/厚メッキ加工の「ストロング防錆パック」と、「農業女子パック」が装備されていることを示すステッカー
ジャンボはキャビンが後方に延長されるが、荷台の長さは下部に潜り込む形で確保されている
同じ軽商用車である「ハイゼット カーゴ」は2017年11月からスマートアシストIIIを搭載可能になっている