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メルセデス・ベンツ、「MBUX」の実演デモも行なわれた新型「Aクラス」発表会
上野社長「クルマへの自然な語りがけで車内のさまざまな設定が可能なのは、それ自体が安全性を高めている」
2018年10月18日 21:10
- 2018年10月18日 開催
- 322万円~362万円
メルセデス・ベンツ日本は10月18日、同日に受注を開始した新型「Aクラス」の発表会を都内で開催した。価格は「A 180」が322万円、「A 180 Style」が362万円。
今回で4世代目になる新型Aクラスは、パワートレーンを先代の1.6リッターから1.4リッターに変更しながら出力を14PS向上させるとともに、空力性能や静粛性の向上、「Sクラス」と同等の安全運転支援システムの導入など、全域にわたって改良を施した。
車両概要については、関連記事の「メルセデス・ベンツ、AIも用いた新開発の対話型インフォテイメントシステム『MBUX』搭載の新型『Aクラス』。322万円から」を参照いただきたい。
さまざまな要望に応えるMBUX
新型Aクラスでは「ハイ、メルセデス」とクルマに話しかけるだけで起動する新開発の対話型インフォテイメントシステム「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」を搭載したことが大きなトピックとなっており、ニュアンス・コミュニケーションズの自然対話式音声認識機能を採用することで目的地入力、電話通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報といったインフォテインメント機能に加え、クライメートコントロール、シートヒーター、アンビエントライトなどの調整を音声で行なえるようになった。
発表会ではメルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏とともに、ダイムラーの研究開発部門 コンパクトモデル開発 プロジェクトリーダーのオリバー・ゾルケ氏、研究開発部門 MBUX ユーザーインタラクションコンセプト 担当マネージャーのトビアス・キーファー氏が登壇してそれぞれから新型Aクラスの魅力が語られ、キーファー氏のプレゼンテーションではMBUXを実際に使用するデモを実施。登壇者の「今日の大阪の天気を教えて」「ちょっと暑いんだけど」「(音楽の)Just like Youをかけて」「アンビエントライトを青にして」「今日の調子はどう?」「六本木ヒルズに行きたい」といった要望に一発回答した。
従来の音声認識機能は命令語が決められており、ユーザーがそのとおりに発話する必要があった。これに対し、MBUXの音声認識機能は自然言語認識機能を搭載することで遠まわしな表現にも対応することが特徴になっている。加えて学習能力も備え、クラウド上のソフトウェアモデルによって新しい流行語を覚えたり、時代による言葉の用法の変化を学習したりするとともに、これまでのように定型文言ではなく受け答えがさまざまに変化するのもポイントになる。
また、AI(人工知能)を用いた予測機能も備わり、例えば毎週月曜日に決まった相手、決まった時間に連絡をしているとそれを学習し、その時刻になるとディスプレイに相手の電話番号を「おすすめ」として表示するといったことも可能になっている。
なお、こうしたコマンドは車載コンピュータとクラウドの両方で評価を行ない、どちらの応答がより確かかを判断し、数秒以内に応答/反応する仕組みになっている。車載コンピュータとクラウドの両方で評価する理由は、インターネット接続のできない環境で使われることもあり得るためだ。
MBUXのプレゼンテーションを行なったキーファー氏からマイクを受け取った上野社長は、「クルマへの自然な語りがけで車内のさまざまな設定が可能なのは、それ自体が安全性を高めていると言ってよいのではないでしょうか。ちょっとした操作のために、瞬間的に視線を進行方向から外す必要がなくなりますし、スマートフォンを取り出す必要もございません。また、スマートフォン向けにワイヤレスチャージング機能(Qi[チー]規格対応機種の携帯電話を無線充電)を標準装備したのも特筆すべき点だと思っています」とアピールを行なった。
テストドライブに連れて行けばきっと恋に落ちる
オリバー・ゾルケ氏からは、車両全体の紹介が行なわれ、「エクステリア&ボディ構造」「エアロダイナミクス&NVH(騒音・振動)」「パワートレーン」「インテリア」の4点に絞って解説を実施。
まずエクステリアについては、「新型Aクラスでは若々しくスポーティでエキサイティングなデザインを実現しました。先進的なフロントまわりでは低いボンネット、フラットなLEDヘッドライト、デイタイムランニングライトなどで心に響く魅力的な外観に仕上げました。スリーポインテッドスターを配したフロントグリルは末広がりになっており、先代のデザインを踏襲しています。リアまわりではモジュール型2分割リアバンパー内蔵のリフレクター、そして2ピースデザインのLEDテールランプが魅力的な外観につながっています」と紹介。
また、新型Aクラス(日本仕様)ではLEDヘッドライトを標準装備するとともに、左右それぞれに個別制御されるLED18個からなる「マルチビームLEDヘッドライト」をオプション設定していることを紹介。街灯がないなど暗い道路を30km/h以上で走行する際に機能し、対向車や前走車に光を当てないように個々のハイビームモジュールを部分的に遮光する「アダプティブハイビームアシスト・プラス」といった機能が備わることを紹介した。
一方、ボディシェルについては重量を先代モデル並みにしながら剛性と静粛性を高めたものとし、高張力スチール、超高張力スチール、熱間プレスの使用を拡大することで前面衝突、側面衝突、後面衝突、横転などの事故で発生するストレスに対して高い剛性を持つという。なかでもテールゲートを備えるモデルではリアまわりの剛性で不利になることから、E クラス ステーションワゴンで培ってきた知見を活かして優れた剛性を維持したという。
結果として、積載容量の増加とフラットなラゲッジフロアを実現したほか、先代モデルに比べて車内での会話明瞭度を12%、A/B/Cピラーのスリム化によって360度の視界を10%向上したと解説を行なった。
空力性能では、コンピュータによる気流シミュレーションや風洞実験を実施し、前後に設けたホイールスポイラーでホイールまわりの気流損失を抑えたほか、新設計のAピラーとサイドミラーの相互作用の最適化、トランクリッドシールの改良などを実施し、エアロダイナミクスはセグメントトップのCd値0.25を実現。風切り音は先代モデルから30%低減(140km/h走行時)することに成功している。
パワートレーンについては、新型Aクラス(A 180)ではオールアルミニウム製の直列4気筒DOHC 1.4リッター直噴ターボ「M282」型エンジンを新採用。最高出力100kW(136PS)/5500rpm、最大トルク200Nm(20.4kgfm)/1460rpmを発生し、最大トルクは先代モデルと同等しながら最高出力を14PS増とした。ゾルケ氏は「先代モデルから重量が削減されるとともに、パフォーマンスが向上し、CO2排出量は15%削減されました。また、ブースト圧は電子制御されていますので、部分負荷レンジがより柔軟、かつ精密になりました。M282はさまざまなNVH対策を施すことでメルセデスのお客さまが期待する快適性を担保しています」とコメント。加えて通常のシリンダーヘッドに比べると装着時の高さがある一方で、幅や重さが小さくなるデルタ形シリンダーヘッドを採用したこと、インテークマニホールドとエグゾーストマニホールドを半一体型としてコンパクト化したことなどが紹介された。
「モダンでアバンギャルドになった」(ゾルケ氏)というインテリアに関しては、ヘッドルームが前席7mm、後席8mm、ショルダールームが前席9mm、後席22mm、肘部分の空間が前席35mm、後席36mmそれぞれ拡大するなど、ゆとりある室内空間に進化したことを紹介。また、ラゲッジスペースについても先代モデルから29L増の370Lに拡大されるとともに、トランク開口部が200mm、トランク長が115mm、トランク幅が225mm広がることで利便性が高まったことも報告された。
最後にゾルケ氏は、「新型Aクラスはすべての面で刷新されました。その結果、新型Aクラスは世界中のジャーナリストから絶賛の嵐を受けています。ぜひこの新しいAクラスをテストドライブに連れて行ってください。きっと恋に落ちることは間違いないと思います」と述べプレゼンテーションを締めくくった。