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日産、初の統合報告書と新たなサステナビリティプランを発表 環境と社会性に特化したプログラムを推進

2024年7月31日 発表

日産のサステナビリティ概要。NGP2030とNSP2030の柱になっている9つの重点領域を示す

第5世代の「ニッサン・グリーンプログラム 2030」など策定

 日産自動車は7月31日、サステナビリティを中核に据えた日産のビジネスとその進捗を紹介する「統合報告書 2024」を発行した。

 この報告書は日産として初めて発行する統合報告書で、長期ビジョン、経営計画、先約、財務情報に加え、サステナビリティに関する方針や実行計画を通じて日産が中長期にわたって社会に与えるインパクト(価値創造)を説明。さまざまな取り組みを通じて、安心安全な街づくりや社会の発展、豊かな自然と生態系の回復を目指していく。

 また、サステナビリティの取り組みとして、第5世代となる「ニッサン・グリーンプログラム 2030」(NGP2030)と、これまでの社会性の取り組みを戦略的にまとめた「ニッサン・ソーシャルプログラム 2030」(NSP2030)を策定し、日産のビジネス戦略を支えていくとした。

 なお、その成果は同時期に発行される「サステナビリティデータブック 2024」(「ESGデータブック2023」から更新)でより詳細に報告されている。

統合報告書の位置付け
価値創造プロセス

ニッサン・グリーンプログラム 2030

 日産は、2002年に最初の中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム」(NGP)を発表し、環境理念「人とクルマと自然の共生」の実現に向けた取り組みを長期にわたって続けてきた。

 今回新たに策定したNGP2030では「気候変動」「資源依存」「大気品質と水」の3つを戦略的に取り組むべき重要課題として定め、カーボンニュートラルに向けて世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えるシナリオへの適合、循環型経済への移行、自然や生態系への依存と影響の最小化などに取り組むとした。

NGP2030の概要

 NGP2030に含まれる主な環境目標は下記の通り。なお、削減率は2018年を基準とする2030年目標となる。

・車両1台あたりのライフサイクルCO2排出量を30%削減
・車両1台あたりの製造時のCO2排出量を52%削減
・新車走行時のCO1排出量を、日本、米国、欧州、中国の4つの主要市場において50%削減。また、グローバルで同CO2排出量を32.5%削減
・日本、米国、欧州、中国におけるサステナブルマテリアル比率を40%へ向上

気候変動に関する取り組み。NGP2030は、商品ライフサイクル全体にわたるCO2排出量の削減に重点を置いている。なお、2023年度にはライフサイクル全体のCO2排出量を11%削減。新車からのCO2排出量は世界全体では12%、米国、欧州、日本、中国の4つの主要地域では15%削減したとのこと
資源依存に関する取り組み。バッテリの再利用、部品のリビルト、材料のリサイクルなど循環アプローチを実践し、2050年までに新規採掘資源への依存をゼロにすることが目標。2023年度時点では使用材料の32%がサステナブルマテリアルとなった
大気の品質に関する取り組み。車両からの排出ガスの削減に取り組むとともに、製造工程の大気品質も改善してきたという

ニッサン・ソーシャルプログラム 2030

 NSP2030は、これまで日産が取り組んできた社会性の取り組みを包括的にまとめ、さらに向上させた行動計画。NSP2030を実施することで、経営計画「The Arc」の基盤としての役割を果たし、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を実現するための道筋を示すという。日産は、「人」を中心とした取り組みにより、従業員、地域社会、パートナー、さらに社会とともに成長していくとした。

 日産はこの包括的な取り組みを通じて、社会にポジティブなインパクトを与え、真に持続可能な企業となり、将来の世代のためによりよい世界を創造することに貢献するとしている。

 NSP2030の6つの柱として、「安全」「品質」「責任ある調達」「知的財産」「地域社会」「Power of Employees」を定め、各分野で2030年に向けた目標設定と行動計画を策定し、プログラムの社会的価値を明確に定義。

 日産は「人」を何よりも大切にし、すべてのステークホルダーの人権を尊重することを企業活動の基本としているという。この価値観は企業文化の基盤と位置付けられ、NSP2030の6つの柱にも反映されているとのこと。

NSP2030は6つの柱で構成。日産は13の地域で29の生産拠点を有しており、世界100か国以上に13万人を超える従業員がいるという規模の大きさから、活動が社会に与えるインパクトをポジティブなものにする責任があるとして、事業を行なう地域社会に対してプラスインパクトを与えるための、事業や方向性に関する指針を示している
安全に関しては“クルマが人を守る”という考えのもと、運転支援技術に投資し、技術開発を推進。同時に、交通安全の啓発活動も行なっている
製品、販売、サービス、品質のすべての面でトップクラスを目指し、あらゆるステージにおいて高い品質を提供するための活動も行なっているとのこと
責任ある調達を行なうため、サプライヤーCSRガイドラインを策定。日本でサプライヤー向けに人権侵害に関するホットラインを開設するとともに、第三者機関による評価も実施している
模倣品への対策を講じながらパートナーとは柔軟かつ効果的な方法で知的財産を共有することでイノベーションを促進
コミュニティの若者や子供たちの可能性を広げることを目標とし、地域社会での学習機会の提供や社会支援などの活動に注力
従業員が職場で本来の自分らしさを発揮できるよう、サポートとエンパワーメントを受けていると感じられる環境を整備

 また「Power of Employees」の分野には「DEI」「従業員の人権」「従業員の能力開発」「労働安全衛生」の取り組みが含まれ、従業員1人ひとりが自信を持ち、支えられ、自分らしさを発揮できるような働きがいのある職場環境を築くことで、従業員の能力が最大限に発揮できることを目指しているという。それにより、会社と従業員がともに成長できる企業文化が醸成され、さらなるイノベーションの創出につながるとしている。DEIは日産が特に取り組みを推進している分野で、例えばLGBTQ+、育児両立、マルチカルチャーなどをテーマとした従業員リソースグループ(ERG)は、よりオープンで革新的な職場づくりを支援するため、従業員主導の活動をサポートしているとした。

取り組みについてチーフサステナビリティオフィサーが説明

 発表に先駆けて行なわれた説明会では、日産自動車 専務執行役員 チーフサステナビリティオフィサー 田川丈二氏が最新のサステナビリティプログラムと、日産が初めて発行する統合報告書について解説した。

日産自動車株式会社 専務執行役員 チーフサステナビリティオフィサー 田川丈二氏

 田川氏は最初に「当社の事業の中核となるサステナビリティ戦略は、さまざまな課題に対応し、社会面と環境面においてポジティブなインパクトを与えることで、Nissan Ambition 2030の実現につながっています。2050年までにEVへ移行し、カーボンニュートラルを実現すること。これが当社の目標です。環境、社会、お客さまの重要なニーズに応えるため、当社は真に持続可能な企業となり、よりクリーンで、より安全、よりインクルーシブな世界の実現に向けて邁進していきます。また、私たちはサステナビリティを企業間の競争とは考えていないということをお伝えしたいと思います。私たちは、地域を越え、事業のサプライチェーン全体を通じて、パートナー、サプライヤー、そのほかの志を同じくする企業と連携しながら、サステナビリティに取り組んでいます。私たちは、日産のサステナビリティの推進に全力を尽くしています。そして何より、次世代によりよい世界を残したいと考えています」と述べた。

 また、田川氏は一通りの説明を終えたのち、「サステナビリティの取り組みについての進捗状況に関する情報開示は、透明性をもって行なっていきます。『人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける』これが日産のコーポレートパーパスであり、私たちのすべての活動の中心であります。私たちの社会的意義を示し、従業員を同じ方向に団結させ、事業の成長と社会の発展のために一丸となって行動するためのものです。このマインドセットを会社の根幹に据え、サステナビリティをより効率的に推進するための方法を模索しながら、よりクリーンで安全、よりインクルーシブな世界の実現に向けて邁進してまいります」と語った。