ニュース

ボッシュの2輪車向け先進運転支援システム「ARAS」はどのようなものなのか、体験してきた

ACC、死角検知、衝突予知警報の3技術でシステム構成

ボッシュの2輪車向け先進運転支援システム「ARAS(アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム)」を、交通コメンテーターの西村直人氏が体験

 2000年代に入り、緻密な制御を行なう電子デバイスが広く普及する。それに比例して、4輪車(クルマ)の安全性能は劇的に進化した。核となるのはセンシング技術の実装だ。

 超音波ソナー、ミリ波レーダー、そして光学式カメラなどを単独、もしくは組み合わせて使いながら自車周囲の車両や物体を認識(=サラウンドセンシング技術)。そして、それらとの接触の可能性が高まった際、ドライバーに危険を知らせて回避動作を促す。今日、こうした技術は「ADAS:アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム」と呼ばれる。

 一方、2輪車(バイク)に対する安全性能の向上も渇望されてきた。バイクのライダーはドライバーのような鉄の鎧(ボディ)がないことから、ひとたび事故に巻き込まれると重傷化しやすい。実際、ボッシュの調査によると、日本においてライダーが事故により死亡もしくは重傷となるリスクは、ドライバーの約10倍、欧州においては同じく約20倍も高いという。

 ボッシュでは、こうした事故リスクを少しでも低減させるため、2輪車向け先進運転支援システム「ARAS:アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム」の開発を2013年より開始。2017年4月にはドイツやEU諸国で、そして2019年3月には日本で公道での実証実験を行なっている。そこで交通コメンテーターであり、1993年から全日本交通安全協会・2輪車安全運転推進委員会(現名称)の指導員でもある筆者は、早速ボッシュの広報部に取材を申し込んだ。

ARASの公道実証実験の様子

 今回、こうした筆者の意向を汲み取っていただいたボッシュ協力のもと、ボッシュモーターサイクル&パワースポーツ事業部門の手により開発されたARAS試験車両にテストコース(塩原試験場)で試乗させていただいた。

 ところで、2輪車には4輪車にはない特有の走行特性の1つに、車体を傾けてカーブを曲がる「リーン走行」がある。同様に、2輪車では前サスペンション/後サスペンションに続く第3のサスペンションとしてライダー自身にその機能が求められる。

 このような特有の運転環境のなか、システムによるスロットル(アクセル)やブレーキの各操作が行なわれる2輪車向け先進運転支援システムの制御はすんなりと受け入れられるのか、素朴な疑問を抱いた。そこで、このあたりを体感の中心ポイントにおいた。

2輪車向けアシスタンスシステムの開発ビジョン
ARASは2020年からシステム量産を開始
ARASのACCについて
ARASの衝突予知警報について
ARASの死角検知について
ARASのシステムアーキテクチャ
中距離レーダーセンサー(前方用)
中距離レーダーセンサー(後方用)
ARAS量産化までの歴史。2021年にはカワサキモデル向けにARASのシステム量産を開始する

ARASの目的とは?

 ボッシュが開発したARASには2つの目的がある。目的①/危険を察知してライダーに伝え、回避動作を早期化し事故発生要因を低減すること。目的②/ライダーの快適性を高めることで安全性を向上させること。

 そして2つの目的達成のため、ARASでは3つの技術でシステムを構成した。技術①/ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、技術②/死角検知、技術③/衝突予知警報がそれだ。以下、詳細を。

 技術①/ACCは、4輪車でおなじみの前走車を追従するACCと基本機能は同じ。日本において4輪車のACCは普及率53.3%(2018年/国土交通省)を誇るが、国産2輪車ではこれまで実装の例がない。

 技術②/死角検知は、自車ミラーの死角位置に入る車両を検知し、ライダーにディスプレイ表示などで報知。ライダーは目視での安全確認を併用することで、より安全な車線変更ができる。

 技術③/衝突予知警報は、車載センサーの情報をもとに衝突の可能性をシステムが判断し、危険な状態に陥ってしまうと判断された場合には、事前にライダーに対してディスプレイ表示などで回避動作を促す。

 技術①~③の機能を支えるのは、車体前中央部に1か所、車体後中央部に1か所、計2か所に装着された中距離型の「ミリ波レーダー」(ともに77GHz)。前レーダーは設計上、150m程度までの車両を認識、後レーダーは前レーダーよりも認識レンジは短いものの、車体後中央部から左右に広がる認識エリアをもっていて、自車後方の右と左、どちらの車両も1つのミリ波レーダーで認識できる。

ARASの機能は車体前中央部、車体後中央部の各1か所に設置される中距離型のミリ波レーダーが主軸を担う

 ちなみに、ARASのセンサーとして光学式カメラが使われない理由は、2輪車は駐車時含め転倒しやすいのりものであることから、そうしたリスクへの対処がしやすいこと。加えて、これは筆者の推測になるが、複数のセンサーを搭載するスペースが車両にないことから、ミリ波レーダー+光学式カメラといったいわゆるフュージョンセンサー方式を採用していない。

 前後のミリ波レーダーから得られた情報は、後述する「6軸IMU」からの別情報とともに車体中央部に内蔵された「エンジンコントロールユニット」と「モーターサイクル用スタビリティコントロールユニット」などに送られ、必要とされるスロットル(アクセル)とブレーキの制御が行なわれる。

ミリ波レーダーセンサー
モーターサイクル用スタビリティコントロール
エンジンコントロールユニット

 ここまで紹介した概要の通り、2輪車向けARASは構成されるシステムや使用するセンサー、そして制御に至るまで基本的な考え方は4輪車向けADASと同じ。

 では違いはどこにあるのか、実際に筆者がライダーとなり「技術①~③」を試してみた。なお本稿では、2輪車を運転されないCar Watch読者の皆さんにも分かりやすいように、「4輪車との共通点」と「2輪車として特筆すべき点」に分けて紹介。併せて作動の様子を動画でも掲載し、さらに本稿の説明と動画の記録時間でリンクさせているので、詳細はそちらとともに確認いただきたい。

ボッシュARAS体験(3分15秒)

技術①ACC/4輪車との共通点

 ミリ波レーダーが前走車(4輪車&2輪車)を認識すると、設定した速度を上限に追従走行(動画1分13秒)が行なわれる。前走車が加速すれば設定速度内で加速を行ない、同じく減速すれば車間距離(車間時間)を保とうと減速(動画1分20秒)する。

 この減速は、まずエンジンブレーキが介入し、その後、前後ブレーキで緩やかに減速。この際、減速でライダーが前のめりにならないよう前後ブレーキ力の配分は状況に応じて適切な値で行なわれる。具体的には、一瞬だが後ブレーキが前ブレーキよりも早期に、そしてじんわりとかかり、前のめりを極力低減するベテランライダー顔負けの滑らかな制御が行なわれる。

ARASの体験はボッシュのテストコース内で実施(絵的に分かりやすく表現するためあえて片手運転や片足運転を実施しています)

 車間距離(車間時間)はスイッチ操作でいつでも変更可能。試験車両では、「近い/やや近い/普通/やや遠い/遠い」の5段階から任意の位置を選択でき、試乗時は“遠い”を選択(動画21秒~53秒)。試験車両の場合、ACCのシステム起動と車速セットはハンドル左側上部のスイッチ操作で行ない、システム解除はそのスイッチ操作で行なう。また、4輪車同様にブレーキ操作(前後どちらでも可)では一発解除ができる。

 追従走行中、前走車がカーブに差しかかればミリ波レーダーの認識エリアから外れることもあるが、これは4輪車と同様の動き。また、認識している前走車が急減速した場合は、ディスプレイ表示でライダーにブレーキ操作が促される(動画54秒)。

車間距離(車間時間)はハンドル左側のスイッチで変更可能。テスト車両では近い/やや近い/普通/やや遠い/遠いの5段階から選択できた。なお、本稿内で紹介しているHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の表示はアドバンスト ライダー アシスタンス システムの機能が作動している状態を視覚的に示す見本で、ARASを搭載する各メーカーによってこれらのデザインは変わる

技術①ACC/2輪車として特筆すべき点

ACC作動時はメーター内に分かりやすく表示される

 4輪車のACCと比較し、体感値として大きく異なるのは加減速の方法にあった。ARASのACCは加速/減速ともに制御が非常に滑らかだ。試験車両の最大加速度、最大減速度はともに非公表とのことだが、筆者の体感では最大加速度1.50m/s 2 程度、最大減速度1.50m/s 2 ~2.00m/s 2 程度ではないかと推察できた。

 この「滑らかさ」はライダーの姿勢変化を最小限に留める(動画1分27秒)。ACCによる追従走行中は、ライダーの状態(姿勢や視線)に関係なく前走車の動きに応じて加減速が行なわれるが、この制御が荒いとライダーの姿勢が崩れ、不安定になる。よって、この滑らかさはシステムに対する信頼度を劇的に向上させる。

 こうしたきめ細かい制御は、車体に内蔵された6軸IMU(Inertial Measurement Unit)と、緻密なエンジンコントロールユニット、そしてモーターサイクル用スタビリティコントロールユニットによってもたらされる。

 6軸とは、①ピッチ、②ロール、③ヨーの角速度と、④前後、⑤左右、⑥上下の加速度を意味し、IMUとは慣性計測装置のことだ。6軸IMUでは①~⑥で得られた情報がエンジンコントロールユニットとモーターサイクル用スタビリティコントロールユニットに送られ、情報はそこで分解・精査されて制御に活かされる。

 さらに、この6軸IMUで得られた情報から、自車がカーブ走行であることを検知された場合には、安全にカーブ走行ができるようにACCの設定速度から一定の減速が行なわれる。きめ細やかな制御の恩恵は、たとえば早朝出発となりがちなツーリング時の、とりわけ疲労度が高まる帰路で得がたい安全性としても受けられる。

技術②死角検知/4輪車との共通点

 死角に入った隣車線の車両をうっかり見落として、そのまま車線変更してしまう……。ありがちなこうしたシーンで死角検知機能がライダーをアシストする。センサーで認識した隣車両の存在を、死角に入ったとほぼ同時期にディスプレイ表示や、ライダー視野内の目立つところに配置されたランプが点灯(試験車両では赤く点灯)して教えてくれる。こうした流れは4輪車と同じだ。

 4輪車では、ディスプレイ表示やランプの点灯に加えて、それに気付かずにウインカー操作を行なうと警告ブザーが上乗せされ報知力を高めるシステムが多いが、ARASでは現状、表示や点灯に留める。技術的にはBluetooth接続可能なスピーカー内蔵ヘルメットを用いて、そこから警報を鳴らすことも考えられるが、試乗した試験車両では行なわれていない。

技術②死角検知/2輪車として特筆すべき点

今回の死角検知機能の体験では、隣車線を走行する4輪車が死角に入るとメーター上部の2か所のランプが点灯

 警告ブザーがなくともARASの死角検知による効果は絶大。なぜなら、ライダーの死角は想像以上に大きいからだ。

 遮るボディがない車体に跨がり、ヘルメットの開口部にしても大きいことから、ライダーの死角が大きいとは信じがたいかもしれないが、ライダーの視界はそれほど広くない。実際は見えていても、なかなか意識がそちらに向かない、それが実体だ。身体でバランスをとりながら重心を移動させ、進行方向の路面状況をつぶさに捉えた上で、自車周囲の安全確認を行なうなど、やるべき所作は数多い。これも実質的な視野を狭める要因。

 もっとも、2輪車(ライダー)と4輪車(ドライバー)の死角を計測すれば、ほとんどの場合は車内にいるドライバーの方が死角は大きい。ただ、2輪車にはルームミラーがなく鏡面による後方確認は両サイドのミラーのみ。自車周囲を確認するにしても、すべての視界はヘルメットのシールド越しで、視界を大きく変えるには頭をそちらに向ける必要がある。

 さらに2輪車は、その車種によって乗車姿勢が大きく異なる。今回の試験車両のように上半身をアップライトな姿勢で保つモデルなら、走行中に上半身を大きく左右に捻転させることでミラーの死角にいる車両を発見しやすくなるが、スポーツモデルとなると上半身を寝かせた極端な前傾姿勢となり左右への捻転がどうしてもやりにくくなる。また、前傾姿勢に加えて視線位置が低くなる傾向があるため、直進時であっても左右ミラーから得られる情報は限定的に……。

 こうしたことからARASの死角検知は、2輪車特有の死角状況に対してとても有効に機能する。試験車両の試乗では、隣車線を走行する4輪車が死角に入ったこと示すランプが点灯した瞬間に左腕を上にかかげた(動画1分52秒と2分2秒)。この位置はミラーの鏡面に隣車線の4輪車がほぼ映らなくなった瞬間と一致する(動画2分11秒)。試しにこのまま上半身を右に捻ると、自車のすぐ脇に4輪車がいるのだが、仮にこれが走行中でライダーが車線変更したとなると接触の危険性は非常に高いことが分かる(動画2分18秒)。

走行中、4輪車が死角に入ったタイミングで左腕を上にかかげた

技術③衝突予知警報/4輪車との共通点

 ミリ波レーダーが捉えている前走車との衝突危険性が高まった場合に、ディスプレイ表示でライダーにブレーキ操作を促す(動画2分52秒と2分59秒)。この際、ライダーによるブレーキ操作を最大限の減速度として活かすため、予めブレーキに与圧が掛けられ急減速までのタイムラグを減らす制御が入る。

 現在、4輪車の場合、衝突予測が報知された後、ドライバーによるブレーキ操作など自発的な回避動作が期待できない時に限りって、システムよる強いブレーキ制御が介入する。よって、「衝突被害軽減ブレーキ」を名乗る。

 しかし、ARASの衝突予知警報では減速度の強弱にかかわらずブレーキ制御は介入しない。減速はあくまでもライダーが行なう操作として残される(動画2分53秒と3分)。

衝突予知警報では、前走車との衝突危険性が高まった場合にメーター内にブレーキ操作を促す表示が行なわれた

技術③衝突予知警報/2輪車として特筆すべき点

 日本において4輪車の衝突被害軽減ブレーキ実装率は73.6%(2018年/国土交通省)と高い数値を示す。一方で、2輪車への衝突被害軽減ブレーキの実装難易度はかなり高い。技術的に難しいのではなく、2輪車の構造上からくる問題があるからだ。よって、今回のARASでは衝突予知の警報に機能を留め、ブレーキ制御は行なわない。

 ブレーキ制御を行なわない理由は、2輪車は4輪車に比べて不安定な状態に陥りやすく、また、バイク本体に次ぐ重量物であるライダーの姿勢によっても大きくバランスを崩しやすいからだ。よって平常時から乗車中のライダーは、車体とできるだけ一体化することが求められる。

 この一体化を強めるため2輪車の教習所で最初に教わるのが、「ニーグリップ」と呼ばれる乗車方法。両足で燃料タンク部分をグッと力を込めて挟み込むことで、微速での車体安定性が高まり、また安定したカーブ走行ができる。そしてこのニーグリップを徹底することで凹凸した道路への順応性が高まり、身体が投げ出されることなく、ふんばる両腕とともに急減速にも耐えられる。

 つまり、衝突予知警報がディスプレイ表示による報知のみでブレーキ制御を行なわない理由は、ライダーからすれば不意に訪れる急減速に、身体が対応しきれないと判断しているからだ。加えて、タンデム(2人乗車)走行している場合の急減速は、転倒や落車の危険性も高まるなど別の課題もある。

まとめ。ARASを体験して

 本稿を寄稿したCar Watchには、多数の画像や機能を紹介する動画が掲載されている。その一部に、直線やカーブで片手運転や片足運転の様子が記録されているが、これはARASの各機構を分かりやすく視覚の上でも紹介するために行なったものとご理解いただきたい。

 2輪車はスロットル(アクセル)操作と前輪ブレーキ操作を右手で行ない、後輪ブレーキ操作を右足で行なう。よって右手と右足を放した乗車スタイルは、ARASのシステムによりスロットルやブレーキの制御が行なわれていることを示すことができると判断した。もっとも、公道でこうした乗車スタイルは危険なだけでなく、道路交通法の上でも危険運転とみなされるため絶対にNGです。

 今回、安全にARASの各機能を試すことで、ボッシュが目指した2つの目的である「危険を察知しライダーに伝え、回避動作を早期化し事故発生要因を低減すること」「ライダーの快適性を高めることで安全性を向上させること」の両面に大きな意義があることを実感した。交通先進国では、若年層の新規ライダーの参入のほか、ライダーの高年齢化が全般的に進んでいることから、ARASによる安全なライディングのアシストはありがたい。

 その上で、ARASへの筆者の個人的なリクエスト項目を述べてみたい。まずは、本文中にもあるようにBluetooth接続可能なスピーカー内蔵ヘルメットの活用をHMIの1つとして検討いただきたい。

 筆者は2010年からBluetooth接続方式のスピーカー内蔵ヘルメットを使い、2輪車用ナビゲーションシステムと、ナビを経由させたスマートフォンの両デバイスを接続して乗車している。ここで便利に使っているのがルート案内の音声ガイダンスだ。質素な音声ガイダンスだが、ナビ画面に視線を落とす回数が激減し、結果的にライディングに専念できて安全性が高まった。

 これを応用し、緊急性の高い場合は警報ブザーや音声をスピーカーから鳴らす方法もあってよいのではないかと思う。それには、ライダーに対する正しい使い方を周知する必要があるし、どんなブザー音や音声を用い、どのタイミングで発報すべきかなどクリアすべき課題が残る。筆者としては、「ブレーキ!」と衝突危険性が高まった際に発せられるだけでも高い効果が望めるように思える。

 別角度からのHMIとしては、シートにバイブレーション機能を追加したり、衝突予知警報には2~3Hz周期の極めて弱い連続した減速度(≒ライダーの乗車姿勢を乱さない程度)を発生させたりするなど、いわゆる体感警報も有益ではないだろうか。

 ボッシュでは、安全性向上の観点から2輪車向けのアシスタンスシステムの開発を3ステップで進めているという。

 第1ステップが「車両安定性向上」を目的とした車輪ロックを抑制するABSや、空転や横滑りなどを抑制するモーターサイクル用スタビリティコントロールの実装。ABSはすでに二輪の世界でも一般化、日本でも排気量や装着するブレーキに制約があるものの、段階的な義務化が課せられる。

 続く第2ステップが「サラウンドセンシング技術による安全性ならびに走行快適性の向上」を目的としたARASの実装で、これが今回の紹介した試験車両だ。

 そして最終的な第3ステップが「2輪車と周囲の環境とのネットワーク接続」を目的とした「ヘルプコネクト」やネットワーク化機能の実装。ヘルプコネクト(2020年6月3日発表)の詳細はCar Watchでも別記事で掲載しているが、国産4輪車で普及している緊急通報サービス「HELPNET」と概念を同じくする、2輪車向けの自動緊急通報システムのこと。

 モーターサイクル用スタビリティコントロールなどからの情報をもとに、事故による転倒なのか、駐車中の転倒なのかを自動検出。危険度合いが高いと判断された場合には、自動的にBluetooth経由でボッシュの緊急通報用アプリ「Vivatar」に接続され、自動緊急通報サービスにより救急隊が現場へと急行する仕組み。まずはドイツ国内向けとしてサービスが開始される。

 今回、試験車両で試乗したボッシュのARASは、2020年中にドカティ、KTMといった海外の2輪車メーカーが、そして2021年には日本の2輪車メーカーであるカワサキの車両に実装されることがすでに発表されている。

 操作方法やHMIであるディスプレイ表示の内容に関しては、今回試乗した試験車両とドカティ、KTM、カワサキが搭載する車両とでは違いが出る可能性はあるが、「安全、そして快適に」というボッシュの目的はそのまま継承される。

 最後に、今回ARASをテストコースで試す貴重な機会を得ることができた。ご協力をいただいたボッシュの皆さまにはこの場を借りて、改めて感謝を申し上げます。