試乗記
「ヴェゼル」の走りはマイチェンでどう変わった? FFと4WDを乗り比べて感じたのは……
2024年6月25日 08:18
- 2024年4月26日 発売
- 264万8800円~377万6300円
2021年4月に販売を開始した2代目「ヴェゼル」がマイナーチェンジを行なった。ボディ同色のグリルを採用し、独創的なスタイルを手にしたことから、当初は違和感を覚える方々が多かったとも聞く。だが、開発陣は「反対意見があったとしても話題になるくらいで丁度よい」とドンと構えていた結果、次第に世間が馴染み出し、結果としては堅調な売れ行きだったという。
けれども半導体不足の結果、納期は約1年に達することもしばしば。検索ワードに「ヴェゼル」と打ち込むと、候補の第一位は「ヴェゼル 納期」となるくらいに多くの人を悩ませていた。新型はまずその問題を打開。1か月ほどで収めることが可能なグレードもあるほどで、最も長いパノラマルーフ装着車であったとしても3か月程度で納車できる体制を整えているようだ。
新型はまず、グレード体系の見直しが行なわれた。従来は最上級の装備を得られるPLaY(プレイ)グレードを選択した場合には4WDが選べず。また、PLaYはパノラマルーフが標準装備だったために、納期が長期化していた。そこを改めるために、PLaYをパッケージオプションとすることで4WDでもPLaYが選択可能になり、パノラマルーフはオプション設定とすることで納期の課題をクリアしたという。
さらに新型では、e:HEV XのFF/4WDをベースとした「HuNTパッケージ」を新たに追加。これまでに存在しなかったルーフレールを奢ったり、専用加飾などを行なうことで新たなる世界観を実現している。
一方、ガソリン車は4WDのみとなり、FFモデルは廃止となった。これはホンダに「WR-V」という新たな存在が加わったからだろう。ベーシックな路線はWR-Vが、上級路線はヴェゼルが受け持つような格好だ。
新型はその独創的なスタイルにも改善を与えている。同色グリルの上には左右のヘッドライトからつながるラインが入れられ、塊感あるマスクはそのままにワイドな感覚が与えられることに。従来はすぼまって見えていた顔つきに“安定感”が出たような感覚がある。
一方、リアのコンビライトはオールLED化したことをきっかけに水平基調の赤いラインが横に広がり、これまたワイドな安定感を生み出していることが特徴的だ。Bセグメントとは思えぬクラスを超えた質感が好感触だ。
そのルックスに負けないように、中身についてもかなり改められている。最も改良されたのは音の対策だ。ボンネットのフードインシュレーターは28%UP。ダッシュアウターインシュレーターは40%UP。ルーフライニングインシュレーターは厚みを50%UP。インパネ結合インシュレーターは厚みを15%UP……。それ以外にもダッシュインシュレーターはハイブリッドインシュレーターへ、フロントフロアカーペットにはフィルム層を追加するなど、とにかく静かにしようという対策が盛りだくさんだ。
さらにe:HEVは制御も改め、エンジンをかけたり止めたりを頻繁に行なうのではなく、切り替え頻度を30%も低減することで静粛性を向上させたという。
シャシーについてはe:HEVのFFモデルのみセッティング変更が行なわれている。新型のタイヤは基本的にブリヂストンの「ALENZA H/L33」が装着され、ダンパーの減衰力やパワーステアリングのソフトウエアが変更となった。狙いは絶対に納期を遅らせないようにするため。225/50R18サイズの供給を途切れないようにするための銘柄変更らしい。結果としてこのタイヤを基準にセッティング変更が行なわれている。
e:HEV(ハイブリッド)のFFと4WD、ガソリンモデルの4WDも試乗
気になるそのe:HEVのFFモデルを走らせてみると、リアからの突き上げ感がなくなり、かなりスムーズな乗り味を実現していることがうかがえる。実際に後部座席にも座ってみたが、そこでの快適性も増していた。そもそもヴェゼルはリアシートの広さが売りのクルマ。そこの乗り心地のよさが引き上げられたことで、さらに魅力を増したことは間違いない。
さらに嬉しいのは静粛性が高まっていたことだった。WR-Vとは明らかに違う、上級モデルらしい仕上がりが感じられる。一方、ワインディングでスポーツモードを選択すると、応答性がかなりよくなり、求めた通りに吹け上がってくれるところも好感触。決して乗り心地重視なだけで終わらず、路面の追従感良くリニアに反応する足まわりもあり、ワインディングでの面白さも増していたところは嬉しい。
4WDモデルについてはセッティング変更はなし。ハントパッケージは16インチタイヤを装着し、少しおとなしめのデザインとなる。乗り味はどっしりとした感覚が増すが、フットワークはむしろ軽快に感じるところもある。このプラットフォームにマッチするのは、やはり16インチあたりまでかもしれないと思えるほどだ。なお、今回試乗できなかったが、PLaYパッケージの4WDは18インチを装着している。
見た目で選ぶか? 走りで選ぶか? 色々とチョイスは悩ましい。今回はその実力を知ることはできない環境だったが、4輪駆動制御も改められ、さらに走破性を増したということで、4WDも興味深い存在だ。
いずれにしても、どのグレードでも満足度はなかなか高そうだ。すぐに手に入りそうだし、今後も変わらず注目のSUVとなることは約束されたようなものだろう。
純正アクセサリーや無限アイテムを装着した車両もチェック
試乗会場には、純正アクセサリーや無限アイテムを装着した車両も展示され、カスタマイズや趣味での使い方をイメージできた。
Active Style(アクティブスタイル)
アウトドアテイストを際立たせたアクティブスタイル。装着パーツは、フロントグリル+ブラックエンブレム、ボディサイドデカール、システムキャリア(A-Collect商品)、リアコンビガーニッシュなど、屋外でも映えるエクステリアコーディネートだ。
Sports Style(スポーツスタイル)
スポーツスタイルは、エアロパーツや18インチアルミホイールなど、ヴェゼルのスポーティなイメージをさらに高めたコーディネート。また、コンプリートカーModulo Xシリーズの開発で培った、実効空力をはじめとした技術を投入している。