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「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」第2回実証実験。スマホ操作でドアが開く「ソリオ」に浜松市長らが試乗

自動運転バスの実用化を見据えた「ソリオ」の実験車両が走行

2019年12月16日 開催

左からスズキ株式会社 代表取締役社長 鈴木俊宏氏、浜松市 市長 鈴木康友氏、SBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏、遠州鉄道株式会社 代表取締役社長 斉藤薫氏

 静岡県浜松市で行なわれている自動運転バスの実用化を見据えた実証実験「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」は12月16日、SBドライブ、スズキ、遠州鉄道、浜松市の4者の代表者が集まる試乗会を開催した。

 SBドライブ、スズキ、遠州鉄道、浜松市の4者は、2016年に締結した「浜松自動運転やらまいかプロジェクトに関する連携協定書」に基づいて、浜松市の交通課題を解決し、持続可能な公共交通のあり方を探るため、将来の自動運転の実用化を見据えた車両の予約・運行管理システムの検証を実施。使い勝手などの面におけるユーザーニーズの収集を目的とした第1回実証実験に続いて、第2回目の実証実験を12月10日~23日に浜松市で行なっている。

実証実験車両に試乗するスズキ株式会社 代表取締役社長 鈴木俊宏氏(奥)、浜松市 市長 鈴木康友氏(手前)

 試乗会にはSBドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏、スズキ 代表取締役社長 鈴木俊宏氏、遠州鉄道 代表取締役社長 斉藤薫氏、浜松市 市長 鈴木康友氏が出席し、それぞれ実験車両に試乗して使い心地を確認した。

第1回実証実験の声を反映して生活に即した路線を用意

第2回実証実験の運行ルート。旧遠州鉄道白洲線を基準としたルートで、遠州鉄道 舘山寺営業所と桜台ショッピングセンターを往復

 浜松市内の西区庄内地区・和地地区内で行なわれる第2回実証実験では、遠州鉄道の舘山寺営業所と桜台ショッピングセンター間(片道約13km)に19の停留所を設けて、実験車両を用いたバスを運行。実験車両はスズキの小型車「ソリオ」を導入して、遠州鉄道のドライバーがこれを運行。一部区間では実験車両に採用された運転支援機能のデモなどを行なう。

遠州鉄道株式会社 代表取締役社長 斉藤薫氏

 実験車両の運行を担当する遠州鉄道の斎藤氏は「今回は実証実験の2回目となり、プロジェクトでは地域の皆さんに新たな提案ということで、生活に即して桜台ショッピングセンターなどに停留所を用意することで、少し生活の匂いがする路線になったかと思います。弊社のドライバーが安全運行を行ない、運行管理を合わせてしっかりやっていきたい」と、第1回実証実験のニーズを反映して、生活に即した路線であることを強調した。

遠州鉄道のドライバーが運行を担当する

自動運転バスに求められる利便性や機能面での課題を検証するスズキ

 実験車両のソリオは、アダプティブクルーズコントロールや車線逸脱抑制機能など、すでにスズキの量産モデルで採用している運転支援機能を、低速域においてもデモ走行できるようプログラム変更を施した車両を導入している。

スズキ株式会社 代表取締役社長 鈴木俊宏氏

 実験車両の開発を担当するスズキの鈴木社長は「スズキはものづくりにおいて三現主義というものを大切にしております。このプロジェクトを通して、将来の自動運転サービスに役立つであろう実験ができると思っています。利便性であるとか機能面での課題をしっかりと洗いだして、こういったようなものを、庄内地区の皆さんをはじめ、多くの企業さんも参加していただいておりますが、皆さんのご意見を聞きながら将来の自動運転に向けて取り組んでいきたいと思っております。また、第2回目ということで、第1回目の実証実験の中で得られたものをさらにレベルアップして、今回は一部区間で使用する運転支援技術を向上させてますし、信号機とのやり取りをする新たな機能を追加しているということで、第2回から第3回、第4回とつながっていくことを期待したいと思います」との考えを述べた。

実験車両のスズキ「ソリオ」

自動運転バスの運行に必要な機能を検証するSBドライブ

SBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏

 同実証実験に参加するSBドライブは、SBドライブの自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」と、順風路が提供する乗客用ウェブサービスを連携させてその有用性を検証する。

遠隔で実験車両の安全管理などが行なえる、SBドライブの自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」

 実証実験に参加する乗客は、スマートフォンから順風路の乗客用Webサービスで予約することが必要。乗客用Webサービスとディスパッチャーの連携で、予約に応じてディスパッチャー経由でドライバーに運行指示が送られる。

 予約者が待つ停留所にバスが到着すると、予約者のスマホに「ドアを開ける」ボタンが表示され、それをタップするとディスパッチャーを通して車両のドアの開閉操作が実行されるという仕組みが採用された。

順風路が提供する乗客用Webサービスと連携してスマートフォンでドアを開けることができる

 SBドライブの佐治氏は「世界中で自動運転の開発が進んでいますが、私たちには地域に根ざした形で本当に役に立つところから始めたいという思いがあります。その意味で、この実験というのは地元の企業の方々、それから自治体の協力が得られているという数少ない貴重な実験で、日本でも珍しい実験だと思います。今回は2年前からの進化点として、弊社のディスパッチャーと順風路さんのオンデマンド交通サービスのシステムを連携をすることができました。さらにスズキの車両とつながることで配車を予約したユーザーの方が直接アプリからドアを開けることができます」と紹介。

 SBドライブでは、遠隔地からのドライバーへの運行指示や、予約者だけが車両のドアを開けて乗車できる仕組みなど、自動運転技術以外にも自動運転バスの運行に必要な機能を検証して、自動運転バスを早期に実用化することを目指すという。

地域の足をどのように確保するかを模索する浜松市

浜松市 市長 鈴木康友氏

 浜松自動運転やらまいかプロジェクトは、地域住民の移動の利便性の向上など、地域公共交通の課題を解決し、地域及び産業の振興と次世代モビリティサービスの創出に資することが可能な、自動運転技術を活用したスマートモビリティサービスの事業化を浜松市にて図ることを目的としている。

 鈴木浜松市長は「浜松市は国土縮図型都市でございまして、日本が抱えてるあらゆる地域課題を全部有しております。今、地域交通が大変厳しい状況でございまして、運転手不足などから路線バスが撤退していく中で、こうした地域の足をどのように確保していくかが課題になってきます。自動運転が実用化されていけば、こうした課題が一気に解決に向かうことが期待されており、1日も早い実用化に向けて私もしっかり取り組んでいきたい」との考えを述べた。