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ホンダにしか造ることがことができない“スーパースポーツ”、新型「NSX」発表会

米国の開発責任者と生産責任者がプレゼンテーション

2016年8月25日 開催

2370万円

新型NSXの発表会では、本田技研工業株式会社 代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏とともに、米国の開発責任者と生産責任者がプレゼンテーションを実施
初代NSXも展示された

 本田技研工業は8月25日、同日から受注を開始した新型「NSX」の発表会を東京ビッグサイトで開催した。新型NSXは1グレードのみの展開で、価格は2370万円。納車開始時期は2017年2月末を予定しており、年間の販売計画は100台としている。

 発表会には本田技研工業 代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏とともに、新型NSXの開発責任者であるテッド・クラウス氏、新型NSXの生産責任者であるクレメント・ズソーザ氏も出席。新型NSXについて語った。

 先代モデルでは「New Sports X」の略称が車名として用いられたところ、「新しい時代のスーパースポーツ」を意図した“New Sports eXperience(ニュー・スポーツ・エクスペリエンス)”からネーミングされた新型NSXは、米オハイオ州にある「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(PMC)」で生産が行なわれる。新型NSXは同センターのみで生産され、量産開始に向け既存のオハイオ工場から約100名の従業員を選抜。高いクラフトマンシップで生産するための工程のトレーニングが行なわれている。

 パワートレーンは新世代のスーパースポーツモデルにふさわしく、V型6気筒DOHC 3.5リッター直噴ツインターボ「JNC」エンジンに3モーターを組み合わせたSH-AWD(Super Handling-All Wheel Drive)によるハイブリッド方式を採用した。縦置きエンジンと9速DCT、エンジンと9速DCTの間にレイアウトされるモーターをリアに搭載するとともに、フロントに左右独立制御の2モーターを配置。システム全体で最高出力427kW(581PS)、最大トルク645Nm(65.8kgm)というハイパワーを実現。その一方でアイドリングストップ機構なども備え、JC08モード燃費は12.4km/Lをマークしている。

ボディサイズは4490×1940×1215mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2630mm。車両重量は1780kg(オプションのカーボンセラミックマテリアル・ディスクブレーキ装着車の場合)としている
会場では新型NSXのパワートレーンレイアウトが分かる展示も
シートバリエーションの展示
ボディカラーについては、世界のサーキットを想起させる名称が与えられる
ホイールやブレーキシステムの単体展示
ホンダアクセスがスポンサードするSUPER GTチームへ2014年から供給しているホイールのレプリカモデル「Modulo アルミホイール MR-R03」

うつろいゆく時の流れのなかで走りをどう極めていくか

 発表会の冒頭、新型NSXに乗って登場して挨拶を行なった八郷社長は、「1962年、当時2輪車メーカーだったホンダが初めて作った4輪車は軽トラックとスポーツカーだった。タイプの異なるクルマだが、そこには2輪車だけでなく4輪車においても人々の生活に役立ちたい、そして操る喜びを追求したいという2つの想いが込められていた。以来、私たちはさまざまなモデルをつうじてこの2つの想いを追求してきた。人々の生活に役立つこと、そして操る喜びを追求することはまさにホンダの永遠のテーマ」とコメント。

新型NSXが走行して会場に。バレンシアレッド・パールカラーの新型NSXに乗って八郷社長が登場
「これまでのクルマにないまったく新しい操る喜びを実現した新時代のスーパースポーツ」と新型NSXを紹介する八郷社長

 そして「NSXは永遠のテーマの1つである操る喜びを究極にまで追求した、まさにホンダの“スーパースポーツ”を象徴するクルマ。1990年に発売した初代NSXで、私たちはスーパースポーツを作りたい、そして既存のクルマとは違う新たな価値を提供したいという夢にチャレンジした。当時私たちが感じていたスーパースポーツの世界は、いわば“クルマそのものを中心としたものづくり”が主流になっていた。そこに“人を中心としたものづくり”という考え方を注ぎ入れることで、世界トップクラスのハンドリング性能と快適性の実現を試み、それを高次元で両立することができた。あのときから4半世紀以上が経過し、時の流れのなかで自動車の技術は日進月歩に成長を遂げ、ホンダも一層グローバル企業へと変貌した。しかし、時代の考えがどう変わろうと操る喜びをさらに追及したいという想いは永遠に変わることのない、ホンダのテーマ。私たちが持つあらゆる力・資源を駆使してもう一度スーパースポーツにチャレンジしたい、そして新たな価値を提供したい。そんな想いが私たちのなかでふたたび湧き上がり、その想いを形にしたもの、それが新型NSX」と述べるとともに、「新型NSXは人間中心のクルマづくりという初代のコンセプトを踏襲しつつ、ホンダ独自の電動化技術、スポーツハイブリッドのSH-AWDを搭載することで、これまでのクルマにないまったく新しい操る喜びを実現した新時代のスーパースポーツ。うつろいゆく時の流れのなかで走りをどう極めていくか。新型NSXはその問いに対するホンダとしての1つの提案」という。

 また、「スーパースポーツを自らの手で作ることは、国籍に関わらずホンダエンジニアの夢。新しいNSXは日本と米国の研究所の合同チームにより開発され、生産は米国オハイオ州の専用工場で行なわれている。ご存知のとおり、オハイオ州は私が入社した年である1982年、ホンダが日本の自動車メーカーとして初めて米国での4輪車の生産を開始した場所であり、ホンダにとって35年以上の歴史があるゆかりの深い場所。そして、そのオハイオの地からホンダスピリットと高いスキルを持ったエンジニアが数多く育った。彼らは今、グローバルなクルマづくりのリーダーとなるまでに成長している。私自身、NSXの開発責任者を務めたテッドとは20年以上前に仕事をつうじて知り合い、彼が栃木研究所で実際にテストを担当していたとき、そしてその後、私が米国の研究所に駐在していたときにもともに仕事をした。ホンダらしさの塊のようなピュアでガッツのあるエンジニア、それがテッド。また、生産の責任者を務めたクレメントも栃木研究所時代にともに仕事をした仲間。とても緻密で、このうえなく精密なエンジニア。今日はその2人が発表会のために来日しているので紹介したい」とし、新型NSXの開発責任者であるテッド・クラウス氏、新型NSXの生産責任者であるクレメント・ズソーザ氏にマイクをバトンタッチした。

新型NSXはホンダにしか造ることがことができないスーパースポーツ

新型NSXの開発責任者を務めるテッド・クラウス氏

 まずNSXとの関わり合いについて触れたテッド・クラウス氏は、「私と初代NSXとの出会いは1990年1月。友人と訪れたデトロイト国際自動車ショーで初代NSXを見た私は、その機能的な美しさにすっかり魅了されてしまいました。その後、私は米国オハイオ州のホンダの研究所に入社。当時、私はNSXはまさに『スポーツカーはこうあるべき』というホンダの主張だと感じた。コンパクト、低重心、高剛性シャーシ、優れた視認性、シンプルで人間工学に基づいたインターフェイス。これこそが新型NSXで目指したものにほかならない。すなわち、初代NSXのコンセプト『人中心のスーパースポーツ』を継承しながら、新時代のスーパースポーツ体験(New Sports eXperience)を実現した。初代NSX同様に、時代を超越する『スポーツカーとしての価値』を保ちながら、最先端の技術も積極的に取り入れている」と述べるとともに、「私はホンダで25年にわたり動力性能とハンドリングに焦点を当てたクルマの開発に心血を注いできた。米国や日本でさまざまなホンダの仲間と仕事をするなかで、ホンダのものづくりの核となる思想を学んだ。それは私の原動力でもあり、2011年に新型NSXの開発責任者に任命された際には、そうした学びが開発の方向性を定めるのに大いに役立った。今回日米合同チームで開発をスタートするにあたり、まず日本で初代NSXの開発メンバーやオーナーの方々にお会いし、NSXの築いた伝統、すなわちNSXらしさとは何かを深く理解することから始めた。我々はそうして培われたNSXらしさという基準をもとに、開発のすべての意思決定を行なってきた」と、新型NSXの開発に際して初代NSXを徹底的に研究したことを報告。

 そして新型NSXには3つの基本コンセプトがあるとし、「1つめは『瞬時に反応する加速性能』で、アクセル操作に対して俊敏かつリニアに反応する加速フィールを目指した。2つめは『ドライバーに呼応するハンドリング性能』で、スロットル、ブレーキング、ステアリングなど、ドライバーからのインプットに高い精度で呼応し、人とクルマの直観的なコネクションを創造する。そして3つめは『ヒューマン・フィット』で、キャビンに人間工学的な配慮を加えた。我々はこれらのコンセプトを最新技術を駆使して実現することで、新時代のスーパースポーツ体験を提供する」と説明。

 また、デザイン面については「新型NSXでは1mm1mm、すべての構成面がパフォーマンスを向上させる目的を持っている。空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能は、スポーツカーのパフォーマンスを大きく左右する。我々は最新のCFDシミュレーションで車体周辺の空力解析を行ない、機能的な要素をすべて組み入れることでデザイン自体で包括的なエアフローマネージメントができるという考えに至った。その結果、魅力的かつスポーツカーとしての運動性能を高めるデザインが完成した。初代NSXは当時として革新的なオールアルミボディを採用したが、新型NSXでは自動車として初となる素材など、複数素材によるスペースフレームを採用している。その結果、コンパクトなサイズを維持したまま軽量化かつ高い剛性と優れた衝突安全性を誇る最新のボディを実現した」。

「我々はそのパッケージを土台とし、高出力の3モーターハイブリッドシステム『SPORT HYBRID SH-AWD』を採用。このホンダ独自のパワーユニットは、リアのモーターとトルクベクタリングを可能とするフロントの左右独立した2つのモーターにより、レスポンスに優れ、力強いリニアな加速とドライバーの意のままのハンドリングを実現する。SH-AWDの起源は1996年の4代目プレリュードにはじめて搭載したATTS(Active Torque Transfer System)にさかのぼる。その後もSH-AWD技術を進化させ続け、その後それを電動化することで新型NSXのコンマ1秒のレスポンスタイムを実現した。ダイレクトかつリニアで豊かなトルクは、ドライバーの身体をシートに押し付け、一般道でもサーキットでも素晴らしい加速フィールを得ることができる。また、新型NSXならではの特徴として、この3つの独立したモーターの駆動力を、加速だけでなく走る・曲がる・止まるといったあらゆる面で活用している。ほんの10秒でも新型NSXのハンドルを握っていただけば、新開発のV6 3.5リッターツインターボエンジンと3つのモーターの融合がもたらす『新時代のスーパースポーツ体験』を実感していただけると思います。さらに新型NSXには、このパワーユニットをフル活用して走行シーンに合わせて『QUIET』『SPORT』『SPORT+』『TRACK』の4つのモードが選べる。この新開発の『Integrated Dynamics System』により、ドライビング体験のカスタマイズを可能にしている」と、新型NSXに搭載される技術について紹介を行なった。

 そして「25年前、私が日本に駐在していたときに、同僚に『将来、米国の研究所が日本と同じくらい、いや日本よりも強くなるといいな』と言った。しかし我々は言語や国を超えて同じ価値観を共有している『One Team(1つのチーム)』。新型NSXは、ホンダにしか造ることがことができないスーパースポーツであり、日本のお客様にも真の『New Sports eXperience』をお届けできると信じている」としてプレゼンテーションを終えている。

オハイオから1台1台、丹精を込めてお届け

新型NSXの生産責任者を務めるクレメント・ズソーザ氏は、オフィスの壁に創業者である本田宗一郎の言葉を掲げ、既存の考え方にとらわれない新たなものづくりにチャレンジしているという
「オハイオから1台1台、丹精を込めてお届けする」と語るクレメント・ズソーザ氏

 一方、新型NSXの生産責任者であるクレメント・ズソーザ氏は「八郷さんからも説明があったとおり、この新型NSXはオハイオ州にある専用工場のPMCから世界中のお客様に届ける。4年以上前になるが、私たちのチームが新型NSX専用の新工場を造るというチャレンジを始めるにあたり、創業者である本田宗一郎のある言葉をオフィスの壁に掲げた。それには『常識に挑戦し、夢を追い続けることでのみ、我々の未来は存在する』と書いてある。以来私たちはこの言葉に導かれるように、既存の考え方にとらわれない、新たなものづくりへのチャレンジを続けてきた。そして今、この言葉はPMCで働くすべての仲間やお客様から見えるように、工場の壁の高いところに掲げられている。私はインドで生まれ育ち、エンジニアリングを学ぶためにアメリカにわたり、1980年代後半にオハイオ州のホンダの生産拠点に入社した。数年が経ったのち、日本の研究所で2年間働きたいと希望し、この日本での経験は私のホンダにおけるキャリアのみならず、今回のNSXのプロジェクトへの関わり方においても大きな意味があったと感じている」。

「日本に駐在中、1998年式アコードの発売に際して、私は日米の研究所の調整役を務めるとともに、ボディ設計にも携わった。ちょうど私のデスクから柱何本分か向こうに八郷さんのデスクがあった。プロジェクトは違ったが、生産手法やときには英語表現に関してよく相談を受けたことを覚えている。当時、そのアコードの試作を初代NSXの生産工場でもあった栃木の高根沢工場で行なっていたので、私は高根沢工場へ行くたびにNSXが造られている様子を見に行った。ほかのどんなクルマとも異なるその光景に、私はただただ魅了されていた。そのときは、いつの日か自分がそのNSXを造ることになるとは、ましてやその専用工場に携わることになるとは夢にも思っていなかった。今回、専用工場での新型NSXの生産にあたり、私たちはとてつもない情熱を注ぎこんできた。日米の開発チームとともにNSXの設計を詳細に検討し、ホンダの高根沢工場および熊本工場、さらには世界中のスーパースポーツの工場をベンチマークした。この詳細な調査・分析を経て打ち立てた生産コンセプトが、『革新的な生産技術と、熟練技術者による職人技の調和』。各生産工程で最善の手法を見極めるためにあらゆる検討を行ない、すべてのプロセスを刷新した。とくに大きなチャレンジとなったのは溶接、ボディ組立、塗装、最終組立、品質確認の各領域における、革新的技術の確立だった。なかでも、ボディの精度はスポーツカーの性能を左右する。新型NSXのボディは競合モデルと比較しても約3倍の高い動的ねじり剛性を備えているが、これは最新の接合技術により実現している」と、これまでのキャリアや新型NSXとの関わりについて紹介。

 そして最後に、「ホンダでは長年にわたり、数多くの日本人エンジニアが米国にやってきて彼らの経験を私たちに伝承してくれている。このNSXプロジェクトを成功させることこそが、ホンダのものづくりを教えてくれた日本人エンジニアたちに感謝を示す、私たちなりの方法だと考えている。この大きなチャレンジをはじめるにあたって、私たち米国のホンダエンジニアを信頼し、『30年以上かけて十分に教えてきた。だから君たちが世界のお客様のためにしっかりと新型NSXを造ってくれると信じている』と言ってもらえたことは、いわば子供が立派に成長した証だといえるだろう。彼らも私たちの成長を誇らしく思ってくれていると思う。オハイオから1台1台、丹精を込めてお届けする。我々がホンダスピリットを注ぎ込んだこの新型NSXを、日本のお客様もぜひ気に入っていただけたら嬉しい」と述べ締めくくった。

 最後にふたたびマイクが戻された八郷社長は、「私自信、今から30年ほど前になるが、はじめて海外出張でヨーロッパに行った際、たまたま当時まだ開発中だった初代NSXのプロトタイプにニュルブルクリンクサーキットで乗る機会を得た。プロトタイプでレースコースを走るので、さすがにステアリングは握らせてもらえなかったが、あのときの感動や心の高ぶりを今でもしっかりと記憶している。私はそんなワクワクする気持ち、そしてクルマを操る喜びを変わることなく世界中のお客様にお届けしたいと思っている。ホンダのコーポレートスローガンは『The Power of Dreams』、志を共有する仲間たちと一緒に夢を実現する力。今回、新型NSXで追求した新たな走り、そしてクルマを操る喜びをぜひ皆さんにも味わっていただければと思う」として新型NSXをアピールした。

八郷社長も新型NSXを購入?

質疑応答で新型NSXを購入するかどうか問われる八郷社長

 なお、発表会後に実施された質疑応答で、経営やブランド戦略のなかで新型NSXがどのような役割を担っているのか問われた八郷社長は、「ホンダは9月16日に新型フリードを発売するが、生活に役立つクルマ、そして操る喜びを追求するクルマという2つの両輪を造ることがホンダのDNAであり、テーマだと考えている。そのなかで、やはりスーパースポーツを造ることが我々のチャレンジの意味でも大切なことだし、収益面で苦しいところはあるとは思うがそういう両輪をしっかりやっていくということが、ひいてはホンダブランドのレベルアップにつながると思っている」とコメント。

 また、以前にシビック TYPE Rを購入できなかった経緯があるとのことから、今回の新型NSXを購入するか聞かれた八郷社長は、「NSXというクルマはホンダの人間にとって憧れのモデルで、いつかは所有したいと思うクルマだと思っている。私も初代NSXを買いたいと思っていたが、色々なハードルがあってなかなか実現しなかったので、今回の新型NSXをぜひ購入したいと思っている。ただハードルが少しあり、1つは自宅がマンションということで駐車場がタワーパーキングしかないということ。そして自分のクルマでS660、2輪車でCB400に乗っており、もう1台乗る時間があるのかなというハードルもあるので、このハードルを乗り越えて私も買いたいと思っている。検討したい」と述べている。