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ダイハツ「DNGA」の見どころをクローズアップ(プラットフォーム編)

未来を見据えた新技術は走りやすくて疲れないものを目指す

2019年6月6日 開催

プラットフォームに用いられたダイハツの新世代のクルマ作り「DNGA」に基づく新技術を紹介

 ダイハツ工業は6月6日、新世代のクルマ作り「DNGA(ディーエヌジーエー/Daihatsu New Global Architecture)」に基づく新技術の発表会をダイハツ工業 東京支社にて開催した。発表会の模様は6月7日の記事で紹介をしているので、本稿では当日紹介されたDNGAプラットフォームの特徴を紹介していく。なお、エンジンとCVTは別記事で紹介する。

写真は会場に展示されていたDNGAプラットフォーム

 DNGAプラットフォームは軽自動車用に設計したものではなく、A・Bセグメントのコンパクトカーとも共通して使用できることを目標にしている。具体的にはエンジンやサスペンションの取り付け位置、シャシー部の骨格の配置、着座位置などが共通化され、今後発売されるすべての新型車はDNGAの設計思想に基づいて開発を行なうという(100%同じにするわけではない)。

 なお、こうした一括企画開発を行なうことで軽自動車からコンパクトカーまでの部品供用率が75%以上となるので、新型車の投入ペースは約1.5倍にスピードアップされるとのこと。このようなフットワークのよさを生かし、ダイハツは2025年までに15ボディタイプ、21車種に展開していくプランを立てている。

DNGAプラットフォームは、軽自動車からコンパクトカーまで共用できるように設計されている。2025年までに15タイプ、21車種にDNGAプラットフォームを採用した新型車を投入するという

 この説明からも、DNGAプラットフォームが優れたものであることは想像できるだろう。では、その設計のポイントについて公表されていた内容を紹介する。

 まず、どんな特性にするかという基本的な部分だが、DNGAでは安全、安心、そして乗員が「心地いい」と感じられる運動性能を求めたという。

 さらに単に乗り心地がいいということだけでなく、運転中に乗員が感じている疲労の原因を調べることで、長時間乗車していても疲れを蓄積しない乗り心地を実現するという、革新的なことも目標に織り込まれた。そしてこの目標を達成するため、ダイハツでは部門ごとに独立していた開発スタイルをやめ、各部門から評価のスペシャリストを集めた「性能評価チーム」を結成している。

 DNGAのプラットフォーム開発でとっかかりとして行なったのが、運動性能を構成する因子を「サスペンションジオメトリ」→「サスペンションパーツの配置」→「サスペンションとボディの剛性」→「サスペンション部品の特性」という4つの段階に分けること。これにより各部をDNGAの思想にマッチするよう見直し、それらを再び積み上げていき、狙いどおりの性能の仕上げていったのだ。

会場に展示されていたDNGAプラットフォーム開発の参考資料

 ダイハツの技術者から、この点に関していくつかのポイントを説明されたのでそこを紹介していこう。

 はじめにフロントサスペンション。ここはロアアームの前後の支持位置を、前方に比べて後方を外側にしている。こうすることで、ブレーキング時などに起こるノーズダイブをサスペンションの動きによって軽減させることができるので、スプリングやショックアブソーバーの設定を乗り心地向上に振ることが可能になったという。

 また、ショックアブソーバーのロッド部に付くバンプラバーも従来の硬質ゴム製からウレタン製に変えることで、バンプタッチした状態での乗り心地のよさも向上させている。

フロントロアアームは支点位置を前後で変えることで、ブレーキング時にノーズダイブしにくい特性にしたという
ロアアーム自体は薄板を用いた一体構造とした。これにより大きな軽量化を実現する
フロントショックのアッパーサポートは1点締めになった
リアサスペンションアームは、ボディと繋ぐブッシュの取り付け位置をサスペンションの動く方向に対して斜めにすることで、コーナリング時のトー変化の量を抑えている
スタビライザーの中空化、リアトーションビームの形状最適化も行なう
リアショックアブソーバーは取り付け角度を前傾化させることで、入力に対してスムーズに動くように設定
ブレーキローターやドラムのハブとの接触面を薄肉化する。さらに、スチールホイールの板厚を薄くするなど細かい部分の軽量化を積み重ねることで、サスペンションまわりで10kgの軽量化を果たしている

 次に車体構造。最近はホットスタンプ材という軽くて高強度な鉄板も登場しているが、DNGAプラットフォームでは超ハイテン材とハイテン材を適所に組み合わせることで、コストを抑えつつ十分な剛性と軽さを実現している。それに加えてシートレールやシート骨格、さらにステアリングの支持部のステーまでもプラットフォームの一部と考え、この部位を合わせてプラットフォームの剛性を考えているとのこと。

 また、従来構造では衝突被害軽減のために骨格の一部を切り離していたが、DNGAプラットフォームでは高度な解析技術を用いることで連続した構造とした。これもプラットフォームの高剛性化に大きく貢献するものだ。

展示しているプラットフォームでは超ハイテン材、ハイテン材が使われる部位ごとに色分けがされていたので、ダイハツの工夫が視覚的に分かるようになっていた。なお、サスペンションを含めたプラットフォーム全体で現行同サイズの車両から80kgという大幅な軽量化を達成した
シートレールやシートの骨格もプラットフォームの一部としてみているので、ここでの剛性アップも考えている
ステアリング支持についても骨格としてみる
DNGAプラットフォームでは高価な新素材は使っていないが、構造を工夫することで10年先を見据えた安全性、強度、NV性能を織り込んでいる。日本のもの作りらしいと感じた

疲労感を減らすためのDNGA流の取り組み

 DNGAプラットフォームでは「基本性能の進化 ~安全・安心・心地よさの追求~」という視点から、ドライバーの疲労軽減に着目。ここでポイントになったのが運転中の頭の動きだ。

 運転中は多かれ少なかれ振動によりドライバーの頭は揺すられているが、そういった際、人間は頭が揺れると、その動きと反対側に眼球を動かす反射機能が働く。これが完全に機能している状態なら目線にブレは出ないのだが、実際に調査してみたところ、揺れに対する対応は100%ではなく、揺れを相殺しきれていない部分があることが分かった。これをダイハツでは「視線ブレ」と定義した。そして、その視線ブレの大きさと自覚できる疲労感に関係性があることを突き止めたのだ。

視線ブレを軽減することで、運転疲労を軽減する作り。ここは実際に体験してみたい部分だ

 そこで前記したように、DNGAは高剛性なボディに挙動を安定させるためのジオメトリーを持つサスペンション設計、そしてフラット感を重視したショックアブソーバー特性を与えることで、ドライバーの視線ブレを抑えることを狙う。さらにシート自体も、すべての座席で乗員が座ったときにシートに掛かる座圧のデータを取り、クッション性やサポート性を最適化している。

 こうした作りによって競合車はもちろんのこと、ダイハツの現行車と比較しても視線ブレを大幅に低減し、それに伴い運転時の疲労も軽減させることを実現している。

ショックアブソーバーはフラット感を重視した特性
シートは乗員が座ったときの座圧などのデータを多くの体型で計測。その平均値から、疲労軽減に最適なクッション性やホールド性を持たせたとのこと
リアシート。座面がかなり広く取られているので、大柄な人が座っても腿裏が座面より出てしまうことが少なそう

 こうしたクルマそのものの作りでドライバーの疲労を軽減していることに加え、ダイハツの先進安全機能である「スマートアシストIII」でも、「全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)」「LKC(レーンキープアシスト)」など、運転の負担を軽減させる機能を充実させている。そのため、DNGAプラットフォームを採用したクルマは長時間、長距離を乗っても疲れにくいクルマになっているだろう。とくに毎日の通勤でクルマを使用するような人にとってはとても魅力的に思える性能ではないだろうか。

ドライバーの疲労軽減になる先進安全機能「スマートアシストIII」に全車速追従型のACCを追加
ハイトワゴンにはとくに有効なLKC(車線維持支援機能)もある
そのほかの機能も追加&強化された