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ホンダとアルファタウリ、50戦目のF1初優勝の要因はホンダ広報制作の「50戦目」ステッカーにあり

勝因をF1マネージングディレクター 山本雅史氏に聞く

AlphaTauri AT01 Hondaに描かれたホンダとアルファタウリのパートナーシップ50戦目を記念するステッカー

 9月6日、F1 第8戦イタリアGPがモンツァ・サーキットにおいて開催された。既報のとおり、このイタリアGPではホンダPU(パワーユニット)を搭載するアルファタウリ・ホンダの10号車 ピエール・ガスリー選手が優勝。ガスリー選手にとっては初優勝、ホンダとアルファタウリにとっては、トロロッソ時代にホンダとパートナーシップを組んでから50戦目の記念すべき勝利となった。

 決勝レース終了後、ホンダF1 マネージングディレクター 山本雅史氏のオンライン会見があった。山本MDは、F1初優勝を飾ったガスリー選手が2017年のスーパーフォーミュラでチャンピオンを争った後、F1に昇格したことに触れ、その優勝を祝った。

 また、その優勝の要因として、アルファタウリ・ホンダのチーム代表フランツ・トスト氏とのパートナーシップを挙げ、ホンダがF1復帰後にマクラーレンを経てトスト氏と組めたことで開発が進み、現在の状況を作ることができたと語った。

ホンダF1 山本雅史MD

山本雅史MD:ちょうどホンダがF1に復帰して、マクラーレンで厳しい環境というかいい経験をさせてもらった後、さらにトロロッソのトストさんが非常にオープンでですね、私達が知らないことがまだまだたくさんある中、特に研究所領域ですけど。そんな中でちょうど節目の、まして(アルファタウリの地元の)イタリアグランプリで50戦目でガスリーが優勝したっていうのは本当に嬉しく思います。

 ポディウムでもそのチーム名がアルファタウリ・ホンダって言ってくれるのひとしおでして。もちろん何回か勝ってますけど、あそこでホンダってロゴは出てこないので、そういった意味では非常に感極まるものがあってですですね、今もうメールを返信してるぐらいで本当嬉しい限りです。

 僕と田辺はレッドブル側のバブルにいるので、向こうの(アルファタウリの)ミーティングにはもちろん出れないのですが、今週金曜日の最初のミーティングでトストさんが、イタリアの3回、要はモンツァ、ムジェロ少し開いて、イモラ、この3戦何が何でも上に行こうと言ったのを土曜日に聞かされて非常にいいなと思っていました。

 (ホンダとアルファタウリ)50戦目のステッカーをマシンにも貼ってくれたし。当初は移動するクルマみんなに貼ろうって言っていたんですけど、クルマにも貼ってくれた。そういった意味ではイタリアグランプリは私にとってはいろんな思いがあって非常に嬉しいです。

 とくにガスリーはスーパーフォーミュラで日本で走ったことも含めて。非常に彼、今年は本当に頑張ってるので。そういった意味では引き続き、もちろん4人のドライバーを含めてですね、応援していきたいと思ってます。

──ガスリー選手は、山本さんが触れたようにスーパーフォーミュラを卒業してF1へ行きました。その卒業生がF1へ行き、そして勝利したということをどう思いますか。

山本雅史MD:ありがとうございます。そうですね、スーパーフォーミュラでガスリーを見てて、最後鈴鹿で台風で決勝ができなくて、本当に僅差でシリーズタイトルを逃したっていうのが印象的です。そういう点では、日本人の中にガスリーっていう存在が非常に大きく残ってると思うんですね。

 その意味では、ホンダが鈴鹿サーキットとやっているSRSのカートとかフォーミュラのスクール生含めて、スーパーフォーミュラというトップカテゴリーでああいうバトルをしていた選手がF1に来て勝ったっていうことは、非常に日本のレーシングドライバーの人たちにも励みになると思うし、やっぱ僕らにとっても嬉しいですよね。

 ホンダとの付き合いが長いガスリーがF1 3年目で初優勝する。ましてメルセデスが最強の時代に。彼らのトラブルもあったりしましたが、そういったときにその位置にいないと優勝のできないので。その意味ではガスリーが勝つっていうことは、日本のファンにとっても、これからドライバーを、頂点のドライバーを目指すドライバーにとっても励みになると思うんで非常に嬉しく思います。

F1イタリアGPを優勝したアルファタウリ・ホンダの10号車 ピエール・ガスリー選手 (C)Getty Images / Red Bull Content Pool

 ホンダとアルファタウリの50戦目に見事に優勝したピエール・ガスリー選手の走りは素晴らしかったが、それを支えたホンダPU(パワーユニット)の力強さも際立った。この勝利はホンダにとって、F1第5戦 70周年記念GPにレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手が優勝して以来の今季2勝目、通算では77勝目となる。今回は50戦目という節目に、前回はF1 70周年記念という節目に確実に勝利をものにしているわけだ。

 ホンダF1テクニカルディレクター 田辺豊治氏は常々、PUで大切なのはライフサイクルをコントロールすることだと言っている。1基のPUのライフはある程度の戦いで使わなければならず、PUの持つライフをどのように戦いに割り振っていくかが基本的なコントロールになる。つまり、ホンダにとって勝ちたいグランプリに、ある程度強力なパワーを振り向けることができることを意味しており、それは戦略的な要素であるがゆえに山本MDとの相談の上に行なわれていると思われる。

 その点を山本MDに確認してみたが、あっさり否定。今回の勝利のポイントは、もちろんガスリー選手の素晴らしい走りもあるのだが、アルファタウリとホンダのパートナーシップ50戦目ということでチームが一体になれたことだという。

 その象徴が山本MDがコメントしている、50戦目を記念したステッカーになる。これはホンダF1広報の鈴木悠介氏とアルファタウリ広報の発案によるもので、デザインはほぼ鈴木氏の描いたものがそのまま活かされているとのことだ。

「これうちの鈴木の提案で50戦ってね。たかが50戦じゃんっていう人もいたんですがそんな中でも鈴木と話しして、50戦は1つの節目だし、やっぱり1つのワードになるじゃないですか。例えばアルファタウリとホンダが、そのチームを1つにするワードにでもなればいい。マイナス要素ってなくて、やっぱりなんか50回っていう節目だから、もう一歩何かがんばろうよみたいな。根性論じゃないけど、やっぱり何かね。そのきっかけ作りには僕はいいなと思ったんで、鈴木にアルファタウリのPRと相談して進めてよって話ししたんですよ。最終的にはなかなかデザインが決まらなくて。直前にあの形になっちゃったんですけどほぼ最初に鈴木が提案してくれた絵に近い。向こうは非常に満足してるし、もちろんドライバーが主役なんだけどチームで戦うスポーツなので、みんなのベクトルが1つに向かう1つのメッセージだと思って。そういうのを理解してくれるフランツ・トストさんだったり、チーム全体に非常に感謝しているところも多いです」(山本雅史MD)。

 モータースポーツは、ドライバーとマシン、そしてそれを支えるチームスタッフの総合力が勝利の大きな要因となっている。今回のピエール・ガスリー選手の優勝も、圧倒的にレースをリードしていたメルセデスのルイス・ハミルトン選手のピットインミスによるペナルティが大きなきっかけであり、その後の赤旗中断からのリスタート時にチームのタイヤ交換戦略で上位にいたわずかなチャンスをものにしたことにある。

 AlphaTauri AT01 Hondaに描かれたホンダ広報制作の「50戦目」ステッカーは、チームの気持ちを1つにし、勝利を呼び込む大きな力になったのは間違いない。可能であるなら勝利のステッカーとして「50戦目」ステッカー、そしてホンダPUを象徴する赤白の「HONDA HYBRID」ステッカーの市販も期待したいところだ。

ゴールラインを駆け抜けるAlphaTauri AT01 Honda。サイドポンツーン横に50戦目ステッカーを見ることができる (C)Getty Images / Red Bull Content Pool