試乗レポート

ダイハツの新型軽SUV「タフト」、元気よくスポーティでとびきり楽しい1台

スマアシの最新装備がドライブをサポート

 ついに、大ヒット軽SUVのスズキ「ハスラー」に強敵現る!? 東京モーターショー 2019に出展されたコンセプトカー「WakuWaku」でそんな噂が加速しはじめたと思ったら、あっという間にそれが現実となった。タフの「T」、オールマイティの「A」、ファンの「F」、ツールの「T」の頭文字をとって「タフト」と名付けられたダイハツ工業の新型軽SUVは、発売からわずか1か月で1万8000台の受注という絶好調な滑り出しを見せている。

 待ちくだびれるほど延びに延びた試乗の機会だったが、初めて対面したタフトは期待を裏切らない存在感。思わず組み立てたくなるブロックのような、つい開けてみたくなるツールボックスのような、ボリュームのあるスクエアボディがまず目を惹いた。張り出したフェンダーアーチや15インチの大径タイヤ、アンダーカバーがワイルドさも加えている。

ダイハツ工業の新型軽クロスオーバーSUV「タフト」。試乗車のグレードは「G」(2WD)、価格は148万5000円。ボディカラーはアースカラーの新色「レイクブルーメタリック」

 あえてメッキパーツを最小限にし、シンプルな道具感を強調した標準デザインと、ダイハツエンブレムを取っ払ってまでメッキパーツを太く配した「メッキパック」があり、今回の試乗車は標準デザイン。ボディカラーは、アースカラーを揃えたという全9色のうち、汚れてもカッコいいスモーキーさが魅力の「レイクブルーメタリック」だ。全車に夜間の視界確保にも貢献するフルLEDヘッドライトを採用し、上級グレードにはアダプティブドライビングビーム(ADB)が設定されていたり、本格SUVに負けない190mmの最低地上高を確保するなど、先進性とタフさを両立する意気込みが感じられる。

ボディサイズは3395×1475×1630mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2460mm、最低地上高は190mm。アプローチアングルは27度、デパーチャーアングルは58度を確保
新車装着タイヤは横浜ゴム製「BluEarth-FE AE30」。タイヤサイズは165/65R15
約3年半ぶりに「スマートアシスト」のステレオカメラを一新。撮像性能を向上させて夜間歩行者へ対応。全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)は前走車に続いて停車した場合、停車保持が可能となった

 室内に入ると、まず目に入るのは前席の頭上がまるまるガラスルーフとなる「スカイフィールトップ」。これも全車標準装備となる。何度も上を見上げたくなる開放感は、SUVのキャラクターにも合っていて気分がアガるのはもちろん、紫外線や赤外線を減らすスーパーUV&IRカット機能が付き、開閉できるシェードを閉じれば落ち着いた空間にもなって実用的だ。ただ、やはりガラスルーフが厚みを取っているだけに、ハスラーと比べると頭上スペースはタイトになり、長身の人はちょっと圧迫感を感じるかもしれない。

ガラスルーフ「スカイフィールトップ」は全車標準装備

 その代わり、フロントガラスが遠くに感じるような室内前後のゆとりはしっかりある。直線基調のインパネもスッキリとまとまっているが、エアアウトレットやシフトレバーまわり、メーター内などにオレンジメタリックの加飾がアクセントとなり、アクティブな印象が加わって楽しげな演出。スイッチなどの機能パーツはドライバー向けに配置され、助手席側には大きなオープンポケットなどの収納スペースが設けられており、使いやすさは抜かりない。シートの大きさもたっぷりで、長時間ドライブでも疲れにくい形状にこだわったというだけあって、座面の弾力がしっかりしている印象。個性的なカモフラージュ柄も目を楽しませてくれる。

タフトのインパネ
ステアリング。左側のスポークにはオーディオの操作ボタンや、クルマとスマートフォンをつないで「つながる安心」「快適・便利」を提供する「ダイハツコネクト」、駐車支援システム「スマートパノラマパーキングアシスト」のスイッチを配置。右側のスポークには全車速追従機能付ACCの操作スイッチなどを配置
オレンジ色の加飾が入るメーター
シフトノブ
シフト横にはエアコン類のスイッチを配置
シフト下のトレイにはスマートフォンがすっぽり収まる
助手席前面には大きなオープンポケットを備える
買い物袋などが引っ掛けられるフック
助手席アンダートレー
たっぷりとした厚みがあり、個性的な柄が目を引くシート。フロントとリアで色味が異なる
荷室は汚れた物を入れてもすぐ拭き取れるように樹脂製となる

 タフトは、ダイハツの新しいクルマづくり「DNGA」新プラットフォームを採用するモデルとして、タントと「ロッキー」に続く第3弾。パワートレーンについても、タントで改良した燃費効率を高めたエンジンを採用し、自然吸気とターボにCVTを組み合わせる。ターボには、リニアな加速で気持ちよく走れるD-CVTを採用しているというが、ひとまず今回の試乗は自然吸気モデルでベーシックなタフトの走りを体感した。

試乗車は最高出力38kW(52PS)/6900rpm、最大トルク60Nm(6.1kgfm)/3600rpmを発生する直列3気筒DOHC 0.66リッター「KF」型エンジンを搭載。トランスミッションはCVT

一体感のある走りと、後席の乗り心地のよさに驚き

 ひと踏みめの加速はスッと軽やかで、それでいてしっかりとした接地感がある。そこから速度を上げていくと、30~40km/hあたりでややギクシャク感があり、踏み込んだ感覚と加速にズレが生じるような印象だったが、それを過ぎると一体感が強まり、気持ちのよいフィーリングが続く。減速のメリハリも思い通りにつけやすくなり、カーブでの安定感があって頼もしい走りを披露してくれた。とても最低地上高が190mmもあるクルマとは思えないほど、低重心な印象で市街地でも全く違和感がないことに感心した。

 高速域に入ると、さすがにエンジン音が大きめに入ってくるものの、踏み込めば追い越し加速も力強い。ハンドリングも適度にキビキビとしていて、上質感はそれほど高くない代わりに元気よくスポーティに走れる印象だ。今回はオフロードは走れなかったが、アプローチアングル27度、デパーチャーアングル58度と、SUVらしい悪路走破性も確保。ぬかるんだ道や凹凸でタイヤが空転しても、もう片輪に駆動力を伝えてグリップ状態をキープする「グリップサポート制御」も搭載されており、雪道なども安心して走れるようになっている。

 また、タフトはダイハツ初となる電動パーキングブレーキを全車に搭載しているが、シフトに連動してパーキングブレーキが作動し、アクセル操作での解除ができるのがラク。またブレーキを踏んで停止した時に、ペダルから足を離しても停止状態が維持できるオートブレーキホールドも採用されたので、市街地のストップ&ゴーがさらにラクになった。安全機能についても、約3年半ぶりに一新された新型ステレオカメラにより、スマートアシストがさらに進化。とくに、夜間の歩行者に対応するなど検知性能が向上したほか、衝突回避支援ブレーキの対応速度が引き上げられたり、全車速追従機能付きACCでは停止保持機能もついたりと、1つひとつの機能がレベルアップしているのが嬉しい。

 そして、オプション設定のスマートパノラマパーキングアシストをショッピングモールの駐車場で試したところ、あらためて操作の速さに感心。これなら誰でもすぐに慣れて、ササッと停められるようになるはず。従来の駐車支援システムに失望して、「どうせ使えないんでしょ」と思っている人にこそ、試してみてほしいと感じた。

駐車枠を検知すると、ステアリングとアクセル、ブレーキ操作を自動で行なってくれる「スマートパノラマパーキングアシスト」をオプション設定。並列駐車のほか、縦列駐車にも対応している

 さて、最後に後席にも座って試乗すると、乗り心地のよさにビックリ。座面の大きさやずれにくさも申し分なく、視界にはスカイフィールトップの開放感も入ってくるので、とてもリラックスして過ごせる空間だ。シートの前後スライド機能がないのは残念だが、左右別々に前倒しができ、ラゲッジとの段差がないフラットなスペースになる。ラゲッジは、高さを変えたり立てかけたりして使えるフレキシブルボードがあり、スーツケースなど高さのある荷物が余裕ですっぽり。後席背面とフレキシブルボード表面は樹脂製で、汚れてもサッと拭き取りやすい仕様となっている。

 ターボモデルはまたひと味違うのかもしれないが、自然吸気モデルのタフトはちょうどいいカジュアルさが走りにも使い勝手にもあふれていた。いつもと同じ道を走っても、雨でも晴れでも、どこか気持ちが弾むように感じさせてくれるのは、タフトが軽SUVだからというだけではない。乗る人を自然体にさせる仕掛けがあちこちに仕込まれている、とびきり楽しい1台だ。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。

Photo:安田 剛