ニュース

DeNA、合弁会社「ロボットタクシー株式会社」設立など自動車産業参入に向けた戦略を発表

2020年をめどに自動運転タクシーの実用化を目指す。無料ナビアプリ「ナビロー」も提供開始

2015年5月28日発表

 DeNA(ディー・エヌ・エー)は、5月12日に開催された通期決算発表の場で、新たにオートモーティブ事業に参入することを発表し、自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCar」などを開発しているZMP(ゼットエムピー)と合弁会社を設立するというニュースリリースを公開した。

ZMPとDeNA、「株式会社ロボットタクシー(仮)」を設立

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150513_701682.html

 このニュースリリースを発表すると、直後からDeNAには多くの問い合わせがあったとのこと。個別に対応することが難しいという判断から、5月28日に記者会見の場を急きょ設けた。会見の内容は、オートモーティブ事業の全体構想と、ZMPと共同で設立する合弁会社「ロボットタクシー株式会社」についての説明となった。

 なお、5月12日の発表時には、会社名は「株式会社ロボットタクシー(仮)」となっていたが、5月29日にロボットタクシー株式会社が正式な社名と定められた。

オートモーティブ事業の展開について解説するディー・エヌ・エー 執行役員 中島宏氏

 記者会見の冒頭で、オートモーティブ事業の責任者となるディー・エヌ・エーの中島宏執行役員は、自動車産業に進出するメリットを「自動車産業は、完成車の販売だけで11兆円のマーケットとなっていて、周辺のタクシーで1.7兆円、整備で5.7兆円、全体でいえば50兆円を超える、日本でもっとも大きな産業です。DeNAとしてもとても魅力を感じています。インターネットの会社が新規事業を考えるときには、例えばマザーマーケットが5000億円の規模があり、インターネット化した際に10%の500億円が業界の売り上げとなり、リーディングカンパニーがその内の20%のシェアを取れば100億円の売り上げになるとマーケットを考えます。ですが、自動車産業の場合は2桁くらい大きい。規模としての魅力が第1です」と解説。

「そして第2点ですが、現在、自動車産業は変革のときにさらされています。GoogleやAppleがインフォテイメント事業へ参入していることや、ウーバー(米国の配車サービス会社)のような自動車産業の領域に参入し、時価総額を大幅に成長させた企業もあります。自動車産業は“遅れてきたIT革命にさらされている”と自動車メーカーの方が語っているように、大きな変革が起こっていることが、参入を決めた用件になります」と話し、国内でも有数のマーケット規模になる自動車産業が変革のときを迎えている。このビジネスチャンスを活かしたいということが、オートモーティブ事業への参入のきっかけとなっていることを明かした。

フォトセッションでは、ロボットタクシーの会長となる谷口恒氏と代表取締役になる中島宏氏の2人が収った

 中島氏からは現状の自動車産業をどのように捉えているのかという解説もあり、「自動車産業を携帯電話の進化になぞらえると、『通話のみ』『インターネットに繋がりだした』『iモード』『スマホ』という各時代があるとして、現状はiモード前夜くらいだと考えています。現在、携帯電話はハードウエアからソフトウエアに付加価値が変化していますが、これは15年前には考えられなかったことです。つまり、今後10年から15年で、自動車産業はソフトウエアに付加価値が変化していくことが予想されます」と今後の展開についての予想を紹介。

「また、自動車産業の過去を振り返ると、1960年代にモータリゼーションが起こって爆発的に車両保有台数が増えました。それにより、自動車産業だけでなく、クルマを保有することで郊外のマイホームが売れたり、物流などの社会構造が大きく変化しました。これに似たことが起きると考えていて、自動車産業のIT変革によってインターネットの会社がタッチしていく領域が増える、そしてソフトウエアを基軸にして周辺産業を巻き込みながら変化が起きることになる。そのような考えから、オートモーティブ事業への参入を決定しました」と語った。完成車を作るのではなく、DeNAが得意とするソフトウエアを基軸にして自動車産業にタッチしていくのがオートモーティブ事業の狙いとなるようだ。

 DeNAはすでに駐車場のシェアリングサービス「あきっぱ!」への投資も行っている。オートモーティブ事業への参入に際して、DeNAの強みとなっている多彩な戦略オプションやアプリケーションの開発、大規模トラフィックを活かした何千万という対象にも使えるインフラ構築などを活かして、事業展開を行っていくそうだ。その1つとなるのが、ZMPとの合弁で設立するロボットタクシーになる。

DeNAのオートモーティブ事業への参入戦略について
自動運転の実証実験について説明を行ったゼットエムピー 代表取締役社長 谷口恒氏

 ロボットタクシーの取締役会長となるZPMの谷口恒代表取締役社長は、ロボットタクシー事業について「ロボットタクシーは、世界初となる運転手がいないドライバーレスのタクシー専門会社になります。ロボットタクシーの構想は3年前から話を進めてきました。昨今は、ウーバーなどのITを使ったタクシー配車サービスもありますが、ロボットタクシーはその先の展開で、タクシー自体をロボットタクシーに変更します。現在、自動車メーカーを含めてさまざまなテストが行われている自動運転は“ドライバーの運転支援”ですが、ロボットタクシーは高齢者やハンディキャッパー、児童などの免許を持っていない人を含めて、すべての人に自由な移動を提供できると考えています」とコンセプトを紹介。

「キーとなる自動運転についてですが、ZPMでは2008年から『RoboCar』の研究開発を行ってきました。自動車メーカーや大学などに研究開発用のプラットフォームを提供していて、昨年末からは名古屋市の郊外で自動運転の公道実験も始めています」と語り、すでに公道を使用した実証実験を行っていることに関しても言及した。

 また、ロボットタクシーの代表取締役社長になる中島氏は、今後のビジネス展開に関して「ビジネスモデルについてはまだ決める段階ではなく、何も決まっていません。ロボットタクシー株式会社は、タクシー事業に必要なアプリケーションやインターフェイスの開発、そしてセントラルコントロールとしての役目を担う予定です。事業全体でいえば、配車サービス、自動運転のプラットフォーム、エンタメ付帯サービス、車両製作、整備など多くの要素があり、それをすべて垂直統合でロボットタクシーが行うわけではありません。コアとなる自動運転はロボットタクシーが行いますが、それ以外はアライアンスを組むことなどを検討してます」と口にして、具体的なサービスや内容については検討段階であるとした。

 今後のスケジュールに関して中島氏は、「実証実験、サービス検証、サービス実運用、エリア拡大とフェーズを切っていますが、どれも未定です。ですが、谷口社長とも話しているのが、2020年の東京オリンピックの際には、都内で無人走行するロボットタクシーを多数走らせたいという目標を持っています」と語り、2020年の実用化に向け、法規制も含めて関係各所と密接な連絡を取りつつ実用化を進めていくそうだ。

ロボットタクシー事業の構想

DeNAからも無料カーナビアプリ「ナビロー」が登場

DeNAが開発したカーナビゲーションアプリ「ナビロー」の説明を行うDeNAロケーションズ 代表取締役 津島越朗氏

 記者会見の後半には、5月28日からサービスを開始したスマートフォン向け無料カーナビアプリ「ナビロー」の説明も行われた。DeNAが開発を行った独自のインターフェイスやソーシャル要素を持つナビローは、リアルタイム渋滞情報や自動地図更新、ドライブレコーダー機能などを装備したナビゲーションアプリになる。現状ではAndroid版が「Google Play(https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.location.naviro)」「auスマートパス(https://pass.auone.jp/app/detail?app_id=2232900000002)」からダウンロード可能で、iPhone版は後日リリースされる予定となっている。

ナビロー公式サイト

http://naviro.jp/

 カーナビゲーションアプリの提供をはじめ、ロボットタクシー事業などDeNAの強みとなるソフトウエアの開発を基軸に自動車産業に参入し、スピーディーに多方面に投資を行い事業展開するのがDeNAのオートモーティブ事業戦略となっている。

ナビローの説明
無料カーナビ「ナビロー」紹介ムービー(2分10秒)

(真鍋裕行)