ニュース
ランボルギーニの電動化戦略について、アジア太平洋地域CEOのフランチェスコ・スカルダオーニ氏に聞いた
2023年11月8日 15:08
- 2023年11月2日 実施
ランボルギーニのアジア太平洋地域CEOのフランチェスコ・スカルダオーニ氏が来日。タイトな日程の中、ランボルギーニで現在進行中の電動化の進捗状況や今後の予定について聞いてみた。
スカルダオーニ氏はボローニャ大学機械工学部を卒業後、2009年にランボルギーニに入社。南欧と中東のアフターセールス・エリアマネージャー、南米、カナダ、イタリアのカントリーマネージャー、ヘッド・オブ・パーツ&アクセサリー、ランボルギーニ・チャイナのマネージングディレクターを経て、現在に至っている。
──まず来日の目的から教えてください。
スカルダオーニ氏:年末が近づいてきましたので、今年の実績の振り返りと締め、年末までの見通しについて話をするのが目的です。今年はランボルギーニの創立60周年で、そのお祝いの行事を世界で最初に始めたのが日本でした。ダビデさん(同席したランボルギーニ・ジャパン社長のダビデ・スフレコラ氏)とチームのメンバーは素晴らしい仕事をしてくれ、当日はギネス記録を打ち立てるという素晴らしい功績を残しただけでなく、本当に楽しい1日でした。また、来年、2024年は新しいクルマのデリバリーが始まるので、どうやってお客さまを喜ばせていこうかというアイデア交換も行ないます。
今東京で開催中のジャパンモビリティショー2023については、残念ながら時間がなくて行くことができませんでした。
ランボルギーニの電動化戦略の第1号車「レヴエルト」
──今、ランボルギーニは電動化の真っ最中だと思うのですが、現在の進捗状況はどうでしょうか。
スカルダオーニ氏:2023年は、ランボルギーニの電動化の初年度になりました。ランボルギーニの電動化は2部構成になっていて、まず第1部がハイブリッド化です。その第1号となったのが、先日日本でお披露目した「レヴエルト」です。なぜレヴエルトだったのかについては、ランボルギーニの新しい時代の始まりであり、大きな転換になりますので、やはり1番のアイコンであるフラグシップからいこう、というのがその理由です。2024年は「ウルス」と「ウラカン」のハイブリッド化の年になり、2025年までにはハイブリッド化が完成。全体のCO2の排出量が50%削減されることを見込んでいます。この目的を達成するためには非常に大規模な投資が必要で、ランボルギーニとしては過去最大の19億ユーロという投資を行ないました。
そして2026年以降はいよいよ本格的なEV化ということになります。今年8月にペブルビーチでコンセプトカーを発表しましたが、これはまったく新しいセグメントを定義すると言ってもいいような、非常に画期的なラインをもったクルマに仕上がりました。われわれはそのボディタイプを「ウルトラGT」と呼んでいますが、グランドクリアランスがあって、GTでもなく、クロスオーバーでもなく、SUVでもない、本当に今までにないボディタイプの新セグメントとして位置付けています。今はあくまでコンセプトですが、生産開始は2028年を予定しています。また、電動化戦略については「ディレッツォ コルタウリ」と呼んでいますが、これは包括的なサステナビリティのプランでもあります。実はクルマを制作する工場でもCO2ニュートラルを達成していて、ドイツのITQFという認証機関からチャンピオンの認定を受けています(IQEF:ドイツ品質協会。調査は2000の企業が対象で、ランボルギーニはグリーンスター賞を2年連続で受賞している)。
──2部構成の電動化戦略の最初となるレヴエルトに対するお客さまの反応はどうでしょう。
スカルダオーニ氏:本当に「すごい!」の一言です。もちろん私たちもある程度は期待していましたが、それを上まわる評価と、実際の受注も入っています。実は2026年の生産分まで売り切れていて、これからどんどん納車しなきゃいけない、という状況です。
──その魅力を具体的に言うと?
スカルダオーニ氏:アヴェンタドールがあれだけのアイコン的なフラグシップスーパースポーツカーになっていて、その後継車を作るのはすごく大変な作業だったのですが、それをやってのけてしまったことでしょうか。レヴエルトは自然吸気のV12気筒エンジンを搭載していますが、今ではそれを作れる会社はほんのわずかですね。そんなエンジンを載せたスーパースポーツカーを作れていることは私たちの誇りですし、あれだけのエンジン音を世界一厳しい規制に適合しつつ出せるというところに魅了され、それを愛するお客さまがたくさんいるのです。ハイブリッド化によってアヴェンタドール以上に速くて安全でスムーズで、なおかつ乗り心地のよいクルマが作れたことは、本当に素晴らしいことだと思っております。
ハイブリッドのステルスモードでは、電気だけで100km/h以上で走ることができますが、あの静かなモードで走るときの感覚ってすごく特別です。日常使いでは広いヘッドスペースや大きなラゲッジスペースで、V12なのにコンフォートに使うことができます。一方レースモードでは、前輪の2つのモーターによるアクティブなトルクベクタリングを使った4輪駆動で走ることができ、サーキットでも楽しんでいただけます。室内はデジタル化された3つのスクリーンを使用していて、助手席側でも情報を見ることができます。スーパースポーツカーなので、重量やスペースの関係で60インチといったような大画面ではないですけど(笑)。
ダビデ・スフレコラ氏:私からも1つだけ。日本ではV12エンジンに対するパッション、情熱について長い歴史と伝統があって、だからこそレヴエルトは日本のお客さまに温かく迎えられるだろうと期待していました。すると、もう本当にそれを上まわる、私たちが圧倒されるぐらいの評価をお客さまからもファンからもいただいています。
2+2シーター ウルトラGTの新型EVコンセプト「ランザドール」
──電動化の第2部となる「ランザドール」の名前で発表されたウルトラGTについて、2ドア4座という新しいスタイルで登場した理由を教えてください。
スカルダオーニ氏:ランザドールは新たなフィールドに参入するということで、私たちとしては今までのラインアップになかった、もっと言えば今までの自動車業界に存在しなかった新しいセグメントの画期的なクルマを作りたかったからです。イタリアにいるミーティア氏以下のデザインチームとしても、2ドア4シーターを完璧なラインで作るという新しい挑戦をしたわけで、電動化のトレンドを意識した未来志向の非常に画期的なボディタイプに仕上げてくれました。ただ、1つ1つのシルエットラインとかY字のラインとかを見ていただくと、それはブランドのアイデンティティであり、あぁ、ランボルギーニだな、というふうにすぐに分かると思います。たとえバッヂを外していても、絶対に一発で分かる。だからあのクルマは、ランボルギーニデザインのDNAを未来に運んでくれる役割を果たしているんだな、と私は思いました。
──日本のランボルギーニファンやお客さまに伝えたいことは?
スカルダオーニ氏:来年はレヴエルトが日本にもやってきますので、ドリームカーとも言えるあのクルマに乗っていただければ、ランボルギーニに乗りたい、持ってよかったという夢が終わらないというのが本当に分かっていただけると思っています。お客さまからの期待は大きかったのですが、その期待に応えるどころかおそらく上まわることができたんじゃないかと思っていますので、そのことをうれしく、誇りに思っています。皆さまの夢を“アンロック”することができたと思いますので、ぜひ一緒に楽しんで、思い出をたくさん作りましょう。