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ダイハツの新型「タフト」オンライン説明会レポート。チーフエンジニア&デザイナーが解説

「自分達が乗りたいクルマはどんなものだろう」をデザインで具現化

2020年6月10日 発売

新型「タフト」

 ダイハツ工業は6月10日に新型軽自動車の「タフト」を発売した。タフトに関しては2020年1月に幕張メッセで開催された「東京オートサロン 2020」にて「TAFT コンセプト」として世界初公開していたので、およそ5か月経っての正式発売だ。東京オートサロンに展示されていたTAFT コンセプトは、コンセプトモデルと言いつつもそのまま販売店に並んでいてもおかしくないくらい完成度が高かったので、ダイハツブースでTAFT コンセプトを見た方の多くからは「近いうちに市販されそう」という声も上がっていたが「まさにそのとおり」であった。

 Car Watchでも東京オートサロン 2020に出展されたTAFT コンセプトを紹介しているので、これから紹介する新型タフトとの違いなどを見比べてみてはいかがだろうか。

 なお、今回の説明会は新型コロナウィルス感染症に対する対応としてオンラインでの開催となった。そのため、説明会に参加した報道陣も実車を見ることができていない。そのため、いつもとはページの構成が違っているのはご了承いただきたい。

 また、新型タフトの発売にあたり、ダイハツ工業 代表取締役社長の奥平総一郎氏からのあいさつビデオが公開されているが、そちらは別記事にて紹介しているので合わせてご覧になってほしい。

今回の説明会では大阪にあるダイハツ本社とも回線が繋がっていて、タフトの開発に携わった方はそこから参加。こちらは製品企画部 チーフエンジニアの小村明紀氏
もうひと方はデザイン部 担当デザイナー・主担当員の皆川悟氏
こちらはトップグレードのタフト G ターボ。ボディカラーはフォレストカーキメタリックで、ディーラーオプションの「メッキパック」を装着。タフなイメージを持つクルマなので、過去に販売していた「ネイキッド」との関係があるように思うところだが、ネイキッドに近づけることは意識しなかったとのこと。ただ、デザインの段階においてネイキッドの表現を勉強させてもらったという

 さて、新型タフトは「日常からレジャーシーンまで大活躍、毎日を楽しくしてくれる頼れる相棒」をコンセプトに開発されていて、2019年に発売した「タント」「ロッキー」に続き、ダイハツが新世代のクルマづくりのために用意した新しいプラットフォーム「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を採用。軽自動車では2車種目のDNGA採用モデルである。

 車種展開は大きく分けて3グレードある。直列3気筒DOHCの自然吸気エンジンを積む「X」と「G」、そして直列3気筒DOHC インタークーラーターボエンジンの「G ターボ」だ。なお、タフトに搭載されるエンジンは自然吸気、ターボともに2019年に発売されたタントに搭載されたのと同仕様のKF型エンジンなので、タントとエンジン特性、およびスペックに違いはない。

自然吸気エンジンのタフト G。ボディカラーはレイクブルーメタリック
自然吸気エンジンのタフト X。ボディカラーはサンドベージュメタリック

 トランスミッションは全車CVTだが、G ターボのみスプリットギヤを採用したダイハツ独自のCVTである「D-CVT」が設定されている。なお、自然吸気車にD-CVTを使わなかったことについては「コストアップによる価格高騰を防ぐこと」、そして「ギヤを組み込んでいるD-CVTは単体重量が重いので、軽量化を進めるうえで過剰な装備は適当ではないし、従来のCVTも十分に高性能であるため」といったことが理由になっていた。駆動方式は全グレードに2WDと4WDが設定されている。

 このようにエンジンやトランスミッションはタントと同じになっているが、パーキングブレーキはダイハツ初の電動パーキングブレーキが搭載された。この機能はシフト操作に連動して作動し、シフトレバーを「P(パーキング)」に入れるとバーキングブレーキが自動でかかるようになっている。そしてシフトレバーを「D(ドライブ)」に入れてアクセルを踏むと自動で解除されるので、パーキングブレーキのかけ忘れやかけたまま発進してしまうということを防げるのだ。さらに、信号待ちなどでブレーキを踏んで停車した際、ブレーキを踏み続けなくても停車を維持できる「オートブレーキホールド機能」も搭載する。

ダイハツ初の電動パーキングブレーキを装備したことで、ブレーキを踏み続けなくても停車を維持できるオートブレーキホールド機能を搭載
駆動輪が空転した際、空回りした車輪のみにブレーキをかけることでLSD的な効果を出し、もう片方の車輪に駆動力を与える「グリップサポート制御」も装備。未舗装路や雪道などでの走破性が上がっている
190mmの高い地上高に、27度のアプローチアングル、58度のデパーチャーアングルがあるので悪路の走破性は高い。ただ、ダイハツがオフロード走行を推奨しているわけではない。オフロードを走る際は十分な注意が必要だ

 安全性能は、ダイハツの予防安全機能である「スマートアシスト」を搭載していて、内容は新機能を含む全17種類(一部メーカーオプション)の項目となっている。

 その機能のうち、今回の説明会のなかでピックアップされたのがフロントウィンドウ上部に取り付けられた新ステレオカメラ。この部分のグレードアップにより昼間だけでなく夜間の対車両、対歩行者の検知力が向上しているので、衝突警報機能と衝突回避支援ブレーキ機能がより高性能化された。

 また、G ターボに標準装備されるACC(アダプティブクルーズコントロール)は全車速追従機能付きで、先行車の減速に合わせてACCの機能で停車した場合、最大約3分間、ブレーキを踏み続けなくても停車状態を維持することができる。そして前車が動き出したときはステアリングの「+RES」スイッチを押すかアクセルを踏むと追従を開始するので、ノロノロと進む渋滞であってもシステムにゆだねる走行が可能だ。

新ステレオカメラの採用により夜間でも他車や歩行者の認識性が向上。タフトのスマートアシストはより安全なシステムに進化している
ヘッドライトは全車フルLED
G ターボに標準装備、Gにメーカーオプション設定されるACC(アダプティブクルーズコントロール)のイメージ。全車速追従機能付きで、先行車の減速に合わせてACCの機能で停車した場合、最大約3分間、ブレーキを踏み続けなくても停車状態を維持する

 次はエクステリアを取り上げていこう。ここは道具的なタフさと力強さ、そして安心を感じさせるデザインとしていて、スクエアな形状をベースにキャビンは薄いイメージ、ボディは分厚く見えるようなスタイルとしたとのこと。そしてクロスオーバーらしい走破性の高さを感じるよう、リフト感を強調する前後バンパーに、同じプラットフォームを使うタントより高められた車高、さらに165/55R15という外径の大きいタイヤを合わせている。

 なお、個性を高めるアイテムとしてメーカーオプションのスタイルパックが3種類、グリル部とリアガーニッシュ部にメッキパーツが付くメッキパック&ダークブラックメッキパックがディーラーオプションで用意されている。

スクエアなボディでキャビンは薄く、ドアの厚みを感じさせるデザインにすることでタフさや道具感を出している
メーカーオプションのブラックパック(ブラック塗装のドアミラー、ドアハンドルと、ガンメタリック塗装のアルミホイール)+ディーラーオプションのダークブラックメッキパックなどを着用。タフ&エレガントなカスタムに仕立てられる
メーカーオプションのクロムパック(メッキドアアウターハンドルと、シルバー塗装のアルミホイール)にディーラーオプションのメッキパックなどを装着。都会派でクールなスタイルを演出
メーカーオプションのホワイトパック(ホワイト塗装のドアミラーカバー、ドアアウターハンドル、スチールホイール)に、ナチュラル&クラシカルなイメージのディーラーオプションを装着。性別を問わないシンプルスタイルを創出

 続いてはインテリアだが、ここでのデザインや機能を紹介する前に触れておきたいのが「バックパックスタイル」というタフト全体にかかるコンセプトだ。

 ではバックスタイルとは? というと、これそのままズバリ、スポーツやレジャーシーンでよく見かける背中にバックパックを背負ったスタイルをイメージしたもので、前席を「人」と捉え、背もたれをたたんだ後席になんでも気軽に詰め込める「バックパック」と捉えるというものだ。

 これについて小村氏は「前席に関してはドライバーを中心に機能部品を配置しています。また、タフトは4名が乗れるクルマなので後席の居住性も十分に考えていますが、それと同時にバックパックに物を詰め込むような気軽さで荷物を積んでもらうために、動かすための手順が複雑になるスライドシートなどはあえて省きました。リアシートの背もたれは簡単な操作でたためるようにしています」と解説した。

タフト G ターボのインパネまわり。ドライバーが操作しやすいようスイッチ類がレイアウトされている。形状は全車同じで加飾パーツなどに違いがある
メーターまわり。スポーティなデザインと配色だ
タフト G ターボのシート。カモフラ柄になっている
センターコンソールにシフトレバーが付く

 デザインを担当した皆川氏からは「今回、タフトのデザインを行なううえで最初に考えたことが“自分達が乗りたいクルマはどんなものだろう”ということでした。今回は男性を中心にデザインメンバーを招集して意見を集めましたが、そこではガレージライフというか、自分が気に入っているものを集めていじったりする空間のことが語られました。そんなスペースはゴチャゴチャしているだろうけど、どこかワクワクするものでもありますので、運転席まわりの機能部品をデザインするときはそのイメージにこだわりました。そして、ラゲッジスペースに関してはリアシートをたたむことで、フラットな床面を持ったガンガン使えるスペースとしました。なお、後席のシートバックは樹脂カバード仕様でラゲッジスペースもデッキボードも樹脂製の素材を使用しています」と語った。

後席のシートバックは樹脂でカバーされているので丈夫で、前倒しするとラゲッジスペースと繋がるフラットなスペースになる。そのため荷物を気軽に積んでいくことができる
ラゲッジスペースの使い方例。大きなものの場合
ラゲッジスペースの使い方例。小物の場合

 このほかにも随所にアイデアが盛りこまれているインテリアだが、ここには忘れてはいけない大きなポイントがあった。それが前席の頭上にあたるルーフ部が一面ガラス張りになっている「スカイフィールトップ」だ。アクティブなイメージのクルマとはいえ、この装備はかなり個性的であるが、説明会では小村氏からスカイフィールトップを採用した理由についても解説があったので最後はそこを紹介しよう。

前席の頭上がガラス張りになるスカイフィールトップ

 ご存じのように今はアウトドアレジャーの人気が高く、その影響もあってクロスオーバー車の人気も高くなっているが、ダイハツが行なったマーケティングによると、クロスオーバーというジャンルの車種に乗る人であってもキャンプのためにクルマを使うという人はそれほど多くなく、ほとんどが「アクティブなイメージのクルマに乗ることで、日常の中であっても楽しい気分を感じていたい」という考えを持っていて、そこからクロスオーバーに魅力を感じていることが見えたという。

 そこでタフトの開発陣が考えたのが、乗ることで気持ちが楽しくなるような要素を取り入れること。その考えから生まれたのが日常使いの中でも開放感を感じられるスカイフィールトップなのである。これは前席上のルーフ部をガラス製トップにしたもので、シェードを開けると明るく圧倒的な開放感が得られ、開閉機能はないが紫外線や熱を感じる赤外線の透過量を減少させるためのスーパーUV&IRカットガラスが採用されている。なお、シェードを閉めると通常のルーフと同様の室内になる。

ガラスにはスーパーUV&IRカットガラスが使われているので、夏場の日中に開けていても余計な暑さは感じにくい
シェードを閉めた状態。シェードは手動

 以上がタフトオンライン説明会の内容だ。タフトは非常に注目されているクルマなので、もっと詳しい部分を知りたいと思う方もいるだろうが、今後は試乗会も開催される予定なので、ここで触れられていない部分はまた改めて紹介していきたいと思う。