試乗記

小さな高級車、新たなレクサスのエントリーモデル「LBX」

小さな高級車、新たなレクサスのエントリーモデル「LBX」

レクサスの新しいエントリーモデル「LBX」

 レクサスのエントリーモデルと言っては贅沢な、新型コンパクトSUVが間もなく登場する、「UX」よりワンサイズ小さい「LBX」だ。諸元では全長4190mm、全幅1825mm、全高1560mmで、ホイールベースは2580mmのコンパクトSUVになる。

 1.5リッターハイブリッドのFFだが、新しいレクサスデザインはとてもBセグメントには見えないボリューム感がある。

LBX独自のディメンションを持つためボリューム感のあるデザイン

 プラットフォームはTNGA GA-B、エンジンはM15Aと聞けばヤリスクロスを連想するが、ホイールベースを20mm長く、全幅を60mm広く取ったLBX独自のディメンションでレクサスらしい滑らかな走りと、堂々としたエクステリア、そして上質なインテリアの仕上がりになっている。

 エンジンはM15Aで基本的にはヤリスクロスと共通だが、そこはレクサス。ハイブリッドモデルにバランスシャフト搭載の3気筒エンジンを選択、振動を抑えると同時にハイブリッドシステムも見直し、燃費の向上とモーター出力も上げられた。

ユニファイドスピンドルという新たなデザイン言語が用いられているLBX
リアまわりのデザイン
内装デザインは水平基調。グラスエリアも広い
レクサスならではのステアリングがおごられている。ドライバーモニタリングが付いており、渋滞時のハンズオフ機能などもグレードによって実現されるようだ
電子式のセレクトレバーまわり
メーターパネル。左ハンドルなので、海外仕様のものとなる
このグレードでは、シートに耐久性と高級感に優れる東レのウルトラスエード(Ultrasuede)が用いられている
リアシートまわり

 試乗コースは富士スピードウェイのショートコース。装着タイヤはADVAN V01。サイズは225/55 R18という大径サイズを履く。

 エンジンが始動すると高効率エンジンであるM15A特有の振動がフロアに伝わってくるが、かなり抑えられてレクサスらしくリファインされているのが分かる。同時にエンジンの音圧が下がっている。

 遮音が手厚くなっているのと同時に、ハイブリッドシステムのモーターがサポートするパートが大きくなっており、エンジンがそれほどがんばらなくてもよくなったことが大きい。レクサスのハイブリッドシステムはますます磨きがかかっている。

LBXに搭載されるバランスシャフト搭載M15Aエンジン。ハイブリッド車と組み合わされるのは初となる。モーターの出力も向上している

 LBXの動力性能の美点はエンジンレスポンスのシャープさと力強さにあり、コースボトムにある上りのヘアピンでは、いつもエンジン回転が上がって速度が乗らないハイブリッド特有の痛痒感があるところだが、LBXではモーターが先行してエンジンが付いてくるようなフィーリングになっていた。パフォーマンスは、これまでの1.5リッターハイブリッドの常識を超えている。

 コーナーでは急激なロールの変化が小さかった。サスペンションの設定もさることながら、これには柔らかいがしっかりと身体をサポートするシートの効果も大きい。後席のパッセンジャーからも同じような感想があった。シートが同じ思想で作られている証明になるだろう。

 走行時の静粛性では、風切り音の小ささもレクサスらしさの一つ。コンパクトSUV以上の価値観がある。

レクサスの目指す走りの味

試乗は富士スピードウェイのショートコース

 レクサスの目指すもう一つのテーマは走りの味にある。どのレクサス車のステアリングを握ってもレクサスを感じられるという目標だ。工業製品にとって難しい課題だが、例えばBMWを例に取れば、コンパクトからラージまで、操舵フィールや加減速に幅はありつつも、同じリズムで走らせることができる。

 レクサスでは滑らかな操舵フィールとドライバーとの自然な一体感になるのだろうか。LBXに感じたのはドライバーの操作に対するクルマの動きが滑らかで、ハンドル操作にしても加減速にしても無駄な動きが排除されている印象だった。ストレスの少ないクリアなドライブフィールが一つの回答かもしれない。

 実用面では、後席におけるシート前後長の長さとヘッドクリアランスの余裕が挙げられる。レッグスペースも膝には余裕があるうえ、爪先も前席の下に入るのでコンパクトサイズとしては十分に広い。

 ラゲージスペースの容量は、後席を使用する場合においても55Lのスーツケースが6つ搭載でき、2:3で倒れる後席シートバックを倒せば、かさ張るものも押し込めそうだ。ゴルフバッグは横に積むには少しスペースが足りないが、そこはレクサスで、トランク両サイドにドライバーが入るえぐりが設けられていた。

 なおADAS系では、ドライバーモニタリングが設定されるグレードもあるようなので、ハンズオフ機能など渋滞時のサポートが飛躍的に向上しているに違いない。

 このLBX、レクサス最少のSUVと位置付けられているが、高い価値が込められていた。この秋には日本でもデビューする注目の1台だ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛