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ボルボ、全EVの販売をオンラインへ移行 2030年には全てをEVにするというロードマップを明らかに

オンライン記者会見実施

2021年3月2日(現地時間) 発表

2025年には販売する車両のうちEV比率を50%に、2030年には100%にすると発表

 ボルボ・カーズは3月2日(現地時間)、オンラインで記者会見を開催し、同社が今後販売する全てのEV(電気自動車)をオンライン経由のみで販売していくと発表。同時にボルボ・カーズは販売する車両のうちEVの割合を、2025年には50%、2030年には100%を目指して製品化を進めていくことを明らかにした。

 今後、同社が販売するすべてのEVモデルは同社のECサイト「volvocars.com」など経由でオンラインのみで販売。納車やメンテナンスといったリアルなサービスは引き続きリアルなディーラー経由で行なわれ、ユーザーが購入時に選ぶ「Care by Volvo」などのサブスクリプション型のサービスパッケージなどによりメンテナンスサービスが提供される形になる。

 ボルボ・カーズでは、これにより透明性がある価格モデルを構築し、面倒な価格交渉などをなくすことで、透明性と信頼性をユーザーにもたらすことができると説明している。

2025年には販売する車両のうち50%をEVに、2030年には100%をEVにすると明らかに

記者会見で説明するボルボ・カーズ 社長 兼 CEO ホーカン・サムエルソン氏

 ボルボ・カーズは2019年の10月に「XC40 Recharge」というEVを発表(別記事「ボルボ、ブランド初の新型EV「XC40 リチャージ」公開。2025年世界販売台数の50%をEVに」参照)し、2020から生産を開始。日本でも2021年中の受注開始が予定されている(別記事「ボルボ初のBEV「XC40 Recharge」生産開始 日本で2021年中の受注開始を予定」参照)。

XC40 Recharge

 そのXC40 Rechargeは前後にモーターを搭載するツインモーター構成で、78kWhのバッテリーを搭載して420kmの航続距離を実現している。また、IVI(In-Vehicle Infotainment)にはAndroid OSが採用されており、Google Mapsのような標準アプリケーションだけでなく、Google Play Storeも利用可能になっているなど、まさに動くスマートフォンと呼んでよいような新世代の自動車になっている。

 そうしたEVの投入をすでに始めているボルボ・カーズは、全モデルをEV化するという意欲的な目標を掲げている。ボルボ・カーズ 社長 兼 CEO ホーカン・サムエルソン氏は「われわれは成功するために、さらに利益を出せる体制に変えていく必要がある。ビジネスを縮小させていく代わりに積極的な投資を行なっていく。その将来への投資が向かう先は、電動化でありオンラインだ。われわれはとても早く成長しているプレミアムな電動車両というセグメントでリーダーになることにフォーカスしている」と述べ、今後もボルボ・カーズがEVへの投資を行なっていき、他社との差別化ポイントにしていきたいと説明した。

 その上で、ボルボ・カーズの電動化の目標として、2025年に販売する車両のうち50%をEVに、そして2030年には全てをEVにするという意欲的な目標を明らかにした。

今後販売するEVは全てオンラインで販売。メンテナンスはサブスクリプションで提供

今後はWebサイトのオンラインショップのみでEVを販売する

 ボルボ・カーズは「電動化」「オンライン」という2つの重要な投資のうち、オンラインに関する発表も行なった。今回ボルボ・カーズが発表したのは、今後ボルボ・カーズから販売される全てのEVは、オンラインのみで販売されるということだ。

 現在自動車の販売は、納車やメンテナンスなどをディーラーが行なう必要があることもあり、ディーラー経由で販売されるのがほとんどだ。自動車メーカーが用意しているWebサイトでは、見積もり程度まではできるが、実際に自動車を購入する段階になると近くのディーラーへと転送される、そうした方法が一般的だ。

Webサイトでスペックなどをカスタマイズして注文できる
支払いも現金やカードだけでなく、サブスクリプション(定期契約)なども

 それに対して今回ボルボ・カーズが発表したのは、今後EVに関しては「volvocars.com」という同社のオンラインストアやパートナーのオンラインストアなどで販売するということにある。同社の説明では従来のパートナーとの協力も行なわれるということになっており、従来のリアル店舗を持つディーラーに関してもオンライン販売はあり得るということのようだ。しかし、店頭での販売はなくなるという意味では、十分衝撃的な発表と言えるだろう。

 こうする消費者のメリットに関して、同社では「透明性や信頼される販売プロセスを構築することで、面倒な交渉などがなくなること」と説明している。例えば現在自動車をディーラーで購入する場合には、メーカーから出される販売報奨金などを原資にしてやや不明朗とも言える値引きが横行している。その値引きもディーラーの胸先三寸で、消費者にすればどこで買えば一番安く買えるのか分からない販売方法になってしまっている現状がある。それに対してオンライン販売だけにすれば、ユーザーにとっては不透明な「値引き」がなくなり、値引きはユーザー全体に対して行なうことができる。この意味ではより透明な取引になると言える。

 ただし、現実にはPCや家電などのオンライン販売でも、特定のユーザーだけに割引クーポンを発行するという形で割り引くことは可能で、実際にそうした形での特定顧客の優遇は引き続き行なわれている。そうした例を見れば、完全に特定顧客の優遇がなくなるということはないと考えられるし、販売サイトもメーカーのそれだけに限定される訳ではないので、小売店同士の競争は続くことになる。それでも、現状よりは分かりやすくなることは事実で、ユーザーにとって細かくカスタマイズできるという意味でより利便性が高くなることは間違いないだろう。

 ボルボ・カーズにとってはそうした直販が増えていくことで、より大胆な価格戦略を動的に行なうことが可能になる。例えばモデル末期に近づけば、オンラインでの価格を下げて販売数を押し上げることを狙うという戦略をとることが可能になる。これまで、そうした価格調整はディーラーに渡す販売報奨金を調整することで行なっていたが、オンラインであればそうした間接費を減らすことが可能で、より顧客に直接届くような価格戦略をとることが可能になり、販売にかかる経費を押し下げる効果があると考えられる。

注文完了画面、購入時にメンテナンスパック「Care by Volvo」もサブスクリプション契約することができる

 こうしたオンライン販売で自動車を購入した場合に心配になるのはメンテナンスだと思われるが、ボルボ・カーズは2020年に「Care by Volvo」というサブスクリプション(定期契約)型のサービスパックの提供を開始しており、サービスや保証、ロード・アシスタント、保険などがセットになっており、それを同時にオンラインで購入することも可能で、それによりメンテナンスなどもカバーしていく計画だ。