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ダイハツと関西学院、密閉容器内の水素と酸素を水に戻す「ハニカム型水素安全触媒」開発

自動車用ハニカム型触媒を応用して量産可能

2019年7月22日 発表

 ダイハツ工業と関西学院大学・理工学部・田中裕久研究室の研究グループは7月22日、放射線分解によって発生する水素と酸素を密閉された容器内で安全な水に戻すことのできる「ハニカム型水素安全触媒」を開発したと発表した。

 同研究開発は、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた国家プロジェクトの中で実施されたもの。廃炉のプロセスにおける課題の1つとして、燃料デブリなどを保管する密閉された容器内では、放射線分解により水分から水素と酸素が発生する課題があるという。

 今回、ガソリン自動車用ハニカム型触媒を応用して、外部からの電力供給などを必要とせず、発生した水素と酸素を容器内で安全な水に戻す「水素安全触媒」の開発に成功した。

 触媒試作はキャタラーと日本ガイシが協力、触媒改良の効果はドイツ・ユーリッヒ研究所(Forschungszentrum Juelich GmbH)の大スケール反応装置で実証。マイナス20℃付近から、水素を除去できることが観察され、量産可能な触媒仕様で高性能、高活性であることが確認できたとしている。

 同研究グループでは、この結果により福島第一原子力発電所の廃炉の際に、燃料デブリなどを安全に搬出・輸送して、長期間に渡り安全に保管することが可能になるとして、今後実用化に向けたステップに移行する。

ハニカム型水素安全触媒の特徴

 今回開発したハニカム型水素安全触媒は、自動車触媒技術を応用しているため、以下のような特徴を持つとしている。

・燃料デブリなどの保管容器内で発生する水素を、安全な濃度(4%未満)に保つ
・高活性で、様々な環境で性能発揮(マイナス20℃から水素濃度を低減可能)
・外部からの電力供給が不要
・セラミックス・ハニカムに塗布されているため、軽量で取扱いが容易
・コンパクトで、保管容器にほとんど改良を加えることなく取り付け可能
・貴金属使用量が極めて少ない
・量産が可能で、実用性が高い