インプレッション

DS「DS 3」「DS 4」「DS 5」

シリーズからブランドへ

 1955年に世に現れてから約20年にわたって第一線で存在感を発揮した、シトロエンが生んだ独創的な高級サルーンの車名が「DS」だったのはご存知のことだろう。

 そのDSを引き合いに出しつつ、「常識にとらわれない。過去へのオマージュでもない」と自ら標榜し、関連があるようでないような微妙な言いまわしでシトロエンのラインアップに加わった「DSライン」は、2010年の「DS 3」を皮切りに、翌年より「DS 4」、翌々年より「DS 5」が日本に順次導入されてきた。

 ところが予想外の展開が待っていた。2014年6月、シトロエンは「DS」を1つのシリーズから独立した新しい自動車ブランドへと格上げを図ったのだ。これにともない、2015年秋の東京モーターショーにおいても、「DS」はシトロエンとは別のブースを設けていた。シトロエンから独立したことで各モデルからコーポレートマークの「ダブルシェブロン」がなくなり、フロントグリル中央にはDSのロゴが与えられた。

 日本で販売される車両についてはしばらく従来のままだったところ、東京モーターショー2015に先駆けて限定車の「EDITION 1955」をそれぞれに設定し、2015年11月に先行発売。2016年4月より新生ブランドとなったDSの各モデルが正式に再出発となった。DSのコンセプトは“アバンギャルド=前衛的、革新的”という。3台ともそれぞれ独創的なクルマであることに変わりはない中で、サイズだけでなく方向性も上手く棲み分けていることが、以下よりご理解いただけるかと思う。

カブリオも選べるコンパクトハッチ

 DSの中でもっとも販売台数の多いのがDS 3。全長4mを切る3ドアのコンパクトハッチバックは、宙に浮いているように見えるルーフの存在感や、シャークフィンと呼ばれる太いサイドピラーのデザインが特徴。ルーフのタイプやボディカラーコンビネーション、トランスミッションなどを含めると、最大55パターンの中から選べる「ビークルパーソナリゼーション」も特徴だ。

 カブリオは3とおりのルーフスタイルが楽しるのはもとより、高速走行中でも任意にトップを開閉できるところがよい。こうした仕様が選べるのは、今のところDSの中ではDS 3のみだ。

3ドアハッチバックモデルの「DS 3」(スポーツ シック)。DS 3はフロントグリルの「ダブルシェブロン」を、新生DSブランドで用いている「DS WING」に変更して6月1日に発売。アルミホイールはDS 3で唯一17インチ(タイヤサイズ:205/45 R17)を装着する。ボディサイズは3965×1715×1455mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2455mm。価格は299万円
スポーツ シックは直列4気筒DOHC 1.6リッターターボを搭載。最高出力は121kW(165PS)/6000rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpmを発生
スポーツ シックのインテリアでは、他のDS 3シリーズのダッシュボードカラーがノアールなのに対し、カーボテックを採用することでスポーティな仕上がりに。シートはダイナミカ&ファブリック素材のホールド性のよいスポーティなシート表皮を採用する。トランスミッションは6速MT
こちらはオープンルーフの「DS 3 カブリオ シック」(304万円)。電動ソフトトップはフルオープン、セミオープン、クローズの3パターンから選択できる

 DSの中でもっとも軽快で俊敏なフットワークを身に着けているのもイメージどおり。ただし、引き締まった中にもフランス車らしい優しさを感じさせる。

 パワートレーンは、「シック」系が1.2リッター3気筒ターボ+6速AT、「スポーツ シック」が1.6リッター4気筒ターボ+6速MTとなる。シックでも動力性能は十分のところ、もちろんスポーツ シックはさらにパワフルで、サウンドもまったく別物。DSの中で唯一選ぶことのできるMTのシフトフィールも心地よい。ホットハッチらしい味わいを求めるファンの背中も押せる1台である。

新たに「CROSSBACK」の加わったDS 4

 2015年の東京モーターショーでは、マイナーチェンジしたDS 4とともにSUVスタイルの「DS 4 CROSSBACK」もひと足早く披露されていたのだが、2016年4月に両車とも晴れて日本での発売を迎えた。

 ややサイズが大きめの5ドアハッチバックであるDS 4は、印象的なサイドウィンドウグラフィックや目立たないようにしたリアドアのノブなどにより、クーペライクな性格をアピール。その一方で、30mmアイポイントが高められたCROSSBACKはなおのこと、DSの中でもっとも車高が高く、215/55 R17サイズの大径タイヤを履くなど、ちょっとSUV的な側面も持っているユニークなモデルだ。

 さらにルーフモールや専用バンパーの与えられたCROSSBACKは、このクラスでほかにはないタイプのクルマとして異彩を放っている。いずれもフロントスクリーンの上に、せりあがる「パノラミックフロントウインドウ」を持っているのも特徴だ。半面、リアサイドウィンドウは開閉できない。それもこのクルマのコンセプトの表れと理解しよう。

4ドアクーペを標榜する「DS 4」のSUVモデル「DS 4 CROSSBACK」(338万円)。DS 4から車高が30mm、最低地上高が20mmアップし、ボディサイズは4285×1810×1530mm(全長×全幅×全高)とした。ホイールベースは2610mm。エクステリアではホイールアーチモールディングやルーフモールディング、17インチブラックホイールなどによりSUVテイストを強調している。パワートレーンは最高出力121kW(165PS)/6000rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.6リッター直噴ターボエンジンと6速ATの組み合わせ
頭上まで広がる広大なパノラミックフロントウィンドウが特徴的なインテリア。頭上のサンバイザーはスライドさせることが可能になっている

 コーナリングではそれなりにロールするものの、けっして気持ちわるい感じではない。よく動く足まわりに加えて、大径タイヤも手伝ってか、路面からの入力を上手く受け流してくれる印象で、ロードホールディング性はDSの中でもっとも高いといえそう。クルマの動きは掴みやすく、ライントレース性にも優れる。

 1.6リッターの4気筒ターボエンジンと6速ATの組み合わせによる走りには十分なトルク感があり、加速性能にも不満はない。

DSのフラグシップたるDS 5

 基本パッケージは5ドアハッチバックながら、異様にルーフが長く、変形ショートワゴン的なフォルムを持つDS 5は、インテリアも超個性的。インパネまわりは他のDSと共通性を感じさせるものだが、それ以外の場所がとてもユニーク。

 腕時計のストラップをモチーフにしたというシート(DS 4でも受注生産にて選択可能)はもとより、前席左右と後席の3つのエリアにガラスルーフを配した「コックピットルーフ」や、その前方のルーフコンソール、高めのセンターコンソールなど特徴的な装備の数々が目を引く。しかも、ディテールまでこだわったデザイン性や質感の高さも、DSのフラグシップモデルに相応しく仕立てられている。

5ドアハッチバックモデルの「DS 5」(シック レザー パッケージ)。ボディサイズは4535×1870×1510mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2725mm。最高出力121kW(165PS)/6000rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpmを発生する直列4気筒1.6リッターターボエンジンを搭載し、トランスミッションは6速ATを組み合わせる。価格は454万円

 1.6リッター4気筒ターボエンジンはDS 4と同じスペックながら、200kg近く車両重量の大きいDS 5をものともせず引っ張る。

 路面への当たりが柔らかく、いたってしなやかなDS流の足まわりは、少し動いたところで締まっていて、思ったほどロールしない。DS 5に触れたのは久しぶりのことだが、やはりこのクルマがもっとも“DS極まれり”という印象であった。

DS 5は18インチアルミホイール(タイヤサイズ:235/45 R18)を標準装備する
インテリアではドアハンドルのDSモノグラム、センターコンソール上部のアナログウォッチ、皮革にセミアニリン加工を施したクラブレザーシート(シック レザー パッケージに標準装備)、トグルスイッチを配したルーフコンソールなどが特徴になっている

 もともとは「C」に対するプレミアム版として設定された「DS」だが、こうして独立したブランドとなったことで各モデルに課される役割はずっと大きなものになったのは言うまでもない。まずは、こうしてハードとソフトの両面でアップデートされた新生DSブランドのラインアップが日本でも出そろったことを歓迎したいと思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学