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ホンダ、新開発責任者 水上聡氏による「NSX」2019年モデル説明会

タイヤ、サスペンションの剛性を高めつつ、乗り心地は「すげーいいじゃん!」と評判

2018年10月25日 受注開始

2370万円

新しく現行NSXの開発責任者に就任した水上聡氏と「NSX」2019年モデル(サーマルオレンジ・パール)

 本田技研工業は、10月25日に受注を開始した「NSX」2019年モデルの説明会を都内で開催した。2019年モデルの正式発売は2019年5月となり、価格は2370万円。

 2代目となる現行NSXの開発責任者は、これまでテッド・クラウス氏が務めてきたが、2019年モデルから水上聡氏にスイッチ。その水上氏による2019年モデルのプレゼンテーションが行なわれたので、その模様をお伝えする。

バレンシアレッド・パールカラーのNSX 2019年モデル。ボディサイズは4490×1940×1215mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2630mm
インテリアカラーは「レッド」(セミアニリンフルレザー)
V型6気筒直噴3.5リッターツインターボ「JNC」型エンジンは最高出力373kW(507PS)/6500-7500rpm、最大トルク550Nm(56.1kgfm)/2000-6000rpmを発生。これに3基のモーターを組み合わせ、システム全体で最高出力427kW(581PS)、最大トルク646Nm(65.9kgfm)を発生する

 水上氏は冒頭に自己紹介を行ない、「私は物心がついたときからクルマが大好きで、クルマの名前をすべて覚えるようなことをやっていました。小学校のころは自動車雑誌を読み漁るといったクルマ好き少年でした。だんだんクルマのリアリティが出てくると、『こんなクルマに乗りたい』『特にスポーツカーを作ってみたい』という思いでホンダに入社しました」と紹介するとともに、入社後はダイナミック性能領域の開発(主にサスペンションやステアリング系)を行なってきたという。

 その後、2代目オデッセイ(2000年モデル)、USアコード(2003年モデル)のダイナミック性能領域の担当を経て2005年モデルの「インテグラ」「インテグラ TYPE-R」「アキュラ RSX」、2008年モデルの「USアコード」「インスパイア」の車体研究開発責任者に就任。また、2007年にビークルダイナミクス部門 マネージャー、2014年にダイナミック性能統括責任者(Meister)となり、今回新型NSXの開発責任者に就任するに至っている。

新型NSXの開発責任者に就任した水上聡氏と略歴

 そのNSXについては、「1990年に初代NSXが登場し、当時は『こんな誰でも乗れるスポーツカーなんて』と散々言われたりしたものですが、ホンダでは誰もがパッと乗って楽しめることを継承してきました。それを初代NSXで成し遂げたわけです。現在になり、色々なスーパースポーツも乗りやすく、楽に走れるクルマになってきており、初代NSXは先を行っていたのかなと思っています。それから25年が経って2代目が登場しました。初代のヘリテージはそのままに、人間中心のスーパースポーツとしてそれにいち早く電動化技術を取り入れることをやり、今までにない新しい経験および新しい価値の提供を提案しました」と解説。その2代目NSXでキーテクノロジーとなるのが「SPORT HYBRID SH-AWD」であり、同技術によるエンジンとモーターの理想的な融合がもたらすレスポンスと伸びのある加速、オン・ザ・レール感覚のハンドリングなどが特徴であると紹介。

 また、「時代とともに進化を続けることがNSXとしての使命であり、宿命」とし、「ホンダではよく“操る喜び”という言葉を使いますが、“操る喜び”は楽しさの上にあると思っていまして、『このクルマすごいよね』『クルマって楽しいよね』『また乗りたいよね』といった感情に訴えることで“操る喜び”が生まれると思っています。そういったホンダの情熱を語るフラグシップカーとしてNSXは進化をし続けていきます。今回のNSXは“Evolutional NSX”です。人間中心のスーパースポーツとして、ダイナミクスとデザインを磨き上げました」と解説する。

 今回の改良で目指したのは、「ドライバーとクルマの一体感の向上」「限界域の高さ、コントロール性の向上」「個性表現の追求」の3点。

初代NSXの振り返り
初代NSXのコンセプト
2代目NSXのコンセプト
2代目NSXのキーテクノロジー
時代とともに進化を続けることがNSXとしての使命であり、宿命
2代目NSX 2019年モデルのコンセプトは“Evolutional NSX”
2019年モデルで追求したポイント

 まず、意のままに操る喜びを追求するべく、タイヤを従来のコンチネンタル「ContiSportContact 5P」から新開発の専用タイヤ「ContiSportContact 6」に変更しており、アウト側のブロック剛性を高めたパターン、最大横力を高めるためのコンパウンド、専用チューニングを行なったコンストラクション(構造)を採用したという。

 また、サスペンションでは「運転する中で感度の高いロールに着目し、前後スタビライザーの剛性を上げました(フロントスタビライザーを26%、リアスタビライザーを19%向上)。そうすることでロール剛性を高くしています。また、旋回の軌跡をきれいに描きたいということでリアをしっかりさせる必要があり、リアのコントロールアームブッシュ、リアベアリングハブ(それぞれ21%、6%向上)の剛性を上げることで軌跡と姿勢をしっかりさせました」と改良点について紹介するとともに、「インテグレーテッド・ダイナミクス・システム」で用意される「QUIET」「SPORT」「SPORT+」「TRACK」の4モードをそれぞれ最適化したことにも触れ、「各モードにおいての楽しみ、“操る喜び”の最大化を図っています。日常からサーキットまで、すべてにおいて喜びを感じていただけると思います。実際に乗りますと走り出しからフラットな姿勢を保ち、ダンピングの効いた乗り味になっています。人間とクルマの一体感のある喜びを体感できると思います」と述べた。

 一方、エクステリアではフロントグリルをボディカラーと同色に変更することでより低く、前に出る姿勢を表現。冷却部分のメッシュパーツ、「カーボンファイバーエクステリアスポーツパッケージ」に含まれるカーボンパーツをグロス仕上げに変更することで質感を高めることに成功している。

 インテリアでは、カラーバリエーションに「インディゴ」(セミアニリンレザー×アルカンターラ)、「レッド」(セミアニリンフルレザー)を新たに追加して選択の幅を広げた。

タイヤは新開発の「ContiSportContact 6」に変更
サスペンション各部の剛性を高めた
インテグレーテッド・ダイナミクス・システムの変更も
デザインはより「低く」、より「ワイド」に進化
エクステリアではフロントグリルをボディカラーと同色に変更
冷却部分のメッシュパーツ、「カーボンファイバーエクステリアスポーツパッケージ」に含まれるカーボンパーツをグロス仕上げに変更
インテリアの新色
新色のサーマルオレンジ・パールを設定

 加えて、今回ボディカラーに新色として追加された「サーマルオレンジ・パール」について、水上氏は「初代NSXでは『イモラオレンジ・パール』がありましたが、その現代版ということで提案しています。オレンジの提案というのは、スポーツカーとしてのエキサイティングなイメージをより強くしたかったから。ソリッド感があり、高彩度、高明瞭な新しい現代的なオレンジに仕上がっています。光が当たることで違った表情を見せ、クルマの形がきれいに見えるということで走っている姿もより美しいと思います。実際に試作車を見たとき、『やってしまったかな』というくらい明るかったですが、この色は見ていて飽きない。色々な表情が見えて持つことの喜びにつながっていくのではないかと思います」とアピールした。

サーマルオレンジ・パールカラーの2019年モデル
インテリアカラーはインディゴ

 なお、説明会の後、水上氏に改めて2019年モデルの特徴について聞いたところ、「NSXだからこそお客さまに何を提供すればよいのか考えたところ、クルマとの一体感のある部分を楽しんでいただく、それを喜んでいただくことにあると思いました。物はたくさんありますが、まずは何からやるかということで、今回はタイヤと足まわりに着目しました。もうちょっとモーメント(回転力)方向を抑えた方がクルマとの一体感が得られるのではないか、アクセルを踏んだ時の駆動力をもうちょっとリニアにしたいといったことで今回頑張りました。モードごとに設定は変更しており、例えばSPORT+にしたときにはよりエモーショナルな部分を出したいし、一方で近所を走るときにはQUIETモードで静かになど、特定シーンを思い浮かべながら設定していきました」とコメント。

 また、タイヤやスタビライザーの剛性を高めたことについては「おそらく(乗り心地が)硬くなったと想像されるかもしれませんが、実はビックリするくらい乗った人は乗り心地がいいと言います。硬い、柔らかいで言えば硬いのですが、フラットでピタッとダンピングが効いているので『すげー乗り心地がいいじゃん!』と社内でも言われています」と、2016年モデルから大きく変わった点として乗り心地についても挙げていた。