試乗インプレッション
メルセデス・ベンツの“究極のオフローダー”新型「Gクラス」試乗。オンロード/オフロードで新旧比較
隔世の感があるオンロード性能。悪路走破性もぬかりなく
2018年7月25日 17:05
「モデルチェンジ」ではない!?
新しくなった「Gクラス」がいよいよ日本に導入されたとなれば、どんなものか気になっている人は少なくないことだろう。初代の登場が1979年というのは有名な話だが、その長い歴史の中で最も大きな変更となる。
ただし、登場時に「W460」だった型式は、1989年に第2世代へと移行した際に「W463」となり、それを今回も踏襲している。すなわち、今回発売されたモデルというのは、あくまで“新型にアップデート”されたのであって、インポーターの発表や関係書類にも「モデルチェンジ」という言葉は一切出てこない。微妙なニュアンスながら、そういうことらしいのだが、いずれにしても中身が刷新されているのが明らかなのは、以下で述べるとおりである。
実車と対面すると、「なるほど」というのが第一印象だ。Gクラスが長年にわたり高く支持されている最大の要因であるエクステリアデザインは、従来型のイメージを色濃く残しつつ、その上で現代的な要素を多分に盛り込んでいる。新旧を並べると遠目にはどちらが新型かパッと見では分からないほどだが、ボディサイズが拡大し、スクエアデザインながら丸みを帯びたことや、灯火類がモダンになっているのはすぐに分かる。
実のところ、現行Gクラスオーナーやオリジナリティを求めるファンからは、「従来型の方がGクラスらしくてよい」という声も小さくないらしいのだが、もともとGクラスが好きで新しいもの好きでもある筆者はどうかというと、より高級感もありレトロモダンな新型の方が好み。補助ミラーがなくなったものも大歓迎だ。
一方でインテリアは一新されており、ワイドスクリーンを配した一連のメルセデスのラグジュアリーモデルと共通性の高い雰囲気となったのは見てのとおり。全体的に居住空間が拡大しているのは明らかで、とりわけレッグペースが150mmも拡大した後席の広さは従来型とは段違い。ドアを開けたときの開口部も広くなったおかげで乗降性も大幅に向上している。従来どおり横開き式のバックドアを備えたラゲッジスペースも、荷物を置くのがもったいないほど高級感がある。
外から見えない部分も、大きなところでは新設計のラダーフレームの採用や大幅な軽量化、前後リジッドからフロントをダブルウィッシュボーンとしたサスペンション、ボールナットをラック&ピニオンとするとともに電動パワステを採用するなど、メカニズム面も刷新されている。パワートレーンは、現状ではディーゼルがどうなるのかは分からないが、まずはガソリン4.0リッターV8ツインターボエンジンに、7速から9速に多段化したATが組み合わされる。
隔世の感がある舗装路での走り
さっそく舗装路を「G 550」からドライブ。乗り込んで意外とスポーティな形状のシートに収まりドアを閉めると、ウワサに聞いていたとおり、ドアを閉めたときの音やロックのかかる音が、昔ながらの素朴な音。こうした「味」の部分にまでこだわったことがうかがえる。
ところが、走り出してすぐに従来型とは快適性が段違いであることが分かる。しなやかによく動く足まわりにより、段差を乗り越えても突き上げが小さく、乗り心地は申し分ない。フラット感があり、コーナリングでのロールも小さく抑えている。ステアリングの操舵力も軽く、フリクションを感じない。心なしか切れ角も増えて取り回しがよくなったような気もする。
リジッドサスのせいかリアにはやや微振動が認められるものの、不快には感じないレベル。おせじにも快適とはいえなかった従来型に比べると、いわばトラックが乗用車になったかのような、まさしく隔世の感がある。
「G 63」に乗り替えると、AMGならではの刺激的なドライブフィールに圧倒されるばかり。締め上げられた足まわりにより、ハンドリングは俊敏そのもの。重心が高く、新型では軽量化されたとはいえ、それなりの重量物をこれほどまでに走らせることができているのには感心せずにいられない。
「G 550」でも十分すぎるほどだった動力性能は、さらに全域でパワフルさがみなぎり、踏み込むとパンチの効いた加速を味わわせてくれる。スポーツモードにセットするとより瞬発力が増す。いかにもAMGらしい派手なエキゾーストサウンドも迫力満点だ。
悪路走破性もぬかりなく
さらに今回は本格的なオフロードで新旧比較することもできたのだが、これまた快適性が段違い。路面に対する感度がぜんぜん違って、極悪路での強烈な入力があったときの受け止め方が、従来型では地響きするようなガツンガツンという衝撃を感じるのに対し、新型はそれが大幅に緩和された。ステアリングへのキックバックも小さい。さらにはアプローチやデパーチャーのアングル、最大渡河水深など悪路走破に関する諸性能についても、すべてにおいて大なり小なり従来型を上まわっていることも念を押しておこう。
とはいえ、従来型をさすがと感じた面もあった。たとえばモーグルセクションではフロントもリジッドサスの従来型のほうが足が長く伸びるので、新型よりも車体の傾きが小さかったり、岩場のようなラフロードでもフロントのトラクションの変化が小さくグイグイと前に進む感覚があったのは事実だ。ただし、ESPを効かせた状態であれば、より進化した電子制御デバイスを持つ新型は自動的に適宜パワーを絞り4輪のブレーキをつまんでくれるので、最終的にはよりイージーに踏破していけるように感じられた。
そのあたり、いずれにしても新型はオンロードにおける圧倒的な快適性を実現しながらも、Gクラスの本質である悪路走破性をしっかり受け継ぎ、ON/OFF両面の絶対的な性能においても向上を果たしたという理解でよいかと思う。
このようにあらゆる面で大きく進化を遂げ、わが道をいきながらも現代の高級SUVに求められるものをしっかり身に着けた新型Gクラスは、これまでにも増して多くのファンを獲得することに違いない。