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ミズノなどが「空飛ぶクルマ」のシート開発に参加。シューズの技術が生かされる

2023年の実用化を目指し開発を加速

2020年4月7日 発表

4社で共同開発している衝撃緩衝装置が内蔵されたシート

 ジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(JSSJ)、ミズノ、SkyDrive、CARTIVATORは4月7日、2023年の実用化を目指しCARTIVATORとSkyDriveが開発を進めている「空飛ぶクルマ」の乗員用座席の共同開発を進め、性能確認試験を開始したと発表した。

共同開発に至った経緯

 2023年の販売開始を目指し、空飛ぶクルマの共同開発を進めているSkyDriveとCARTIVATOR。両社は機体開発を進めていく中で、非常着陸時に乗員を保護する衝撃緩衝機能が備わった乗員用の座席は、空飛ぶクルマの構成品の中でもっとも重要な部品の1つであると考えたという。しかし、航空機レベルの性能を有する既製品は入手が困難であり、入手できたとしても、既存の航空機用に開発されているため空飛ぶクルマと使用状態の想定に違いがあり取扱いが難しいという点が課題とされていた。

 そこで、シートベルト、エアバッグ、チャイルドシートの開発など、1世紀以上にわたり自動車の安全分野を開拓してきたJSSJと、スポーツシューズのクッション性と安定性を両立するためのソール部分の基幹機能として独自の波形プレート「ミズノウエーブ」の技術を持つミズノが開発に加わり、4社で軽量高性能な“衝撃緩衝装置が内蔵されたシート”の研究開発を行なってきた。今回の性能確認試験は、その1年間の開発を経て実施されたものでその結果も合わせて発表した。

開発中の空飛ぶクルマ

性能確認試験概要・結果

実験の模様

 試験は3月3日、ジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン 愛知川製造所で実施。シートベルトやエアバッグの性能確認用として衝突状態の模擬をできるSLED試験機を使用して、衝撃緩衝装置(ミズノウエーブ)を内蔵した空飛ぶクルマ乗員用座席プロトタイプの性能を確認した。試験の結果、ミズノウエーブについては、設計通りの性能を発揮することが確認できたほか、一般的な航空機用の座席よりも乗員の腰椎の負担(荷重レベル)をかなり低く抑えることができる可能性があることも判明したとしている。

実際の実験の模様

共同開発する乗員用座席の特長

 従来のミズノウエーブと同様に、 材料物性の調整ではなく、 ウエーブプレートの形状を調整することで所望の構造特性を衝撃緩衝装置部分に与えることができるため、 短期間で多くの開発サイクルを回すことが可能となり、 開発期間の短縮化が図れる。 また、 ウエーブプレートの特性上、 クッション性と安定性という背反する機能を共存させることができるため、 一般的な衝撃緩衝装置付きの座席には必要ないくつかの構成要素を省略することができ、 軽量化が図りやすいという特長があるという。

各社の開発に懸ける想い

JSSJ 技術本部 本部長 熊谷氏

 CARTIVATOR様から開発のお話しをいただき「空飛ぶクルマ? おもしろい! この安全づくり、やろーや!」といった若手エンジニアの掛け声から参加が始まりました。乗員の安全技術構築のサポートを行なっておりますが、次世代モビリティの事故形態や乗員の傷害実態は従来とは大きく異なることが想定され、何をすべきか想像すらできません。次世代のモビリティ社会の安全をつくるという「夢」を追う開発を、高い技術力をお持ちのミズノ様からよき刺激をいただきながら開発に取り組んでいける環境に、本当に感謝しております。このようなワクワクする貴重な機会を設けて頂いたCARTIVATOR様、SkyDrive様、ミズノ様に感謝申し上げると共に、未来への実安全の構築に向けて全力で取り組んで参ります。

ミズノ グローバル研究開発部 技監 金子氏

 関係者一同大きな喜びを感じながら、空飛ぶクルマの開発に携わらせていただいております。通常シューズの緩衝性能はミッドソールと呼ばれるスポンジの物性によりコントロールされます。一方、ミズノウエーブはシューズに内蔵された波形のプレートの波長や振幅を調整することで性能をコントロールするものです。要求されるエネルギー吸収量や許容される荷重が決まればそれに応じた形状を決定することが可能です。この特性を生かして今回の安全装置の開発にたどり着くことができました。ミズノウエーブのこれらの特性に着目してくださったCARTIVATOR様エンジニアチーム、性能テストに関して常に迅速で正確な技術対応をしてくださるJSSJ様のエンジニアチームに改めて感謝いたします。

CARTIVATOR 共同代表、SkyDrive 代表取締役 福澤氏

 CARTIVATORは空飛ぶクルマの2020年夏のデモフライト実現、SkyDriveは2023年の実用化を目指し、日本発の新しいモビリティ“空飛ぶクルマ”の共同開発を推進しています。空飛ぶクルマで最も重要なのは、十分に安全性を確保することです。安全な機体を作ることが大前提ですが、万が一の際に備えて乗員を安全に守る技術が重要です。今回、長年の間安全装置や衝撃吸収でグローバルをリードされてきたJSSJ様、ミズノ様と共に乗員用座席を開発させて頂く運びとなり、非常に有難く感じております。今後も2023年の実用化に向けて、開発を加速して参ります。

CARTIVATOR チーフエンジニア 松橋氏

 非常に速い開発スピードと、確実な安全性をいかに両立させるか。空飛ぶクルマの機体開発で常に頭を悩ませる難題ですが、ミズノウエーブの技術は正にそのような超短期間の開発に確実な性能を発揮しサポートしてくれる、優れた技術であると考えています。空飛ぶクルマという、皆にとって未知の領域を開拓しながら、また人命に関わる要素技術ということで大変な開発ですが、豊富な経験と知識、安全に対する情熱をもって試験を常に先回りしてサポートして下さっているJSSJ様、いつも柔軟な発想でスピーディーに課題への答えを出して下さるミズノ様との素晴らしいチームでの開発が一定の成果を出す段階まで来ており、この場を借り改めて御礼申し上げます。

 4社は、今後も安全を最優先に空飛ぶクルマの乗員用座席の開発を推進し、新たなモビリティ社会の創造に貢献していくとしている。