ニュース
スーパーフォーミュラ、トヨタの永井氏退任記者会見 カーボンニュートラル社会への貢献を語る
2021年6月21日 17:14
トヨタのエンジンを開発してきた永井氏が退任
スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)は6月19日、第4戦SUGOの予選日に記者会見を開催した。記者会見にはJRP 代表取締役社長 倉下明氏、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント テクノクラフト本部 執行役員 永井洋治氏の2名が出席。永井氏はスーパーフォーミュラにおけるトヨタエンジンの開発に長く携わっていたが、この6月で退任する予定となっており、その退任前記者会見となった。
JRP倉科社長は永井氏との思い出として、現行車両であるSF19導入時の苦労を挙げた。当時社長就任から間がなかった倉科社長はSF19の導入は不慣れな部分があったとし、そこを永井氏にオピニオンとしてリードしてもらったという。
永井氏自身はスーパーフォーミュラについて、「自分は39年会社生活をやってきて、30年以上モータースポーツにかかわってきて、スーパーフォーミュラは15年になります。スーパーフォーミュラはみなさんごぞんじのとおり、世界に誇れるトップフォーミュラです。ドライバーが乗って楽しい、見て楽しい。誰でも勝てるチャンスがある。自分が携われたということが、まずうれしいし、ありがとうございます」とあいさつ。
思い出として残っているのは、SF09について若いドライバーから「あまり乗りたくない」と言われたときに、自分の仕事に疑問を持ったことだという。そのSF09の乗りたくないという言葉にあったのはバトルができないマシンであったこと。そこに「頭をがーんとやられた」(永井氏)といい、関係者とさまざまな話をする中でSF14を開発。
SF14のデビュー戦での激しいバトルを見て、ドライバーも生き生きして乗れたということが、自分の中では一番の思い出であると語った。
2014 スーパーフォーミュラ第1戦はロイック・デュバル選手が逆転優勝
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/644386.html
また、そのSF14や現在のSF19に搭載されている「NRE(ニッポン・レース・エンジン)」については、思い出深いエンジンだという。2011年に東日本大震災が発生したが、ちょうどそのころ次世代エンジン(NRE)について検討しており、ホンダのエンジニアである酒井氏やいろいろな人と、方向性を話し合ったという。その中で、環境によいエンジンという方向性が検討され、「環境に技術で役に立ちたい、本当に役に立つというのは何なのかをとことん話し合った」(永井氏)結果できたものだという。
その後会見の司会から今後のモータースポーツについて問われた永井氏は、「(現在は)ヨーロッパが急速にEVに流れていって、それは量産(車)も含めて。自分は量産(車)も含めてカーボンニュートラルの答えは1個ではないと思っています。EVがあったりFCVがあったり、今のエンジン(コンベンショナルエンジン)のハイブリッド、プラグインハイブリッドがあったり、CO2を削減する目的の達成手段としては一つではないと自分は思っています」と語り、今後モータースポーツが解決しなければならないカーボンニュートラル問題に言及。
スーパーフォーミュラではないものの、トヨタ自動車はスーパー耐久において水素エンジン搭載のカローラを走らせモータースポーツの現場で開発するという取り組みを行なっている。永井氏はその点についても、モータースポーツの開発の速さはカーボンニュートラル社会への貢献になるという。
もう一点永井氏が挙げたのは、軽量化について。軽量化はモータースポーツにおいて大きなテーマであり、LCA(Life Cycle Assessment)を含めた軽量化の開発がカーボンニュートラル社会へ貢献できるのではないかと語った。
「本当に量産に役に立つ技術をわれわれがサーキットで技術開発しながら争う。そういうことでカーボンニュートラル(の開発)が加速するのではないか。これは私見ですが、モータースポーツは厳しいときだけど、正面から逆に今は立ち向かうときじゃないかな。ややもすると縮こまってしまい、モータースポーツは悪じゃないかと。そうではない、モータースポーツがカーボンニュートラルにどうやって貢献していくのか、本当にどうやって減らしていくのかっていうのを、われわれが正面から解を探っていくのがここ数年の大事な時期ではないかと思います」(永井氏)。
その後、いくつか質疑応答があった後、記者会見の終わりに永井氏のライバルとも言える本田技術研究所の佐伯昌浩氏が登場。佐伯氏は退任する永井氏に本田技術研究所のあるさくら市の地酒と、退任するからと言いつつHondaロゴ入りマスクをプレゼントした。