試乗記

「ヴェゼル」の走りはマイチェンでどう変わった? FFと4WDを乗り比べて感じたのは……

2024年4月26日 発売

264万8800円~377万6300円

マイチェンが実施された新型「ヴェゼル」を試乗してきた

 2021年4月に販売を開始した2代目「ヴェゼル」がマイナーチェンジを行なった。ボディ同色のグリルを採用し、独創的なスタイルを手にしたことから、当初は違和感を覚える方々が多かったとも聞く。だが、開発陣は「反対意見があったとしても話題になるくらいで丁度よい」とドンと構えていた結果、次第に世間が馴染み出し、結果としては堅調な売れ行きだったという。

 けれども半導体不足の結果、納期は約1年に達することもしばしば。検索ワードに「ヴェゼル」と打ち込むと、候補の第一位は「ヴェゼル 納期」となるくらいに多くの人を悩ませていた。新型はまずその問題を打開。1か月ほどで収めることが可能なグレードもあるほどで、最も長いパノラマルーフ装着車であったとしても3か月程度で納車できる体制を整えているようだ。

今回のマイチェンでは、“さまざまな生活シーンで気軽に一歩を踏み出すきっかけになってほしい”という思いを込めて、「EXPAND YOUR LIFE(エクスパンド・ユア・ライフ)」をグランドコンセプトに設定
ボディサイズは4340×1790×1580mm(全長×全幅×全高。e:HEV Zのみ全高1590mm)、ホイールベースが2610mm。旧モデルよりも10mm全長が伸びている。写真は新設定のe:HEV Xにアウトドアテイストを追加した「HuNT(ハント)パッケージ」

 新型はまず、グレード体系の見直しが行なわれた。従来は最上級の装備を得られるPLaY(プレイ)グレードを選択した場合には4WDが選べず。また、PLaYはパノラマルーフが標準装備だったために、納期が長期化していた。そこを改めるために、PLaYをパッケージオプションとすることで4WDでもPLaYが選択可能になり、パノラマルーフはオプション設定とすることで納期の課題をクリアしたという。

ハントパッケージは、ルーフレールや専用アルミホイール、カッパー・メタリック塗装のガーニッシュなどを装備する
リアコンビネーションランプは、オールLED化するとともに水平基調の2段グラフィックに統一している
e:HEV X ハントパッケージ専用のシャークグレーメタリック塗装の16インチアルミホイール。タイヤはハンコックの「Kinergy eco2」でサイズは215/60R16
専用装備のルーフレールは飾りではなくルーフキャリアの装着も可能

 さらに新型では、e:HEV XのFF/4WDをベースとした「HuNTパッケージ」を新たに追加。これまでに存在しなかったルーフレールを奢ったり、専用加飾などを行なうことで新たなる世界観を実現している。

 一方、ガソリン車は4WDのみとなり、FFモデルは廃止となった。これはホンダに「WR-V」という新たな存在が加わったからだろう。ベーシックな路線はWR-Vが、上級路線はヴェゼルが受け持つような格好だ。

e:HEVモデルは、直列4気筒DOHC 1.5リッターi-VTEC(最高出力78kW[106PS]/6000-6400rpm、最大トルク127Nm/4500-5000rpm)と、最高出力96kW(131PS)/4000-8000rpm、最大トルク253Nm/0-3500rpmのモーターを搭載
ガソリンモデルはGグレードの4WDのみ。エンジンは、直列4気筒DOHC 1.5リッターi-VTEC(最高出力87kW[118PS]/6600rpm、最大トルク127Nm/4500-5000rpm)を搭載する

 新型はその独創的なスタイルにも改善を与えている。同色グリルの上には左右のヘッドライトからつながるラインが入れられ、塊感あるマスクはそのままにワイドな感覚が与えられることに。従来はすぼまって見えていた顔つきに“安定感”が出たような感覚がある。

 一方、リアのコンビライトはオールLED化したことをきっかけに水平基調の赤いラインが横に広がり、これまたワイドな安定感を生み出していることが特徴的だ。Bセグメントとは思えぬクラスを超えた質感が好感触だ。

安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」は全タイプ標準装備
4WDモデルは各タイヤへのトルク配分もメーターで視認できる

 そのルックスに負けないように、中身についてもかなり改められている。最も改良されたのは音の対策だ。ボンネットのフードインシュレーターは28%UP。ダッシュアウターインシュレーターは40%UP。ルーフライニングインシュレーターは厚みを50%UP。インパネ結合インシュレーターは厚みを15%UP……。それ以外にもダッシュインシュレーターはハイブリッドインシュレーターへ、フロントフロアカーペットにはフィルム層を追加するなど、とにかく静かにしようという対策が盛りだくさんだ。

 さらにe:HEVは制御も改め、エンジンをかけたり止めたりを頻繁に行なうのではなく、切り替え頻度を30%も低減することで静粛性を向上させたという。

ホンダのSUV3兄弟。手前から「ZR-V」「ヴェゼル」「WR-V」

 シャシーについてはe:HEVのFFモデルのみセッティング変更が行なわれている。新型のタイヤは基本的にブリヂストンの「ALENZA H/L33」が装着され、ダンパーの減衰力やパワーステアリングのソフトウエアが変更となった。狙いは絶対に納期を遅らせないようにするため。225/50R18サイズの供給を途切れないようにするための銘柄変更らしい。結果としてこのタイヤを基準にセッティング変更が行なわれている。

e:HEV(ハイブリッド)のFFと4WD、ガソリンモデルの4WDも試乗

試乗はe:HEVのFFと4WDがメインで、参考のためガソリンモデルの4WDも試乗した

 気になるそのe:HEVのFFモデルを走らせてみると、リアからの突き上げ感がなくなり、かなりスムーズな乗り味を実現していることがうかがえる。実際に後部座席にも座ってみたが、そこでの快適性も増していた。そもそもヴェゼルはリアシートの広さが売りのクルマ。そこの乗り心地のよさが引き上げられたことで、さらに魅力を増したことは間違いない。

FFモデルの試乗は「e:HEV Z」グレード。ボディカラーはプレミアムサンライトホワイト・パール

 さらに嬉しいのは静粛性が高まっていたことだった。WR-Vとは明らかに違う、上級モデルらしい仕上がりが感じられる。一方、ワインディングでスポーツモードを選択すると、応答性がかなりよくなり、求めた通りに吹け上がってくれるところも好感触。決して乗り心地重視なだけで終わらず、路面の追従感良くリニアに反応する足まわりもあり、ワインディングでの面白さも増していたところは嬉しい。

e:HEV X ハントパッケージの4WDモデル
フットワークはむしろ軽快だった

 4WDモデルについてはセッティング変更はなし。ハントパッケージは16インチタイヤを装着し、少しおとなしめのデザインとなる。乗り味はどっしりとした感覚が増すが、フットワークはむしろ軽快に感じるところもある。このプラットフォームにマッチするのは、やはり16インチあたりまでかもしれないと思えるほどだ。なお、今回試乗できなかったが、PLaYパッケージの4WDは18インチを装着している。

参考のためガソリンモデルのGグレードも試乗。ガソリンモデルは4WDのみの設定

 見た目で選ぶか? 走りで選ぶか? 色々とチョイスは悩ましい。今回はその実力を知ることはできない環境だったが、4輪駆動制御も改められ、さらに走破性を増したということで、4WDも興味深い存在だ。

 いずれにしても、どのグレードでも満足度はなかなか高そうだ。すぐに手に入りそうだし、今後も変わらず注目のSUVとなることは約束されたようなものだろう。

熟成度が増した新型ヴェゼル。選択肢も多く、用途に合わせて選びたい

純正アクセサリーや無限アイテムを装着した車両もチェック

 試乗会場には、純正アクセサリーや無限アイテムを装着した車両も展示され、カスタマイズや趣味での使い方をイメージできた。

Active Style(アクティブスタイル)

 アウトドアテイストを際立たせたアクティブスタイル。装着パーツは、フロントグリル+ブラックエンブレム、ボディサイドデカール、システムキャリア(A-Collect商品)、リアコンビガーニッシュなど、屋外でも映えるエクステリアコーディネートだ。

Active Style(アクティブスタイル)
フロントグリル(ベルリナブラック)価格4万1250円。ブラックエンブレム(ブラッククローム)価格1万1550円
16インチアルミホイール「ME-025」ブラストグレーメタリック塗装。価格1万7600円/本
ボディサイドデカール。価格2万2000円
リアコンビガーニッシュ(ルナシルバー・メタリック/2枚セット)価格1万9800円
エキパイフィニッシャー。価格9900円
A-Collectシステムキャリア(エアロベースステー ルーフレール用+エアロベースバー前後+ルーフレール用ベースシート)価格4万3560円。INNOルーフボックス シャドゥ(マットブラック)価格7万1500円
サイドステップガーニッシュ。フロント部LEDイルミネーション(ドア開閉連動/VEZELロゴ)付/ステンレス製/フロント・リア用左右4枚セット。価格2万9700円
オールシーズンマット(縁高タイプ/樹脂製/ブラック)価格1万1000円
ラゲッジトレー(縁高タイプ)価格1万4300円

Sports Style(スポーツスタイル)

 スポーツスタイルは、エアロパーツや18インチアルミホイールなど、ヴェゼルのスポーティなイメージをさらに高めたコーディネート。また、コンプリートカーModulo Xシリーズの開発で培った、実効空力をはじめとした技術を投入している。

Sports Style(スポーツスタイル)
フロントグリル(ベルリナブラック)価格4万1250円。ブラックエンブレム(ブラッククローム)価格1万1550円。フロントロアースカート(ベルリナブラック/クロームメッキガーニッシュ付)価格4万2900円
サイドロアーガーニッシュ(ベルリナブラック)価格3万5200円
リアロアーガーニッシュ(ベルリナブラック/クロームメッキガーニッシュ付)価格2万4200円。リアロアースカート(ベルリナブラック)セパレート(=左右分割)タイプ。価格2万4200円
テールゲートスポイラー(クリスタルブラック・パー/LEDロングハイマウントストップランプ付)価格5万5000円
ドアミラーカバー(クリスタルブラック・パール/左右セット)価格9900円。他にグロッシーカッパー・メタリック(価格1万1000円)もあり
18インチアルミホイール「MS-050」(切削/グリントブラック塗装)価格4万6838/本
フロアカーペットマット(プレミアムタイプ)価格4万5100円。スポーツペダル(アルミ製)価格1万3200円

無限Sports Style(スポーツスタイル)

 新型ヴェゼル用無限パーツは、エアロ、ホイール、マフラーなど「Sports Style」をコンセプトに、無限らしいスポーティさとプレミア感のあるパーツをラインアップしている。

新型「ヴェゼル」無限パーツ装着車。サイドガーニッシュ、価格11万円(塗装済)、9万9000円(未塗装)
フロントアンダースポイラー、価格8万8000円(塗装済)、7万7000円(未塗装)
リアアンダースポイラー、価格7万7000円(塗装済)、6万6000円(未塗装)。テールゲートスポイラー、価格11万円(塗装済)、10万4500円(未塗装)。ウイングスポイラー価格11万円(塗装済)、10万4500円(未塗装)
フロントグリルデカール、価格1万9800円
e:HEV用スポーツサイレンサー、価格16万5000円
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、ジムニー(JB64W)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34・納車待ち)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学