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【CEATEC JAPAN 2013】日産、CEATEC会場で国内初の自動運転車両デモ走行
(2013/10/2 16:53)
日産自動車は10月1日から開催中の「CEATEC JAPAN 2013」において、同社の自動運転技術のデモンストレーションを実施した。デモ走行を実施したのは8月にカリフォルニアで開催されたグローバルイベント「日産360」で発表されたものと同一の車両で、幕張メッセの展示ホール8に設置された特設コースで自動運転デモを行った。日本国内では初めての公開となる。
車両はEVの「リーフ」をベースに製作され、5つのレーザースキャナと5つのカメラを組み込み、360度方向の状況をリアルタイムで認識しながら自動運転を行う。特設コースには交差点や一時停止などの標識が設定され、標識や白線などを正確に認識し、道交法に基づいて自動的に走行するほか、人間が運転するクルマと十字路で交差する状況設定や、路肩に停車している車両を認識し、適切に回避する様子などが公開された。
同社が開発している自動運転技術は、自動運転を実現しつつもあくまで人間が乗り込んでいつでも運転に介入できるシステムであることが前提だ。ドライバーの運転を黒子のように支援することが目的となっており、車体に書かれた文字が「Automated Drive(自動ドライブ)」ではなく、「Automonous Drive(自律ドライブ)」であることには意味があるのだ。
発進から一時停止し、コーナーを曲がるまで
路上駐車中のクルマをよけて前進する様子
自動車の運転には「5大難所」と呼ばれる要素があるそうだ。それは「合流」「車線変更」「狭い道でのすれ違い」「交差点」「駐車」の5つで、これはどの国でアンケートをとっても上位に入る要素。同社の自動運転技術は、こうしたドライバーが感じる「ストレス」を自動化技術によって解消しようというものだ。ドライバーがクルマに指示を出すと、クルマが周囲の状況を自律的に判断して安全にその命令を実行する。馬と人間の関係に近いとの説明で、馬は人間が命令したからといって何も考えずに崖から飛び降りたりはしない。だが、今の自動車は人間の操作どおりに飛び降りてしまう。自動車が自分とドライバーの安全を考えながら動く、いわばアシモフの“ロボット三原則”的な思考をしながら人間をアシストするというイメージなのだ。
自動運転と聞くと、ドライバーから運転する楽しみを奪ってしまうともイメージするが、同社ではそうではないと考えているという。自動運転によって運転の「負の部分」となる、ドライバーが運転中にストレスを感じる上記で挙げた「5大難所」のようなシーンで、クルマが自動的に運転を支援して「運転の楽しい部分だけを体験できるようになる」という考えかただそうだ。人間は年齢を重ねれば夜間視力は衰え、反応速度も鈍くなっていく。しかし、自動運転技術の支援を受けることで、これまでと同じ感覚で運転を続けていけるのだ。
同社では、2020年に自動運転技術を組み込んだ自家用車を販売するとすでに発表しているが、2020年になってすべての要素を搭載したクルマが突然発売されるわけではない。同社では導入可能な技術から順次製品化していく方針だ。
数ある技術のなかで現時点でもっとも早く実現可能なのは「高速道路走行の自動化」「自動駐車」という2件だそうだ。特に高速道路走行はほぼ自動運転と言っていいレベルで実装可能とのこと。ドライバーは高速道路に入った段階で機能をオンにすれば、高速道路を走っているあいだは自動的に走行車線や車間距離をキープし、自動で目的地まで運転してくれる。ただ、あくまで「無人運転」ではないので、原則的にはドライバーがステアリングを握りながら監視する必要はある。それでも、長距離を運転するときなどはとても重宝することは間違いないだろう。
逆に、市街地での自動運転技術についてはさらに実証実験を積み重ねる必要があり、実装は最後になる見込み。機械は故障しなければミスを起こさない。これは飛行機事故でも同じことで、事故の原因は大半がヒューマンエラーによることは事実だ。とはいえ、あらかじめ航路が決められて安全が確保されている航空機と、いつ何が起きるか分からない市街地走行ではリスクのレベルがまったく異なる。これを公道での実証実験で評価し、人工知能に経験を積ませる必要がある。
製品化にあたっては低コスト化も大切な課題。とくにセンサーは最もコストが掛かるパーツだ。たとえばGoogleの全自動運転自動車は、ルーフ上に360度を同時にスキャン可能な高精度レーザーセンサーを搭載しているが、これはセンサーだけで800万円するそうだ。また、360度を見渡すためには車両で一番高い位置になるルーフ上の装着が必要になるが、これでは車体の直近部分に死角ができてしまう。
日産のデモカーでは量産性が高い廉価品のセンサーを多数使う方法でコストを低減。今回の車両に搭載しているレーザーセンサーは、それぞれの視界は180度に限られるが、これを車両全周に張り巡らせるように設置することで360度の視界を確保している。取り付け位置も低いため、死角が極めて少ないこともメリットになる。
また、レーザーというと霧や雨といった天候不順による影響が懸念されるが、詳細は明らかにされなかったものの、そうし気象条件の影響を受けにくいレーザーセンサーを開発して使用しているとのこと。もちろん、センサー類は相互に連動し、レーザーが不調でもカメラやレーダーなどが補間して冗長性を高めている。
自動運転が実現された先で気になるのは、事故を起こした場合の責任問題だ。自動車の所有者が責任を負うべきなのか、それともメーカーなのか。これについては、やはり当初は自動車の所有者に責任があるという方向になるのではないかと説明された。ただし、これはあくまで機械精度や社会的な信頼性が低い段階での話で、登場から時間が経つにつれて機械の信頼性が上がり、安全であるという認識が広がって社会的な信用を得るようになっていけば、最終的にはメーカーの製造物責任になる可能性が高いという。航空機のオートパイロット機能などと同じ考えかただ。
クルマによる「代行運転」のような無人運転は、2020年よりさらに先の話になるという。現行法ではドライバーがステアリングから手を離して運転することが認められていないからだ。もしかしたら、すべてのクルマが自動運転に対応するまで無人運転の実現は難しいのかもしれない。
とはいえ、CEATECの会場内では完全に手放しの状態で道路を認識し、道交法に従って自動運転する車両が披露されていることも事実だ。また、同社は日本で初めて自動運転システム開発に向けた実証実験車両としてナンバープレートを取得し、公道での実験も開始される。2020年の時点でどのような法改正が行われるのか現時点ではまだ分からないが、デモカーのパフォーマンス的にはほぼ自動運転が実現されつつある。今後、自動運転技術が法改正やインフラ整備なども含めてどのように実現されていくのか興味が尽きないところだ。機械が回避できない事故ならば人間も回避できない。そう言い切れる時代も遠くないかもしれない。